こちら31Hホロックス! ぷらすみこにぇ!   作:たかしクランベリー   

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31話・駅へ

 

━━▶︎ DAY??? 所在地???

 

《〜SIDE『風真いろは』〜》

 

「や!」

 

「うわっ、能面っ!!」

 

「失礼でございますなぁ。

人の顔を見るなり……

アッファっファっファっ!」

 

「顔じゃなくて能面だし!?

出会い頭に能面お化けは

マジ怖すぎて最悪でござるよ!?」

 

「ごめんごめん……

驚かすつもりは無かったっちゃん。」

 

この独特の笑い声。

長い黒髪に

所々混じる白色のメッシュ。

 

黒を基調とした

和テイストのゴスロリ衣装。

 

こんな特徴的な人物、

見紛う方が難しい。

 

「――らでん殿でござるか?」

 

彼女は頷くと、静かに

能面を顔から剥がした。

 

「正解っちゃん。

で、どげんだったばい?

〝件のキャンサー〟は。」

 

問いかけながら、

らでん殿は風真の真隣に座った。

 

「強かったでござるよ。

それこそ、

風真の全力が必要なくらいには。」

 

「へー。

バリ強い敵だったっちゅー訳か。」

 

「まぁ、そんな感じでござる。

正直な話。

剣士としてはトップなんだって、

風真自身、驕ってた所もあった。」

 

「…………。」

 

「鍛えた肉体に身につけた技術。

風真は、侍として上位な猛者で

あると思い込んでた。

けれど、いざ蓋を開けてみれば、

自分は風真流剣術の強さを

無為に振るってた蛮族だった。」  

 

そう……

武術祭の皆殿は、

己の芯や信念がしっかりしていて、

風真には

眩し過ぎる剣の在り方だった。

 

「そんな風真の剣でも、

最後の最後で

皆殿の役に立てて……

嬉しかったでござるな。」

 

「……妬ける話で御座いますなぁ。

でもいろはちゃんが満足したなら、

それでよか。」

 

「――満足で、ござるか。」

「ん?」

 

らでん殿は、首を傾げた。

 

「最後の最後。ラプ殿に

あんな顔をさせたのは、

少し後悔してるでござるよ。」

 

「はへー。いろはちゃんは

あのちっこい総帥が、

バリ大好きっちゃんねぇ。」

「大好きでござるよ。

風真と友達になってくれた皆殿は。」

 

「うわー。侍のクセに

そういう話は逃げ腰なんだー。

色恋沙汰のきゅんきゅん

エピソードは

なんぼあっても良いのにー。」

 

「別に、色恋沙汰なんて

ミリも無いでござるよ。」

「素直じゃないけんなぁ、

このこのー♪」

 

煽るように、らでん殿は

風真の頬に指をツンツン刺してくる。

やかましい。

 

けれど、こういう騒々しさは

嫌いじゃない。

 

あまりにしつこいと

手で振り払うけど。

 

「お? 電車が来たばい。」

 

イジりに飽きたのか、

煽り行為を止め。

彼女の視線は

電車の方に移っていた。

風真も、顔を線路側に向ける。

 

『こちらぁ〜〝きさらぎ駅〟ぃ〜。

きさらぎ駅ぃ〜。

降車する亡者の皆様は、

忘れ物にご注意くださぁ〜い。』

 

ピピピピ……プシュー。

 

各駅停車した車両がドアを開き、

次々と乗客が降車していく。

 

風真たちはと言うと。

 

きさらぎ駅のホームベンチで

座り込み、

その様子を眺めてるだけだった。

 

と、偶々なのか。

 

ゾロゾロと辺りへ散っていく

数多き亡者の影の中に、

見慣れた後ろ姿を発見した。

 

思わず風真は、呼び止めてしまった。

 

「おーい! カリオペ殿ぉぉお!

〝殉ずる亡者に未練は無い〟って

言ってたでござるよなぁぁああー!」

 

ピクっ。フッ。

 

自覚があるのか。

ピクリと立ち止まると、

瞬時に姿を消し……

風真の目の前に現れた。

 

「あのねーいろはちゃん。

いつからアナタ、

そんなラプラスっぽい

皮肉言うようになったのよ。」

 

「まぁまぁ、酒でも飲んで

落ち着いてくだせぇ

カリオペの姉御ぉ。

らでんがちょちょいっと、

熱燗注いでやりますから。」

 

「要らないし、そんな酒も

道具も持ってないでしょ。」

 

「あちゃー。

バレちゃいましたかぁ。

こりゃ一本取られたばい!

アッファっファっ……!!」

 

わざとらしく額に手を当て、

渾身のギャグを滑らせるらでん殿。

噺家としての将来が、

ちょっと不安になる。

 

「さて。本当はあなたの担当に

なる気は無かったけど、

私が案内人になってあげるわ。」

 

「おぉ、大きく出たっちゃんねぇ。

カリオペ先輩。」

 

「大きく出るも何も、

ただの気まぐれよ。

それにらでん。あなたが

何をしでかすか分からない以上、

見張る必要もあるしね。」

「やれやれですなぁ……。」

 

凄い。

 

相手が死神な上に大先輩なのに、

らでん殿は

肝が据わってるでござる。

 

「じゃあまずは、

この場所についての説明ね。

駅名は既に聞いてたでしょうけど

一応補足を入れておくわ。」

 

「無視は酷いっちゃん!!」

「あなたに構ってたら

話が進まないわ。

大人しくハーバリウムでも

飲んでなさい。」

 

「ハーバリウム飲みまぁーす!

――って飲むかァァ!! 

誰がうるしじゃぁあーいッ!!」

「…………。」

 

勢いよくカリオペ殿の胴体に

逆手ビンタのツッコミをかますが、

コレまた盛大に滑った。

 

「らでん殿……もうそのスベり芸、

辞めた方が。」

「ううっ、らでんはいつか。

立派な噺家になったるばい……!」

 

どうしてだろう。

初見でも嘘泣きって分かる

タイプの猿芝居だ。

 

「話を戻すわね。

この場所は、現世から外れた

魂魄たちの『終着駅』。

亡者たちは担当の死神に

導かれたのち、

正しい手続きを踏み、

次なる『生』に向かうわ。」

 

「ざっくり言うなれば、

黄泉の世界って事ですな!」

 

だとすると、いくつか疑問が浮かぶ。

 

「えーと、風真の担当がカリオペ殿?

それとも、カリオペ殿はらでん殿の

担当でござるか?」

 

「どちらも違うわ。

あなたの担当はらでんちゃんに

驚いて逃げ去った。

その件については、

あとで私が直々に

説教しておくから安心なさい。」

 

「つまる所、臨時でカリオペ先輩が

いろはちゃんの担当死神になった。

という訳ですな!

アッファっ……!」

 

もう一周回って

この2人、大の仲良しでござるよな。

合いの手とか、タイミング完璧そう。

 

「そこであなたには、

二つの選択肢を与えるわ。」

「………選択肢?」

 

彼女は頷いた。

 

「ええ。

新しい道を望むなら

〝外回りの路線〟へ。

過去の轍を歩むのなら

〝内回りの路線〟へ。

いろはちゃん。

未来の全てはあなたの選択次第よ。

好きに選びなさい。」

 

「風真は……」

 

ザッ。

 

「いろは、なんばしよっと?

〝そげん道〟

……誰が望んでるばい。」

 

「これが、風真の望んだ答え。

後のことは

お師殿に伝えといたから、

もう悔いは無いでござるよ。」

 

「悔いとか未練とかの話じゃない!

らでんは――ッ。」

 

「儒烏風亭らでん。

貴女の方こそ何のつもり?」

 

急にカリオペ殿の声音が

死神らしい冷酷なモノとなり、

らでん殿が静まった。

 

その首には、

死神の鎌が切先を寄せていた。

 

「…………。」

 

「……只の強い魔力なら

幾らでも存在するし、

私たちの業務に

危害が及ぶ事はないわ。

但し。貴女の持つ『魔力』は、

我々死神にとって

とても不都合な代物。

その発動を、私が

黙って見過ごす訳ないでしょ。」

 

「死神に……不都合?

らでん殿。それは、

どういう事でござるか……」

 

「………。」

「らでん……殿?」

 

「…………カリオペ先輩、

ほんの少しだけ。

らでんの我儘を聞いて欲しいばい。」

 

スッ。

 

死神の鎌が消滅した。

 

「交渉次第ね。

耳を貸してあげるわ。」

 

らでん殿は風真に聞こえないよう、

彼女に耳打ちした。

 

「いいわ。

その提案、飲んであげる。」

「カリオペ殿?」

 

「ここで態々立ち話を続ける

必要はない。移動がてら、

詳しい話は車内でしましょう。

2人とも、私について来なさい。」

 

淡々と指示を伝え、

風真たちはカリオペ殿に

案内された車両に乗車した。

 

座席は、4人掛けの

向かい合う構造をしたテーブル席。

 

正面にカリオペ殿が座り、

対面で風真たちが着席した。

 

『次はぁ〜、〝かたす駅〟ぃ〜。

かたす駅ぃ〜。

御出口は左になりまぁ〜す。

それでは発車致しまぁ〜〜す。』

 

ピピピピ……シューっ。

 

ガタンゴトン、ガタンゴトン。

 

「らでんちゃん。

急に黙り込んでどうしたのかしら。

ヤニ不足? アルコール不足?」

「…………。」

 

さっきから地蔵みたいに

なってて、風真自身も

ちょっと心配になる。

 

「あなたから

話す気がないのなら……

私、いろはちゃんと

お話しようかしら。」

 

「話?」

「そうよ。気軽に質問していいわ。

私が知り得る範囲で、

何でも答えてあげる。」

 

「それは、らでん殿の

事でも良いんでござるか?」

 

「ええ。彼女がどう思おうとも、

私には、本人の傍で

暴露する権利が充分ある。

そして恐らく……

いろはちゃんが

今知りたい情報の大半は

彼女のことでしょう?」

 

見透かされてるでござるな。

 

「……左様でござる。」

「いいわ。一問一答ずつ、

丁寧に答えてあげる。」

 

(風真が、知りたいこと……)

 

▶︎らでん殿は〝生きてる〟のか?

▶︎らでん殿の『魔力』とは?

▶︎らでん殿の目的とは?

 

「らでん殿は……

生きてるでござるか?」

 

数秒ほど頬杖をつき、

カリオペ殿が答えた。

 

「半分生きてて、半分死んでる……

仮死状態というべきかしら。

高頻度で黄泉にスポーンする

迷惑極まりないこの体質を、

私は『放蕩体質』と呼んでるわ。」

 

「ほうとう……たいしつ?」

 

「お酒飲み飲みで深酔いしてる

わたくしの事ですな!

よくよく起きる

生死の綱渡り状態っす!

アッファっ!!」

 

「ただの急性アル中じゃん!

あとそれ

よく起きちゃいけないやつ!!」

 

「あら、急に元気になったわね。

良いつまみでも見つけた?」

「つまみくれぇ! 酒もくれぇ!」

「あげないわ。

大人しくしてなさい。」

 

「ガーーン。」

 

落胆した擬音を口にして

落ち込む人初めて見た。

これはまた暫く喋りそうにない。

 

「次の質問は?」

「らでん殿の魔力って、

何でござるか。」

 

「ふーん。

結構踏み込んだ事訊くのね。

まぁ、構わないけど。」

「…………。」

 

「――魔力【寄席開き】。

自身が演じた凡ゆる古典落語を

〝実現する〟能力。

魔力【ラボ・プール】同様。

効果範囲を

最小限に絞る〝縛り〟で、

絶大な効力が働いているわ。」

 

「それの何処が、

死神に不都合なんでござるか?」

 

カリオペ殿は一呼吸おいて、

続けた。

 

「ここで一つ念頭に

おいて欲しいのは……

落語という喜劇のオチは、

噺家が自由に創れるということ。

――だから、不都合なの。」

 

「話が見えてこないでござるよ。

それで結局、

らでん殿は一体何を……」

 

「まだ分からない?

らでんちゃんは自身の魔力で、

あなたを〝蘇らせる〟つもりなのよ。」

 





【〜ひさめっち師匠とお弟子列伝〜】

(※本編にヘブバンキャラが出ない為、
設けられたヘブバン専用コーナーです。)
(※軽い小話みたいな構成なので、
台本形式でお送りします。)
(※時系列は
シーレジェライブ後の直後です。)

ひさめっち
「さぁ、遂に来ましたよ!
わたしの『時代』ですっ!!
わたし主役のイベントストーリーが
来ましたよっ……!!」

夏目祈
「風真……
小笠原は何を言ってるんだ?」

ござる
「風真も、何がなんだか
さっぱりでござるよ。」

ひさめっち
「コレはもう祝議を
開く他ないですね!
さぁお弟子さんたち!!
わたしを祝福するのです!
さぁ……!!」

夏目祈
「風真、帰るぞ。」
ござる
「そーでござるな。」

ひさめっち
「あっ、ちょっ。
ちょっと待ってくださぁぁああいっ!」

数十分後。

ひさめっち
「おや? 帰ってきましたね。
どうしたんですか、
クラッカーなんて持って。」

パパァんっ!!

ひさめっち
「うおっ!? うるさっ!!」

ござる
「おめでとうでござる!」
夏目祈
「……よかったな。」

ひさめっち
「――はいっ!!」
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