こちら31Hホロックス! ぷらすみこにぇ!   作:たかしクランベリー   

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20話・刻まれた心

 

━━▶︎ DAY2 19:30

 

ナービィ広場。

 

 

「参るでござる……!」

「どうぞ。」

 

――キィンっ!

 

風真は大きな樹木に、

刀を素早く振るった。

 

その切り跡を見た彼女は、

普段の冷静な師匠像を捨て去るほど、

いつになく驚きの反応を示していた。

 

「これは……」

 

樹木に飾られた一筋の帯は

薄萌葱色に淡く発光し、

暗夜に沈む広場を仄かに照らす。

 

その近辺には様々な昆虫が群がり、

樹液の晩餐会を始めていた。

 

(そういえば、お師殿に

この力を見せるのは初でござるな。)

 

「――魔力『刀痕』。

刀痕と刀痕を繋ぐ、

風真だけの能力でござる。」

 

「綺麗ですね。こんな綺麗な刀痕は、

見た事がありません。」

「……?」

 

自分の中で納得したのか、

うんうんと頷いたお師殿は

風真の方に顔を再び向けた。

 

「お弟子さん。もう一度

木の方を見てください。

あなたの生み出した"繋がり"は、

種族という垣根を越えて

様々な昆虫が食事を楽しんでいます。」

 

さっき見たのに、

もう一回見る必要はあるので

ござろうか。

 

お師殿が何を考えてるのか、

分からないでござる。

 

「なんの話でござるか?」

 

「お弟子さんの振るう剣、

その在り方、本質。

全ての答えが、表されています。

吐いて捨てるような現実を

叩き斬り、不幸の連鎖を断ち切る――。

あなたの剣が為す役割は、

"それだけじゃない"という事です。」

 

「何を……言ってるのでござるか?」

 

「今答えを教えては意味がありません。

……それに。過去を見つめ直し、

心を刻んだ今のあなたなら、

もうすぐ見つけ出せるでしょう。」

 

見つけ出せる……?

風真が?

 

「………………。」

 

「今日わたしから話せる事は

もうありません。

また次回。たっぷり講義しますので、

覚悟の準備をしておいてください。

……いいですね。」

 

言い切ったと言わんばかりの

澄ました師匠面をし、

お師殿は

ナービィ広場から立ち去っていった。

 

トコトコ……ゴツンッ!!

 

「ふふっ、決まっ……はぐうっ!?」

 

あ、道の真ん中で盛大に転んでる……。

 

暗い夜道は、危険がいっぱいでござるな。

 

「大丈夫か!? 小笠原っ!」

 

お? 白河殿がおんぶして

お持ち帰りしたでござる。

 

というか、

お師殿のこんな情け無い姿を

見てていいのでござろうか。

 

翌日見てなかった事にすれば、

お師殿の面目も保たれるはずだ。

見て見ぬふりが……吉って奴でござる。

 

(さて、風真もそろそろ

お風呂に行くでござる……。)

 

「夜遅くにすみません。

少し、お時間頂けないでしょうか?」

「――ッ!?」

 

突如現れた気配に振り返ると、

眼帯をした少女が立っていた。

 

「驚かせたようなら、ごめんなさい。」

 

「……き、気にしないで

いいでござるよ!?

かっ、風真も

注意散漫だったでござるし!!」 

 

「そうですか。では、

心置きなくお話出来そうですね。」

「あなたは……」

 

「状況が状況でしたし、

あたしを覚えてないのも

無理ないですね。

ほら、あなた達が最初に

31A部隊と接触した時……

後方に居たセラフ隊員の1人です。」

 

言われてみれば、

居たような、居なかったような……

 

「……よく思い出せなくて、

ごめんでござる。」

 

「構いません。

今から自己紹介すれば

いいだけの話なので。」

「…………。」

 

セラフ部隊は

みんな優しいでござるな。

普通は絶対怒るのに。

 

「あたしは第31B部隊に

所属しているセラフ隊員の……

"柊木・梢"っていいます。

改めて、よろしくお願いしますね。」

 

「31Hの風真いろはでござる。

何か困り事があるなら、

聞いてもいいでござるよ。」

 

「いえ、困り事とは

またベクトルが違います。」

「……?」 

 

彼女は真剣な面持ちで、風真を見る。

 

「風真さん、

貴女は『運命』を信じますか。」

「運命……有料占いの勧誘でござるか?」

 

「違います。

凡ゆる事象や巡り合わせは、

既に定められていた事柄。

……という概念です。」

 

「それが、風真と

何か関係があるのでござるか?」

 

「例えばですが、

頭の中からすっぽり消えていた筈の

『負の記憶』が何度も

フラッシュバックしたりとか……

しませんでしたか。」

 

変だ。

今日、柊木殿と会話したばかりなのに

――それを知ってるなんて"可笑しい"。

 

「その冷や汗……

やはり、図星のようですね。」

「何故、知っているのでござるか……。」

 

「あたし、生まれつきで

一般人とは異なった体質を持ってるんです。

見えないものが鮮明に見えたり、

見えない存在を

目視するだけで祓えたり出来るんです。」

 

きっと、風真が怖がらないよう

暈して伝えてるのでござろう。

 

「それって、『幽霊』の事でござるか?」

 

「やっぱ……分かっちゃいますよね。

貴女の部隊長さんが、心霊系統の話は

苦手だから極力暈してくれって

言ってたんですが……

察せられたらどうしようもありませんね。」

 

「確かに、風真はお化けとか

そういうの……怖くて苦手でござる。

でも、柊木殿は意味もなく怖がらせに

くるような人じゃない。

目を見たら、分かるでござるよ。」

 

「聡明ですね。

部隊長さんが貴女を用心棒として

あれほど信頼してるのも頷けます。」

 

ラプ殿……また聞いてもない自慢話を

ベラベラ撒き散らしてるのでござるか。

 

(風真の前では、

そんな事言わないくせに……)

 

「風真さん、イラついてますか?」

「いいい、イラついてないで

ござるよ!?

で、本題は何でござるか!?」

 

夜風がスーッと吹き渡り、

辺りの空気が冷え始めた。

 

「そうですね。

では、話すとしましょう。

貴女の記憶を惑わす者の正体。

そして、その『因果関係』を。」

 

「……因果関係?」

 

「えぇ。良くも悪くも、

あなた達宇宙人は

本来あるべき運命を"捻じ曲げた"。

あなた達はその恐ろしさと

代償をまるで分かっていない。」

 

代償……恐ろしさ。

話が、益々見えない。

 

「始点Aと終点Bを繋ぐ、

一本道のレール……通過点Cを

移動する列車を想像してみてください。

当然それは、何も無ければ

終点Bで停車して終わりですよね。」

 

「左様でござる。」

 

「これが、運命という

レールの正しい進路です。

しかしあなた達はあろう事か、

その線路に"分岐を与えて"しまった。

――通過点Dの誕生です。」

 

「通過点Dの、

何がいけないんでござるか?」

 

「通過点Dが加わる事は、

運命の進路上さほど

大きな問題ではありません。

運命の列車が一つの終点に向かって 

移動するという事実は変わりませんから。」

 

「…………。」

 

「問題となるのは、

その進路が一時的に切り替わった事で

生じる"イレギュラー"です。」

 

イレギュラー?

更に不安になるワードが

出てきたでござるな。

 

「ある乗客は、定められた 

終着駅に向かう筈だったんです。

ですが、乗車中……道半ばに

生じた異変によって

別の乗客と入れ替わってしまった。」

 

「乗客……? 

何の話でござるか。」

 

柊木殿は、ゆっくりと右手を上げ。

風真を指差した。

 

「入れ替わった乗客の正体……

それがあなた。

――風真・いろはさんです。」

 

「何を、言って……」

 

「まだ分かりませんか。

あたしには幽霊が視えるんです。

しかし、霊視が捉えるのは何も

幽霊だけじゃありません。

祓うのすら不可能な上位存在……

『死神』をも、見えてしまうのです。」

 

「死神が、風真に憑いてる。

……という事で間違いないでござるか。

だとしたら、『前の乗客』は

誰なんでござるか。」

 

「――"蒼井・えりか"、

あたし達31B部隊の部隊長さんです。

死神は、標的の魂魄を刈り取るまで……

離れる事は決してありません。

"彼女の生涯という記憶"も、

魂魄の立派な一部です。」

 

――『ノベライズ』――

 

――生物や機械ってのはな、

植え付けられた『記憶』がなきゃ

思い通りに動けないんだ。

貴様はそれを分かってんのか。――

 

ラプ殿とシオリ殿の何気ない会話。

……そうでござったか。

 

あの2人の死生観は、

離れているようで近いモノだったんだ。

改めて死の宣告をされると、

色々と考えが広がっていく。

 

それでも、怖がってる暇なんかない。

 

どんな未来になろうとも、

ラプ殿やみんなの為に

この命を燃やすと決めていた。

 

命を延長されたあの日から、

心に誓ったんだ。

 

ラプ殿だって、

どんな苦境を前にしても諦めなかった。

風真の目の前で、幾度も乗り越えてみせた。

 

きっとラプ殿なら、こう言うでござる。

 

「……この椅子取りゲーム。

風真の勝ちでござるな。

死の終着駅だろうと何だろうと……」

 

ブウンッ!

 

鞘に納まったままのチャキ丸を、

柊木殿に向ける。

これは、風真なりの宣言だ。

 

『死神』という運命が存在するのなら、

風真の手で『幻想』に塗り替える。

 

それすら出来ないようじゃ、

"宇宙最強のラプ殿"の

背中なんて護れないから。

 

「――そんなのは、

holoXの用心棒にして期待の侍っ……!

この、風真・いろはが

一刀両断してやるでござる!!」

 

「あなた、死期を迎えてるというのに

よくそんな呑気な事言えますね。」

 

「勝利の女神っていうのは、

不屈のチャレンジャーに

微笑むモノでござるよ。」

 

 




●後書きpart4

どうも、たかしクランベリーです。

新衣装風真や債務者みこちの登場で
先週は色々とたっぷり楽しめました。

さて。

そろそろ3章目指して
Scrap wing(オリキャンサー)と
向き合っていこうと思います。
よろしくお願いします。
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