シャロン准将は金でしか動かない――地球防衛軍は地球を守らない   作:むーんしゃいん

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テロリストVSシャロン

 誘拐犯の黒い少女の運転したタクシーは埠頭の倉庫へと入った。絶賛誘拐中のシャロン准将は

タクシーの後部座席で待たされていた。

 

 ゾロゾロと裏ドアから人が入ってくる。倉庫の中には、破防法に引っかかるような人材が10名ぐらいが集合している。

 

「シャロン准将お待ちしてました。反地球政府解放戦線(カルタゴ)のカルクと申します」

 

 物腰が柔和な男性だ。カルクは名刺をシャロンに差し出す。記載されいてる就職先は一般企業である。

 

 地球政府を地球政府滅ぶべし(カルタゴ滅ぶべし)みたいな大層な名前を持っているが、シャロン准将たちにとっては

滅ぶべくして滅ぶ運命のテロリストだった。

 

 お前らの情報網に引っかかった原因は知らないけど。まあ、いで立ちから解放戦線(おまえら)だとは思った。だがなぜか、解放戦線と相対する存在のルーンラビットが行動しているのは未だに七不思議である。

 

「お互い時間がない身です。端的に願います」

 

 タクシーの後部座席でシャロン准将は、カルクの名刺をしまいながら冷たい言葉を告げる。

 

「RAMIA計画案の大統領提出を潰していただきたい頂きたい」

 

 今朝、承認されちゃった案件だ。付け加えるなら、人類等しくRAMIAに感染している。

この場で生かす価値のない誘拐被害者に昇格したシャロン准将は大ピンチだった。

 

「その計画案を揉み消したらどうなるのですか?」

 

 大統領の承認が得られば、EDGFは、RAMIA計画を界隈には手を振って宣伝ができる。ただそれだけじゃん。どのみちEDFはやるよ。てか事後だよ…。

 

「次の標的の命が助かります」

 

 懐柔のためのディベートですか。そもそもふつーに金来たらよかったじゃん。解放戦線(おまえら)の出来ないトコそういうトコだぞ。シャロン准将は俄然やる気を無くす。

 

 シャロン准将は、こいつらに掛ける情はなかった。 

 

 シャロン准将は動かず。なんとなく、ぼーっと前を見ている。カルクは、しびれを切らせ堰を切ったように話し始めた。

 

「RAMIAの人体実験に選ばれたリーク一族の子供の数は極端に減ってしまいました。これは、君たちの言うところの地球憲章にも記載された基本的人権の保護を逸脱している」

 

 あえてシャロン准将の土俵に立った物言いだ。カルクはシャロン准将に正義の是非を委ねる。

 正義とか悪とかそういうベクトルで、暮らしていないシャロン准将には無用の長物である。

 

「出生率のエビデンスはありますか?」

 

 カルクはカバンからEDGF調査報告書の15枚を取り出す。

 

「拝見させて頂きます」

 

 この研究官はこの業界で有名だ。ずさんな調査ばかりして閑職に追われ、研究官としての評判は高くない。その上、肝心なRAMIAという記載は保護され黒塗りされていた。

 

 この資料によると、リーク一族は人口は少ない。シャロン准将は口を開く。

 

「絶滅疑惧民族は、統計省の昨年の人口調査で3百種族で総計2千人以上はいます。リーク族も準ずる一族なら。別段、異常性は無いのではないでしょう」

 

 シャロン准将は、リーク一族の知ったかを早口で言う。

知らないことをキラッと言うのが。シャロン准将の自己流処世術である。

 

「彼らには若年層が多く。それらに合致しません」

 

 同じ若年層のシャロン准将は、すこしカチンと来て言葉にした。

 

「昨今の人口高密度社会で、私を含めた若年層が子供を作るのは30年前の常識です」

 

 こういう手合は、EDFでは我関せずの姿勢だ。シャロン准将は、少し腹を立てたカルクに視線は合わせない。

 

「その見解に対して証明出来るものは?」

 

「資料ではなく知識です」

 

 でも…。と、カルクが発言をしようと口を開く。シャロン准将は構わず話を続ける。

 

「RAMIA計画は存じ上げませんが。実際の出生率下落の原因を地球政府の陰謀論で片付けるは、公平性の乖離(かいり)が大きいと私は考えます」

 

 計画なんて知らねー。シャロン准将は安牌を張った。

 

「准将のあなたが、RAMIA計画を知らないと?」

 

 ニーチェはこういった。「事実(fact)というものは存在しない。 存在するのは解釈(opinion)だけである。」つまり、発言しない事。それ自体に意味があるのである。

 

「存じ上げません」

 

 焦ったカルクは黒い少女を見た。命令は遂行した。と、黒い少女は涼しい顔をしている。

 

「では、この薬をお飲み下さい」

 

 カルクは液体の入った瓶をシャロン准将に見せた。

 やだー…。絶対、自白剤じゃないですか。表情の視線は至って正常なシャロン准将も焦る。

 まったく飲む自白剤を開発したやつはどうなってんだよ。そっか、EDSF(身内)だったわ。

 

「自白剤の強制こそ。基本的人権の保護に逸脱します。そんな不見識な提案を拒否するのは自然な対応です」

 

「我々も手荒な真似はしたくないんですよね」

 

 少し冷静になったカルクが瓶をカバンに仕舞った。

 

「仰る通りです。今の提案では、私は良いお返事は出来かねますけどね」

 

 笑みを浮かべるカルクは、あきらかにシャロン准将に手を焼いている。

 

 黒い少女の腕時計がなった。

 

 黒い少女は黙ったままタクシーの後部座席へと向かうと、シャロン准将の左肩を強く鷲掴みにし引っ張り出した。

 

「やだ…。いたいって…っ。ぐぅー…。はなせー…」

 

 握る強さを変えない黒い少女はタクシーの横に着けられていた、頭の悪いお姉さんカラーのワンボックスーの後部座席にシャロン准将を放り込む。

 

 そして、自分はワンボックスカーの運転席に回り込みエンジンをかけた。

 

 放されたシャロン准将は痛そうに右肩を擦る。

 

「はぁー。あなた、不思議ちゃんかよ。まったくどこいくんだよー」

 

 シャロン准将は思わず愚痴をこぼす。

 

「仕事場」

 

 倉庫を後にしワンボックスカーを出発させた黒い少女はポツリと話す。

 

 なんの仕事場だよ。あと、声質いいから聞こえるけど返事の絶対音量たらねーからな。と思いながらシャロン准将は不満を述べる。

 

「なんだよ。私の死体を山でバラすのか!」

 

「それは山より良い場所がある。私が言ったのはあなたの職場」

 

 どうやら解放してくれるらしい。「…いいやつだなぁ」とシャロン准将は独り言を吐いた。

 

「あなたのこと守るって」

 

 頭の悪いお姉さんカラーのワンボックスに、初心者マークってを付けたら、ほかの車は避けていくのだ。戦わずして勝つ。シャロン准将にとってこのワンボックスカーは、まさに理想だ。是非欲しい。

 

「あ、職場に電話して良い?」

 

「電話をやめろとは一言も言ってない」

 

「TPOわきまえてしなかったんだよーばーか」

 

 シャロン准将は子供みたいに涙目でいじけながら、メガネ大尉に電話をかける。

 

「ごめんって…」

 

 黒い少女がポツリと謝った。シャロン准将はしばらくスマホで話している。

スマホを切ると黒い少女がバックミラーで一瞥してくる。シャロン准将は外の景色へと視線を向けた。

 

「で、あなた。名前は? 夫婦の倦怠期(けんたいき)みたいに、ずっと一人称代名詞で呼んでいいの?」

 

 黒い少女はしばらく黙って運転してた。シャロン准将もぼーっと外を眺めていた。

 

 警察に保護を求めても、結局、尻拭いするの私だ。そもそも、例に漏れずEDF絡んでる。運転席におまえら(E D F)の吐息の下僕もいるもん。

 

「名前はルル」

 

 黒髪の少女がポツリと言った。名前を聞いてから20分はかかっている。

 

 ルーンラビットの頭文字か。もう少し頑張ろうよ。アウラだって自分で考えたんだぞ。

 

「ルルさんねー。了解。運転頼みます」

 

 ワンボックスカーはシャロン准将を乗せ、首都高へと来た道を戻っていった。

 

「はい。これ」

 

 防衛統合省の近くの側道にワンボックスカーをつけたルルに、シャロン准将は、降り際、ルルに50ドル差し出す。

 

「なんのお金だ」

 

 買収されそうなルルはシャロン准将を睨む。

 

「ただの燃料代だよ。急いでいるから置いとくね」

 

 後部座席に置かれた燃料代をルルは仕方なく受け取った。

 

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