こちら31Hホロックス! ぷらすみこにぇ!   作:たかしクランベリー   

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14話・Scapegoat

 

もぐもぐと静かに食卓は進み。

美味しい食事の時間は、

あっという間に終盤に差し掛かる。

 

大伍郎お爺ちゃんは

口につけてた湯呑みを卓に置き、

こちらを向いた。

 

「大伍郎お爺ちゃん。

どうかしたでござるか?」

 

「ちょっとしたお話がしたい。

いいか……いろは。」

 

お爺ちゃんから話を

振ってくるなんて珍しい。

寡黙なイメージが

家族でも定着していたというのに。

 

「何の話でござるか。」

「お前が長い鍛錬の末

身につけた風真流剣刀術についてだ。」

 

「風真流……剣刀術?」

 

「そうだ。お前も侍として

独り立ちする時が近い。

こういう時こそ、

己の振るう剣技を

深く識る必要がある。」

 

「………………。」

 

「風真流剣刀術には

12の剣技があるのを知っているな。」

 

忘れるはずもない。

血の滲むような鍛錬で

身に付けた剣技の数々。

 

その意味を求めるよりも先、

ひたすら鍛えて

習得することが優先されていた。

 

「何故12もあるのか。

己で考えた事はないか?」

「……ないでござる。」

 

「――『花札』だ。

この剣技は初代が子供でも

楽しめ、立派な侍へ成長出来るよう……

試行錯誤を繰り返し

編み出された"遺産"なのじゃよ。」

 

「花札で、ござるか。」

 

「ああ。いろは、

お前が好んで使っている

『藤波』という剣技もだ。

あれは卯月を意味する絵札、 

『藤に不如帰』から由来している。」

 

「それを説明して

何になるのでござるか?」

「結論を早めるな。

答えというのは己で見つけるモノだ。」

 

「………………。」

 

所々頑固でござるなぁ。

 

「花札を基盤に生み出した剣術故、

役を揃えれば揃える程に

強くなるよう設計されておる。

そこで出てくるのが……」

 

「――『泉穴の開門』でござるよな。

風真流剣刀術を使うと、

内気功が活性化して

特殊な経穴が覚醒する……

で、あってるでござるか。」

 

「その通りだ。開門・滓十、

開門・種伍、開門・短伍、

開門・赤短、開門・青短、

開門・花見酒、開門・月見酒。

……の計7種。」

 

「……ん?」

 

7種? 

風真の記憶が正しければ、

花札の役はもっとあるはず…………。

 

いや。

そもそも『それ』がなければ、

ゲームとして成り立たない。

 

「その様子だと、気が付いたようじゃな。

――光札の役が『無い』ことに。」

 

「どうして……」

 

「勿論、光札の役となる開門は存在する。

じゃが、各風真道場に

それを記した巻き物は無い。

否、その巻き物を増版しない

明確な理由があるのじゃ。」

 

「それって――」

 

「うむ。お前の想像通り、

それは身体に大きな反動を及ぼす。

果てには、死さえも齎らす。

故に、我が家に一つだけ、

厳重に管理されているのじゃ。」

 

そんな危険な代物が、我が家に。

 

「食卓が片付いたら

ワシの稽古に付き合え。

風真流の"全て"を見せてやる。」

 

「……分かったでござる。」

 

食事を済ませ。

食器片付けやデンタルケアをし、

稽古道着へと着替える。

 

続けて頬を

両の手でビシッと叩き、

心と息を整える。

 

(よし……行くでござるよ!)

 

稽古場へ入ると、

先に食卓からあがった

大伍郎お爺ちゃんが竹刀を振っていた。

 

風真の気配を感じたのか、

すぐにその手を止め。

身体をこちらに向ける。

 

「来たか……いろは。」

「…………。」

 

「安心しろ。向かい合って話せるよう

座布団は用意してある。

まずはそこに座ってくれ。」

 

指示通り、座布団の上で正座をする。

お爺ちゃんは目の前に立ったままだ。

 

「『泉穴の開門』の中でも、

その存在が秘匿されている『光札の役』。

発動するとどうなるのか。

それはな、聞くよりも見る方が良い。

先に竹刀で

12の剣技を打っておいたしな。」

 

「…………。」

 

「――開門・三光」

 

言ってお爺ちゃんは経穴を刺激した。

すると、他の開門では見られない

変化が身体に起きた。

 

他の開門は額に

一本線の紋様が順に7つまで

浮かび上がるだけなのだが。

 

それはまるで毛色が違った。

 

右半身の皮膚全てに、

観世水柄の紋様が淡い光を帯びて

浮かび上がる。

 

蒼くて異質な……紋様。

 

「……これが、光札の役・開門。

圧巻でござる。

これより先があるなんて、

信じられないでござるよ。」

 

「ああ。あるにはあるが……

三光より先は更に強力な分、

大きな代償が付き纏う。

ここからは巻き物の内容も含めて

説明してやる。」

 

三光を解除したお爺ちゃんが、

正面の座布団に正座して

巻き物を広げる。

 

そこに記されていたのは、

光札の開門に関する代償と

容貌の変化だった。

 

――"三光は蒼く光る。

四光は紫に光る。

雨四光は銀色に光り輝く。

 

五光は命の根源を解き放つ黄金色。

故に、一度きりの神の御技。

 

絶大な力と引き換えに、

使用せし者の生命力は底を尽き。

誇り高き亡者へと成るだろう。"――

 

「何でござるか……これ。」

 

「分かったかいろはよ。

初代様が当家にこれを封印した理由は、

そういう事じゃ。

この技は『流通』してはならない。

及ぼす力と代償、

その両方の恐ろしさ故にな。」

 

「なら、どうして風真に。」

 

「いずれ当主となるお前には、

これを背負う必要がある。

そして、体得する必要があるのじゃ。

お前の父が、そうであったように。」

 

父上も使えるなんて、

知らなかったでござる。

 

「いろは。

お前の優れた戦闘センスであれば、

数十分で体得出来る筈じゃ。

……やるぞ。」

 

風真家としての責任。

背負えるかどうかなんて分からない。

でも、やらなければダメだ。

 

この恐ろしい書物を世に広げない為に。

――力をつける。

 

風真が守り通せる侍にならなきゃ、

先祖が守ってきたものを無駄にしてしまう。

 

「指導、お願いしますでござる。」

 

 

……………………。

 

 

…………。

 

 

 

「――ふぅ、どうでござるか。」

「……上出来だ。

よく頑張ったな。いろは。」

 

「大伍郎お爺ちゃんが

丁寧に指導してくれたからで

ござる。風真は、

まだまだ一人前の侍とは

程遠い……未熟者でござる。」

 

素直に認められるのが

こそばゆくて、思わず謙遜してしまう。

 

それでもお爺ちゃんは、

笑顔を絶やさなかった。

 

「気にするな。侍というのは

心の有り様じゃ。

刀の腕っ節が全てじゃない。

いずれお前も分かる日が来るぞ。」

 

「それは、どういう意味でござるか?」

 

「それはな、自分で

見つけなければ意味がない。

もし見つけられたなら、

お前はもう……立派な侍だ。」

 

「左様でござるか……。」

 

「さて、重たい話はここまでにするか。

教えられる事は教えた。

ワシはそろそろ仕事に戻る。

いろはよ、

お前はお前の好きなように過ごせ。」

 

言ってお爺ちゃんは、

巻き物を回収しのっそりと

立ち上がって道場から去っていった。  

 

(侍……心の有り様。)

 

何を伝えたかったのか。

自分には難しすぎて、よく分からなかった。

 

きっと、鍛錬が足りないのでござろう。

 

もっと鍛錬すれば、

父上や大伍郎お爺ちゃんのような

侍の境地に至れる。

 

鍛錬により勤しんで、

その手掛かりを掴んでいく他ない。

 

(難しい考えをするのは

やめでござる。

今は鍛錬に励むのが

一番の近道でござるよ……。)

 

風真も立ち上がり、

横に置かれた竹刀を数回振った。

 

「ふっ……はっ! はっ!」

 

空を斬る音が何回か木霊し、

草木の揺れる音だけが残る。

 

振ってみて思ったのは。

 

「まだ……掴めないでござる。 

やはり、

そう簡単にはいかないでござるか。」

 

何も得られない悔しい気持ちに

モヤモヤしながら、竹刀と道着を片付ける。

 

そんな中、

ふと朝の冷蔵庫が寂しい中身だった

事を思い出す。

 

「心を切り替えて、食材の買い出しでも

行ってくるでござるか!」

 

有耶無耶な心を

誤魔化すように独り言を言い、

風真は買い出しへと動き出した。

 

露店の並ぶ賑わった商店街。

 

そこでいつも世話になってる

八百屋さんへ足を運ぶと、

店主のおばちゃんが明るい笑みを

向けて手を振ってくれた。

 

「やぁーいろはちゃん、

今日も買い出し頑張ってんねぇ!

あたい、

今日は特別に全野菜マイナス

100スペースドル負けてやるよ!

さぁ買った買ったぁ!!」

 

いつも通りの、ユニークな店主だ。

何気ない日常って感じがして、

凄く落ち着く。

 

「あら、どうしたんだい? 

いろはちゃん。」

 

「な、なんでも無いでござる!」

「そうかい。

あたいの気のせいって訳だね。

で、今日はどんな野菜を買うんだい?」

 

風真は事前にリスト化しておいた

野菜たちを次々と注文した。

 

「――毎度ありいっ!」

 

欲しい野菜も全部買い揃えた。

後は風真家邸宅に帰宅して、

夕食の支度をするだけ。

 

自炊をして、家族と夕ご飯を食べる。

修行、座学、入浴、デンタルケア、就寝。

 

変わらないけど、小さな幸せが詰まった

平和な日常が……

風真には待ってる筈だった。

 

「……え?」

 

帰宅して早々に、訳が分からなかった。

 

あまりの異常事態に

脳がついて行けず、取っ手を

握ってた買い物袋も無造作に落下する。

 

大空星警が

邸宅に張り巡らせたであろう

『KEEP OUT』の黄色いテープ。

 

そして。

周辺を囲うように停車し、

サイレンを鳴らす多くの星警馬車。

 

言葉すら出なかった。

 

「――お初にお目に掛かります。

風真・いろは様。」

 

突如として現れた気配に振り返ると、

黒服の男が風真の右手首を掴み上げた。

 

「――ッ!?」

 

「風真・いろは様。

貴女は風真・大伍郎暗殺の

主犯として、現時刻を以てこの私。

警視正の黒野・右京が、

現行犯逮捕します。」

 

 





【月歌とholoXのおまけバスタイム】

(※本編にヘブバンキャラが出ない為、
設けられたヘブバン専用コーナーです。)
(※軽い小話みたいな構成なので、
台本形式でお送りします。)

〜part1・総帥とルカ〜

月歌
「シュワシュワっ♪ シャワシャワっ♪」

ラプ様
「おい、何だそのアカペラは。」

月歌
「風呂に入るラプちゃんのテーマ。」

ラプ様
「勝手に変なテーマつけるなッ!
普通に要らんわ!」

月歌
「えー、ラプちゃん喜ぶと思ったのにぃー。
ま、いいや。」

ラプ様
「いや、少しは粘れよ。」

月歌
「やだよ面倒くさい。
あ、そういえば次回は久々に
ラプちゃん主役じゃん。
どう? なんか一言ある?」

ラプ様
「――刮目せよ。
吾輩からは以上だ。」

月歌
「痛タタタタタ……!!」

ラプ様
「イタくねぇし!!」
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