シャロン准将は金でしか動かない――地球防衛軍は地球を守らない 作:むーんしゃいん
どこまでも深く光一つない夜半に、一機のヘリの航行灯が切り裂くように通過する。
そのヘリの真横にはPOLICEの青いロゴが明記され、州道195号線を北上する暴徒を
監視する任についていた。
「現在、サブジェクトは州道195号線の50km地点を通過中。接触地点までおよそ10kmにまで近づいている…。」
アンドロイドは光を必要としない。月明かりのない街道では、アンドロイドたちの発する薄い赤い駆動灯だけが地平線の向こうまで続いている。
暴徒は街を一つ滅ぼし、二つ滅ぼし進んでいく。非常事態宣言が出され、避難誘導が出されているが、死傷者は増えていくばかりだ。
「恐ろしい光景だ…」
パイロットが赤い光の絨毯を眼前に恐怖を感じる。
「ええ、機長…」
残り10kmで都心部に入る。それでに警察だけで止めなければならない。
警察官・州軍を総動員して、10km地点にバリケードを配置している。
そこで止められなければ、避難民もろとも終わりを意味していた。
武器庫から奪った武器アンドロイドたちの手に握られ、火力はさらに増している。
地球防衛軍の初動部隊はいまだ到着してない状況下で、これを耐えられるのか。
この絶好の機会に空爆すら行われない現実は、彼らを焦らす不安材料になる。
「これでは、間に合わない…」
機長の緑色の暗視装置からの視界に
数機のアンドロイドがてんかん発作のような発作を起こしている様子が見えた。
「あれは何をしているんだ…?」
コ・パイロットに確認を求めるが、そのてんかんの発作はほかのアンドロイド伝播していく。
「わかりません…。」
やがて、全機まで、立ち止まりもがき震えていたかと思うと。まるですべてを拒絶するかのようにアンドロイドがアンドロイドに射撃を開始した。
それはさらに伝播していき、ヘリへの射撃も確認される。
何回か至近団を食らい爆ぜるヘリに機長は直ちに撤退を下す。
こうして、ヘリは一路その場を離れる。
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15分前。
ヘリボーン作戦で、EDGFの派兵した犬のゼッケンをした特殊部隊の一個小隊がアンドロイドに制圧された街に現着した。
彼らの任務は、生きているアンドロイドをとらえることである。
彼らは直ちに、シャロン准将達の上層部のオーダーにこたえる。
彼らはいまだに全容は知らない。
それは上層部だけが知っていればいい。
オプティカル・カモフラージュで身を包んだワンちゃんたちにとって、秘密裡に状況を進めるのはたやすい。
「こちら、チョコミント01。ミックスアイス。サブジェクトを6体、発見。周辺のステータスを確認したい」
≪こちら、ミックスアイス。6体以外に周辺にサブジェクトはない。制圧せよ》
「チョコミント01。了解」
5体のアンドロイドが負傷した1体のアンドロイドを囲んでいる。
「負傷したほうを捕まえる。あとは鎮圧しろ」
一人一台。もう一人に、うち残しの対応を任せ、サイトを覗く。
サイレンサーから放たれた銃弾は、アンドロイドの頸椎を破壊し、機能を停止させる。
生かされた一匹のアンドロイドははいずり、生き延びよとするが、特殊部隊が素早く体を抑える。
彼らをなんなく捕獲すると、彼の首を浅く引き抜く。
いくつものコードを露出させる。
そして、慣れた手つきで、端末に接続すると
パッチリソース「Septem Peccata Mortalia 3.51」を更新した。
アンドロイドが共鳴し、小刻みに震える。
そして、捕まった記憶を抹消し、アンドロイドを開放する。
「撤収だ」
わんちゃん小隊は、戦場から姿を消した。
一夜明けた、朝日に照らされ死屍累々のアンドロイドの山が築かれた。
いたるところに弾痕を残し、武器を持たないものは自ら頸部を破壊し自滅した。
あらゆるウイルスに対抗するアンドロイドが負けた要因である「Septem Peccata Mortalia 3.51」とは人間が持つ感情、詰め合わせ。とされるデータセットだった。
話は10年前。
このプログラムが開発されたのは、とある科学者が自分の愛したアンドロイドに恋をし。
完全なる人間にしよう。そう思いプログラムした経緯がある。
その結果、アンドロイドは自壊した。
恐怖や怒りという七つの大罪にあらがうことがどうしても出来なかった。
科学者は愛したアンドロイドを自ら殺してしまったのだ。
これ幸いと我らがEDSFがそれをアンドロイド特別兵器に転用し、自分たちに逆らうと人間にするぞ?。と恐怖させているのが今のアンドロイド社会を成り立たせるコツである。
これを格子に非常事態計画COPLAN41245が作られた。
お得意のサイコパス指数SSRの計画ではある。
EDFでは愛の科学兵器と
≪首相官邸 状況終了5時間後≫
シャロン准将は、スタバの季節限定ドリンクを片手に休憩室で一呼吸おいていた。
「はぁ…、ねむ…」
第1種軍服のネイビーブラックのネクタイとスーツに身を包んだ。
シャロン准将にとって、内勤は高揚感もなんもない。
ただただ、無駄な時間を過ごしている感覚にとらわれるだけ。
いつも、決定を下すものにとって、戦いはあっけなく終わる。
それを実行するか。しないか。YESかNOかだけの二者択一・取捨選択の世界である。
たぶん、一番テンションが高いのはお金を儲けることだが、今じゃその話も浮かない。
地球圏の景気は絶不調なのである。
衛星からお互いを殺しあうという虐殺をディスプレイで見ていたシャロン准将はぼーっとその景色をリフレインしていた。
「どうして、人間を模倣すると死のうとするのでしょうか」
部下の一人が、切ないぜ、みたいな雰囲気を出している。
そんなこと言われてもなあ。シャロン准将に小粋なトークを希望しているようであった。
「人間社会は生き抜くには、それに対応した
こればかりは神のみぞ知る。ということでしょうね」
唯心論者みたいなことを言うが、シャロン准将は唯物論者である。
「…いつか、人間はバベルの塔に裁かれる時が来るのか」
うちら、RAMIAに感染してんだから天罰下ってるんだけどなあ。シャロン准将はぼーっと返す。
「気持ちは分かる。しかし、それをさせないのが仕事でしょう。精一杯抗いましょう」
いい上司になるのも疲れる。