こちら31Hホロックス! ぷらすみこにぇ!   作:たかしクランベリー   

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17話・救いの手

 

風真いろは現行犯逮捕から『11日後』。

 

こんな地下だというのに、

小鳥の囀りが鼓膜を撫でるように

意識を起こす。

 

しかしそれも、

ほんの僅かな気休めに過ぎなかった。

 

カンカンカンカンっ!

 

「この音は何でござるか!?」

 

「朝礼よ。小鳥の囀りみたいな前奏が

あったでしょ。アレが合図なの。

日によって前奏が変わるから

分かりづらいのよね。」

 

あれ、人工的なモノだったんだ。

日替わりにしても、

この前奏考えた人は悪趣味でござるな。

 

ダダダッ、ダダダ……!!

 

看守達が素早い足音を立てて

ゾロゾロとやって来る。

 

朝礼というには、

あまりにも不気味な光景だった。

 

「本当に、ただの朝礼でござるよな?」

 

念の為、

シオリ殿に再度確認をとってみる。

すると彼女は、驚いたような顔を

して冷や汗を垂らした。

 

「いや……ただの朝礼にしては

様子が可笑しい。

いろはちゃんも、この数日の中で

こんな朝礼してないでしょ…………。」

 

そう言われれば、そうだ。

 

と、何か嫌な感じを覚えたその時。

看守が口を開いた。

 

「――囚人番号0168ッ!

貴様をこれより、

『裁きの日輪塔』へ連行する!

これは政府の決定事項だ! いいなッ!」

 

「馬鹿なッ……早すぎる!

何が起こってるというの!!」

 

「黙れ『禁書』! 

貴様がそれを知る必要は無いッ!」

「………………。」

 

(遂に、この時が来たでござるか。)

 

「心配ないでござるよシオリ殿。

遅かれ早かれ。

風真はいつかこうなるって、

知ってたでござる。

風真は、最後にシオリ殿のような

優しい人と逢えて……

幸せ者だったでござるよ。」

 

「これ以上の私語は許さん。

大人しく連行されろ。囚人番号0168。」

「……了解でござる。」

 

どうしてだろう。

これから死に直面するというのに、

不思議と恐怖を感じない。

 

風真は……受け入れてるんでござろうか。

ありもしない罪を。

 

ううん。違う。

やっぱり罪なんだ。

そばでお爺ちゃんの身を 

守る事を怠った罰…………。

 

もし他界して、

大伍郎おじいちゃんと会えたら。

面と向かって謝りたい。

 

 

 

 

――処刑塔『裁きの日輪塔』。

 

風真は巨大な馬車で数時間運ばれ、

塔の中に連れていかれた。

 

内部はシンプルな石造りで、

ひたすらに長い長い螺旋階段が

上に続いている。

 

これを登り切るのにも、

数時間を要した。

 

「もう出口だ。覚悟しろ、大罪人。」

 

看守が扉を開けて、風真を外へ出す。

 

「暑っ……。」

 

思わず口に出してしまうほど、

外の空は晴れ渡っていて快晴。

茹だるような猛暑だった。

 

燦々と照りつける日光が痛くも、

眩しく感じる。

 

ふと下を見下ろすと、

大勢の民衆が嬉々とした顔で

『その時』を待っていた。

 

中には、憤慨を露わにした

人々も居る。

 

その声は、

相当な高低差があるにも関わらず……

風真の耳に届くほど殺気立っていた。

 

「お前の所為で国宝鍛治師の

『風間・大伍郎』は死んだッ!」 

 

「償えいろはァアッ!!」

 

「到底許されない罪だッ!

それもこれも全部っ……」

 

「「「――お前のせいだ、お前のせいだ

お前のせいだ、お前のせいだ

お前のせいだ、お前のせいだ!!」」」

 

バアンッ!!

 

鋭い太刀を持った男。

 

おそらく処刑人だろうと

推測される彼が天に拳銃を発砲し、

民衆を黙らせた。

 

「静粛にッ! これより

風間・大伍郎を暗殺せし大罪人、 

風真いろはの公開処刑を執り行う!」

 

「「「ぉぉおおおお!!!」」」

 

待ち侘びたと言わんばかりに、

民衆たちが喜びの歓声をあげる。

 

(これで……良かったんでござるよな。)

 

「――いざっ! 処刑なりッ!!」

 

空を割く音が、風真の耳元に近づいていく。

そして……

 

スパンっ!

 

「見ろ! 首が飛んだぞ!!」

「はっ、ザマァねぇな!

これが天誅って奴だぜ!!」

 

「……待て、お前ら。

あの首、何か可笑しくねェか……。」

「は? 何言っ――ッ!?」

「おいおい……嘘だろ。」

 

「「「あの首、金髪じゃねェっ!!」」」

 

(何で……

風真は生きてるんでござるか?)

 

確かに彼の太刀筋は、風真の首を捉えていた。

 

それなのに、斬り飛ばされたのは

全く別の人物。

いや、人物というのも語弊がある。

 

空を舞う男の生首、その首の断面は

決して生物的なモノではなく……

電線の束を切った断面のようだった。

 

空中を撥ねる顔は、

風真を見て――"笑っていた"。

 

バァアアアンッ!!

 

「首が爆発した!?」

「何だアレは!?

一体何が起こってるんだッ!」

 

混乱して騒つく民衆たち。

 

その中で、

1人の一般市民が此方を見て

更に驚いたような顔付きになった。

 

「おい待て……! あの処刑台に、

黒いコートを着た女児が居るぞ!」

「あの黒い双角……ありえねェ!

何で此処にッ!!」

 

辺りを見回すと、

市民のリアクション通り。

 

首無しとなって倒れた処刑用カラクリと、

佇む一人の少女の姿があった。

 

(絹のように繊細で、

綺麗な銀髪でござる…………。)

 

少女は拡声器を自分の口に当て、

息を大きく吸った。

 

『貴様らッ! 

かっ、かか刮目せっせっせよー!』

 

思いっきり噛んでる。

恥ずかしくないのでござろうか。

 

「「「…………」」」

 

ほら、民衆のみな殿も何とも言えない

空気になってるでござる。

 

『――貴様ら、刮目せよ。

吾輩の名は、ラプラス・ダークネスだ。

秘密結社holoXの総帥として宣言しよう。

これより、

当ジャキンジャキン星を侵略する。」

 

遂に何事も無かったように

宣言したでござる。

TAKE2に付き合わされる

みな殿も大変でござるなぁ。

 

『貴様ら市民の選択権は2つだ。

大人しく降伏するか、

我々に無謀な戦いを挑むか…………。

結果は変わらんだろうが、

好きにするといい。』

 

ラプラスと名乗った銀髪の少女は、

拡声器を下ろし、市民の返事を待つ。

……その時だった。

 

「――ムラマザ流抜刀術・月光暴雨!」

 

突如空中から一点を目指し、

雨のように降り注ぐ、光る月型の剣撃。

 

雷のようにも見える、黄色い暴雨。

 

それを前にして、

彼女は平然と立ち尽くしていた。

 

「おいおい……眩しいじゃねェか。」

 

攻撃が命中するより先、

羽ばたいた巨鳥が

全ての斬撃を受け止めた。

 

ドドドドドド……!!

 

「大将の攻撃を防いだ!?」

「何だ!? 

"縹色の炎"を纏っているぞ!」

 

「……縹色の炎だと?」

 

縹色の炎塊の中から、

一人の鳥類型獣人が姿を現した。

 

「――いきなりぃ……

『総帥』は、取れないでしょうよ!!」

 

「恐るべしだな――holoXっ!」

 

「何だあの身体!」

「ムラマザさんの攻撃を

正面から受けても倒れねェ!!」

「やっぱり、噂通りの能力を!?」

 

「獣人族が有する

特異体質の中でも更に希少……

鷹嶺一族の『縹威の鷹炎』。

いと面白し……!!」

 

何だアレ……傷が忽ち消えていく。

 

「信じられねェ!

アレが効かないなんて!」

 

「――効きますよ。

『い鷹った』です。侍大将・ムラマザ様。」

「嘘をつけ。」

 

なんかあの炎、寒いでござる。

 

「あれがholoX一番艦幹部!」

「如何なる攻撃を

受けても炎と共に再生するッ!

間違いねェ……アイツは!」

 

「「――"不死鳥のルイ"!!」」

 

「こんな鷹は見た事が無いぞ。

どれ、お手並み拝見といこうか。」

 

ムラマザが

刀を構え直したその瞬間、

彼女の蹴りが襲いかかる……が。

 

キインッ!

 

刹那にして彼の刀身がそれをいなす。

 

「うむ……これは効くな。」

「ウソをつけ!」

 

ドォンっ!

 

そのまま彼は、地面に蹴り飛ばされた。

 

「ムラマザさんが蹴り飛ばされたッ!」

「ムラマザさぁああああんっ!!」

 

騒ぎ立てる民衆を 

見下ろしながら滑空し、

風真たちの前に彼女は着地した。

 

……スタッ。

 

「怪我はありませんか、総帥。」

 

「油断するなよ幹部。

アイツは手強い。今の攻撃だって

奴にとっては何とも無いはずだ。

悪いが、引き続き継戦してくれ。」

 

「――了解です。」

 

返事を返すと彼女は、

フッとその場から消えた。

 

その様子を見届けたラプラスは、

見透かしたように口を開いた。

 

「いつまで寝たフリをするつもりだ。

処刑用のカラクリさんよぉ。」

 

「おやおや、流石holoXの総帥。

全部お見通しという訳ですか。」

 

不気味な声で返事を返し、

処刑用のカラクリが立ち上がる。

彼の爆発した筈の頭部は、

既に再生し終わっていた。

 

「貴様はまだ、風真いろはを

処刑するつもりか?」

「ええ、それが私の存在意義ですので

――ねっ!!」

 

ドオオンッ!

 

両者の拳が衝突し、

突風のような衝撃波が発生する。

 

「おい、不意打ちなんてタチが悪いな。

処刑人としてのプライドは無いのか。」

「相手が相手なので、

此方も手段は選んでいられません。」

 

「……そうか、だったら――」

 

グサッ!

 

「――!?」

 

「死ぬしか無いな。

カラクリにその概念があるかは知らんが。」

 

この一瞬で一体何が……!?

 

ラプラスが背後から

カラクリの胸部に

ボラードを突き刺したのでござるのか?

 

でも、1秒もその過程が見えなかった……。

 

「……ほう、これが噂の

"時飛ばし"という能力ですか。

なんと恐ろしいお力――ですが。」

 

ガシッ。

 

カラクリがラプラスの肩を掴んだ。

 

「使えなければ、意味が無い。」

「くっ……力や魔力が一切沸かん。

これはっ、どうなっているだッ…………。」

 

「私の手は少々"特別製"でね。

大抵の罪人を屠れるよう、

特殊な設計が施されているんです。

あと、このボラードですが……。」

 

彼は黒い笑みを浮かべ、

胸部から抜き取ったボラードを

ラプラスに突き刺した。

 

グサッ!

 

「貴女の胸部にお返しします。

長い長いテロ活動、お疲れ様でした。

――総帥。」

 

肩から手を離し、

ボラードを奥へ奥へと捩じ込む。

 

「ぐふぁっ!」

 

苦しそうに血反吐を吐きながら、

ラプラスは力無く倒れた。

 

「これが66億6千万スペースドルの

賞金首……聞いて呆れますね。」

「………………。」

 

「さて、そろそろ首を落として

フィナーレと行きましょうか。

風真いろはさん。

貴女も見ていて下さい。

この不届き者の、哀れな末路を。」

 

一瞬でも希望を持った風真がバカだった。

風真が生きてても……

周りが不幸になるだけ。

 

風真に与えられた罪は、

それ程までに重い。

 

シオリ殿やラプラスだって、

関わろうとするから悲劇に巻き込まれる。

 

(どうしてみんな。

風真を助けるのでござるか?)

 

その先、自分たちに嫌な事が

降りかかってくるのは

分かってる筈なのに…………。

 

(あぁ、太刀が振り上げられた。

今度こそ助からない。

せめて風真の命で、

あの子の命だけでも……)

 

ダメだ。

全身が震えて足に力が入らない。

 

振り下ろされる

長く鋭い太刀の動きを、

ただ見る事しかできない。

 

風真は……なんて悪い子なのでござろう。

 

――キインッ!

 

(え……? 刀が弾かれた?)

 

「……全く、相変わらず世話の焼ける子ね。

いつからそんな

ダサい戦い方するようになったの? 

――ラプラス・ダークネス。」

 

クルクルと手元で拳銃を回して、

少女は嘲笑気味に問いかける。

 

その問いに不服そうな顔を浮かべ。

ラプラスはのっそりと立ち上がった。

 

「吾輩の力と記憶を『ノベライズ』で

8割ぶん取っておきながら、

その言い草はねェだろ。

それに、誰が手を貸せと言った?

――シオリ・ノヴェラ。」

 

 





どうも、たかしクランベリーです。

紫咲シオン5th記念ライブ、最高でした。
リ●リコEDを聴けて、
大変満足であります。

さて。もう少しで風真いろはの
長い過去回想話も終わります。
勘違いしないで下さい。
いろはちゃん曇らせ趣味は
断固としてないです。 

風真さんは総帥と幸せそうに
絡んでる時が一番輝いてて……
美しい。これ以上の
芸術作品は存在し得ないでしょう。

……という訳で、
また来週お会いしましょう。
よろしくお願いします。
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