シャロン准将は金でしか動かない――地球防衛軍は地球を守らない 作:むーんしゃいん
シャロン准将は女性更衣室で、スーツから
竜巻警報は被害はなく。主幹官庁で事後処理だけ行っていた。
まあ、大したことないなら、それに越したことはない。
気晴らしに、ポチポチと内部情報の戦地動画を閲覧していた。
「やっぱり、ルーンラビット…」
精神が宿ってない機体は危ない。シャロンは無慈悲な行動の数々に鳥肌が立つ。
緊急時以外は、大した業務もない部署ないので日々ヒマといえばヒマである。
書類が上がってくるのを待つ、つまりヒマである。
結局。仮眠室でも2時間寝たが、シャロン准将の疲れは取れない。
ヤカンでお湯を沸かしていると、他部署の
「どうも」
あ、この人長くないな。EDGF隊員の顔を見てシャロン准将は、ただ漠然と実感した。
「どうも~」
給湯器のお湯は使わないで、ヤカンのお湯がほしいようだ。
二人でお湯が湧くまでの間。おしゃべりをし始める。
「そういえば、ご子息様が生まれたそうで、おめでとうございます」
「ありがとうございます」
「大佐に似てらっしゃるのです?」
スマホの待ち受けの赤ちゃんを見せる。
「あー、大佐に似て目尻がカッコいいお子さんですね」
「そりゃもう。家でずっと可愛がってるよ」
「それは帰るのが楽しみですね。あ、ちょっとまってください」
自部署の冷蔵庫からクッキーの小包を取り給湯室に戻った。
「紅茶を
キレイにラッピングされたクッキーを手渡した。
「おークッキーですか。好物なんですよね」
知ってる。シャロン准将は微笑する。
「お口に合えばいいのですが」
「いいんですか~、ありがとう」
ヤカンのお湯が湧くとお互い会釈をして給湯室から戻ってくる。
今日は金曜日。明日行けば連休だった。
朝の朝礼を済ます。
シャロン准将のスマホが振るえた。EDGFのRAMIAの内偵情報である。
「はい。何かわかりましたか?」
30分ほど電話のやり取りとデータの提供が行われた。
結局ドス黒いとのこと。情報は全て事実。EDGF上層部は黙認の模様である。
議事録まで真っ黒い。予想以上に早かったのは、おそらく、分かってたが声が出なかった。と察した。
「分かりました。後はコチラで引き受けます。ご安心下さい」
EDGFの総大将である
「どうも、シャロンです」
「いや~、RAMIAで金儲けしようとおもったんでしょ。ずるいですねー」
「いえいえ…。でも、あれ、普通に儲けないですよ。ただのクーデターに加担させられただけじゃないですか」
「酔ってません。これは明々白々ですね」
「今まで損しかしてないでしょ。いくら注ぎ込みました?」
「あー、やっちゃいましたねー。今すぐ損切りをなさって下さい」
「閣下のOBとOGはお任せ下さい。インプラント素体は何かと必要ですから。なんとか出来るとは思います」
EDFをやめて個人資産でやろうとすれば不死化インプラントは莫大な資金がかかる。
つまり、シャロンみたいに永久に金か国に奉仕しなければ、死が待っている。
「はい。総帥にEDGFの命運がかかってますね。はは」
「では、失礼しまーす~。どうもー」
EDGFの気合の入った軍人でも、不死化インプラント入れない。
倫理的にも精神衛生上にもやばいのである。
EDSFは
大統領に会いに行ったり、書類を整理していると時刻はお昼である。
シャロン准将は書類を片付けると、コンビニで買ったツナマヨと好物のカップハルサメを取り出した。
シャロン准将は、ぼーっと給湯室のお湯を入れて戻ってくる。
シャロン准将の隣でメガネ大尉がお弁当を食べていた。
「大尉のお弁当はキレイね、自分で作ったの?」
メガネ大尉とシャロン准将はお昼時間で話をする仲である。
「うん。そうそう。料理が趣味~」
「料理が上手だね」
「ありがとう。でも、シャロンさんは相変わらず少食ー」
「今日は、晩ごはん食べそこなったからガッツリだけどね」
「それで足りるんですかー?」
「足るを知るが癖になってるから大丈夫」
「よかったら。これ味きいてみて下さい」
メガネ大尉あっちの生まれか。メガネ大尉は唐揚げを一つお弁当の蓋に乗せてくれた。
「いいの~? ありがとう、ありがとう」
「おいしい。えへへ。大尉お菓子好きだよね?」
「シャロンさんのお菓子美味しいです。冷蔵庫からいつも貰ってます」
「近くでタルトフリュイの美味しいトコを見つけたんだけど、今度、一緒に行かない?」
「いいですね~」
「そういえば、今日は、中尉もお昼に行っていないんだね。珍しい」
「お弁当を持って来てないんかな? 奥さんと喧嘩したんですかね」
ああ…まあ、奥さんの不倫が発覚したんだろ。あの人好きそうだったからな。シャロン准将は、写真のイケメン中尉の妻を思い出していた。
「最近、給料が上がったのに手取りが減りまして…」
「分かる。控除がなくなると逆にね…」
一人暮らしだとさらに早くから手取りが減る。そろそろ、午後の始業時間だった。
「さてー、時間だぁ~」
シャロン准将は背筋を伸ばす。
ビニールくずを給湯室で洗ってきて、ビニール袋にまとめるとゴミ箱に捨てる。
上席補佐官が大統領閣下からの電話を出る。
「シャロンくん。閣下から電話だ」
「お電話変わりました。何か御用でしょうか」
シャロン准将の胸に鈍痛が走った。
「…はい。仰るとおりです…」
動悸がものすごく痛い。シャロン准将の息が続かない。
「では、それを官邸の調理スタッフにお伝え下さい…
電話を急いで切ると、フラフラとお手洗いに向かった。
査察なんかで、人が少ないことが助かった。
お手洗いの鍵を掛けると力なくへたり込んで、しばらく、顔を歪めてボーっとしていた。
「いたた…」
おかしいな。不死化してるんだけど。しばらくすると鈍痛は収まった。
「はぁ…。この間からなんなんだろ。…嫌だな」
ハンカチを口に挟み、サラサラと細い手を洗うとお手洗いから出る。
「別に、健康診断でおかしいことなかったんだけどな。体重も標準体重まで増えてるし」
さっきの大統領のパンのジャムが不味いって、もしかして政界スラングなのか。まあいいや。シャロンは、コホン。軽くと咳払いをしたお手洗いを出る。
それから、ずーっと集中して業務をしていた。
終業時間になり、周りが帰り支度を始める。
今日はメガネ大尉が定時を過ぎても仕事をしている。
「大尉。今やってるのロジスティックス改定案件だよね。あと引き継ぐから帰っていいよ」
「え、しかし」
シャロン准将は、残業しても残業代は出ない。
「我、独身貴族ぞ?」
あなたは小さい子いるでしょ。と暗に伝える。
「ありがとうございます。助かります」
シャロン准将はカタカタと自席で作業を続けた。
月曜日のメガネ大尉のための稟議書も作っていたら、もう11時だ。かなり遅くなった。
流石に眠たい。切りもいいしさすがに帰ろう。制服からスーツへと着替える。
今まで着ていた制服をガーメントバックに仕舞った。
なんで、気持ちが落ち込むんだろ。ストレスがあるわけじゃないのに。シャロン准将は地下鉄の駅へと向かう。