シャロン准将は金でしか動かない――地球防衛軍は地球を守らない   作:むーんしゃいん

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RAMIA

 EDGF(地球防衛陸軍)技術研究局はシャロン准将を訪れていた。

第二種軍服の上に白衣を着た職員が、エントランスを行き交っている。

 

 金髪の腰まで伸びた長髪にキリッとタイトスカートにジャケットとトレンチコートを着込んだシャロン准将は、バストまで伸びた金髪ロングヘアーをサラリと(なび)かせる。

 

 蒼い瞳に魅力を宿すシャロン准将は受付嬢に話しかける。

 

「…11時に細胞技研部の主任研究官とお約束しているのですが」

 

「お世話になっております。すぐに取り次ぎます。あちらで、かけてお待ち下さい」

 

「ありがとうございます」

 

 ガラス張りのエントランスに日差しが差し込む。今日は天気がいい。とくに座る気にもなれず

ソファーの側で、外の緑を眺めるシャロン准将は凛と立っていた。

 

 何かを見つめる人物は、際立った人物に見える実験がある。四隅の幽霊を視つめるようなシャロン准将は、周囲の視線をかなりさらっていた。

 

 すぐに細胞技研の研究官が、シャロン准将を出迎えた。名刺交換を済ませる。

地下15階のバンカーバスターすら到達しない細胞技研部の立入禁止区域へと案内する。

 EDSF(地球防衛宇宙軍)准将の特権があるので、ここまでの流れは素早い。

 

 シャロン准将と研究官は防護服に着替えると減圧室に入る。

 

 いくつも並ぶ。プラスチック試験管とアンプルの数々が減圧室のデスクの上に並んでいる。

 EDSF(地球防衛宇宙軍)特殊科学研究所の宇宙各地から捕らえられた未確認生物やらエイリアンが、所狭しとぶら下がっている状況よりはキレイだと思った。

 

 研究官は用意しておいた排気フィルターユニットの中のシャーレを光学顕微鏡をディスプレイに映し見せる。

 ディスプレイの中。RAMIAウイルスで、細胞変性効果(C P E)を引き起こした宿主細胞が合泡体の円形を作っていた。

 

「これがRAMIAウイルスのデータです」

 

 詳しい書類を受け取ったシャロン准将がペラペラとマウス行動実験データを見ながら、模式図を一瞥(いちべつ)する。

 

「記載されているのは、ナノマシンではないですね」

 

 シャロン准将はエンベロープの形状から、EDGFの専売特許であるナノマシンではないと判断した。

 

「先んじて、基礎となるRAMIAウイルスを開発し。その作用をナノマシンに模倣(もほう)させます。それがRAMIAです」

 

「もともと、RAMIAウイルスは、人口高密度社会の人口抑止の切り札として作られましたが…」

 

 本来の崇高な使命を帯びた研究計画をEDGFが完膚(かんぷ)無きまでに握りつぶし。EDGFのナノマシン技術で軍事転用したのは、軍務補佐官のシャロン准将も周知の事実だ。

 

「その点、把握しています」

 

 はー。と軽くため息を付いた研究官は、何処か含むところがあるような語りを続ける。

シャロン准将は、語り口調から違和感を感じ、相槌だけで黙ることにする。

 

 しばらくは、シャロン准将に、感染した宿主細胞の末路なんかを、ずーっと話していた。

 

「伺いますが。ナノマシン(RAMIA)の研究は何年くらいで終わります?」

 

「現段階だと1年くらいあれば可能と考えております」

 

 官邸に提出された計画では10年である。9年の誤差(レスポンス)だ。EDGF(あいつら)何考えてるんだよ。シャロン准将は出るため息を飲み込む。

 

「治療法はあるんですか?」

 

「RAMIAウイルスはワクチンで根治出来る可能性はあります。ナノマシン(RAMIA)に関してはナノマシンの劣化を待つしかありません」

 

 よかったー、眼の前のこれに感染してもワクチン作れるんだー。シャロン准将は排気フィルターユニットのやばいウイルスに安堵する。

 

ナノマシン(RAMIA)は、PC操作で対象人物に症状発現させます」

 

ナノマシン(RAMIA)が発現したら、対処療法しか出来ないということですか」

 

「RAMIAウイルスをナノマシン(RAMIA)にしたら、まさに不治の病ですね」

 

「はい。そのとおりです…」

 

 落ち着きがない研究官は、物言いたそうにじーっとシャロン准将を見つめる。

そんなに時間が長いかな。掛け時計を見る時刻は11時半になっていた。まだ、業務時間だ。

 どちらかといえば、シャロン准将に帰ってほしくないようだった。

シャロン准将はお昼休憩まで粘り、研究官をそれとなくお昼に誘った。

 

 二人が逃げ込んだスタバは、明るく活気ある店内だ。

 

 話し合いや食事をするなら、普通の喫茶店でも良かった。

ふと、シャロン准将は、スタバで飲みたい。じーっと見てたら、気を使われてしまった。

 

 酷いものを見てお腹の減らないシャロン准将は。ホットのトールでホワイトモカのホワイトモカシロップをバニラシロップに変更。を頼んだ。

 

「…あの」

 

 仕事の合間も休まなきゃ。シャロン准将は、口に含んだホワイトモカから、バニラの香りがするのをまったり楽しんでいた。

 

「なんです?」

 

 研究官は、ポツリとシャロン准将に告げた。

 

RAMIA(あれ)はやばいです」

 

 研究局では、もっと致死率の高いウイルス扱ってる。シャロン准将は、なぜ、RAMIAだけ危ないのか理解に苦む。

 

RAMIA(あれ)の危険性は発現しなければ、問題はないですよね?」

 

 シャロン准将はホワイトモカを飲む手を止めずに話す。

 

「そういう意味ではなくて…」

 

「…はい?」

 

「…私もあなたも。みんなRAMIA(あれ)にか…せんし…」

 

 感染している。という言葉を研究官は涙でかき消した。周りには、研究官が泣いている理由はわからなかった。

 

「え…」

 

 シャロン准将の手が止まる。

かんせん…。え。ガチで言ってるのか。高鳴る鼓動とは別にシャロン准将は冷静になる。

 

「よろしければ使って下さい」

 

 EDGFは、大統領や上層部(E D F)にカバーストーリーを提出にしていた。

シャロン准将はバックから、シワのないハンカチを取り出し研究官にすっと差し出す。

 

「ありが…う…」

 

 ハンカチを握りしめた研究官が泣き止むのを待った。

 

「完成してたんですね」

 

「研究は完成してます。散布作戦(コト)は5年前実施された後です」

 

 シャロン准将は5年前にはすでに人類終わりが自分に降り掛かっていた。

 

「まだ、発現しなければ大丈夫なんですよね?」

 

 もう、ぽんぽんがいたい。シャロン准将は黙ってお腹を擦った。

 

「はい…」

 

 身体は当面は無事だ。シャロン准将は、止事無き事態(クーデター)の予感を色濃く強く感じた。

 

 シャロン准将は研究局まで歩いて戻り、情報を集めるため官邸に急ぐ。

政府関係者を狙い撃ちにして、研究局で停車しているタクシーに乗る。

 

「統合省までお願いします」

 

 街路樹の道。人通りは少ない。「ご利用ありがとう」気さくな運転手は、すぐにタクシーを走らせる。

 

 あれ、財布どこだっけ。シャロン准将にとってやけに外が眩しかった。シャロン准将がバックをまさぐていた。

 

 巨木の街路樹でやり取りを張っていた、黒いロングコートが華麗な黒い少女が、タクシーに乗る対象を発見つめる。そして、自分の体を街路樹から車道へと10mは落下した。

 

 突然、急停車するタクシー。シャロン准将の頭が運転席にめり込む。

 

「…あーだーっ!」

 

 降り立った少女は制圧を開始した。停車したタクシーに素早く駆け寄る。運転手側のドアガラスを粉砕してドアロックを開けた。そして、タクシーの運転手の肩の弱点を強く掴み、降ろす。

 

 黒い少女は、武器すら使用してない。

 

 EDGF型戦闘アンドロイド(ルーンラビット)か。一連の動作が、手練れの車強盗と同じだ。シャロン准将は、黒い少女の手癖の悪い所作を見ていた。

 

 諜報部局の暗殺にしてはずいぶん手が荒い。EDGF(地球防衛陸軍)では初動が早すぎる。EDSF(地球防衛宇宙軍)で、これに順する陸軍組織ってEDMC(地球防衛海兵隊)ぐらいしかない知らないが、聞こえるはずの話が来てない。

 

「去れ」

 

 黒い少女は、ドスの聞いた声で肩から手を離す。

 

「わかった…!わかったから!」

 

 運転手は全速力で助けを求め駆け出す。

 

 地球ってやばすぎるじゃん。宇宙のほうが、全然、安全快適だわ。シャロン准将は思惑をしていたら、手を挙げる機会を見失った。

 

 黒い少女は運転席へと乗り込むと、シャロン准将を乗せたままのタクシーで、シートベルトとバックミラーを確認している。

 

「私も逃げた方がいい?」

 

 これ、修理代私持ちじゃないよね。シャロン准将は銭勘定をしていた。

 

「そのままご乗車下さい。閣下」

 

 出た。全然知り合いでもないのに相手だけが知ってるパターンだ。

 それはシャロン准将にとっては、ストーカー行為以外何者でもない。

 

 黒い少女は運転しながらシャロン准将をバックミラー越しに覗く。視線が合った。黒い少女がふっと微笑を浮かべる。

 

「…私の任務は、あなたをお守りすることです」

 

 地雷を踏み抜いたシャロン准将は、もう後には引けない地点にいた。

 

 か弱いシャロン准将に。すごく安心した。と、でも言って貰いたそうにしている黒い少女は、ウインカーを切り首都高へと合流する。

 

 窓空いてるからものすごく寒い。シャロン准将は、早めに車を変えないと、警察のNシステム(自動車ナンバー自動読取装置)に引っかる気がした。

 私はやだよ。誘拐犯が突然、(くだん)の発言を自供したら。と、考えながら黙ったシャロン准将は、バックミラーに目をやる。

 

 覆面パトカーとタクシーの距離が近い。少女はすぐに挙動を感じ、周りの速度の少し上で、追い抜きを開始する。

 

「どちらにいくの?」

 

「悪いようにはしません」

 

 すれ違った首都高の電光掲示板【検問実施中】と表示された。

シャロン准将も、それは読み取る。

 

「閣下。検問通過後で防御姿勢を取って下さい」

 

 通過後、前じゃなくて…あと。突破するのかと見ていたシャロン准将は、黒い少女が検問前で

タクシーのスピードを緩め、警察の【止まれ】の旗に大人しく従い車両を止める。

 

「どうもー。免許証を出して下さい」

 

 黒い少女が免許証を提出する。ゴールドの免許証にシャロン准将は、自分が30回連続で実技に落ちている現実を思い出した。実技を受けるたび、教習所の職員の目が痛いと感じている。

 

「ドアガラス割れてますね」

 

「…首都高に乗ったら、石が跳ねて。すぐに修理に出します」

 

 はぁ…。なんで、受からないんだろ。シャロン准将はじーっと若い警察官を悲痛な面持ちで見ていた。だがシャロン准将は、職業柄、感情が表情に出なかった。

 

「ちょっと右前に止めて。降りてもらえますか?」

 

 黒い少女は、タクシーを右前の停車帯に止め、素直に降車し警官二人と話している。

今保護して貰おうかと、シャロン准将は思ってた。もし少女がルーンラビットの場合。この人数の警察官なら、少女は即制圧してしまう。この乱暴者。まじで厄介極まりないことになる。

 世界平和。そして、近所平和のために黙秘することにする。

 

 黒い少女がこちらに歩いてタクシーの乗り込む。タクシーがパトカーを先導し始めた

 

 誘拐犯の車両をVIP扱いしないで頂けますか。シャロン准将は言われた通り、検問を抜けたので対ショック姿勢を取る。

 

 2台は検問を離れた。カーナビの地図が止まっている。

 

 黒い少女はタクシーは、パトカーを強引に追い抜く。

すぐさま反応し、赤色灯とサイレンを鳴らし、パトカーが追尾開始する。

 

 黒い少女は、車やトラックを避けながら、タイヤから奇声を上げながら強引に進む。

ふつーにコイツの運転酔うわ。気分が悪くなってきたシャロン准将は、黒い少女に投降を呼びかけてみる

 

「逃げられないと思いますよ?」

 

「では、今終わらせます」

 

 黒い少女はタクシーを器用に扱い。前方を走っていたワンボックスカーのバンパーのカドに衝突し強制Uターンさせる。

 

 この一連の流れでタクシーの速度はあまり落ちていない。

 

 Uターンされた車がタクシーの背後に流れていく。事故の発生にパトカーが危険と判断を追跡を取りやめる。

 

 運転がやたらと上手い。シャロン准将は少し運転を習いたい気分になる。

 

「…いやいや、きっと、出入り口で増援が待ってますよ?」

 

「封鎖はされませんので」

 

 要は現場の警察官だけ対処すればいいらしい。ああ…、警察権力にコネがあるのか。散々な目に遭うシャロン准将を乗せたまま、湾岸エリアへと向かった。




エンペロープ ウイルス粒子に見られる膜状の構造のこと。
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