こちら31Hホロックス! ぷらすみこにぇ!   作:たかしクランベリー   

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21話・おい! あんまワクワクさせんなよ

 

━━▶︎ DAY3 8:30

 

――カフェテリア。

 

(死神……でござるか。

カリオペ殿と相談してなんとか

出来ないでござろうか……。)

 

「おい、いろは!」

 

「……!!」

 

ラプ殿……。

 

「ヤケにボーっとしてんじゃねェか。

鉄分でも足りてないのか?

野菜食えよ。」 

 

「ラプ殿よりは

野菜食ってるでござるよ!?」

 

「確かに武術祭で緊張する

気持ちも分かるが、

食事はしっかり摂らないと駄目だぞ。

ほら見ろ、博士だって

人一倍頭脳を行使するから

食事の栄養がたっぷりだ。」

 

ぶちゅるるるるるるぅうっ!!

 

(なんかマヨネーズの山が

出来上がってるでござるぅうううッ……!)

 

「いや待てぇええっ!?

栄養たっぷりって言うか

油分の塊でござるよッ!

極めてなにか料理に対する

侮辱を感じるでござるぅううう!」

 

「失礼だな……純愛だよ。」

 

「調味料に何を見出してんだよ!?

ラプ殿も甘やかしてないで

こより殿に

注意してくれでござるぅう!!」

 

「おいこよぉ!!」

「はいぃ!」

 

「あんまワクワクさせんなよ。」

「みこ姉さんをワクワクさせるつもりは

一切ありませんけどぉ!?」

 

「おいこよぉ!!」

「はいぃ!」

 

「……沢山食べて、みこを越える

ぷにちになるといいにぇ。」

「はい! みこ姉さんのお言葉、

有り難く頂きます!!」

 

……あ、ダメだ。

 

一番こより殿にブレーキかけられそうな

みこ先輩が、アクセルを全開で

踏ませに行ってるでござる。

 

って、あれ。

ラプ殿がハンバーグを

4等分にカットしてる?

 

こんな食べ方普段しないのに、

珍しいでござるな。

 

……コトッ。

 

(え……風真の皿に、ハンバーグの

4分の1を分け与えた?)

 

「こういう諺がある。

釘が不足で蹄鉄打てず、蹄鉄不足で

馬が走れず、馬が走れず伝令届かず、

伝令届かず戦に負けた……とな。」

 

沙花叉が、笑いを堪えるように

プルプルと震えている。

 

ラプ殿と沙花叉は

お互いに映画好きなので、

風真の知らない所で

通じる映画ネタがあるのでござろう。 

 

「ルイ姉、ラプ殿は

何を言ってるのでござるか?」

 

「そうですね。

食べれる時に沢山食べて、

英気を養えという事です。

では、私からも沢庵を2切れ

お渡ししますね。」

 

またなんか増えた。

 

「あー、ルイ姉だけずるーい!

沙花叉もやるぅー!

ほいっ、焼きたらこ1個ぉ♪」

 

「じゃあこよからも、

マヨネーズ丸々一本あーげるっ!」

 

マヨネーズだけリリースする事は

出来ないのでござろうか。

 

「同期だけにいい顔はさせないにぇ。

チータラ5本、コレで完璧だにぇ。」

 

なんて事だ。

 

さっぱりタイプの朝限定和食御膳が、

塩分過多のカオス定食と化して

しまったでござる。

 

マヨは今晩こっそり

こより殿のバックにリリースしよう。

 

「いろははいろはのやり方で

勝てばいい。たった1インチの差でも

1マイルの差でも、勝ちは勝ちだ。

どのレーサーでもそう言うさ。」

 

「……………。」

 

多分ラプ殿が言った今の発言も

どこかの映画の名言なんだろうけど、

元ネタ知らないせいで

イマイチ反応を返しづらい。

 

ただ分かるのは。

 

風真はきっと今、眉を八の字にして

お口が三角の形を

作っているだろうコトだ。

 

「吾輩程ではないが、

いろはも良いセンスをしている。

……心配など不要だ。

お前の師匠とやらに、

出藍の誉れを魅せてやれ。」

 

「そうそうっ♪

いろはちゃんを間近で見てきた

沙花叉たちが言うんだから

間違いないってぇ〜!」

 

(もしかして……風真を

励ましてくれてるのでござるか?)

 

もう少し他にもやり方が

あったような気がするが……

 

(悪い気は、しないでござるな。)

 

 

 

 

アリーナ競技場。

 

「――さぁ、 

2日目の今日は個人行動だ!」

 

司会の説明曰く。

どうやら、

個人行動の競技になるらしい。

 

昨日と基本的な

ルールは変わらないそうで、

共闘やお互いに討伐の妨害を

する事も可能だそうだ。

 

その行動に応じて

ポイントは加算にも減算にもなる。

 

個人個人がしっかり見られる分、

初日よりも慎重な立ち回りが

要求されそうだ。

 

各々の選手も、

その競技に思う所は色々あるようで。

次々と考えを口にしていった。

 

「とにかく倒しまくれば良いようだにゃ。」

「誰かと手を組んだ方が

有利という事でしょうか?」

 

「トドメを刺した方にしか

加点されないから、その折り合いを

どうつけるかが肝要だな。」

 

「なるほど、策の練り甲斐があるな。」

「あんた、出し抜く気満々だな。」

 

武術祭はまだ2日目。

ここから挽回すれば、

優勝を狙える可能性は充分にある。

 

(何か大きな一手を……)

 

そうこう考えてる内に、

仮想空間が構築されていった。

 

……そして。

拡声器に口を当てた司会が、告げる。

 

『セラフ剣闘武術祭2日目……

スタートっ!!』

 

開幕の宣言を耳にした

選手らは、キャンサーの気配を

感じる方へ各々散らばっていった。

 

しかし、1人の寡黙な少女は

ポツリと佇んだまま

風真の顔を覗き込む。 

 

何か話したい事があるのだと思い、

近づいて聞いてみる。

 

「夏目殿、どうしたんでござるか?」

「……風真、お前も昨晩。

小笠原から説教を受けたのだろう。」 

 

「反省会のことでござるか。

確かにあれは、急でござったなぁ。」

 

「……お前が剣を振るう理由は何だ?」

 

(風真が、剣を振るう理由。)

 

ほんの僅かな部分だけど。

 

過去を振り返り、思い出せた。

今の風真なら、

その信念を確信として口にできる。

 

「不幸の連鎖を断ち切り、

ラプ殿の望む世界を切り拓く剣でござる。

でもお師殿は、"それだけじゃない"と

言ってたでござる。」

 

……そう、この部分だけが。

どうしても心に引っ掛かる。

 

「見上げた忠誠心だな。

それとも――"純粋な好意"か。

どちらにせよ、参考にさせて貰おう。

……感謝する。」

 

ギィギィ!!

 

「うわわっ!? キャンサーに

囲まれたでござるよ!?」

「……私語が過ぎたな。

悪いが風真、お前の

太刀筋を拝見させてくれないか。」

 

「良いでござるよ。

その代わり、後で夏目殿の太刀筋も

見せてくれでござる!!」

「…………了解した。」

 

意識をセラフ(チャキ丸2号)に集中し、

一月の構えを取る。

 

(数は3。依然、問題なし。)

 

「――風真流、

居合術抜刀『喬松・千羽鶴』」

 

刀剣から姿を顕すのは、

斬撃によって発生した旋風が描く

鶸色の折り紙鶴。

 

その数は数千にも及び、

一羽一羽が凝縮された

ミキサーの稼働する刃。

 

それらが獲物を覆うように纏わりつけば、

対象は忽ち切り屑と化す。

 

――バリィんっ!!

 

「これが、風真流の剣技。

……成る程、

良いものを見せてもらった。」

 

満足したのか。静かに頷いて

彼女はその場から去っていった。

 

夏目殿は共闘目的ではなく、

弟子同士のコミュニケーションが

欲しかっただけらしい。

 

何か参考になることをした

覚えもないでござるが、

深追いしても

減点の所作になりそうなので、

己の今やるべき事に集中しよう。

 

(ん? 何か悲鳴が

聞こえてくるでござるな……。)

 

「ぎぃぃいいぇえええええっっつ!

誰かっ、誰かぁあああああ!」

 

必死に走って来たのは、

昨日自販機にやたらテンションを

上げてた子……國見殿だった。

 

彼女の後ろには、

六つ脚を軽快に跳ねて追っている

5体のキャンサーが居た。

 

「國見殿ぉ!?

何でこんな大勢のキャンサーに

追われてるのぉお!?」

 

「風真さぁぁあああんっ!

今だけは不詳私めの用心棒に

なってくださぁぁああああいっ!!」

 

これは、大加点が

期待できそうでござるな。

 

「國見殿! そこの薄萌葱色の

溝に飛び込むでござるよ!!」

「はいぃっ!」

 

予め敷いておいた『刀痕』に

彼女は飛び込み。

 

風真の背後3m付近に設置した

刀痕へと潜り抜ける。

 

「おわぁあっ!?

何か分かりませんが風真さんの

背後に瞬間移動してますぅ!!」

 

後ろで騒ぎ立てる國見殿を

無視して、キャンサーらは

風真を取り囲んだ。

 

何を優先基準にして追跡と強襲を

群れで行っているか定かではないで

ござるが、これはこれで好機だ。

 

相手方も此方の攻撃を警戒してか、

威嚇行動に執着してる。

この隙は長くは続かないでござろう。

 

六月の構えをしたのち。

 

風真はキャンサーの群れに背を向け、

國見殿の方に歩み寄った。

 

「待て待て待てぇえ!?」

「ん、どうしたでござるが?」

 

「いやいやいや!

どうしたじゃないですよ!?

後ろ後ろぉ! キャンサー

飛び掛かってますってぇ!!」

 

ギィギィ!!

 

「あー、そうでござるなぁ。」

 

「何を呑気にしてるんですか!?

このままじゃ死ぬ! めちゃんこ死ぬ!

ズタズタに引き裂かれて

一緒にお陀仏ですぅ!!」

 

「その心配は無用でござるよ。」

「……え?」

 

「――風真流居合術、

納刀『花唄讃蝶・牡丹』。」

 

半分だけ刀身が露わになった

チャキ丸2号(セラフ)を鞘に納め、

鍔と接触させる。

 

チャキという音と共に、

彼らの身体は斬り刻まれて砕け散った。

 

バリィイン!

 

「え、今……何が起きたんですか?」

「風真が斬っただけでござるよ。」

「斬ってない! 納刀しただけですぅ!

ディスイズ納刀っ!!」

 

國見殿は、納得がいかないようだ。

 

「これが風真の剣技でござる。」

「……なるへそなるへそ。

剣の世界は奥が深いですね。」

 

案外飲み込み早い子でござるな。

 

ショート動画で散々ネタにされ……

ごっこ遊びだと思われがちな

この剣技をあっさり信じてくれるだけでも、

充分有り難い。

 

――『花唄讃蝶・牡丹』。

 

それは数ある速度重視の剣技に

肩を並べる"超高速の剣術"。

 

"使用後、600秒間再使用不可。"

"刀を完全に納刀するまで

一切の攻撃判定が発生しない。"

 

この2つの『縛り』を

設ける事によって、

秒間――60分割(fps)分の

剣捌きが可能となる。

 

当然、その速さを肉眼で捉えられる

生物は殆どおらず……

側から見れば

"何もしてないよう"に見える。

 

(コレを完全に見切れたのは

風間家師範代、ぼたん先輩、ラプ殿、

ルイ姉、クロヱ殿だけでござる……。)

 

「あのー、風真さん?」

「今度は何でござるか。」

 

「う……後ろ。」

 

突如青褪め、ビクビクと震え出す

彼女の顔と視線の先。

 

それに合わせるよう体の向きを変えると、

嘴を持ったやや大きめの

馬型キャンサーが2匹。

 

グルルル……と、唸っていた。

 

 





どうも、たかしクランベリーです。

ヘブバン公式生放送、最高でした。

時計塔「よぉ……久しぶり。」
自分「…………マジか。」

って感じでした。

柳んイベは完走してしまいましたが。
新時計塔の復活を気長に待ちながら、
コツコツとヘブバンを
遊んでいこうと思います。
よろしくお願いします。
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