こちら31Hホロックス! ぷらすみこにぇ!   作:たかしクランベリー   

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27話・迷う奴ァ、弱いッ!

 

━━▶︎ DAY4 13:40

 

司会者のアナウンス通り、

風真たち出場者は、ステージ各地に

配備されたビーコン地点へ飛ばされた。

 

ステージの仕様はというと。

1日目2日目の荒廃都市を

模した戦場とは違い、

映えを重視したモノとなっていた。

 

コンテナのような長方立方体が

辺り一面に積み重なり、

独特な地形の

ステージ構造に仕上がっている。

 

恐らくは、所々に広間のような

戦いやすいスペースも

設けられているでござろう。

 

偶然にもこういう地形は、

最も『刀痕』のアドバンテージが

フル活用出来る。

 

チャキン!

 

「ふぅ……一先ずこれで、

最低限の優位性は

確保できたでござるな。」

 

風真を中心に、6方向の『刀痕』が

バランス良く500mまで刻まれる。

 

この事前設置によって、

不意の奇襲から

回避する事も容易になった。

 

刀痕は攻撃性能を持たず、

相手も利用可能という

公平性を含んだ〝縛り〟によって

接続距離に制限がないでござる。

 

しかし刀痕侵入時、

何処の刀痕座標に移動するのか。

というのは、

風真以外把握や操作が出来ない。

 

「さて……と。

あんまし気は乗らないでござるが、

刀を交えていくか。」

 

勘を頼りに、移動していく。

移動して。移動して……

 

「――って、

誰とも接敵しないやんけぇ!」

 

大事な最終決戦だというのに、

誰とも戦えず終わるなんて……

笑い話だ。

 

絶対ラプ殿に馬鹿にされる。

 

いいや。

ここで諦めては用心棒の名が廃る。

 

(証明してやるんでござるよ。

この武術祭で……!!)

 

「――『明鏡止水』。」

 

瞼を閉じ、全神経を聴覚に集中させる。

些細な音も取り溢さない。

 

(この音……駆けつければ

すぐ戦えそうな距離でござるな。)

 

ププゥンっ。

 

ちょっと焦ってトランスポートで

詰めてみたでござるが。

物陰に移動したというのもあって、

まだ気付かれてないようだ。

 

あ、1人倒れたっぽい。

 

そして、2つの足音が……止まった?

 

「……あとは。」

 

この声、夏目殿でござるか。

 

「……いざ、尋常に。」

「ああ、勝負といこう。」

 

え、待って。

風真。完全に入る

タイミング見失ったんだけど。

 

めっちゃ剣戟の音が聞こえるし、

今入ったらマジで何なんコイツって

なりそうでござるよ。

 

「いい太刀筋だ。迷いが消えている。」

「…………。」

 

「夏目。」

「……?」

 

「次の一撃、

私の信念をかけて撃とう。」

「……承知した。」

 

「〝剣を振るう理由〟は

見つけられたか?」

 

「剣を振るう理由。

……いや、見つけてはいない。

思い出した。」

 

そう言った夏目殿の声色は、

2日前よりも芯があり、

澄んだモノだった。

 

「ほう……いい目をしている。

では、行くぞ。」

「推して参る。」

 

タッ!!

 

同時に駆け上がる2つの足音。

物陰で控えてる風真でも、

その緊迫感はひしひしと伝わる。

 

「――はぁぁあああっ!!」

「ふっ――!!」

 

キインッ!! ……バタンっ。

 

「やはり、先輩部隊の長は

伊達じゃないな。

私は……鍛錬不足か。」

 

「そんな事はない。

ここまでデフレクタを削られ、

体力を消耗させられるとは

私自身……思ってもみなかった。」

 

「………………。」

「天晴れだ。〝夏目祈〟。

一剣士として、

生涯貴様を忘れる事はないだろう。」

 

「……次は負けない。」

「ああ、期待してるぞ。」

 

やばいぃ……

この空気でどう出るべきか

分からんでござるよ。

 

「そして、風真いろは。

お前はいつまで隠れているつもりだ。」

 

「ギクっ!」

 

「気づいてないと思ってたのか。

まさかだが……

このまま尻尾を巻くつもりなのか?」

 

トコトコトコ……

 

「そんなの、侍としてのプライドが

許さないでござるよ。」

 

風真は、

戦場へ歩み寄って姿を見せた。

 

「……風真。すまない。」

 

「いいでござるよ。

出遅れた風真に、

謝られる資格なんてない。

今は夏目殿がくれたバトンに、

全力で応えるのみでござる。」

 

「承知した。」

「――『刀痕・導雷』。」

 

紐状に広がる『刀痕』が、

夏目殿を繭のように優しく包み。

その場から消滅する。

 

これで気にせず、

白河殿とも剣を交えられそうだ。

 

「夏目を何処にやった?」

「安全な場所に連れてっただけで

ござるよ。夏目殿の真上で、

剣を交える訳には

行かないでござるしな。」

 

「そうか。移動する手間が

省けたのはいいな。しかし……」

「……?」

 

「軽い気持ちで

私に勝てると思うなよ。

そのバトン……今にも落ちそうだぞ。」

 

消耗の疲弊が見えない程、

彼女は美しい構えを魅せた。

 

今の言い方。

……挑発的な言葉を与える事で、

此方の初撃を

鈍らせるつもりでござろうか。

 

(騙されないでござるよ……!)

 

「靄の中を走る走者が、

ゴールに辿り着く事は決して……」

 

キインッ!!

 

風真から初撃をキメるが、

モノの見事に受け止められた。

 

(硬いっ……刃が進まない……

何処に、こんな余力がっ。)

 

「人の話は最後まで聞けと、

親に教わらなかったか。」

 

「生憎、風真は実力主義の家庭で

ござってな……

先手必勝のやり方も、

戦略として自然だったんでござるよッ!」

 

キインッ!!

 

「いつまで靄の中に居る?

私が見たいのは、

〝そんな剣ではない〟。」

 

キインッ!!

 

「もやもやもやって……!

さっきから何なんでござるか!?」

 

「まだ分からないか。

なら、小学生でも分かるように

言ってやる。」

 

ギギギギッ……。

 

鍔迫り合い、密着する刀身。

防戦を重きに置いていた

白河殿の剣が……途端に力を発揮した。

 

「迷う奴ァ……弱いッ!!」

 

――風真いろはさん。

あなたの剣には『迷い』が見えます。――

 

キインッ!!

 

「うわぁーーっ!!」

 

「さぁ、どこまで保つ。

受け切ってみせろ。『粛正』。」

 

華麗な剣撃が、

クロスの形を描きやってくる。

 

ノックバック中だというのに、

中々に容赦の無い追撃だ。

 

「てゃぁあああっ!!」

 

シュバババっ!

 

気合いの剣捌きで何とか斬り払う。

……が。

 

「もうすぐ障害物に衝突するぞ。

次はどう動……」

 

ヒュンッ。

 

「姿を消したか。

――とはいえ、今の挙動は

トランスポートではなかったな。

となると……」

 

キインッ!

 

(風真の刀痕移動斬りが

見切られた……!?)

 

一旦、距離を取らねばっ。

 

スタッ。

 

「これはもう、

バトンが落ちたも同然だな。」

「何を言ってるでござるか。

勝負はまだ、

始まったばかりでござるよ。」

 

「私はな。諦めが悪い事を

悪癖だとは思わない。

但しそれは、真っ直ぐな信念を抱え

挑んでくる者に対してだ。」

 

「風真の信念は、

歪んでる風に見えるのでござるか?」

「迷いとはそういうものだ。

恥じる必要も、臆する必要もない。」

 

何を言っても。

この会話は

地続きになりそうでござるな。

 

「風真、何に対して迷ってるのか

全く分からないでござる。

だから一つ、風真の我儘に

付き合って欲しいでござるよ。」

 

「何だ。」

 

「たった一つのお願いでござる。」

「……ほう。」

 

「お互いに渾身の一撃を撃ち合いたい。

身勝手なのは承知の上だけど……

了承できるでござるか?」

 

数秒沈黙し、白河殿は向き直った。

 

「良いだろう。それで私が

君に何かを示せるというのなら、

全力で応えてやる。……来い。」

 

 

 

時は少し戻り、

一方その頃……

 

〜《SIDE『ラプラス・ダークネス』》

 

吾輩は観覧席から一時的に離席し、

コーラを買いに行って戻った。

 

戻ってみると。

座っていた筈の席が

他の奴に取られてたり、

ガヤガヤしてたりして……

奪い返すには少々面倒そうだ。

 

(気分転換に、放映陣にお邪魔するか。)

 

お、やっぱ空いてんな。

 

「シャンク、隣。座らせて貰うぞ。」

 

眼帯をした赤髪女の真隣に座り込む。

断りを先に入れといたので、

多分大丈夫だ。

 

「おい。誰がシャンクだ。

あたしは単数呼びされる海賊に

なった覚えはないぞ。」

 

「まぁ、良いじゃねェか。

ちょっとくらい吾輩に観戦させろ。

他の席空いてねンだよ。」

 

「どうせ、ジュースでも

買いに行ってたんだろ?」

「ふっ、中々鋭いじゃねェか。」

 

吾輩はテーブルに買いたて

コーラを置き、モニターに目を向ける。

 

「そのジュース、開けないのか。」

「ああ、これか。

……祝杯用として、取っておく。」

 

「へー、えらく信用するじゃないか。」

「吾輩が選んだ『用心棒』だ。

こんな小さな催事で負けるような

タマじゃねェ。」

 

「どうだろうな。

画面の中の彼女を見てみろ。

結構……危なっかしいぞ。」

「……どれ。」

 

キインッ! キインッ!

 

ん? 何だこの戦い方は?

 

どうしてだ。

何故、〝札を引かない〟。

役を使う気がないのか……。

 

この程度の相手、

『三光』以上を開門すれば

余裕で勝てんだろ。

 

まさかいろはアイツっ……

 

(大馬鹿モンかよ……ッ。)

 

「いや、思ったより風真が

優勢に進んでいってるな。

さっきの危うさは、

あたしの杞憂か。」

「…………。」

 

「『刀痕』で攻撃の手数を増やした

風真いろはに対し。

連戦でデフレクタを大幅に失い、

互角の鍔迫り合いも

ままならない程

体力を消耗した白河ユイナ。」

 

「これって…………」

 

「ああ。

風真いろはの勝ちだ。」

 

――〝最強〟の戦跡、

アリーナに刻む!!

 

 

 

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