こちら31Hホロックス! ぷらすみこにぇ!   作:たかしクランベリー   

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25話・鉄の竜、現る。

 

 

――『3人の聖者実験』

 

1950年代後半アメリカ。

ミシガン州イプシランティの州立病院にて。

 

自分自身をイエス・キリストと

思い込んでいる3人の統合失調症の

患者を、一緒に住まわせる実験があった。

 

当実験を提案し、実行に移した

とある心理学者が求めたモノ。

その目的とは……

 

〝一緒に生活してもらい、

交流によって妄想が

改善されるかどうかを識る為である。〟

 

当実験の経過観察では、

改善の兆しとなる

成果は得られなかった。

 

主な成果物は、フェーズ区分して2つ。

 

フェーズ1。

 

被験者らは、

「自分こそが本物の聖者である」(※1)

と口論になることもあり、ときには

激しい罵り合いに発展した。

 

フェーズ2。

 

そのうち彼らは

当件(※1)について話さなくなり、

各々の被験者らは

他の被験者2人の頭がおかしいと思い、

自分こそが〝本当の神の子〟だという

思い込みに至る……。

 

最終的には、

彼らが抱くこの自己認識……

妄信に〝変化は見られなかった〟。

 

文字通りの実験失敗。

 

2年の歳月を要して行われた

当実験に対して、

世間から多くの倫理的批判が殺到。

 

当実験の立案、

実行責任を有する博士は

のちに後悔し、

操作的で非倫理的だったと謝罪している――。

 

……例えばの話。

この心理的実験の手順や手法、

期間が違えば

どういった成果が得られるだろうか。

 

過去に行われた類似実験では、

2人の妄信者のうち1人が

自身を『偽物』だと認め。

症状の改善が見られたパターンもある。

 

その結果は、

残るもう一人が『本物』に

なったとも捉えられる。

――実に奇怪な終点結果の表れだ。

 

であれば。

当実験がもし

魔力『ラボ・プール』によって

再現、実現されたのなら……

 

被験者はどういった自己意識を持ち、

どのような変化を起こし。

〝誰になる〟のか。

 

その選択と成果は、

術者の望むモノとして出力されるだろう。

 

魔力『ラボ・プール』は、

それを起こしてしまう程の

〝効力を有している〟――。

 

要するに。

対象に対し自分が

〝博衣こより〟だと思い込ませ、

容姿や声、身体さえも瓜二つの分身に

変えてしまう事だって可能なのだ。

 

実質的な独立型分身、

――〝AIこよりの誕生〟。

それは術者にとって、

大きなメリットとなり得る。

 

そしてこれより先、

当件の類似問題(※1)に

直面した〝ナービィ達〟の

導き出す自己意識、自己認識は

どうなるのだろうか。

 

いずれ触れる真実。

その先に踏み出した彼女らが

紡ぐ考えとは――。

 

 

 

 

「待て博士ぇっ!

様子が可笑しいぞ!

周りをよく見てみろ!!」

 

「え……?」

 

博士とScrap wingの周囲を

取り囲むように浮遊する

数多の鉄屑。

 

その原因が誰のモノであるかは、

この場にいる誰もが

一瞬で理解した。

 

そして、今から

始まろうとしてる最悪の事態も。

 

「ウバシャアッ!!」

 

バチバチバチバチバチバチ!!

 

「何…………これ。」

 

荒れ狂う鉄屑の災禍に、

博士は…………。

 

「――博士ぇぇええええええっ!!!」

 

ズザザザザザァァ!!

 

竜巻の如し渦を巻く鉄屑。

その回転速度は次第に加速し、

博士の身体は渦の外へ弾き飛ばされた。

 

背から地面に叩きつけられ、

再起不能と思われていたが……

なんと博士は、立ち上がった。

 

「……ふぅ。危なかったね。」

 

「博士! 無事かっ!?」

 

「うん、なんとかね。

軍から試作用のデフレクタ発生装置を

借りてたおかげで、

最小限のダメージに抑えられたよ。」

 

最小限のダメージだと?

どうみても無傷そのものじゃねェか。

 

それに、

試作用デフレクタを

軍から貸し出してんなら、

何故吾輩たちに事前報告をしない?

 

仮にデフレクタとやらを

展開したとしても、 

無傷で済むような竜巻じゃないのは、

直接見ていた吾輩がよく分かる。

 

(何か……〝奇妙〟だ。)

 

「総帥、急に黙ってどうしたんですか。

まさかですけど、あの竜巻意外の事を

考えてるのなら……

今すぐ頭を空にして、

眼前に在る事象に目を向けるべきです。」

 

「……すまん。幹部。

全くもってその通りだ。」

 

くっ……この期に及んで

キャンサーと

関係の無い考えを巡らせるとは。

 

目紛しい状況変化に錯乱し、

無意識の内に焦燥してしまったか……。

 

「目が覚めたようですね。総帥。」

 

「あぁ、余計な思考に

リソースを割いて悪ぃな。

意地でも仕留めんぞ。」

「御意です。」

 

「「「「――!?」」」」」

 

再び戦略を練り直そうと

思考を巡らせたその時だった。

 

渦の回転速度が減速していき、

鉄屑が骨組みを作るように連結する。

続け様に、

周囲から数多の廃金属を引き寄せ、

骨に沿って鋼の受肉を施していく……

 

その間数十秒。

 

渦の消滅と同時に誕生したのは、

彼のキャンサーの新たな姿。

 

長い首で我々を見下ろす、

角の生えた鰐のような頭部。

ガッシリとした四つ脚の体躯。

 

その重量感をも気にせず

飛行を可能にしそうな……

背から広がる巨大な両翼。全長約38m。

 

偶然にしては……〝出来過ぎていた〟。

 

「にぇっ……あれって…………

ドラゴン?」

 

みこ先輩がそう形容してしまうのも

無理はない。

その場にいる誰もが、

そう感じてしまう風貌なのだから。

 

「――ウバルルルルゥジャァァアアア!」

 

「総帥、コレは本格的に不味いですね。

他部隊が彼に遭遇していたら、

まず無事では済まないでしょうね。」

 

「……あぁ。コイツと対峙する

最初の相手が我々だったのは、

不幸中の幸いと捉えても良いだろうな。」

 

「どう崩しますか。総帥。」

「…………。」

 

いろはの大技でも屠れなかった

以上、吾輩自身が

直接キメる方が良いだろう。

 

確かに奴は、

鋼鉄の受肉でかつてない程の

破壊力と防御力を手にしたが……

 

この巨体であれば、

持ち前の〝俊敏性〟を

発揮する事は不可能な筈だ。

 

先程は奴の俊敏性を考慮し、

魔力『イーグル・トリック』による

奇襲の崩しを行ったが……

的の拡張が行われれば話は別だ。

 

こうなると、純粋な火力で

崩しに入るのが最も効果的だろう。

 

(機動力の要を、徹底的に削いでやる。)

 

「貴様らよく聞け!

奴は吾輩が直接叩く。

幹部、博士は最大火力で

奴の両翼を破壊しろ!

いろはと沙花叉は脚を斬り落とせ!」

 

「みこは!?」

 

「みこ先輩は引き続き

幹部と博士の護衛だ! いいな!」

「分かったにぇ……!」

 

「おし……始めんぞぉ!!」

「「「「「――YES MY DARK!!」」」」」

 

ボゴォォンッ!!

 

幹部と博士が最大火力の砲撃を放ち、

両翼を破壊する。

 

そして、奴から怒りの反撃がくる矢先。

二つの刃が脚を斬り離した。

 

「――合技『居呂玖呂一閃』」

 

キインッ!!

 

(混乱する暇も与えん。)

 

吾輩はトランスポートで

奴の背の上に瞬間移動し、

セラフの大剣を構えた。

 

バチバチバチバチバチ…………

 

(ん……何だ?)

 

砲弾によって生じた煙の中から、

左右両方。突如として、

巨大な鉄の手が現れた。

 

破壊されて散った

金属翼の一部で造り出したのか?

待てよ……だとしたら。何の為に。

 

(まさかッ!? くっ、ダメだっ。

まだ慣れてねェから、

トランスポートの

〝連続使用が出来ねェ〟。

カラスとも離れたこの状況では、

吾輩が普通に圧殺され……)

 

ズシャャアアアアアン!!

 

「ラプ殿ぉぉおおお!!」

 

「くっ……今のは危なかったな。」

「……え?」

 

吾輩は、いろはの真横で

ネクタイを整えた。

 

「どうしたいろは。

吾輩の髪に

烏の羽根でも付いてんのか。」

「あ、いや。そうじゃなくて……」

 

「全く、危なかっかしい相手ですね。

総帥。私の『イーグル・トリック』が

間に合わなかったら

どうする気でしたか?」

 

「心配すんな。吾輩は

幹部がやってくれると信じてた。

そこらの石ころと吾輩の位置を

〝入れ替えてくれた〟んだろ。」

「ええ。その通りで御座います。」

 

「あー、そういう事でござるか。」

 

パーの手に握り拳を乗せ、

1人納得するいろは。

 

特に補足説明も要らなそうなので、

再び奴の方を警戒し観察する。

 

(やはり、電磁力で瞬時に

鉄屑を引き寄せ。

再度受肉再生したか……。)

 

バチバチバチバチバチ…………

 

ん。今度は何だ。

見たことも無い大きな鉄塊を

口元に引き寄せて来たぞ。

 

いやアレは……

丸型の『燃料タンク』ッ!?

 

あのサイズは、

タンクコンテナ車両が

運搬するレベルの大きさだ。

それが3つも電磁力で

連結してんだぞ……見紛う筈もねェ!

 

今、大口を開けたっつーコトは。

 

(ヤバいっ、このままじゃ

我々が〝全滅〟する――。)

 

「にぇあっ?

ドラゴンお腹空いたのかなぁ。

丸い鉄の塊食べようとしてるにぇ……。」

 

「――違うッ! コレはっ!!」

 

竜の牙が、燃料タンクに咬みかかる。

高電圧・高温度を纏う牙による燃料接触。

 

それは、衝突事故によって

爆破する燃料タンク車両と

同じ事象を引き起こす。

 

但し、その規模は前述した

事故とは遥かに掛け離れ……

意図的で膨大な破壊力を生み出した。

 

刹那。視界を白に染める、眩い閃光。

 

――カッ。 

 

 

……………………。

 

……………。

 

 

シュゥウウウウウッ。

 

「……けほっ、けほっ。

なっ、何が起きたにぇ!!」

 

足元を流れる黒煙。

瓦礫が散らばる

更地となった高円寺駅跡地周辺。

 

そこに奴の姿は……〝無かった〟。

 

「総帥、これは。」

 

(爆発寸前、何とか間に合ったな。)

 

「あぁ。お前らに危害が及ばんよう、

時を〝45秒〟だけ消し飛ばした。

全員無傷で済んだのはいいが……

奴を取り逃がしてしまったのも事実だ。

誰でも良い。文句があるなら

好きなだけ吾輩を責めろ。

……これは、吾輩の過失だ。」

 

「誰も責めはしませんよ。

総帥の判断は、この上なく正しいです。」

「お世辞でも助かるぞ。幹部。」

 

奴め。

自身がセラフ以外の攻撃が効かないのを

良い事に〝自爆〟を選びやがったか。

 

アイツからしたら、

我々はもう死んだも同然なんだろうな。

 

とはいえ、アイツ自身も虫の息。

そこまで遠くには移動できないし、

31Aと接敵して戦闘する余力も

残っちゃいない筈だ。

 

「追撃しますか。総帥。」

 

「いいや。今日の所は撤退だ。

奴がこれ以上の攻め手を隠し持ってる

可能性も充分にある。

もしそれをされた場合、

吾輩の魔力でも

対処しきれるか分からん。」

 

「……そうですね。

この戦闘データを軍に提出し、

より確実な戦力と戦略で

迎え打つのが現状の最善策……

流石我々の総帥、立ち回りの

組み立てが完璧です。」

 

「幹部、よく分かってるじゃないか。

つー訳だ。とっとと31Aの連中と

合流して帰投すんぞ。」

 

「お疲れ様さまだよラプちゃん。

そうだ! こよ、この

ヒールポーションあげるよぉ!」

 

「良かったでござるなぁラプ殿……」

 

キインッ!

 

フラスコが真っ二つに両断され、

中身が地面に垂れる。

 

「ラプ殿ぉ!? 

こより殿の厚意を何で!?」

 

慌てふためくいろはを一瞥し、

吾輩はそいつに目を向ける。

 

「〝こより殿の厚意〟……だと?

いろは。寝言は寝てから言うモンだぞ。」

 

「え……急にどうしちゃたの

ラプちゃん。こよはこよだよ? 

忘れちゃったの?」

 

「忘れてなんかねェよ。

ちゃんと覚えてっから、

こっちは違和感抱いてんだ。」

「何の……コト?」

 

「お前は――〝誰だ〟?」

 

 





どうも、たかしクランベリーです。

昨晩。久々に総帥の雑談成分を
たっぷり補給できて、まぁまぁ気分の
よろしい果物でございます。

というのはさておき。

先週のヘブバン公式生放送、
最高でした。
満を持して、遂に訪れた恒星戦。
1ヘブバンユーザーとして
さらなる高みを目指し、
戦い抜いていこうと思います。

よろしくお願いします。
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