こちら31Hホロックス! ぷらすみこにぇ! 作:たかしクランベリー
「はいUNOぉぉお!
みこの勝ちぃぃいいい!!
にぇぇええええいっ★★」
みこ先輩が、これ見よがしに
ガッツポーズを取り。
吾輩を煽り散らかす。
最下位争いから脱した程度で
ここまで煽れるのは、
最早天然ボケのレベルを
超越していると言ってもいい。
「流石です、みこ姉さん!
そういう凄さにこよは、
痺れる憧れるぅ♪」
「おいこよォ!」
「はいぃ!」
「もっとみこを褒め称えろォ!
今一度、みこがエリートな先輩で
ある事を皆に証明してやるのだ……!」
「はい! こより、
精一杯みこ姉さんを
讃えていこうと思います!」
「うむ……苦しゅうない。」
「くっ、次はこうはいかんぞ!」
「あれれぇ〜ラプ殿ぉ?
まぁ〜た最下位でござるかぁ〜?
総帥のくせに3連敗だなんて、
弱弱でござるなぁ〜……ぷぷっ。」
追い討ちをかけるように、
風真が横から続いて煽ってくる。
いつもそうだ。
普段は周りに対し
お淑やかに振る舞うくせに、
隙さえあれば、吾輩に対して
内に秘めた生意気さを
全力でぶつけてくるのである。
「うっ、うるせぇぞ風真ぁ!
わ、吾輩だってまだ本気を
出してないだけだ!
吾輩が本気出したら
ゲームにならんだろうがッ!」
「えー、そんなにラプ殿強いのぉ〜?
風真怖ぁ〜い……ぷぷっ。」
風真コイツ……
分かって言ってやがる。
真に縛るべきは掃除屋じゃなくて、
この用心棒なのではないかと
錯覚しそうだ。
「ねぇぇえっ!
沙花叉も遊びたいよぉぉおっ!
変な事言ったの謝るから、
縄解いてよぉぉお!」
「何を言ってるのだ?
沙花叉、お前はこの異界に於いて
貴重な交渉材料なんだ。
そう易々と解放する訳ないだろ。
それに……我々とて
只遊び呆けている訳ではない。」
「……え?」
「どういう事だにぇ?」
……そう。
この異界の開けた場所で、
レジャーシートを引いてUNOを
しているのには理由がある。
吾輩たちは、転移魔法によって
主力艦ダークマターを
スペースディーラーへと送り。
現在、戦艦の状態を詳察させている。
その詳察結果が
電話でやってくるのを
待っている最中なのだ。
勿論。約半年分の野営物資を
携えて上陸したので、
多少の修理期間は全然待てる。
修理費が予想外の額だろうと、
沙花叉の口座で
長期的なローンを組めば
なんとかなるだろう。
さて。
早ければそろそろ掛かってくる
頃合いだが……
ピリリリリリッ!
「来ましたね。総帥。」
「ああ。丁度求めていた所だ。」
吾輩はスペースデバイスの
通信を繋ぎ、応答した。
『もしもーし!
こちら、スペースディーラー
第七銀河支部店でーす。
そちらの連絡相手は、
holoX総帥のダークネス様で
お間違いないでしょうか?』
「ああ。間違ってなどない。
吾輩がholoX総帥を務めている
ラプラス・ダークネスだ。」
『分かりました。
では詳察結果の方をお伝えしますね。
……これ、結構いっちゃってますね。』
「ざっくりし過ぎだろ!
もっと詳細に述べろよ!?」
「えっ!? イッちゃってる!?
ラプちゃん、誰かと出航してるの!?」
「してねーわ!
つーか、どこまで
頭ピンクコヨーテなんだよッ!
頼むから今はその煩悩を抑えろ!」
「こっ、こよは
頭ピンクコヨーテじゃないもん!」
「こよ……少し頭を冷やすにぇ。」
「……ごめんなさい。みこ姉さん。
こよが勝手に
盛り上がってしまって……」
「分かってくれたならいいんだ。
今度マヨネーズ一本
奢ってやるにぇ。」
「いいんですか!?
ありがとうございます!」
まさか、こんな形でみこ先輩が
役立つとはな。
吾輩でも予想できなかった。
正直博士は、
自分や鷹嶺ルイでも
首輪をつけれないレベルの
狂犬なので案外助かる。
この際。
みこ先輩のholoX入社を
視野に入れてみるのもアリだな……
って、そうじゃない。
「待て待て待て!
吾輩への謝罪はないのか!?」
「ないけど、それがどうしたの?」
うっわ。
さも当然のように答えたよ。
……もうダメだわ。
多分、何度訊いても
この返事しか来ないだろ……。
『あ、あのー? 総帥さん?』
「すまない。
少し取り乱してしまったな。
詳細についてはもう述べんでいい。
ダークマターの
現状況は大凡伝わった。
取り敢えず、現時点で推定される
修理費や修理期間を教えてくれ。」
『えーとそうですねぇ。
ざっと3年で、費用は
2億スペースドルくらいですかねぇ。』
「……は?」
いやいやいや、何かの冗談だろ。
だって吾輩たち、
約半年分の野営物資しかないよ?
ちょっとぶつけただけじゃん。
そんな修理費嵩むことある?
修理期間も長過ぎじゃね。
最強の侵略集団でも、
飢餓で普通に死ぬぞ?
『どうしました?』
「あ、あのー。
修理期間とか、修理費とか……
なんかヤバくないっすか?」
『はい。ヤバいですね。
ヤバいですが、これでも
最大限譲歩した方ですよ。
貴女の母さん怒ったら、
こちらもヤバいんで。』
「だって、
ちょっとぶつけただけじゃん。
一応吾輩たちの戦艦、
そこらの一般戦艦より
丈夫に出来てるよね?
そんな一瞬でボロボロになんの?」
『そりゃあアンタ達、
200年くらい戦艦の
定期点検サボってましたよね?
今更急にガタが来ても、
文句言えない立場っすよ。』
「……うっ。」
(くっ、痛い所を突いてくるなぁ。
この店員。)
『もしかしてですけど、
定期点検代から浮いた分のお金、
好き勝手使ってたりとか
してるんじゃないですか。あなた達。
それが事実だとしたら、
我々を責める権利はありませんよね?
むしろ、至極当然の自業自得としか
言いようがありません。』
あーやっべ。
完全にバレてるわこれ。
見透かされまくってるよ。
『で……実際の所どうなんですか?
総帥さん。』
おいお前ら。
何故吾輩にそんな冷たい目を向ける。
お前らだって浮いた金で
ヒャッハーした側だろうが。
もうヤダ……
何で総帥やってんだろ吾輩。
泣きそうだよ。
「あっ、あー。すみませんでした。
我々が全面的に悪かったっす。
修理費は沙花叉って奴の口座で
ローンを組んで下さい。
数百年かかるでしょうが……
まぁ、お願いします。」
『分っかりやしたーー!!』
プチっ……。
通信が切れた。
「……総帥。」
「ははっ、分かっていたさ。
こうなる事くらい。
……どうしよ幹部、
我々マジで終わりかな……。」
「いいえ。諦めるのはまだ早計かと。」
幹部が琥珀色の瞳で遠方を覗き、
希望的な発言をした。
「何っ!?」
「先程衝突した巨大生物を、
瀕死寸前までに追い詰めた
先住民たちが居ます。」
「……つまり。」
「ええ。何故人間に擬態しているのか
分かりませんが、彼らと共生出来れば
3年以上の安定した衣食住が
得られるかもしれません。」
「都合よく生贄も要るんだし、
こよは上手くいくと思うなー♪」
「こよちゃんのサイコパス博士っ!
ふんだっ! 沙花叉怒ったもん!」
「好きに怒っていいぞ。
どうせお前の歩む
未来は変わらんからな。」
「さっきからみんな
沙花叉にあたりキツくない!?
holoXってこんな薄情集団だったの!?
ねぇ……
ルイルイは沙花叉の味方だよね……?」
「………………。」
鷹嶺ルイはそっぽを向いた。
吾輩たちも沙花叉に
色々思う所があるが、
贔屓的に振る舞えない。
犠牲に情を抱いては、
交渉など成立しないからだ。
だから今は、
泣きたい気持ちを押し殺し、
今我々は冷たく接している。
特に幹部には……
一番苦しい決断だろう。
holoX内で誰よりも
沙花叉の面倒を見ていたんだ。
吾輩でも、
彼女にかけられる言葉はない。
だがそれでも、
吾輩が今出来ることはある。
総帥として皆の道を切り拓き、
指揮し、その先に繋げる。
何があっても、大切な部下達を
飢餓させるような真似はさせない。
(……先住民との共生交渉か。
今まで侵略行為しかして
こなかった我々に上手くいくだろうか。
いいや、弱気になってはダメだ。
……動こう。)
「方針は決まったな。
風真、衝突した場所に『刀痕』は
付けられるか?」
「ラプ殿は風真の剣術を
甘く見過ぎでござるよ。」
「……出来るんだな?」
「当然でござる。
巻き込む可能性を考慮して、
皆殿には一旦離れて貰えると
助かるでござるよ。」
「分かった。
貴様ら、少し後方に下がれ。」
「「「「「――YES MY DARK!!」」」」」
一同が下がったのを確認した風真が、
瞼を閉じながら腰を低くし、
刀を構えた。
スーッと息を吸い、力を溜めていく。
そして、
居合に合わせ目をカッと開いた。
「――風真流・居合術抜刀『藤波』ッ!」
キィインッ!!
津波のように
高く長い翡翠色の一閃が、
刀から解き放たれる。
めっちゃカッコいいし、映える。
まぁ……一瞬だったけど。
*
………………。
……。
時は少し戻り。
〜SIDE『蒼井・えりか』〜
(ぽかーん)
「……蒼井っ! 蒼井ッ!!」
「――ハッ!」
意識が覚めた。
周りのみんなは、無事だった。
私を呼びかけて起こしてくれたのは、
いちごさんだ。
みんなは無事で、
どこか安堵した空気さえ
漂ってるように感じる。
けれど……いちごさんだけは、
蒼井に向ける表情が
怒気に染まって見えた。
「蒼井……答えろよ。
さっきの力は何だ?
デフレクタ残量は
ほぼ残っていなかった筈だ。
一体『何』をしようとしていた?」