こちら31Hホロックス! ぷらすみこにぇ!   作:たかしクランベリー   

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2話・キレる35Pマヨラー博士

 

『対象生命体の絶命、及び石塔化を確認。

砲撃モード解除……

セーフティーモード起動。』

 

「ふぅ……これで一件落着だね!

ね! ラプちゃん!」

「にぇーいっ★」

 

事故の元凶が、

終わりよければすべてよし

みたいな表情で言う。

 

みこ先輩に至っては、

なぜ肯定する?

にぇーいっ、じゃねぇよ。

 

コイツら自分達の置かれてる

状況分かってんのか。

 

「何処がだよ!?

何一つ解決してねぇよ!!」

「ぽえ?」

 

(殴りたい。この惚け顔。)

 

と、考えてる場合でもないな。

さっさと立て直して、

当初の目的通りに動かねば。

 

「おい、ダークマター。」

『はい。何でしょうマスター。』

 

「今すぐ浮上して

時空間移動する事は可能か?

多少のチャージ時間を

設けても構わないぞ。」

 

『すみませんマスター。

残念ながら、一連の大事故により

当艦の機能回路が多数破損しました。

浮上機能及び時空間移動機能は

現在利用できません。

スペースディーラーへの

輸送を推奨します。』

 

「はぁぁあああああっ!?」

 

「にぇ? 

何がどうなったんだにぇ?」

「えー、沙花叉も分かんなぁ〜いっ♪」

 

AIの補足説明が

加わっても尚、2人は

まるで状況が分かっていなかった。

 

本当に、分かっていなかった。

 

受動的かつ強制的な時空間移動。

巨大生物との衝突。

戦艦戦に於いてタブーとされる

ゼロ距離砲撃。

 

壊れるには充分すぎる要因が

揃い踏みしていた。

 

「どどど、どうするでござるか!

風真たち終わりでござるか!?」

「総帥……如何致しましょう。」

 

残りの理解ある2人は

それ相応の反応を見せてくれた。

 

「待て。吾輩だって今から

どうするか施策を練ってる途中……」

 

ウィーン。

 

操舵フロアの扉が、またもや開く。

この流れで来るのは当然……

 

あれ。今一番来ちゃダメな奴じゃね?

 

「みんなっ! 船が大きく

揺れたけど何があったの!?」

 

「あっ、こよこよ!

実はみこにも……よく分がんな゛い!」

「……ん?」

 

みこ先輩を見て、

何かに気がついたのか。

 

博士は少し沈黙し、

目の笑わない笑顔で

こちらに顔を向けた。

 

「あれれー、総帥。

こよの気のせいかな?

みこ姉さんが縄でキツく縛られてる

ように見えるんだけど。」

 

「…………」

 

クソっ! 

これだからラボに隔離しといたのにッ!

 

「僕はさ、総帥たちがみこ姉さんに

軽ーく説教するって言ったから

了承したんだよ?

これ、明らかに

そのライン越えてるよね。

みこ姉さんに、

何をするつもりなのかな。」

 

「あっ、こっ、これはな……」

 

「もしかして、直近で言ってた

10億スペースドルの利益が

出る取引って、 

みこ姉さんの売買かな?

じゃなきゃ、

ここまで縛る理由ないもんねぇ。」

 

ヤバいぃ、ガチで勘付かれ始めてるよ。

 

しかも、文法的な違和感がない限り

滅多に使わない一人称使ってるし、

これガチでキレてるんじゃないか。

 

マヨラーな所ばかり

目立ってたけど、博士って

そういや狂信的な35Pなんだよな。

 

吾輩だって、トワ様が

同じ目に遭ったら絶対こうなるもん。

 

(くっ、かくなる上は。)

 

「お前らっ、吾輩を弁護しろっ!」

 

「すみません総帥、言葉が出て来ません。」

「鷹嶺ェ!」

 

「か、かかか風真は

ここで偶々筋トレしてただけでござるよ?」

「風真ァ!」

 

「ぽえぽえぽえ〜?

沙花叉お馬鹿ちゃんだから

よく分かんなぁ〜い♪

そもそもぉ、総帥が全ての

発端なんじゃないの〜? ぽえぽえ〜♪」

 

「お前だけ予想通りのセリフだよ!

悔しいけど100点満点の責任転嫁だよ!

こん畜生ーッ!」

 

「そうだねぇ〜。

クロヱちゃんの言う通りかもねぇ。

さてさて総帥様ぁ〜、

僕の敬愛するみこ姉さんを

このような目に遭わせたんだ。

ちょうど新薬の

実験体を探してたし、贖罪として

やってみるのはどうかな?」

 

あー、ヤバい。マジでヤバい。

 

周囲に数十本の

執刀用メス生成してるし、

マジで吾輩、

解剖とかされるんじゃないか。

 

いや、まだだ。

この程度の壁、吾輩は戦場を通じて

幾つも越えてきた。

 

こういう時大事なのは交渉だッ!

 

如何に穏便に済ませられるかどうかだ。

 

「待て博士!

マヨネーズ5本で手を打つのはどうだ!?

吾輩たちholoXに今最も必要なのは

『愛』なんかじゃなく『利益』だ。

holoXの頭脳であるお前なら

分かるだろ!?」

 

「……は?」

 

(あーヤバいぃいいっ!

執刀用メスが5本増えたぁ!?)

 

「ラプちゃんさぁ、何か勘違いしてない?」

「…………。」

 

「例えば、僕が5時間分収録した

ラプちゃん専用の特別ASMRを用意する。

それを聴く権利を得られる代わりに、

トワ先輩が10億スペースドルで

惑星に売り飛ばされます。

そんな話、容認できますか?」

 

「そっ、それはっ……容認出来ないっ。」

「ほらぁ、総帥も分かってんじゃん。

それじゃぁ、裁きの時間だね♪」

 

くっ……あまりこの手は

使いたくなかったが、

やるしかあるまい。

 

「――闇魔法・ブラックミストぉ!」

 

ブワァァっ!

 

黒い霧が操舵フロアを包み込む。

これぞ、

闇魔法・ブラックミストの力だ。

 

「出た出たぁ〜、総帥お得意の

撤退用イカ墨魔法〜♪

そんなんで僕の目を欺けると

思ってるのかなぁー?」

 

ああ。

勿論博士の目を欺く為の

魔法ではない。

 

視界を封じられた所で、

コヨーテ由来の優れた嗅覚は

瞬時に周りを嗅ぎ分ける。

 

目的は、

ほんの少しの隙を生み出す。

これが重要なんだ。

 

今回の使い方は、用途が別にある。

 

視力に優れた味方が居て、

本当に良かった。

 

「幹部、勝負は一瞬だ。分かるな?」

「ええ。

後はこの私にお任せ下さい。」

 

「隠れても無駄だよ〜ぉ。

総帥、僕の嗅覚がどれ程優れているか

知ってるでしょー?」

 

カツン。

 

この音……鷹嶺。

やってくれたようだな。

 

「――解除。」

 

黒い霧が、一瞬にして消え去る。

博士も一瞬だけ目を見開き、

また怒りに満ちた表情に戻った。

 

「これは……降伏したって事で

良いのかな?」

 

「降伏? この吾輩がか?

馬鹿言え。吾輩は博士に

頭を冷やす時間を設けただけだ。

お前は寝る間も惜しんで

新薬の開発に携わっていたんだ。

疲れ過ぎたあまり、

ありもしない見間違いをする

事だってある。」

 

「何を……言ってるの?」

 

「壮大な勘違いをしているのは、

貴様の方だと言ってるんだ。

自分の目でよく見てみろ。

縄でキツく縛られているのは、

本当にみこ先輩かどうか……。」

 

「――!?」

「気がついたようだな。

只の見間違いだった事に。」

 

「みこ姉さんが……縛られてない。」

「その通りだ。みこ先輩は

偉大な先輩様だ。

我々がぞんざいに扱う訳ないだろ。」

 

「だ、だよね……

『こよ』の勘違いだよね。

ラプちゃん、早とちりしてごめん。」

 

ようやくメスを降ろしてくれたか。

足元に散らばってるの危ないから

後で片付けろよ。

 

「待って待って待ってェ!!

何で沙花叉が縄で縛られてんの!?

みんな沙花叉に何する気なの!?」

 

「なぁ、沙花叉。

責任転嫁したんなら、

自分がされても文句は言えないよな。」

 

「だからってイキナリこんな

仕打ちはないでしょ!?

ルイルイも黙って見てないで

助けてよぉ!!」

 

「ごめん沙花叉。

総帥の為に犠牲になってくれないか。」

「うっ……うぇぇえええん!!

うぇんっ……ぐすっ。」

 

見え見えの嘘泣きした所で、

助からないと思うぞ。

 

よし。

取り敢えず、暴走した博士を

止める事は出来た。

 

今一度、我々が置かれている

状況に向け合わねばな。

 

「幹部、一旦我々は上陸しよう。」

「それは、

数百人の乗組員含めてですか?」

 

「いいや、何せ異界の星だ。

何が起こるか分からない所に

余計な犠牲を生み出す訳にはいかん。」

 

「つまり……」

 

「吾輩、幹部、博士、侍、

生贄用の掃除屋、

みこ先輩の総員6名で上陸する。

他の乗組員は当艦ごと

吾輩の転移魔法で

スペースディーラーへ

送るつもりだ。」

 

「成る程、確かに今は

それが最善策かもしれません。」

 

これで大凡の動きも決まった。

ここからどう動くかは

上陸してから考えても遅くはない。

 

「おい、ダークマター。」

『はい。何でしょう。』

 

「このフロアと全フロアの

モニターを中継してくれ。

全乗組員に指示をしたい。」

 

『了解しました。

モニター中継シークエンス起動……

ウィーン。』

 

ピコンっ!

 

この子気味いい効果音は、

通信成功の証だ。

モニター通信機能は健在か。

 

最低限の機能が残ってて助かる。

 

「貴様ら、刮目せよ。」

 

「「「「「――YES MY DARK!!」」」」」

 

結構揺れてた気がするが、

誰一人ケガ人は居なさそうだな。

……続けよう。

 

「貴様らよ。アナウンスでも

既に伝わっているだろうが、

我々は不慮の事故により

異界の星へと不時着した。

そして現在、当艦は浮上する機能を

失い宇宙空間を渡航出来ない。」

 

「「「「「.…………」」」」」

 

乗組員らが、緊迫とした空気を

醸しながらざわつき始める。

これは想定内だ。

 

「当然、

我々の情報にない星である以上。

下手に侵略行為を行えば

返り討ちに遭うだろう。

そのリスクを回避する為、

このフロアに居る総員6名で

先住民とのコンタクトを図る。」

 

「総帥、我々は待機という

事でしょうか。」

 

「その通りだ。

しかし、浮上機能を失った当艦と

共に貴様ら放置するつもりもない。

吾輩が当艦と貴様らを

転移魔法で

スペースディーラーへと送ってやる。」

 

「総帥様……なんと慈悲深いっ!」

「「「「「おぉおおお!!」」」」」

 

コイツらどんだけポジティブなんだよ。

こちとら内心

冷や汗ダラダラだっつーの。

 

「いいか貴様ら。

スペースディーラーに着いたら

事情を説明して、

直してくれるよう交渉してくれ。

その後は、各々でholoXの支部拠点に

帰還して貰って構わない。」

 

すげぇ。

自分で言うのもなんだけど、

今吾輩めっちゃ総帥してね?

 

「貴様ら、返事はどうした?」

 

「「「「「――YES MY DARK!!」」」」」

 

 

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