こちら31Hホロックス! ぷらすみこにぇ!   作:たかしクランベリー   

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18話・究極の2択

 

 

――キインッ!

 

(え……? 刀が弾かれた?)

 

「……全く、相変わらず世話の焼ける子ね。

いつからそんな

ダサい戦い方するようになったの? 

――ラプラス・ダークネス。」

 

クルクルと手元で拳銃を回して、

少女は嘲笑気味に問いかける。

 

その問いに不服そうな顔を浮かべ。

ラプラスはのっそりと立ち上がった。

 

「吾輩の力と記憶を『ノベライズ』で

8割ぶん取っておきながら、

その言い草はねェだろ。

それに、誰が手を貸せと言った?

――シオリ・ノヴェラ。」

 

「シオリ殿っ!?」

 

「貴女の強さなんて

2割あれば"充分"でしょ。

本当は、あんなみっともない苦戦を

演じる必要だってない。

どうせその子を怖がらせない為に、

敢えて手を抜いてるんでしょ。」

 

「知った風な口を訊くな。

吾輩は吾輩のやりたいように戦う。

……文句あるか?」

「ないわ。」

 

ブウンッ! バクっ!

 

何を気に入らないのか。

ラプラスは胸部に刺さっていた

ボラードをシオリ殿にぶん投げた。

 

しかしそれは、彼女の肩に乗っていた

小型スライムが肥大化し

即座に飲み込んだ。

 

「「…………。」」

 

両者、なんとも言えない

間が置かれた数秒。

……なんと、ラプラスの方から折れた。

 

「だったら、謝罪として

吾輩にコーラを献上しろ。」

「どーぞ♪」

 

シオリ殿から缶コーラを

受け取ったラプラスが、

アルミ製の蓋を開ける。

 

プシュッという小気味いい音を立てた

缶に口元を寄せ、彼女はゴクゴクと飲む。

 

すると、ラプラスの胸部に空いた風穴が

みるみると再生していき……

何事もなかったように傷が塞がった。

 

「アタシの知らぬ間に、

面白い肉体改造されてるわね。」

「ああ、ウチの博士は優秀でな。

心臓を摘出するついでに

やって貰ったんだ。便利だろ?」

 

「コーラで肉体が再生するなんて、

死んでも欲しく無い体質だわ。」

「うるせェっ……!

カッコいいだろうがよ!」

 

「アタシ、

アナタと感性が合わないみたい。」

「奇遇だな。吾輩もだ。」

 

「おい貴様ら、いつまでベラベラ

喋ってるつもりだ?」

 

駄弁る2人に対し、怒りを露わにした処刑人。

しかし、2人の態度は依然として

変わらないままだった。

 

「もうそろそろ、この玩具と

戯れるのも飽きてきたな。」

「アタシも同感だわ。

玩具の解体ショー、始めちゃう?」

「ああ。いっちょ片付けるとしよう。」

 

「小娘共が、舐めやがってッ……!」

 

悪態をつくカラクリに対し、

ラプラスは自身の顳顬に人差し指を当てた。

 

余裕そうな表情と

左右に揺れる首振りの動きが相まって、

煽りを心の底から

楽しんでるのが見て取れる。

 

「貴様の敗因は、『あの手』で

吾輩の脳天を貫かなった事と……

勝手に勝利を確信し、

さっさと首チョンパしなかった事だ。

後悔しても、もう遅いぞ。」

 

「『敗因』……?

処刑はこれからだろ……?」

 

「――『天上天下唯我独尊』。

吾輩こそが、全生物の"頂点"だ。」

貴様に勝ち目など、

最初からありはしない。」

 

「随分と傲慢な発言だな。

『遺言』か?」

 

「遺言? 馬鹿言え。

傲慢でなくては、侵略組織の

『総帥』など務まらん。それと、

分からないようならもう一度言ってやる。

貴様はもう、『詰み』だ。」

 

見下すような視線を向け、

ラプラスは彼に指差した。

 

「……詰みだと? 

時を消し飛ばす魔力

『ブラック・ロード』。

記憶を栞に変える魔力『ノベライズ』。

私にとってはいずれも全て……問題無し!

――"処す"!!」

 

「ラプラス、時を飛ばしなさい。

アタシが左から拳を叩き込むわ。」

「ったく、宇宙人遣いが荒いな。

……だが、それが一番手っ取り早そうだ。

始めるぞ。」

 

「ええ。」

「――ブラック・ロード。」

 

ドォオオン!

 

(まただ……

一瞬で攻撃が始まった。)

 

挟撃として、瞬時に両者の拳が

処刑人に襲い掛かる。

 

……が、流石処刑用のカラクリ。

 

常人では捉えきれない速さの攻撃を

見切り、両腕の甲でそれを防いでいた。

 

「凄まじい"覇気"だ。

やはり貴様ら2人……

――"王の資質"を持って生まれたか。」

 

「鉄の塊の分際で、我々相手に

本気でやり合える思っていたのか?」

 

「いえいえ、思ってませんよ。

私の今の仕事は飽くまでも、

大罪人・風真いろはの処刑。

貴女方の隙さえ作れればそれで……ッ!?」

 

違和感に気がつき、カラクリが目を泳がす。

しかし、身体がガタつくだけで、

これといった動きを見せない。

 

彼自身も、

思わず疑問を口にしてしまった。

 

「何だ……首から下が

『動かない』だとッ!?」

 

「楽しいお喋りに夢中で、

気がつくのが遅いわよ。カラクリさん。」

 

口角を上げ、

勝ち誇った笑みを見せるシオリ殿。

 

風真も気になって

カラクリの様子を再度見ると。

 

ボトッ。

 

(え、カラクリの片腕が抜け落ちた?)

 

「何ィーーーッ!?」

 

「落ちたアナタの片腕、

よく見てみなさい。」

 

落ちた片腕の断面。

分断された本体の断面。

両方とも……『地獄絵図』だった。

 

そこには、吐き気を催すほどに

密集した『蟲』が……

うじゃうじゃと沸き蠢いめいている。

 

想像を絶するほどに

密となった、悍ましい数の蟲。

そんな彼らの目的はただ一つ。

 

寄生対象を完膚無きまでに捕食する事。

 

もし処刑人が生物であったなら、

激痛に悶え苦しみ。気絶するだろう。

 

監獄での"あの会話"は、

シオリ殿の脅しだと思っていたが……

今となって、あの言葉が

"そのままの意味"だと分かった。

 

温床などとシオリ殿は言ってたけど、

そんな生易しいモノなんかじゃない。

一方的な――"捕食"だ。

 

「これはッ……『魔導會蟲』ッ!

召喚動作も無しにっ、

いつから仕込んで…………」

 

ブゥーンっ。

 

翅で羽ばたいた数匹の蟲が、

小型スライムの口内に"帰っていく"。

 

「まさかッ! その"スライム"に

格納してやがったのか!

時を消し飛ばす直前に、

"やりやがったな"ッ……!!」

 

「あからさまなブラフに掛かる

貴様が悪いのだ。」

「良かったわね。

蟲たちも、あなたの金属質な

身体が美味しいと言ってるわ。」

 

「ふざけるなふざけるな

ふざけるなァアーーッ!!」

 

「あと数分放っておけば

跡形もなく喰い尽くされるけど……

その様を傍観し続けるのも退屈だわ。

ねぇ? 最後にアタシ達に

言いたい事とかある?」

 

「クソぉぉおおおっ!!

路傍の隅に投げ捨てられた

タバコの吸い殻にも満たない、

このちっぽけなッ……!

矮小な小悪党共がぁぁあああっっ!!」

 

「ラプラス、トドメは

アタシが頂いていいかしら。

この鉄屑、凄く不快だわ。」

 

「好きにしろ。吾輩にスクラップを

集める趣味はない。」

「じゃあ、

その御言葉に甘えさせて貰うわ。」

 

ゆら……ゆらと。一歩ずつ、

爛々と梔子色の瞳を揺らし……廻る。

 

不動となったカラクリの周囲を、

シオリ殿が廻り歩く。

1周、2周、…………7周。

 

猛暑で発生した蜃気楼によるモノなのか、

魔法によるモノなのかは断定出来ない。

 

連続したフリーズフレームを

そのまま具現化したような黒い人影と、

不規則な軌道を描く紐のような

黄色い閃光が幾重にも重なり……

 

この世のものとは思えない

異質な光景が生み出されていた。

 

あまりの不気味さに、

機械である彼さえも

青褪めた顔を浮かべている。

 

「『禁書』ッ……何をするつもりだっ!」

 

「ねぇ、知ってる?

機械っていうのは"演算された記憶"を

基に行動してるの。

――記憶された"二進数の連続処理"。

それを失った機械を、

人はなんて呼ぶと思う?」

 

「馬鹿な真似はやめろ『禁書』ッ!

貴様、今自分が何をやろうとしてるか

分かっているのか!!

自分の罪を更に重くするだけだぞッ……!」

 

タッ。

 

廻る足音は、カラクリの眼前で

音を立てて止まった。

と同時、気色の悪い幻影も

空気に溶け込むように消え去った。

 

「聞いてるのかッ、『禁書』ッ……!!」

「………………。」

 

彼と向き合うシオリ殿は

数秒沈黙し、右腕を構えた。 

 

彼の言葉を聞く耳は……

最初から無いも同然だった。

言葉を発さずとも、

その目は告げていたのだ。

 

圧倒的な"殺意"を…………。

 

「――『ノベライズ』。」

 

彼女が手を横に薙ぐと、

カラクリが自我を失ったように静止した。

 

変化はそれだけではおさまらず、

下半身から徐々にその身体が

"石化"していった。

 

そして、シオリ殿の手指には

真っ黒な『栞』が挟まっている。

 

「答えは『鉄屑』ってか?

確かに、機械ってのは

入力と出力を行う為の"記憶"もとい

プログラミングが無ければ

機能や動作を起こす事は決してない……。

理にはかなってるが、

……シオリ、お前相変わらず容赦ねぇな。」

 

「そう? 

惑星の侵略よりはマトモだと思うけど?」

 

「記憶全部抜き取るってのも、

吾輩的には相当ヤバい行為だぞ。

生物や機械ってのはな、

植え付けられた『記憶』がなきゃ

思い通りに動けないんだ。

貴様はそれを分かってんのか。」

 

シオリ殿は、自身の残虐さを

誤魔化すようにはにかんだ。

 

「ま、何はともあれ。

一件落着って事でいいんじゃない?」

「……それもそうだな。」

 

ボウッ!

 

シオリ殿は、点火したライターで

黒い栞を燃やし始める。

数十秒ほどでそれは灰として散り。

 

呼応するように、

カラクリの亡骸も

煤となって空に散っていく。

 

「地味な火葬は嫌い?

いろはちゃん。」

「……え?」

 

「唐突に質問投げるのやめろよ。

困ってるだろうが。」

「いいじゃんいいじゃん。

減るモノじゃあるまいし。」

 

「減る減らないの話じゃねーわ!」

 

「「…………。」」

 

2人は他愛無い会話を済ませると、

急に黙って風真の方を一斉に向いた。

 

「ねぇ、いろはちゃん。」

「なぁ、風真いろは。」

 

「アタシと……」

「吾輩と……」

 

「――世界を観たくない?」

「――世界を変えないか?」

 

「……え?」

 

(勧誘……で、ござるよな。

何故、この期に及んで?

……分からないでござる。)

 

「おい、シオリ。」

「何?」

 

「風真は吾輩のモンだ。

何しれっと勧誘してんだよ。」

「いいえ。

アタシ達"Advent"の新メンバーよ。」

 

「………………。」

 

「あたかも当然みたいに言うな。

本人も困惑してるだろうが。」

「まぁ、アンタみたいなお子ちゃまに

世界変えようなんて言われたら、

誰だって困惑するわ。」

 

「……んだとォ!?」

 

まさかだけど……

風真を獲りあってのでござるか?

 

「安心しなさい、いろはちゃん。

もう貴女がこの星に

囚われる必要はないの。

貴女にある未来は2つ。

アタシを選ぶか、

そこのお子ちゃまの下に就くか。

悔いのないよう、選ぶと良いわ。」

 

「一々毒気のある言い方だが、

要約するとそういう事だな。

ま、風真はどうせ吾輩1択っしょ。」

 

風真は……『外』に出ていいのでござるか。

そしたら、今まで見えなかった

侍の本質も見えてくるのでござるか? 

 

もし見れるのなら、見たい。

この伸ばされた命の意味を、

そこに注ぎたい。

 

見出してから、会いに行きたい。

 

(――大伍郎お爺ちゃん。

風真の我儘は、許されるでござろうか。)

 

『行け、いろはよ。

お前ならきっと――見つけ出せる。』

 

この声……。

良いのでござるな。大伍郎お爺ちゃん。

 

「風真は……っ。」

 

立ち上がり、シオリ殿の方に歩み寄る。

 

「ふふっ、今回はアタシの勝ちね。

――『総帥』ちゃん♪」

「いいや、吾輩の"勝ち"だ。

やれ……『博士』。」

 

博士? 何を言って……

 

グシャアッ!

 

「――ッ!?」

 

俄には信じがたい現象が、

風真の身に起きた。

 

背を貫き、自身の胸元から伸びる

――誰かの手。

その手には、

ドクドクと脈を打つ心臓が握られていた。

 

(これ……風真の心臓でござるよな。

身体から完全に分離してるのに

痛くもないし、

鼓動の早さにも変化がない。

一体、何が起きて……)

 

「風真いろはちゃん……だっけ?

手荒い真似でごめんだけど、

ラプちゃんの命令は絶対なんだ。

大人しくついてきて貰うよ。」

 

背後から、謎の少女がそう告げる。

 

ただただ怖くて。

目の前に居る

シオリ殿に助けを乞うが……

 

「シオリ殿っ、助け……」

 

「無理よ。その子が持つ魔力の術中に

嵌った時点でもう、

貴女を助ける術は無くなった。

残念な事に、貴女の生殺与奪の権は

処刑人からラプラスに渡ったわ。」

 

「嘘……でござるよな?

風真はもう、

助からないので……ござるか?」

 

「……………。」

 

シオリ殿は、沈黙を見せるのみだった。

 

「嘘などではない。

貴様の身に起きてる異常は全て現実だ。

だが、悔やむ必要はない。

吾輩に目を付けられた時点で、

貴様に用意された未来のレールは

"一本道"になっていたのだからな。」

 

「そんなの、間違ってるでござる。」

 

「間違ってなどいない。

貴様は、そのトロッコに

大人しく乗車してればそれでいい。」

 

「嫌でっ、ござる……

未来を決める権利は、

みな平等にあるでござる…………。」

 

「残念な話だが、宇宙と世界の未来を

決めるのはこの吾輩だ。

宇宙政府などという

ハリボテ極悪集団などではない。

……やれ、博士。」

 

「――YES MY DARK!」

 

「何を、言って……」

「――『電圧実験』。」

 

心臓を握った彼女がそう唱えると、

風真の全身が激しい電流に襲われた。

 

そして、意識をも――シャットアウトした。

 

 





【月歌とholoXのおまけバスタイム】

(※本編にヘブバンキャラが出ない為、
設けられたヘブバン専用コーナーです。)
(※軽い小話みたいな構成なので、
台本形式でお送りします。)

part4〜月歌と博士〜

月歌「ねぇねぇこよりん。」

こより
「どうしたの月歌ちゃん?」

月歌
「クロっちから聞いたんだけどさ、
こよりんって
執刀用メス生み出したり、
心臓抉り取ったまま生かしたり、
電圧出せたりするらしいけど……
なんか1人だけズルくない?
オ●オペの実でも食ってんの?」

こより
「こよはカナヅチじゃないよぉ。」

月歌
「じゃあ何なのさ?」

こより
「――魔力『ラボ・プール』、
それがこよの特殊能力なんだ。
ちなみに月歌ちゃん。
一般的な学校プールの大きさは分かる?」

月歌
「縦約25メートル、横幅約12・5メートル。
水深が約1・35メートル……だっけ?」

こより
「わおーんっ! 大正解だよ!
こよはね、その範囲内で
"凡ゆる実験が出来る"んだ。
適応される高さは、
5・4メートルまでだけどね。」

月歌
「……どうゆう事だってばよ。」

こより
「例えば、執刀用メスを生み出して
対象の体表を切開する"解剖実験"。
対象に痛覚や身体的影響を一切与えず
臓器を摘出する"摘出実験"。
……まぁ、ここまで言えば
あとは分かるよね。」

月歌
「うん。取り敢えずめちゃくちゃな
能力だって事は分かったよ。
こよりんにとっては、
"どこでも実験室"ってコトでしょ。」

こより
「わおーんっ! 大正解っ! 
景品として、
後でマヨネーズ一本あげるよ!」

月歌
「あ、いらないっス。」
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