こちら31Hホロックス! ぷらすみこにぇ!   作:たかしクランベリー   

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16話・ それって素敵な物語だと思わない?

 

風真いろは現行犯逮捕から『7日後』。

 

彼女は留置所で数々の取調べを

黒野警視正から受け。

遂に監獄へとその身柄を明け渡された。

 

ジャキンジャキン星の誇る

大監獄『鬼樹琳』。

 

その最下層……最奥フロアにて、

風真いろはは囚人として

過ごす事になったのだ。

 

 

 

 

〜SIDE『風真・いろは』〜

 

風真は両腕に手錠をかけられ、

看守の見張り付きで

遥か下の階に連れてかれた。

 

「囚人番号0168。

ここが今日からお前が過ごす檻だ。」

 

手錠を解き、

手慣れた感じで扉を鍵で回し開けると……

すぐさま女看守は、

風真の背を蹴り飛ばし檻の中へ入れた。

 

ガシャンッ!

 

振り返るよりも早く、扉は閉じた。

 

地面に擦れた痛みと、

背を蹴られた痛みが

じんわりと残り……

信じ難い現実だけが風真に襲いかかる。

 

(それもこれも、

風真が大伍郎おじいちゃんを

守れなかった所為でござる…………。)

 

「こっ酷くやられたわね。アンタ。」

「――!?」

 

声の聞こえる方を向くと、

怪しげな雰囲気の女囚がそこに居た。

 

白と黒を左右半々で隔てた

独特のヘアスタイルに、

全てを見通しそうな梔子色の瞳。

 

肩に乗る小さな黒スライム。

 

一目で只者じゃないと分かる

オーラを放つ彼女は、

愛嬌を振り撒くように笑った。

 

「ふふっ、ごめんね。

脅かす気は無かったの。

同じ檻の中で過ごす者同士、

仲良くやっていきましょ。」

 

「………………。」

 

(ここは監獄なのに、どうしてこんな

人当たりの良い少女が

捕まってるのでござろう。)

 

「あぁ、ごめんごめん。

名前も知らない人と仲良くなんて

出来ないわよね。

アタシは"シオリ・ノヴェラ"。

ただの『収集家』よ。」

 

「ただの収集家が

何で捕まってるでござるか!?」

 

シオリ殿は首を横に振った。

 

「さぁね。アタシはただ知りたい事を

調べて追って……頭の中に詰めてる。

それしかしてないのに、

お前は『知りすぎた』とか言って

政府の方からとっ捕まえに来るんだもん。」

 

「それは災難でござるな。」

 

「ええ。アタシも

情報は誰のモノでもなく、

平等に得られて当然のモノだと思う。

だから、情報を持つ事は罪じゃない。

それを悪用しない限りはね。」

 

「シオリ殿は、悪用したんでござるか?」 

 

「しないしなーい。アタシは故意に

情報を悪用する趣味はないもの。」

 

持ってるだけで『罪』。

 

世の中というのは、

世知辛いものでござるな。

 

「それで、貴女の名前は?」

「風真いろはでござる。」

 

「……え?」

 

飄々としてた彼女が、

困惑気味に口を開けた。

 

「どうしたでござるか。」

 

口を閉じ、ゆっくりと瞬きすると。

シオリ殿は向き直った。

 

「何処かで見覚えのある顔だと思ったら、

そう言う事だったのね。

――"風真大伍郎・暗殺事件"の主犯……

改めて訊いていいかしら?」

 

「何でござるか。」

「本当に殺めたの?」

 

「……それは。」

「貴女の口から言えないんじゃ、

手荒な真似をする事になる。

それでもいいの……?」

 

「でもっ…………。」

 

どうして。

どうしてハッキリ言えないんでござるか。

風真の所為じゃないって。

 

ただ一言。

それを言えばいいだけなのに……

言葉が出てこない。

 

「もういいわ。

数分だけ我慢しなさい。」

 

シオリ殿が風真の右耳に向けて、

右手を横に薙ぐ。

 

「――『ノベライズ』。」 

 

(あ……れ? 

目の前の女の人はだれ?

あの緑のしおりは何だろう。

わたしは……だれだっけ。)

 

「ふんふん。成る程成る程。

アタシの知りたい事は

これで充分ね。

……貴女の記憶、お返しするわ。」

 

スッ。

 

緑のしおりが、

わたしのおでこの中に入ってく……

 

「やぁ、風真ちゃん。」

「あれっ、シオリ殿。

手を振ってどうしたでござるか。」

 

「特に深い意味はないわ。

やってみたかっただけ。

それにしてもアナタ、冤罪なのね。」

「え……何でそれを。」

 

「アタシの魔力『ノベライズ』は、

他者の記憶を『栞』に変えられるの。

その力で勝手に見させて貰ったわ。」

 

「なななっ、

風真の記憶全部でござるか!?」

「ええ……一部だけね。

余計な所は見てないから安心して。」

 

「そんなこと言われても

安心出来ないでござるよ!?」

「まっ、そーゆー事なんでよろ!」

 

あ、これそのまま押し通すパターンだ。

前言撤回。

やっぱこの子、とんでもない犯罪者です。

 

カンカンカンカンっ!

 

そうこう駄弁っていると、

監獄内にベルを叩いたような

金属音が鳴り響いた。

 

「ん? 何事でござるか。」

「あー、これはランチタイムだねぇ。」

 

ランチタイムでござるか。

丁度お腹も空いてきたし、

ナイスタイミングでござるな。

 

 

 

 

 

――大監獄『鬼樹琳』、食堂。

 

食堂にあるビュッフェコーナーでは、

既に囚人たちの行列が出来ていた。

風真たちもそれに続くようにして並ぶ。

 

食事の種類が豊富なカウンターを

なんとなく見ていると、

席で食事してる囚人グループが

此方をチラチラ見て会話していた。

 

「ねぇねぇ……あの金髪って

例の"親殺し"じゃない?」

「うわっ、マジじゃん。

あんな優しそうな顔してんのに、

裏では肉親を殺す事考えてたの?」

 

「「信じられな〜い!」」

 

アハハと嘲笑い、彼女らは見下す。

此処は監獄……世の中の邪悪が集う場。

多少の陰口が一つ二つ来る事は

覚悟していた。

 

でも、いざ言われると。

こんなにも……苦しい。

 

「ちょっと貴女たち、いい?」

 

気がつけば、風真と並んでいた

シオリ殿の姿がない。

 

「……え?」

 

囚人グループの一味が愕然とし始めた。

風真も驚いた。

 

彼女らの前に現れたのは、

シオリ殿だったのだから。

 

「貴女は……『禁書』ッ!

あたしらに何の用があるのっ!!」

 

「貴女たちは、一つ勘違いしてる。」

「勘違いですって?」

 

「風真いろはは

"親殺し"なんかじゃあない。

社長を暗殺するよう指示したのは

この"アタシ"。

それでもまだ彼女を愚弄するつもりなら、

アンタらを可愛い寄生虫ちゃん達の

温床にせざるを得ないけど、

……いいかしら?」

 

囚人グループ一同が、

怯えた表情で固まった。

そして……。

 

「――悪かったわ。」

 

「とことん反省しなさい。

アナタ達は、いつも通り

大人しくしてくれればいい。」

 

「「「「「………………。」」」」」

 

黙り込む一同に踵を返し、

シオリ殿が風真の所に戻ってきた。

 

「さ、気を取り直して

ランチタイムと行きましょ。」

「待つでござる。」

「……何?」

 

「どうして風真を庇う真似を

したんでござるか。

何一つメリットなんてないでござるのに。」

 

彼女は笑って答えた。

 

「アタシはね、メリットデメリットで

行動を決めるような

器の小さい子じゃないの。

アナタもそうでしょ?」

 

「…………分からないでござる。」

「いずれ分かるわ。

貴女は、とっても良い子だから。」

 

(風真が本当にいい子だったら……

こんな事にはならなかった。

もっと警戒しておけば…………。)

 

むにーっ!

 

「ちょっ……いらぁいでごじゃるぅ。」

 

両頬が、指で伸ばされた。

 

「いろはちゃーん。暗い顔はダメっ! 

折角のランチタイムなんだから、

明るい事を考えなさい!」

 

「わ、わがっだでごじゃるから、

離しゅでごじゃるぅぅう。」

「よろしいっ!」

 

パチンぃんっ!

 

伸ばされた頬が元に戻る勢いで、

更なる痛みが風真を襲う。

 

……このヒリヒリ感。

鏡を見なくとも、

腫れてるだろうことは分かる。

 

「痛たたぁっ……!」

 

「ごめんごめん。

アタシ手加減が下手なんだよねー。」

 

ご飯を盛った皿をを卓上に置き、

謝罪交じりにシオリ殿は着席した。

風真も続いて皿を置いて座る。

 

「良いでござるよ。

シオリ殿になんだかんだ助けられてる

部分もあるでござるし。」

「お互い様って奴ね。」

 

グサッ……むしゃむしゃ。

 

それにしても、監獄の食器は

独特でござるなぁ。

丸い形状の取っ手が2個あって、

挟んだら紙とかを切れそう…………

 

「――って待てェ!?」

「何?」

「それ、ハサミでござるよな?」

 

「そうよ。とても危険だけど、

信じられないくらい効率的よ。

……おすすめはしないわ。」

「おすすめされても

食器として使わないでござるよ!」

 

「ふふ、それもそうね。

――ねぇ、いろはちゃん。

アタシの仲間になって、脱獄してみない?」

 

突然、シオリ殿の表情が真剣になった。

 

「それって……」

 

「そのままの意味よ。

アタシには愉快な仲間が居るの。

音を操る魔人、宝石人間。双子の番犬。

きっと彼女達も

貴女を歓迎してくれるわ。」

 

「最初から、風真をスカウトする

つもりだったのでござるか?」

「いいえ、シンプルに

貴女を気に入っただけよ。

それ以外の理由はない。」

 

「…………。」

 

見えない。彼女の目的が……。

 

「アタシには『野望』があるの。

その為には、

様々な惑星を巡る必要がある。」

「…………。」

 

「各惑星が築いた多種多様な文化や

情報に触れて、

縹渺とした世界そのものを楽しむ。

――それって素敵な物語だと思わない?」

 

風真はその時、何も答えられなかった。

 

彼女はゆっくり考えていいと

言っていたけれど。

……何かが引っかかって、答えが出せない。

 

頭に靄が絡まって、何も見えない。

未来の希望も……何もかも。

 

そんな悶々とした思いを抱えたまま。

1日は刻一刻と過ぎ去り。

 

気付けば定位置の檻で、

消灯の時間を迎えていた。

 

「いろはちゃん、もう寝る時間よ。」

「知ってるでござる……。」

 

暗がりととなった監獄の中で、

風真は眠りについた。

 

 

……………………。

 

 

…………。

 

(……ここは、面会室?)

 

面会室の窓越しには、

ネクタイを整える警視正の姿があった。

 

「さて、風真いろは様。

遠く遥々からお越しになった

温かい家族との――"最後の面談機会"です。

ごゆっくりお楽しみください。」

 

男はご満悦な表情でそういうと、

静かに退室した。

 

その入れ替わりで、

弟が面会室へ入室する。

とても怯えた表情で風真を見ながら、

対面で着席した。

 

そして……

震えた声で、風真に問い掛ける。

 

「姉ちゃん。答えてよ。

本当に大伍郎おじいちゃんを

『殺めた』の?」

 

「…………。」

 

何も答えられなかった。

 

(どうして……風真はっ、風真はっ…………)

 

「――はあっ、はあっ……。」

 

「いろはちゃん?」

「……シオリ殿。」

 

どうやら、飛び起きてしまったようだ。

容態を心配されるほどに、

具合の悪い顔をしているのでござろう。

 

「貴女、悪夢に魘されてたわ。」

 

(風真が……うなされてた?)

 

「悪夢なんかじゃないでござる。

あの夢は、実際にあった過去……

"一昨日の出来事"でござる。」

 

「――そう。」

 

上体を起こした風真を、

シオリ殿が優しく抱いた。

 

「大丈夫、アタシが……

アタシ達が必ず"脱獄"させてあげる。」

 





【月歌とholoXのおまけバスタイム】

(※本編にヘブバンキャラが出ない為、
設けられたヘブバン専用コーナーです。)
(※軽い小話みたいな構成なので、
台本形式でお送りします。)


〜part3・総帥とルカ②〜

月歌「ねぇねぇラプちゃん。」

ラプ様「何だ?」

月歌
「きょうだとかひょうびょうとか……
かいきょ、とうじょって何?
みゃーさんって先輩隊員と会話するとさ、
時々難しい言葉使ってきて
話が噛み合わないんだよね。」

ラプ様
「"怯懦"、"縹渺"、
それと"開渠"、"倒叙"な。
なんでそんな言葉の意味を吾輩に訊く?
もっと当たれそうな奴割と居ただろ。」

月歌
「ラプちゃん厨二病だから、
難しい言葉に詳しいのかなと。」

ラプ様
「知ってはいるが、
カチンと来たから教えん。
それに貴様、
沙花叉の奴から聞いたが……
作詞家やってたらしいじゃねェか。
作詞家ってのは、
色んな言葉やその意味、
言い回しを知ってないと
成り立たんだろ。」

月歌
「うん。やってたよ。
あたし、持ち前のセンスで
やってのけるタイプだからさ。
今は31Aのみんなで作詞してるけどね。」

ラプ様
「それはいいな。
まぁ、吾輩から一言助言するなら……
辞書を沢山引け。貴様の作詞能力にも
磨きが掛かるだろうし、
トークレベルの成長も見込めるぞ。
それに……貴様の知らない熟語たちも、
絶対載ってるしな。」

月歌
「……あんがとさん。
31Hのみんながラプちゃんを
リーダーとして尊敬してる理由、
なんとなく分かった気がするよ。」

ラプ様
「お? 今日はやけに素直じゃんか。」

月歌
「素直になりたい気分なのさ。」

ラプ様
「じゃあ、
厨二病呼ばわりした事謝れよ。」

月歌
「ふーっ、いっちょ上がりますか。」

ラプ様
「ちょっ、待って!?
吾輩への謝罪は!? おぉーーいっ!」

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