こちら31Hホロックス! ぷらすみこにぇ! 作:たかしクランベリー
━━━▶︎ DAY5 13:10
高円寺駅跡地。ポイント丁。
《〜SIDE『ラプラス・ダークネス』》
「ギャォォオオオオオッ!!」
セラフ部隊が選抜した
合同部隊を前に、
完全回復を果たした鉄の竜が
咆哮を上げ降り立つ。
「これが……Scrap wing。」
「間違いねェみたいだぞ。月歌。」
「これを相手に
無傷で帰還するなんて……
蒼井には到底真似できません。」
「蒼井、今日はアイツをぶっ倒すんだろ。
こちとら最大戦力だ。
何もビビる必要なんかねェ。
なぁ……すもも。」
「姉さんの言う通りにゃ。」
「お弟子さん。
〝覚悟〟はいいですか?」
「分かってるでござるよ。」
ブウンッ!
各々が化け物を前に
言葉を述べる中。
いろはは
師匠とやらの問いに鼓舞され、
セラフの刀を構える。
さて。
ここは総帥らしく、
戦いの火蓋を切るとしよう。
「貴様らッ!
奴のやり方は事前に
打ち合わせした通りだ!
キメるぞ、今ここでッ……!!」
「――ッ!
攻撃がくるにゃ!?」
バサァッ。
白き翼を広げた少女が
一同の最前線に飛び、唱える。
「〝お願い〟 〝護って〟」
タッ、タッタッ……ダッ。タンっ!
その背後で高くジャンプをし、
羽搏く彼女の肩を右手で掴むと。
ここぞと自分を
アピールする巫女の姿もあった。
「みこを忘れて貰っちゃあ
困るにぇ……!!」
両者は意思を結託したかのような
顔付きで頷き合い、
守護の力を発揮した。
「「――合技
『えりぃと・エンジェルズウィング』」」
白き両翼が桜色に変色し、
桜吹雪が散る。
それと同時に
展開された障壁は、
ものの見事に竜の猛攻を抑え続ける。
アドリブにしては、想像を
遥かに越えた強固な守りだった。
「「はぁぁああああああっ!!」」
パァンっ!!
攻撃こそが最大の防御とも
言われるが、
その逆も然り。
逸脱した防御は時として、
攻め手にさえ牙を向く。
防御の裏返し。
鉄の竜は、突如として壁に
弾き飛ばされた。
「グギギギギァーッ」
予想外のノックバックに怯む竜。
吾輩は、内心ほくそ笑んだ。
(待ってたぜ……その『隙』を!)
「今だッ!
『支援スキル』を展開し、
一斉に叩き込むぞ!!」
「――任せて!!
〝願いよ叶え〟 〝いつの日か〟
〝Wow★Yeah〟」
天高くに打ち放つ眩い光の導きで、
我々のエネルギーが増幅する。
攻めの態勢は今、整いつつある。
「〝無駄に綺麗な星空だな〟
〝最後がこんな夜もよかろう〟」
星の輝きが、白河隊員を導いた。
「感謝する。樋口。」
「勘違いするな。白河ユイナ。
私が手を貸したからには、
それ相応の一撃を撃ってもらうぞ。」
「……分かってる。」
2人が会心の一撃を準備する間も、
攻めの手は緩めない。
強化を貰って早々、
竜の前脚に狙いをつける
二つの影があった。
両者は3点のエネルギーを
中空に蓄積する。
「〝お前は今から塵となる〟
――これでなぁッ!!」
「〝退屈しのぎに派手なのいくにゃ〟
――にゃっ!!」
左右から放たれる凝縮の一撃。
それは激しく炸裂し、
奴の両前脚を粉々に砕いた。
続けて。
上空からも狙いを定める光があった。
「〝番えましょう〟 〝破魔の矢を〟
――せいっ!!」
周囲に光の粒子エネルギーが
散布され、浮遊する。
そして、吾輩と茅森も攻撃に続く。
「やるぞ茅森。」
「おうよ!」
宙を舞い、黒と虹の軌跡を描く。
幾重にも重なる斬撃の線は、
恐ろしい解体包囲網と化していた。
「「――合技『漆黒・夢幻泡影』」」
「ウギィァアアアアアアアッ!」
自身の創り出した鉄の鎧が
剥がれてくのに苛立ちを覚えたのか。
かつてない断末魔をあげる
Scrap wing。
そうして
崩れ落ちる鉄塊の中から、
漸く姿を見せる本体。
その露出を、この場にいる誰もが
見逃さなかった。
今期の武術祭で優勝を飾った
彼女は既に、間合いを捉えていた。
天に掲げた剣に祈りを捧げ、
神々しき光で裁きの一撃を放つ。
「〝人類を見くびるな〟
――せいっ!!」
確実に通った。本体への一閃。
先程の威勢の良さが
嘘だったように、ヤツは沈黙する。
しかし、そんな
安堵の瞬間も束の間だった。
「やったか……!?」
「そのお決まり
フラグやめろ月歌。
復帰したらどうすんだよ……。」
「でも……これ程強力な個体が、
未だに尖塔化しないのも
不自然だわ。」
「ええ、それもその筈です。東城さん。
彼の呪力量は低下するどころか、
――今、〝増幅〟しています。」
「何言ってんだよ……こじゅ。」
黙する怪鳥の眼光が、
刹那、赫く光る。
ギラァン!
……ゴゴゴゴゴゴ。
「地響きか――ひひゃぁっ!
面白くなってきたのォ!!」
「全然面白くありませんが!!」
「蒼井さん! さくらさん!
今すぐ合技式専用スキルの
準備をしてくださいッ!
来ます。『呪力の起こり』が……!!」
「ウバシャアアアアア!!」
Scrap wingの激昂に
呼応するように、
周囲から
ありとあらゆる金属製品が
集約していく……
誰もが考えたくない
1番最悪のケースが今、
訪れようとしている。
形成される8つの巨大な骨組み。
金属同士が乱雑に
接続する不協和音を奏で、
更なる鉄の受肉が施される――。
奴の最終選択肢が
『自爆』であれば、防壁展開系の
スキルで対処も十分可能だった。
最も望まないケース。
それは、
鉄の鎧を更に強固なモノとし
進化を遂げること。
ドラゴンというスケールに
収まっていれば、
まだ応戦の余地はあった。
今の相手は、
最早継戦するのすら
馬鹿らしくなってくる。
周辺のビルを薙ぎ倒しながら
全貌を露わす8頭の巨龍……
いや、蛇か。
殺意と怒りに満ちた
生ける要塞が、
口元から白煙を吹き出し
こちらを覗く。
「何だよアレ……
あたしは、悪い夢でも見てんのか?」
「月歌……。」
「そんなっ……日本神話だけの
〝存在のはず〟っ、どうして。」
「――『特級仮想怨霊・八俣遠呂智』
我々術師の世界では、
そう呼ばれています。
覚えてますか、茅森さん。
以前キャンサーに
呪霊が憑いた時のこと。
例に漏れず。……あの姿こそが、
彼本来の姿なのです。」
「…………こんなん、
どう祓えってんだよ。こじゅ。」
「諦めるな茅森!
桐生! 日本神話の伝承で、
八俣遠呂智はどう退治されたッ!?
そこに攻略の糸口がある筈だ!」
「〝素戔嗚尊は計りありて毒の酒を釀み、
以ちいて飲ませた。
八岐大蛇は酔いて睡る――。〟
これが伝承にて綴られた攻略法です。
当然。この状況下でキャンサーが
飲酒をし、隙を晒す筈もありません。
ごめんなさい、白河さん。
わたくしが未熟者なばかりに。」
「くっ………桐生は悪くない。」
「――であれば、強行突破あるのみ。
我が『あの力』を振るう他ない。
白河、蔵。我に使わせてくれ。」
「ダメだよ月城ちゃん!
アンタの『ソレ』が
いくら強力だとしても、
このバケモンを屠れる保証は
何処にもないよ!!
あたいは認めないよ!!」
30Gの連中も、
何か秘策を持ってるようだが……
それは吾輩も同じだ。
「幹部、
吾輩に『力』を使わせてくれ。」
「許可できません。
確かに、総帥の抑制していた力を
一部解放すれば、
容易く葬れるでしょう。
しかし、私の『炎』を以てしても……
護れる命の数に
〝限り〟があるんです。」
「じゃあどうしろってんだよ!
このままみこ先輩と蒼井が
踏ん張って防いでるのを
黙って見てろって言うのかよ!!」
「それは違うでござるよ。ラプ殿。」
キインッ。
地面に、6メートルほどの
『刀痕』が敷かれた。
どうやらいろはだけは、
吾輩のやり方に
賛同してくれるようだ。
「『刀痕』か!
よくやったぞいろは!
これで貴様ら全員が退却すれば、
吾輩とScrapwingの
一騎打ちに持ち込める!!」
「ラプ殿1人に、
そんな危ない事は
させたくないでござるよ。
この戦場から退却するのは、
風真以外の仲間でござる。」
「……いろは?」
「漸くですか。お弟子さん。
あとの避難誘導は、
わたしにお任せください。
全ての責任は、わたしが負います。
――集合ぉおっ!!」
「「「「「「―――!!!」」」」」」
「みなさん!
『刀痕』を使って直ちに
戦線離脱してください!!
今の戦力では、
到底太刀打ち出来ません!」
どうしてだ。
いろはは……何を考えて……
どうしてだ?
いつもは、
手に取るように思考がわかるのに……
「その刀痕は、
セラフ基地のナービィ広場に
設置した『刀痕』に
繋がってるでござる。」
違う。吾輩が知りたいのは……
「風真、見つけたんでござるよ。
剣を振るうもう一つの理由。
それは、気兼ねない繋がりを
紡いで、強く結んで、護る剣。
……風真はその在り方を、
最後まで大事に守り通したい。」
違う。違う。違う。
吾輩がいろはに見つけて
欲しかったのは……
「あの時潰える筈だった
風真の命は、延長された。
そこからの世界は、
花園のフラワーアーチを
潜り歩いてるように綺麗で、
ただただ眩しくて……
幸せでござった。」
「………………。」
「こんなに沢山貰った幸せを
どう返したらいいか。
実を言うと。
そんな悩ましい気持ちも、
心の隙間に
挟まってたりしてた。」
頼む。考え直してくれ。
誰でもいい。
時間を戻してくれ。
吾輩は、何処から間違えたんだ。
「……でも、そういう悩みとも、
今日でおさらばでござる。
1人の侍として、
ケジメをつけるから。」
(何もしなくていい。
返さなくていい。
もう吾輩は、充分に。)
「ラプ殿、お師殿。
holoXの皆殿、ホロメンの皆殿、
それと、セラフ部隊の皆殿……
今までありがとうでござる。
――風真流奥義、覚醒術。
『泉穴開門・五光』」
いろはの右半身に、
観世水柄の紋様が浮かび上がる。
顔や手足の皮膚を淡く照らして
飾るその色は――
間違いなく〝黄金色〟だった。
「いろ……は?」
嘘だ。
嘘だ嘘だ嘘だ。
嫌だ嫌だ嫌だ。
ガシッ。
錯乱しかけた吾輩の両肩を、
高嶺ルイが掴んだ。
そして、
真摯な眼差しをこちらに向け。
吾輩に決断を仰いだ。
「師匠と蒼井さん、
我々を除く他部隊員はみな、
『刀痕』で基地へ帰りました。
総帥自身も、
一度あれが始まれば
助からない技であると
ご存知ですよね。
いい加減、ご決断ください。」
「ざけんなよぉッ!!
いろはは吾輩が助ける!
博士が治療する!
それでいいだろうが!!
お前も師匠なんだろ!?
弟子の自害を
黙って見過ごすなよッ!!」
「お弟子さんの〝耀かし門出〟を
見届けるのも、
師匠であるわたしの務めです。
寧ろ、全身全霊を尽くす
風真さんに対して
駄々を捏ねるというのは、
冒涜そのものではないですか。」
「違ェよっ!!
吾輩がいろはの為にどれだけっ……
どれだけやってきたと――」
ピタっ。
吾輩の首筋に、博士の三つ指が触れた。
「馬の耳に念仏。
今の総帥は、とてもですが
褒められる精神状態では
御座いません。
総帥、一時のご無礼を
お赦しください。
……こよりちゃん。
あとは頼みました。」
「…………。」
「博士……お前なら分かるだろ?
マルコ博士の意思を
継いだお前なら……なぁ……?」
「…………。」
「なんとか言えよッ……!」
「……ごめんねラプちゃん。
――『電圧実験』。」
バチっ……。
*
これより――〝168秒後〟
前代未聞、未だ嘗て無い
セラフ部隊の戦跡が
旧杉並区に刻まれる事となる。
風真流覚醒術・泉穴開門『五光』。
風真いろはが
〝絶命の縛り〟と引き換えに
手にしたのは……
本来の肉体スペックを度外視し、
天変地異さえも
起こしうる『破壊の力』。
鋼鉄の再生速度を上回る
神速の猛攻。
絶え間なく空間を裂く光の捌き。
刻まれたのは。
『無我夢中』を優に越える
旧都市崩壊の史実。記録。
大震災の2次被害を
思わせる地割れのような大きな溝。
数日を経て
ドローン観測されたそれは、
約16・8kmにまで及び、
……その深さは、漸深層に達すると
軍部に発表された。
まさに都市を両断する人災そのもの。
高層ビル23階相当に聳え立った
〝白き柱〟は、
後に天界の貢ぎ物と称される。
その轟く翠の斬撃を
遠目で偶然目にしたドーム住民らは、
皆口を揃えてこう言った。
『星の街が現れた。翠の彗星だ。』
……と。
現存する記録というには、
あまりにも相応しくない痕跡……
正真正銘の、
観測可能な――〝伝説〟であった。
偶然か否か。
柊木梢の『術式』によって
風真いろはに〝伝染した呪力〟は……
特級仮想怨霊・八俣遠呂智の魂をも
一刀両断し……斬り祓った。
双方激闘の没後。
運命の歯車に挟まってた
翠の螺子は
勢いよく轢き潰されて……
鉄の粉塵となって散る。
そうして再び、
世界の運命は正しく廻り始めた――。
当歯車に轢き潰される筈の
蒼い螺子は、弾け飛び。捻られ……
生の世界へ固定される。
約束された帰結。
絶対的な命の等価交換。
これにて
運命の軌道修正は、完全に成された。
どうも、たかしクランベリーです。
推しのござるさんを
このまま終わらせるような
真似はしません。
絶対ハッピーエンドにします。
よろしくお願いします。