こちら31Hホロックス! ぷらすみこにぇ! 作:たかしクランベリー
━━▶︎ DAY2 17:30
ナービィ広場。
祭事の疲れが取れると思い、
広場のベンチに腰をかけ緑茶を飲むが。
未だ心は休まらない。
(騒々しい1日だったでござるな……。)
こういう時は、ジムで
筋トレしてスッキリするに限る。
「そこのお弟子さん。少しいいですか。」
「風真でござるか?」
「その通りです。」
お師殿、今日は何かと真剣な顔付きだ。
「今日一日、武術祭を見せて頂きました。
剣術に必要な心技体のうち、
技と体は申し分ありませんでした。
わたしの弟子となるに足るモノと
言えます。」
成り行きでなっただけなのに、
勝手に足る足らないの物差しで
測られても……反応に困る。
「ですが、
あなたには『心』が欠けています。」
「欠けている……? 風真が。」
「さて風真さん。
改めて反省会を始めしましょう。」
反省会?
ミッション中に
ゲームセンター寄った事は
確かに戦犯でござるが……
アレは連帯責任みたいなモノだし。
風真1人が非難されるような
事柄じゃない気が。
――と、とやかく考えてもダメだ。
何が悪かったのか、
自身が客観的に立ったつもりで見ても。
見落とす事はいくらでもある。
聞いてみよう。
「……反省会。
分かったでござる。」
「素直なお弟子で助かります。
どうやらあなたは、
何事も見つめ直す姿勢。
その大切さをご存知のようですね。」
早よ反省会して欲しいでござる。
「風真いろはさん。
あなたの剣には『迷い』が見えます。
今一度己の過去を振り返り、
剣の在り方を再確認してみて下さい。」
「その過去というのは、
今日の武術祭の事でござるか?」
お師殿は首を横に振った。
「違います。あなたが
今すべきなのは直近の出来事を
反省することじゃありません。
"人生そのもの"の反省です。」
キィンっ!!
「……はっ!?」
手に重みを感じた。
意識よりも先に、身体が動いた。
刹那に耳にした剣戟の甲高い音。
手に握られたチャキ丸が、地面に落ちる。
「違う……風真は…………。」
目の前にいる師は、
受け身に用いた刀身を鞘に納め。
こちらに向き直る。
「やはり、わたしの推測は
合っていたようですね。
それがあなたの本心です。」
「違うッ! 風真は
『咎人』なんかじゃぁあないッ!!」
「……咎人?
そういえばあなた、
部隊長さんから直々に聞きましたが
侵略組織の立派な一員らしいですね。
それと関係のある事ですか?」
「……それは。」
(あの総帥め……口が軽すぎでござる。)
「黙り込んでいても
何も始まりませんよ。
正直に話してみてください。
己の心に引っかかっている過去を……
あなたのような優しい人が、
我を忘れる程に呪う人生を。」
話すと、何か変わるのだろうか。
粘りつくように突っかかって、
何度も蘇ってくるこの気色悪い現象も。
消えてくれるのでござろうか。
「風真には、曾々々々々祖父の
大伍郎お爺ちゃんが居たでござる。」
「天寿を全うしたのですね。」
「違うでござる。2年前まで元気に
仕事してたでござるよ。」
「待ってください。あなた達
宇宙人の寿命バグってません?」
「風真は、心の奥底でまだ後悔し
続けてるのかもしれないでござる。
ずっとそばに居てやれば、
お爺ちゃんは死なずに済んだん
じゃないかって――」
「あ、これそのまま進む流れなんですね。
ではわたしにも、師匠として
改めて言わせてください。」
「………………。」
「――風真いろはさん。
あなたの剣には『迷い』が見えます。
今一度己の過去を振り返り、
剣の在り方を再確認してみて下さい。」
そっか……最近、
剣が思うように振れなかったのも
風真自身が
『迷って』いるからでござるか。
今こうして自分が
生きている事は正しいのか。
……ラプ殿の示してくれた道を、
今になって疑うようになった。
何をトリガーに、
そんな疑念が生まれたのかは分からない。
お師殿の言う通り。
剣の在り方を過去から見直せば、
何か分かるかもしれない。
「話すと長くなりそうでござる。
それでもいいでござるか?」
「構いません。
可愛いお弟子さんの為とあれば、
どんな些細な事でも
最後まで付き合います。
それが、師匠というモノですから。」
「分かったでござる。」
*
━━▶︎ 2年前、ジャキンジャキン星。
――風真家邸宅。
カンッ……カンッカンッ!
風真の朝は、鍛刀場から響く
鍛錬の音で始まる。
自分にとっては
それがいつもの目覚ましで、
大好きな音だった。
起きたら洗顔やデンタルケアなどの
朝の支度済ませ。
朝食よりも先に、鍛刀場に足を運ぶ。
物心ついた時からやっている
モーニングルーティンのようなモノで。
大伍郎お爺ちゃんは無愛想ながらも、
毎朝風真に声をかけてくれる。
打つ音は止まらず、正確なまま。
「……いろは。今日も懲りずに来たか。
暑くて煩いだけのに、よく飽きないな。」
カンッ、カンッ。
暑くて煩い。
それでも良かった。
蘇比色に火照り輝く鋼は、
夏夜の河川を彩る蛍のように美しくて。
洗練された鍛錬の音は、
渓流のせせらぎを
聴いてるかのように心地が良い。
何より。
刀工に真剣で一途なお爺ちゃんの
背中を見るのが……大好きだった。
「今日も、見せてくれて
ありがとうでござる。」
「邪魔にならなければ別にいい。
何事も程々にな。」
「OKでござる!」
いつもの短めで
他愛無い会話を交わし、
鍛刀場から台所へ移動する。
普段なら母上が
包丁でサクサクと野菜を切っているが、
今日は居ない。
というのも。
風真家の面々は外惑星へ
旅行しに行ってるからだ。
本当は家族全員で
行く予定だったけど、
大伍郎お爺ちゃんが
外せない仕事を
請け負ったらしく、残る事になった。
風真はお爺ちゃん1人残す訳にも
いかないので、厚意で在宅を選んだ。
パカッ……。
「冷蔵庫の中の野菜は、
これだけでござるか。
近々買出しに
行った方が良いでござるな。」
取り出した野菜たちをキッチンに並べ、
エプロンを着て
朝食作りに取り掛かる。
「食べにくい野菜の部分は
荒微塵切りで端材にして……
つみれ汁の
肉ダネに練り込むでござる。」
ザクザク、ザクっ。ねりねりっ……。
朝食の献立は大凡決まってる。
シンプルな塩おむすびに、副菜、汁物。
ここで問題になるのは、
食べやすい形にカットされた
野菜たちをどう調理するかだ。
(うーむ、何にすべきでござろうか。)
▶︎ゴマの和え物
▶︎酢の物
▶︎野菜のソテー
「よし!
ゴマの和え物にするでござる!」
ここを
こうこうああして盛って……
「――出来たでござる!
風真家流朝食セット・一の陣っ!」
って、はしゃいでる場合じゃない。
大伍郎お爺ちゃんがちゃぶ台の前で
待ってるかもしれないでござる。
お盆に乗せて運ぼう。
……コトッ。
「お爺ちゃん。出来たでござるよ。」
「……おお、今日も良い出来じゃないか。
いろは、お前が居てくれて本当助かるよ。」
「風真は、お爺ちゃんに
健康でいて欲しいのでござる。
仕事は健康第一だって
風真に教えてくれたのは、
お爺ちゃんでござるよ。」
「そうだったな…………。」
「風真、自分の分
持ってくるでござるよ。」
「ああ。わしは待っとるぞ。」
……コトッ。
自分の分の食事と、
茶を淹れた急須を卓上へ置いた。
湯呑みは事前に置いてある。
卓を静かに眺めるお爺ちゃんを
一瞥し、急須の口からチョロチョロと
湯呑みに茶を注ぐ。
両者の湯呑みに翠の水面が
程よく満ちると……
外庭の鹿威しが、
始めの合図をカンと鳴らした。
「モノは出揃ったな。
それじゃあ、始めるか。」
お互いに両の手を平にして繋げる。
「「――頂きます!!」」
もぐもぐと静かに食卓は進み。
美味しい食事の時間は、
あっという間に終盤に差し掛かる。
大伍郎お爺ちゃんは
口につけてた湯呑みを卓に置き、
こちらを向いた。
「大伍郎お爺ちゃん。
どうかしたでござるか?」
「ちょっとしたお話がしたい。
いいか……いろは。」
お爺ちゃんから話を
振ってくるなんて珍しい。
寡黙なイメージが
家族でも定着していたというのに。
「何の話でござるか。」
「お前が長い鍛錬の末、
身につけた風真流剣刀術についてだ。」
「風真流……剣刀術?」
どうも、たかしクランベリーです。
公式1・5周年配信、最高でした。
突然ですが、お知らせです。
次回から、風真いろはの過去回想話が
連続して……ヘブバンどこ? って
なっちゃいます。
(※補填として、月歌×holoXのオマケ
コーナーを後書きに設ける予定です。)
週一待たされて、
いろはの過去回だけ見させられたら
辟易すると思いますので、
投稿頻度をなるべく上げます。
よろしくお願いします。