こちら31Hホロックス! ぷらすみこにぇ! 作:たかしクランベリー
「え……急にどうしちゃたの
ラプちゃん。こよはこよだよ?
忘れちゃったの?」
「忘れてなんかねェよ。
ちゃんと覚えてっから、
こっちは違和感抱いてんだ。」
「何の……コト?」
「お前は――〝誰だ〟?」
静まり返る空気。
騙る存在は、未だ足掻きに動く。
「はははっ!
もうやめてよーラプちゃん!
寝言を言ってんのはそっちでしょぉ〜。」
「………………。」
「ラプ殿……。」
「猿芝居もここまで来ると、
見苦しいな。
おい、吾輩の背後に居んだろ。
いつまで『透明化』してやがる……。」
スーッ。
「キッショ……
何で分かんのかなぁ、ラプちゃん。」
「えっ!? こんこよが2人ぃ!?
ヤバい……! 頭おかしくなりそう……
どっちか〝消さなきゃ〟…………!」
言って沙花叉は、
慌てふためきながらも
鎌型セラフの切先を暫定本物の
博衣こよりに向ける。
完全に彼女の私情
ダダ漏れであるが……
本物ならばこの威嚇程度で
取り乱さないので、
余計に信憑性が増した。
「安心してよクロたん。
自分の始末くらいは、
自分で責任もってやるからさ。
――『過重力実験』。」
ズゥゥウウウウン!
沙花叉のセラフが過剰な重力負荷で
地面に落下すると同時、
騙る存在も同様に掛けられた負荷で
その場に跪いた。
「どうしたの〝もう1人の僕〟?
本物なら、これくらい解除できるよね?」
「…………!!」
「こんの偽物がぁぁああっっ!!」
遂に沙花叉が、
素手で本物に殴り掛かろうと
飛び出すが。
「クロたん。
そういうの、今は要らないよ。
――『凍結実験』。」
パキィンッ!
瞬時に沙花叉が氷塊の中へ
閉じ込められ、文字通り
氷漬けの凍結状態となった。
どうやら、本気で責任処理を
果たすつもりなのだろう。
「おい幹部、博士。
お前ら渦に巻き込まれる直前、
ワザとイーグル・トリックで
偽物と位置を入れ替えただろ。
そこらの石ころでも良かった筈だ。
どうしてそんな面倒な事をした……?
ん? まさか……。」
「……どうしたでござるか。ラプ殿。」
「成る程な。分かったぞ、
お前らのやりてぇ事。」
「にぇ?」
「?」
疑問符を浮かべるみこ先輩と侍。
今その答えを明かしてやっても
いいが……
それでは2人の目的に背く事になる。
何より。気がついた時点で
吾輩も加害者の1人だ。
あの危険な渦の中、
一切傷を負わなかったのも……
今となっては当然の事だった。
何故なら騙る存在の正体は……
「じゃあ、答えあわせと行こっか。
――解除『3人の聖者実験』。」
騙る存在が黒く染まり、
うねりうねってその形が
本来の異形へと戻っていく……
丸っこい本体に、突出した角。
バランスよく伸びる六つ脚。
セラフ隊員であれば、
よく遭遇する雑魚キャンサーだ。
「ギィ……ギィ!!」
自重を優に越える重力負荷に
耐えられず、苦しさを訴えるように
鳴くキャンサー。
その眼前には、
大砲型セラフを構える
博衣こよりの姿があった。
「このセラフも、本来は僕のもの。
一時的に貸してはいたけど……
どうだった、使い心地は?」
「ギィ……。」
「そっか。だったら、こよから
これ以上言えることはないね。
でも、一つだけ
感謝させてくれないかな。
もう1人の僕として
手を貸してくれて……ありがとう。」
バリィンッ!!
砕けたガラスのように散る、
元こよりキャンサー。
その散り様を見届けたいろはは、
絶句していた。
「…………。」
「どうしたいろは?」
「……その、なんて言うか。」
まぁ、言い辛い発言であるのは
大方予想が付く。
しかしだ。
その言い辛さに向き合う事を、
幹部や博士は望んでいる。
彼女が次のステップに至る必要な
通過儀礼を今、我々は行なってんだ。
この機会を逃せば、
成長への道が遠ざかるだけ……
吾輩の私情で
甘く見れる裁量にも、限界はある。
「おいいろは。自分の格が下がるとか、
周りからの目が気になるとか。
そんなちゃっちいモン抱えて
言い淀んでのか?
確かに、臆するっつーのは
安全な生存戦略だ。」
「…………。」
「だがな、吾輩たちが求めてんのは……
好きなのは、そんないろはじゃねぇ。
それにな。
今何をどうこう言おうが、
誰も笑わねェし、侮蔑なんかしねェ。
言ってみろ。
あの介錯を見て、何を感じた。」
「胸糞わるいでござる。」
「……あぁ。だろうな。
その気持ち、忘れんなよ。
何でそう思っちまうのか。
あの行為が意思に反して
心に粘りついちまうのか。
今夜、吾輩が教えてやんよ。」
「ラプ殿…………。」
*
━━▶︎ DAY4 13:30
アリーナ会場。
〜《SIDE『風真・いろは』》〜
『さぁ、剣闘武術祭最終日の内容は……
最後の1人になるまで闘い続ける
バトルロイヤルだぁ!』
バトルロイヤル……?
セラフ隊員同士の交戦って
色々揉めそうでござるが……。
「まさかのデスゲーム!
マジモンのデスゲーム!!」
ほら、國見殿も驚愕してるし。
『なお最後まで立っていた者に、
100ポイント進呈!』
「これまでのポイントの意味が
無いではないか!?」
「バラエティでよくあるやつ!
すごい既視感!!」
……つまり、1日目2日目の
競技は単なる前座。
決勝戦となる本戦は、
誰でも優勝の目が
有るという事でござるな。
シンプルな力押し勝負で
勝てればいいが……。
各選手の特徴や戦闘力を知った今、
『刀痕』という
アドバンテージを活かしても、
勝利にありつける可能性は
〝確実なモノじゃない〟。
特に白河殿……。
あの先輩隊員は『三光』を切らなきゃ
フィジカル負けするのは目に見えてる。
しかし。
明日のScrap wing戦が
控えてる都合上、三光の反動を
翌日に持ち越すなんて以ての外。
クロヱ殿の〝魔力〟なら、
そういうのを気にせずに
圧勝できる上。
過剰な力量差で殺める事も
無いのでござろうが……。
正直な話。
ぺこら先輩、ノエル先輩、
ポルカ先輩、らでん殿は
あの能力を絶賛してるし……
今になって、風真も喉から
手が出る程欲しい。
(って、そんな贅沢も
言ってらんないでござるよな。)
今風真にある手札で可能な、
勝ち筋のある策といったら……
彼女を挑発して、
一発勝負の
大技を打ってもらう他無い。
『お馴染みの仮想ダンジョン内にて、
出場者全員で戦ってもらう。』
「それは、対人戦ということ
でしょうか?」
『その通り。今回の武術採用の
特別ルールだ。』
「下手したら死ぬぞ……
司令官がそんな許可を
出したというのか。」
『〜♪ 〜♪♪』
白々しくそっぽを向き、
誤魔化すよう口笛を吹く司会者。
拡声器越しな分。
その震えた音程も聴き取り易く、
取り繕った感がより濃く出ている。
そんな司会が提案した
アドリブ競技の酷さに耐えられず。
國見殿の驚愕にも、拍車が掛かる。
「出してない! 絶対許可出してない!
死ぬ! 死んじゃう!!」
『お前ら正直になれ。
一度はやってみたかっただろう?
最強という称号を得るための、
熱きセラフ使い同士の闘いを。
……知っているぞ。
口では否定してるものの、
身体は闘争を求めている筈だ。』
いや、特に求めてないし。
風真ロボットに搭乗して闘うより
生身で闘うスタイルなんでござるが……
というか。
ロボットに搭乗して闘うのが
得意のはholoXでも
こより殿くらいだし。
『あたしの責任で存分に戦え!
己が剣で最強を手にしろ!!
共に戦った仲間さえも打ち倒し、
最後の1人になるまで戦い抜けッ!!
――その一閃を以て、
最強を証明せよ!!』
(あ、もう始まっちまったでござる。)
白熱する歓声を合図に、
仮想ダンジョンが構築された。
そして。
ゾロゾロと一ヶ所に集合する
選手らの頭上には、残り15秒という
カウントダウンが液晶に出ていた。
『そのカウントダウン終了後。
ダンジョン内に設置された
トランスポート誘発式ビーコンが
作動し、お前らは
各ビーコン設置地点に
強制トランスポートされる。
そしたら問答無用で試合スタートだ。
いいな。
3……2……1、スタートぉっ!!』