こちら31Hホロックス! ぷらすみこにぇ! 作:たかしクランベリー
「あのー、風真さん?」
「今度は何でござるか。」
「う……後ろ。」
突如青褪め、ビクビクと震え出す
彼女の顔と視線の先。
それに合わせるよう体の向きを変えると、
嘴を持ったやや大きめの
馬型キャンサーが2匹。
グルルル……と、唸っていた。
「何でぇぇえええっ!?」
「私が知りたいですよぉぉ!!」
グルルァアゥ!!
飛び掛かるキャンサー。
そして……
「涼をとりたいにゃ……
キンキンに冷やしてにゃあッ!!」
バリィイン!!
突然キャンサーが凍り付けになったと
思いきや、追撃の斬撃が加わり、
それを粉々に砕け散らせた。
(氷魔法の使い手……?)
まぁまぁ大きい2匹を瞬時に
凍結させる氷魔法の出力。
氷塊をいとも容易く切り刻む剣捌き。
セラフ部隊は、風真の
想像以上に強者の集まりでござるな。
「お、國見と風真。
ここで何してるのにゃ?」
「水瀬殿!?」
「風真、お前はすももと
共に戦い抜いた戦友にゃ。
気軽にすももと
呼んでくれて構わないにゃ。」
戦い抜いたというか、
試合中ゲームセンターで
一緒に遊んでただけな気がする……。
なんだかんだ不器用な振る舞いが
目立つ子だけれど、
実は良い子なのかもしれないでござる。
「……そうでござるな。
すもも殿、改めてよろしくでござる。」
「すももの方こそにゃ。」
彼女も満足気な笑みを浮かべて応えた。
気を張った状態が続いてたので、
試合中のこういう何気ない会話が
癒しにも思えた。
(連戦続きだし、少しくらい
休憩を摂っても良さそうでござるな。)
と、一息つけそうな所で。
「あのー、風真さんとすももさん?」
「「……??」」
「何でござるか?」
「上のタイマー、すごい事になってますよ。」
言われた通り、頭上を見上げると
空中に文字通り試合の残り時間を示す
タイマーが浮かんでいた。
《Time Limitー1:22》
「……え、ホントにどうしよ。
風真たち、終わりでござるか?」
「風真、心配ご無用にゃ。
すももの勘はよく当たるのにゃ。」
「何かはよく分かりませんが……
すももさん! よろしくお願いします!」
「風真からも頼むでござる!」
「まったく、世話の焼ける奴らにゃ。
ちょっと時間をくれにゃ。」
得意気に笑ったすもも殿は、
静かに目を瞑り……7秒使った。
「どうですか。すももさん……!」
「6時の方向。こっから約3km離れた
地点に中型個体キャンサーの
気配アリにゃ。恐らくは討伐目標……
今から全速力で奇襲をしに行ったとしても、
残された時間を加味すると
明らかに間に合わないにゃ。」
「それは、トランスポートの移動を
想定した上でですか?」
「そうにゃ。下手にデフレクタを
消耗して倒せるような
相手じゃないのにゃ。」
「くっ……私たちはここまでという
事なのでしょうか……!!」
悔しそうに歯噛みする國見殿と、
試合の行く末を
あまり気にしてなさそうなすもも殿。
しかし、与えられた情報と状況は……
風真にとっては大きな好機でもあった。
(勝機は、充分にあるでござる。)
「すもも殿、ナイスでござるよ。」
「まさかお前……やる気かにゃ。
もう1分も切ってるにゃよ。」
「え!? こんな時にも
入れる保険があるのですか!?」
國見殿は何を言ってるのでござろう。
まぁ、取り敢えずはこの数十秒。
そこに風真の全身全霊を叩き込む……!!
瞼を閉じ、腰を低く落とす。
不如帰を呼ぶ藤の如し、四月の構え。
続けてスーッと息を吸い、力を貯める。
「――風真流・居合術抜刀『藤波』ッ!」
キィインッ!!
津波のように
高く長い翡翠色の一閃が、
刀から解き放たれる。
遠方から微かに聞こえるバリィンという音。
頭上の電子液晶に示された時間は、
0:03を表示したまま停止していた。
チャキ丸2号(セラフ)で放つのは
初めてであるが、
思いの外充分な火力が出た。
これは、完全勝利と言っても
間違いないでござろう。
『――剣闘武術祭2日目、決着!』
試合終了のゴングがアリーナ会場に
響き渡り、構築された仮想空間が
虫食い式で消えていった。
会場の天井に設置された巨大モニターには、
デカデカと選手たちの戦果が
ランキングとして表示されていた。
【剣闘武術祭・弐の陣〜ランキング〜】
1st 20point 李・映夏
2nd 18point 風真・いろは
3nd 16point 大島・二以奈
4th. 15point 神崎・アーデルハイド
5th. 13point 夏目・祈
やはり、初日で手痛い減点を
くらったAチームの面々が
上位に食い込むのは難しいようだ。
「フッ……妾が頂点か。
これぞ孔明の策の力。当然の結果よ。」
『地の利の利用、各選手らの
特徴や移動経路を完全に
先読みしたかのような立ち回り。
キャンサーの追い詰め方。
ある種、気色悪さを覚える程の狡猾さ。
私はその突き抜けた信念に心打たれた!
三国志の知略戦を彷彿させる
見事な戦いっぷりだったぞ。』
くっ……剣技だけじゃどうにも
ならない壁でござるな。
基本的に策を講じるのは
ルイ姉とこより殿に任せっきり。
そんな悪い癖が、
ここに来て裏目となったか……。
「まだまだ精進すべし……
という事でござるな。」
*
━━▶︎ DAY3 17:30
電子軍人手帳のメールアプリに
メールが送られていたので、
読んでみる。
《《 小笠原
今日は夏目さんだけに、
反省会しようと思ってる。
お弟子さんの風真さんには、悪いけど。
抜け駆けで。
次の講義、1万GPあげるから。
剣を交えて。そこで気持ち伝える。
夏目さんはセラフ部隊の誰かと
剣を交えた事ないから
びっくりするかもだけど。
もう気持ちを伝えるのを我慢できないから。
「ふぬぬぬっ……!!」
一瞬端末をぶん投げそうになったが……
気持ちを押し殺し、
弟子として返事を返す。
《《 自分
りょーかいでござるー
パタン。
多分まともな返事ではないだろうけど、
こう返せば大体大丈夫でござる。
「よぉいろは。
一瞬スゲー顔になってたが、大丈夫か?」
「あ、ラプ殿。」
「んだよ。
吾輩が声かけてきちゃ悪いか。」
別に悪いとかは無い。
むしろ、空いた時間の使い方を
考えようとしてた所だし……
ラプ殿はそういう時間の使い方が
上手そうだ。
「ねぇラプ殿。」
「何だ?」
「暇つぶしにお勧めな
過ごし方とかって……
あったりするでござるか?」
「あー、あるにはあるが。
ただ時間を潰すってのも勿体無いだろ。」
「何か生産的な事をしろって
事でござるか。」
「いろは、
お前は何もかもを固く考え過ぎだ。
柔軟な視野を持たねば、
そばにある筈の近道を見落とす事になる。
それって純粋に……損じゃねェか。」
ラプ殿は、朗らかな笑みで返した。
(風真が……固く考え過ぎてる?)
「そうかもしれないでござるな。」
パンっ!
勢いよく拍手し、
蟹のようなポーズを取るラプ殿。
カバディでも
おっ始めるつもりなのだろうか。
「おっしゃ行くぞぉ!
ブティックショッピングぅ!!」
「ブティックぅうっ!?
なんでぇーー!?」
何がどうしてその発想に
至るのでござるか!
この総帥、相変わらずフリーダム過ぎで
ござるぅう!
「気にするな!
GPならそれなりに稼いだ!
吾輩の奢りだ。気にせずイメチェンしろ!」
「違う違う違ーーう!
別に風真イメチェン望んでないで
ござるよぉぉおー!!」
「違わん! 総帥命令だ!
逆らったら切腹だぞ!!」
「ふざけんなチビぃいい!
パワハラで訴えんぞぉおお!!」
「幹部に弁護して貰うから
余裕でーす! ざまぁー侍ーー!」
「「……ぷっ。
あははははははっ!!」」
ああ、やっぱこうやって
ラプ殿と馬鹿騒ぎするの……楽しい。
まるで小さい時から友達で
あったかのような、この感覚。
(もっと早く、出逢いたかったで
ござる……。)
ダダダダっ!
ん、誰かが駆け足で近づいてきてる?
「おーーい、ラプちゃーん!
いろはちゃーーん!」
「「――沙花叉ぁ!?」」
安堵して足を止めたクロヱ殿が、
顔を上げた。
「良かったぁ……まだ遠くには
行ってなかったんだね。」
「沙花叉、そんなに焦ってどうした?
緊急事態か。」
「それがさぁ、凄いんだよ!
31Aのみんながカフェテリアで
ライブやるんだって!!」
「ライブ……だと?」
「そうだよライブだよ!
行くしかないっしょ!!」
目を輝かすクロヱ殿に気圧され、
ラプ殿も折れた。
……というより、興味が逸れた。
この場合、そういった方が正しい。
「すまんいろは!
ショッピングはまた今度な!!
おっしゃ行くぞライブぅぅうう!
案内しろ沙花叉ぁ!!」
「おっけおっけおけーん♪
そんじゃ、レッツゴーしますかねぇ!」
ショッピング行こうって
自分から誘っておいて。
……結局はこうなるのでござるか。
(ラプ殿の……馬鹿。)
「あれ、いろはちゃん。
不服そうな顔してどったの?
ライブ嫌い?」
「なななな、何でもないでござる!
噂のライブ、
風真も楽しみでござるよ!!」
「そんじゃあみんなでぇ〜〜」
「「「レッツゴー!!!」」」
………………。
……。
――セラフ基地、カフェテリア店内。
セラフ剣闘祭の広告ばかりが
掲示板で目立ってた所為か、
今夜ライブがあるという事を忘れていた。
クロヱ殿曰く、このライブも
大々的に広告宣伝されてたそうだ。
それ程までに盛り上がるイベントらしく、
店内の内装もライブ専用に
カスタマイズされている。
きちっと整備された観客席には、
ルイ姉や頭ピンク師弟が既に着席していた。
「ほら、座るぞいろは。」
「わっくわくわくーん♪」
「……うん。」
席の視線の先。
仕上がったステージの上には、
31A部隊の面々の姿があった。
「みんなー、来てくれてありがとうー!
剣闘武術祭
盛り上がってるみたいだけど、
あたしらも負けないくらい
盛り上がるぜ。」
茅森殿が、ニヤリと楽器を構える。
ん、待って。
なんか目が合ったでござる。
「あー風真っち来てたんだー!
聴いていってねー!!」
「月歌っち月歌っちー!
沙花叉も応援してっぞーー!」
「任せろってクロっち!!」
この2人、マジで仲良しでござるな。
「剣闘武術祭に触発されて
書いた新曲だ。聴いてくれ……
――『Muramasa Blade!』
どうも、たかしクランベリー
(助手君野うさぎ35Pかざま隊士)です。
気がついたら、総帥以外の
holoXメンバー全員が
新衣装を公開してたので。
こちらも推しを開示しなければ
無作法というもの……
という訳で、開示した所存で御座います。
ちなみに、一番好きなポケモンは
色違いボルケニオンです。
よろしくお願いします。