こちら31Hホロックス! ぷらすみこにぇ!   作:たかしクランベリー   

28 / 32
28話・総帥との花見酒

 

━━▶︎ DAY???

 

ハーバリウム星。ウォレスの花園。

 

風真はラプ殿に連れられ、

とある星の観光に行っていた。

当人曰く、2人きりで話したいとの事。

 

ジャキンジャキン星でも

生い茂った緑や

花々の咲く草原を観れるが……

 

連れてこられたこの場所は、

生涯見てきた自然風景を

凌駕する程に美しかった。

 

造られたモノだと

分かっていても、

感動を覚えずにはいられない。

 

色彩のバランス、配置、

光の当たり方。

個々で咲き揺れる花々が、

お互いの美しさを高め合ってて……

全てが計算され尽くした

自然アートにも思えてくる。

 

そよ風の運ぶ

積み重なった芳香も、

一切の雑味なく

鼻腔を心地よく撫できて……

ただひたすらに、気持ちがいい。

 

まさに『百花繚乱』。

この景色を生み出すために

頑張った人々を、心の底から讃えたい。

 

(こんな幻想……

実在するんでござるな。)

 

「――綺麗だろ。いろは。

此処はな、『マルコ博士』の

お気に入りスポットだったんだ。

あいつ、有給休暇とったら

必ず此処にくんだぜ。」

 

遠い目をして、ラプ殿はそう告げた。

 

「ラプ殿は、どうなんでござるか?」

 

「吾輩も……好きだ。

まぁ、何たって

宇宙四大文化遺産の一つだしな。

ファンは宇宙中に

何兆も居るって噂もある。」

 

「確かに、居そうござるな。」

「あぁ。」

 

ラプ殿は頷くと、

広めの空きスペースに

レジャーシートを敷いて座り込んだ。

 

そして、風真に手招きをする。

 

「ほら、それなりに疲れただろうし。

いろはも座れよ。」

 

正直、ミリも疲れてないでござるが。

彼女なりの気遣いだろうと察し、

横に座った。

 

「ルイ姉やこより殿は、

連れてこなくて

良かったんでござるか? 

折角の休暇なのに、

この絶景を2人占めするなんて……

罰当たりでござるよ。」

 

「罰当たり?

何言ってんだおめェ。

この吾輩が、

意味も無くサシで

花見酒すると思ってんのか。」

 

「……花見酒?」

「そうだ。世の中ってのはなァ、

サシでしか交わせねェ

話がいくつもあンだよ。」

 

カポッ。……トプトプトプっ。

 

瓶詰め酒の栓を開け、

用意していた2つの酒枡に

中身を注ぐ。

 

ひたひたと酒枡へ満たされる

香り高い水面。

それが映すは、澄み渡った蒼穹。

 

ラプ殿の注ぐ所作は、

料亭のベテラン女将を

想起させるまでに洗練されていた。

 

「…………。」

 

「どうした? 

景色が美しくて言葉も出ねェか?

その気持ち、

分からんでもねェが……

折角の呑みの席で、

最高の肴もあんだしさ。

ちったぁ愉しめよ。」

 

「そうでござるな。」

 

「ちなみにこの酒は、

『雪花酒蔵』の特選品だ。

宇宙酒評論サークルの

ラミィやらでんが太鼓判を押してる

逸品だぞ。ちゃんと味わえよ。」

 

(どうして……)

 

「どうしてラプ殿は、

風真にそこまで

尽くしてくれるのでござるか?」

 

「深ぇ理由なんかねぇさ。

吾輩の行動動機は基本……

単なる〝気まぐれ〟。

誰かに従ったり振り回される

生き方なんて真っ平御免だ。

誰に何言われようが、

自分のスタンスを

変えようとは思わねェ。

……いろは、お前はどうだ?」

 

「風真は……」

 

ひゅぉぉぉっ!

 

一際大きな風が凪いだ。 

 

靡く白銀の髪が、

華やかな香りを纏って、

普段よりも艶っぽく見える。

 

「いいか、いろは。」

「…………。」

 

「風真……お前がこの先どうなろうと

吾輩の『用心棒』だ。

もう、お前は許されていいんだ。

他の誰がなんと言おうと、

この吾輩が許す。」

「…………。」

 

ゴクリと酒を呑み、ラプ殿が向き直る。

 

「急に黙んなよ。

無言になられると、吾輩だって

寂しいんだからな。」

「はは、ごめんでござる。」

 

「やっぱ花園が良過ぎて、

言葉も出ねぇ感じか。

……いいよな。それぞれの花が、

自分っていうのを

一生懸命だしててさ。」

 

「うん……一つ一つ立派だけど、

誰も喧嘩してないでござるよ。」

 

「でもな、コイツらにも様々な

繋がりってのがあって。

それらに支えられながら咲いてんだ。

土壌、雨、太陽。

どれか一つが欠如してりゃ、

伸び伸びと元気に生きらんねぇ。」

 

「そうでござるな。」

 

「そこで一つ、吾輩は

個人的に気になる事がある。

いろは。お前の家庭環境は

劣悪と言っても

過言じゃないモノだった筈だ。

……であるにも関わらず、

何故、真っ直ぐな人間で居られる。」

 

ああ。そっか。

 

ラプ殿が知りたかったのは、

踏み入りたかったのは……

こういう話でござったか。

 

確かに、多人数の前で

訊いていい話題じゃない。

 

「風真が不貞腐れずに

真っ直ぐ育った理由でござるか。

そうでござるなぁ……

大五郎お爺ちゃんと、らでん殿が

居てくれたお陰かもしれない。

どうしようもなく

心が張り裂けそうな時、

いつも風真を色んな所に

連れてってくれたでござるよ。」

 

ラプ殿は

風真の言葉で満足したのか、

朗らかな笑みをゆったりと浮かべた。

 

「そうか、良かったな。

ちゃんとした心の拠り所があって。

その〝繋がり〟……忘れんなよ。」

 

 

…………………………。

 

 

…………。

 

 

アリーナ会場。

 

風真は大の字で床に背をつけ、

倒れていた。

 

今はというと。

構築空間の天井をボーッと眺めて、

遠い思い出に耽っていた。

 

(風真の……

『完敗』でござるな。)

 

「不完全燃焼で敗北した気分はどうだ?

――〝風真いろは〟。」

 

「やけに挑発めいた煽りでござるな。

風真の神経を逆撫でして、

何になるんでござるか。」

 

「気分はどうだと訊いてるんだ。

御託を並べるよりも先、

先輩の質問に答えるのが

礼儀というモノだ。」

 

「……何とも言えないでござるよ。」

 

「だろうな。

……風真流の剣技を振るい、

勝利を狙うことも出来た筈だ。

だがお前は、

素の剣術と生得能力の

『刀痕』のみで私に挑んだ。

己が剣術を交わし合う

祭典において、

これ程の無礼があるか。」

 

やはり、

見透かされていたでござるか。

 

「風真は、お師殿の弟子として

勝利を収めたかった。

風真流のやり方で勝ったとしても、

それは風真流の強さであって……

お師殿が与えた

新しい強さの証明にはならない。」

 

「私が聞きたいのは、

そんな取り繕った言伝ではない。

これは個人的な見解でしかないが……

風真流の真髄は、

発動後の反動を伴う

特殊な剣術なのだろう。

恐らくそれは、数日間も身動きが

取れなくなるレベルの

奥の手だったりしてな。」

 

身動きが出来ないなんて

モノじゃない。

段階によっては……命だって。

 

いや、

こんな事は言うべきじゃないか。

 

「何も言ってないのに、

なんで分かるんでござるか。」

 

「私の管轄する部隊にも、

酷似した能力を持つ隊員が居てな。

抑制をした立ち回りっていうのが、

嫌でも理解できてしまうんだ。

つまる所。明日の任務に

支障を来たさないよう、

敢えて『温存』した。

違うか……風真いろは。」

 

丸裸。

100点満点の透視。

もう反論の余地すらない。

 

実は風真って、

そんなに分かりやすい子

だったのでござろうか。

 

「その通りでござるよ。

明日から標的となる

〝件のキャンサー〟は、

風真の全てをぶつけても勝てるか

どうか分からない。

だからほんの少しだけでも、

体力に余裕を持っておきたかった。」

 

「…………。」

 

こんな形で

自白する羽目になるなんて……

今日の風真、

とことんダサいでござるな。

 

「期待をしてくれたお師殿や夏目殿、

31Hのみんなを

裏切る形になったでござるが、

それでも、未来を護る可能性に

全力投球したいのでござるよ。」

 

「であれば、先輩として

一つ助言してやろう。

〝今に全力を注いだ思い出〟

ほど尊いモノはない。

故に。

未来の為に今を迷うっていうのは、

のちの後悔に

繋がる要因となり得る。

あの時あーしておけば良かった。

なんて戯言は一切通用しない。

……それが、世界の常だ。

だから――」

 

言って白河殿は、手を差し伸べた。

風真はその手を取り、立ち上がる。

 

「また次の祭典。

風真流の流儀を以て、

本気で私に挑んでくれ。

その時は私も、

喜んで本気を見せよう。」

 

「白河殿……ありがとうでござる。

次は、負けないでござるよ。」

「ああ。」

 

ピリリリリっ!

 

(ん? 

こんな時に『手帳』のメール?)

 

空気を読まないメールタイミング。

大凡誰のメールか分かるが、

一応白河殿に断りを入れて確認する。

 

《《ラプラス

 

吾輩が今夜いろはに

説教がてら言いたかった事、

ほとんど言われた。

 

くやしい。

今日はテキトーに駄弁って

幹部とハンバーグたべる。

 

《《自分

 

……りょーかいでござるー。 (^_^;)

 

(やっぱ締まらないなぁ……この総帥。)

 

まぁ、そういう所も含めて

愛らしい部分ではあるでござるが。

 

「どうした、風真。」

「んーや、何でもないでござる。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





どうも、たかしクランベリーです。

最近、青汁の白桃フレーバー
みたいなヤツ飲んだら意外と
美味くて、びっくりした果物です。

……という話はさておき。

断章ゴールに向かって
投稿頻度ブチ上げていこうと
思います。

よろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。