こちら31Hホロックス! ぷらすみこにぇ!   作:たかしクランベリー   

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32話・よん文字で言うコト

 

「まだ分からない?

らでんちゃんは自身の魔力で、

あなたを〝蘇らせる〟つもりなのよ。」

 

風真が……蘇る?

 

聞き間違い、

じゃないでござるよな。

 

「はは、何かの冗談だよね。

風真が蘇生するなんて……」

 

「――演目『死神』。

特別な呪文を手にした

医療ペテン師が、

死神の掟を破る噺よ。

ペテン師の彼は死神の怒りを買い、

僅かな時間しか

命を灯せない自身の蝋燭から、

長寿な生命を約束された蝋燭へ

己が灯火を移す賭けに出た。」

 

「…………それって。」

 

「ここから先の『オチ』は、

噺家が〝決められる〟――。

演目の各配役は私が死神、

医療ペテン師役は

いろはちゃん。

シナリオのパターンは

『誉れの幇間』って所ね。

……ねぇ、いろはちゃん。

この意味が分かるかしら。」

 

理解した。

カリオペ殿がらでん殿の力を

危険視していた理由。

 

生死の理に反する概念系魔力。

頻繁に黄泉へ行き来する人間が、

情で亡者を蘇らせ放題。

 

死神からしたら、

そんな力……

無い方が良いに決まってる。

 

「んやー先輩〜ぃ。 

らでんを好き勝手暴露するのは

いいけんが、噺の

ネタバレは良くないっすよぉ。」

 

「いいでしょ。

あなたの厄介な魔力とも、

これでお別れ出来るのだから。」

 

「魔力とお別れ……?」

 

「私はらでんちゃんが

提案した諸々の条件を飲んで、

あなたの蘇生を

容認する事にしたの。」

 

「――それが、

魔力の交換っちゃん。」

「そういう事よ。」

 

バッ。

 

言ってカリオペ殿は、

懐から水色の『栞』を取り出し

見せびらかした。

 

「らでんちゃん。

この栞が誰のか分かる?」

 

らでん殿は目を細め、

スンスンと栞を嗅ぎ……

確信気味に頭を上下に振った。

 

「ふむふむ。 

コレは、ラミィ先輩の

『魔力』で御座いますな。

微かにアルコール臭がするばい。」

 

「ご名答。

――魔力『レバーギフテッド』

シオリちゃんが拡張魔術によって

〝複製ノベライズ〟した

魔力の塊よ。手にした者は、

肝臓が常人の約100倍強くなる。

実質、

『放蕩体質』封じにもなるわ。」

 

なんかガチガチにメタってない?

カリオペ殿。

 

「お酒飲み放題!? 最高じゃん!!」

 

「これを脳内に挿入すれば、

あなたの生得魔力は

『栞』として抽出され、

魔力の上書きが施される。

覚悟はいいかしら。」

 

「お酒飲み放題!? 最高じゃん!!」

 

自分の生得魔力に

興味無さすぎて

逆に心配になってきた。

嬉しすぎて

同じ発言繰り返す

botっぽくなってるし。

 

ピピピピ……

 

『こちらぁ〜〝だいごの駅〟ぃ〜。

降車する亡者の皆様は、

忘れ物にご注意くださぁ〜い。』

 

「ようやく着いたみたいね。

2人とも、降車するわよ。」

 

「了解でござる……。」

「…………。」

 

ホームの階段を下り、

機能しない改札をみんなで潜る。

 

駅構内から外へ出ると。

稲穂の海が広がる田園風景が、

ずーっと続いていた。

 

所々に木造家屋が

建てられているが、

どこか寂しげな空気を感じる。

 

農耕地帯の村集落……?

といった印象だ。

 

「ほら、ぼーっと眺めてないで

私について来なさい。

時間はそんなにないわよ。」

 

「ごめんでござる。」

「そいじゃ、行ったりましょかぁ!」

 

カリオペ殿に案内される事数十分。

彼女の足が止まった。

そして、指を差す。

 

その方向が示す先。

あり得ない光景が、目に入った。

 

「……え?」

 

「ふふ、驚いた?」

 

広々と構える木造の邸宅。

それは、風真が生まれ育った

大事な場所――『家』だった。

 

「どうして……

風真家邸宅が、ここに。」

 

「偶然の巡り合わせって

ヤツっすな! アッファっ!!」

 

「らでんちゃんが、

〝あなたに会わせたい人が

居る〟ってお願いしてきたの。

取り敢えず

細かい話は後にして、

あの場所へお邪魔しましょう。」

 

訳もわからないまま

2人についていき、

とうとう風真家邸宅の敷地内へ

足を踏み入れた。

 

カンッ、カンッ、カンッ……。

カンッ……カンッカンッ!

 

懐かしい、

鋼鉄を打ちつける鍛錬の音。

とっても大好きな、

ズレ一つない洗練されたリズム。

 

ブワッと小さい頃の思い出が、

脳裏に溢れ出す。

 

(そこに……

『居る』のでござるか。)

 

「………………。」

 

「ここから先は、

あなただけで行きなさい。

私たちが軽々しく踏み込むのは、

野暮ってモノだわ。」

 

「らでんたちは

そこの外庭ベンチで座って、

気長に待っとるばい。

決心がついたら、こっちに

戻ってくるといいっちゃん。」

 

「2人とも、ありがとうでござる。」

 

2人に背中を

押され、1人鍛刀場へ向かう。

 

数年振りに目にする

逞しい後ろ姿は、

依然として変わらぬまま……

美しかった。

 

「こんなに早く……

来て欲しくはなかったな。

いろはよ。」

 

「風真も、こんな早い

再会になるとは

思ってなかったでござるよ。

どうしようもない

死に急ぎ者で、悪かったでござる。

――〝大伍郎お爺ちゃん〟」

 

カンッ……カンッカンッ!

 

「気にすんな。人っちゅうのは

いつ死ぬか分からんもんじゃ。」

「風真……

『五光』を使ったでござる。」

 

「それ相応の理由があるんじゃろ。

責める気はない。

……じき仕事も片付く。

いろはは先に、

茶の間で待機しておれ。」

 

「分かったでござる。」

 

やっぱり優しい。

それに。刀工に一途な瞳と、

極まった職人の所作。

 

風真の知ってる、

大伍郎お爺ちゃんだ。

 

(この後ろ姿に風真は、

何度も

励まされたんでござるよな。)

 

そんなお爺ちゃんを後にし、

茶の間に移動する。

 

合流するまでに時間があるので、

内装を改めて確認してみる。

まずは、

滑らかな触り心地や

丸みのある形状が特徴のちゃぶ台。

 

材木はおそらくウエンジ。

黒褐色の木目模様が内装の外観と

非常にマッチしている。

 

次に屏風。

水墨画のタッチで描かれた

6匹の色鯉が、今にも

動き出しそうなほど

繊細に描かれている。

 

紫、赤、桃色。

薄萌葱色、黒色、桜色。

 

それぞれが違った

水面の波紋を畝り拡げ、

そこに無い

池水の動きを表現している。

 

次に、荘厳な鳳凰の

切り絵が彫られた掛け軸。

こちらも、思わず息を

呑んでしまうほどの迫力がある。

 

……と。

この一室だけでも、

大伍郎お爺ちゃん

独自の拘りが

ひしひしと感じられる……。

 

(気配が、近いでござるな。)

 

シャッ。スーッ。

 

「待たせたな、いろは。」

 

心の中で噂をすればなんとやら。

 

戸を開け閉めし、

大伍郎お爺ちゃんが

入室して来た。

 

「いいでござるよ。

こうして独り

のんびり茶の間を

観てみるのも……偶には

いい寛ぎになるでござる。」

 

「そうか。……いろはよ、

そこのちゃぶ台を退けてもいいか。」

 

風真は頷いて了承した。

 

するとお爺ちゃんは

ちゃぶ台を部屋の端に退けて、

座布団の上に座り込んだ。

 

何一つ隔てるモノもなく、

向き合う。

 

稽古の直後は、こうやって

対面で反省会をするのが

日課だったりしていた。

 

今の風真には、

稽古する理由も、

誰かを守る為に振るう刀もない。

 

人生の果ての中で、

残された時間を過ごすだけだ。

 

「黙っていても、何も始まらんな。

……いろはよ。

わしが亡くなってからの

世界はどうじゃったか。

良い友は、増えたか。」

 

(良い友、でござるか。)

 

「色んな人に支えられて、

たくさん出来たでござる。

話すと、長いかも……。」

 

「構わん。」

 

「風真……

こんなことがあって――」

 

話した。

 

シオリ殿との出会い。

holoXとの出会い。生活。

セラフ部隊での忙しない軍人ライフ。

 

そして。

ラプ殿が風真を連れていった

新鮮な思い出の数々。

 

どの記憶のピースも

かけがえのない小さな結晶で。

心を彩る生涯……

という名の、美しいパズルだ。

 

「はっはっはぁ……!

愉快愉快っ! 

良い友を持ったなぁ、いろは。」

 

大伍郎お爺ちゃんも

満足気に大笑いして、

自分の横っ腹を叩いた。

 

「うん。最高のダチでござる。」

 

「良い笑顔だ。

そんな顔も久々に見れて、

わしゃ嬉しいぞ。……成長したな。」

「そんなそんな!?

風真はまだまだでござるよ!」

 

「本当、わしに似て頑固じゃな。

やはり、血には逆らえんの。

どの子らも。」

 

「…………。」

 

突然、

風真を見る目が真剣になった。

 

「人はな、時が経つ度……

己が心に、次々と新調した

甲冑を着込んでしまう

気難しい生き物じゃ。

時として、纏い過ぎた鎧に

押し潰されてしまう事もある。」

 

「…………。」

 

「それは、社会や

コミュニティという

鎖のような繋がりが生み出した

生存戦略の一つ。

現世という環境で

生きてく上で、

必ず付き纏うシステムじゃ。

……いろはよ。

風真家の家訓その1を覚えとるか。」

 

「――〝初心童心、

共に忘れるべからず〟」

 

正解だったようで。

風真の解答に、

ニコッと言葉を続けた。

 

「ああ、そうだ。

黄泉に訪れた亡者らはみな、

どうであった?」

 

(亡者たちはみんな……)

 

「身体が軽そうだったでござる。

でも、肉体の消失とは異なった

……何かだった。」

 

「答えは単純。現世という

社会の鎖から解き放たれ、

不要となった心の甲冑を

全て脱ぎ捨てんたんじゃ。

だがいろは……

お前はまだ違うようじゃな。」

 

「違う?」

 

「死して尚。凝り固まって、

意気地になっておる。

馬鹿は死なんば治らないと

言うが、とんだ与太飛ばしじゃな。」

 

「…………。」

 

「わしの近くに寄ってくれんか。」

 

その意図が

よく分からないけれど、

風真はお爺ちゃんに近寄った。

 

すると。

 

……ぎゅっ。

 

「……え?」

 

大伍郎お爺ちゃんが、

身体を優しく抱いてきた。

 

「もう良いんじゃ。

今のお前は風真家でもなければ、

用心棒でもない。

――故に、一時だけでいい。

『侍』としての自分を、

忘れてはくれないか。」

 

(どうしてだろう。

からだがきゅうに

ふわふわして、あたたかい。)

 

「いいの? お爺ちゃん。」

 

わたしのからだが、

ひとまわり小さくなって、

かるくなった気がする。

 

「いいんじゃ。

あの頃みたいに、

わしに泣きつく可愛い孫娘で。

…………誰も見とらん。

このわしが全部、受け取めてやるぞ。」

 

こころにたまった

大きな水たまり。

だむがこわれて、

いっぱいいっぱい。

 

くるしい水がながれおちる。

 

目があつい。

なみだがずっと

ながれてとまらない。

 

「うっ……

うわぁああああああんつ!!

わたしっ、もっといたかった!

らぷらすと……!

大すきなみんなとっ、

もっともっと、

あそびたかったのに!!

なんでっ、なんでよぉぉぉ。」

 

「よく頑張ったな。いろは。」

「うわぁぁあああんん!!」

 

「………………。」

 

おじいちゃんのむねのなかで、

いっぱいいっぱいないた。

もう、どれくらいないたか

わからない。

 

のどがいたくなって、

ちからいっぱいつかれて。

なきやんだ。

 

おじいちゃんが

わたしのからだをはなすと。

 

からだがおっきくなった。

 

「どうだ?

少しは心が軽くなったか。」

「………感謝するでござる。

今はただただ、

心がスッキリしてるでござるよ。」

 

大伍郎お爺ちゃんが、

朗らかに微笑むと。

風真も思わずつられて

頬が緩んでしまう。

 

重荷を降ろして分かった

風真自身の望み。

心の底からの本音。叫び。号哭。

 

(会いたい……)

 

「ふっ、やり残したことが

あるみたいじゃな。」

「とことん我儘な子で

すまないでござる。

風真……行ってくるでござるよ。」

 

「〝千年〟後。

土産話の百や万、持ってこい。

わしゃあ、

いつでも歓迎しとるぞ。」

 

「そんな長生き、

人間の風真には無理でござるよ。

でも、次会う時があるなら。

土産話、たっぷり

持ってくるでござる。」

 

「約束だぞ。」

「……うん。」

 

約束を交わし合い、

風真は外庭で待つ2人の所へ行った。

 

「待つたけ松茸〜♪

たっぷり待つたけ〜♪

待つたけ松茸ぇ〜〜♪

うまうま松茸ぇ〜〜〜♪♪

ほいっ! 

カリオペ先輩もご一緒にぃ……!」

 

「ま……ま、つたけ。まつたけぇ。」

 

再会早々、

らでん殿の様子が可笑しかった。

服も含め、

全身が半透明になっている。

 

使い所の困る自作ソングを

カリオペ殿に

布教してる事よりも、

遥かに異常だ。

 

「――らでん殿ぉ!?

かっ、身体が半透明になってるで

ござるよ!?」

 

彼女が自覚したように

自身の手を確認し、告げる。

 

「あー、これかぁ。

らでんもそろそろ……

深い深い酔いの中から、

醒める時が近いっちゃんねぇ。」

 

「それ間に合うのぉ!?」

「間に合うけん。」

 

顔だけキリッとしても、

不安なのは

変わらないんだよなぁ。

 

「さぁてさて。

噺を一席始める前に、

いろはちゃんから

聞きたい事があるばい。」

 

らでん殿は、畳んだ扇子を

ビシッと此方に向けた。

 

「なんでござるか?」

「今際の際の話、

聞いていいっちゃんか?」

 

「いいでござるよ。

そうでござるなぁ……」

 

 

 

 

バリィィィン!!

 

時間稼ぎのつもりで

命を賭した風真は、

Scrap wingを屠る事に成功した。

 

とはいえ、満身創痍。

 

巻物に記されていた代償は

本物の忠告であり。

その対価と反動が、

一気にやってきた。

 

全身は壊れかけの

ブリキ人形のように

ミシミシと軋み、悲鳴を上げる。

 

秒を刻むたび、

身体から抜けていく力。

蒸発していく生命のエネルギー。

 

それにも関わらず。

どこへ向かおうというのか、

風真の足は

ふらふらと進み続けた。

 

もう戻れる場所なんてないのに。

諦め悪く、足は動く。

 

(行こう……どこに?

風真の身体はもう…………。

あぁ、力が出ないや。)

 

前のめりに倒れそうになった

その時だった。

 

フサッ。

 

誰かが、

倒れる風真の身体を受け止めた。

 

この小さな身体と匂い。

一瞬たりとも忘れたことのない、

大事な人の感触。

 

「ラプ……殿。どう……して。」

 

「馬鹿かよ。用心棒を捨て置く

総帥が居てたまるか。」

「違う……だってラプ殿は、

こより殿の電気ショックで…………。」

 

「気合いで目覚めたんだよ。

つか、んな細けーこと指摘すんな。

ほら帰るぞ。

みんながお前を待ってる。」

 

「少し、横になりたいでござる。」

 

「ったく、何を

言い出すかと思えば……

しょべぇ要望だな。

わーったよ。

この吾輩が、特別に膝枕してやる。」

 

「はは。らしくないでござるな。」

 

やけに優しい対応をする

ラプ殿に甘え、膝枕してもらう。

 

さらさらした肌触りがする

紫ニーソの右太ももと、

直に当たるスベスベの左太もも。

 

予想はしていたけど、

中々に寝心地が

アンバランスな膝枕だ。

 

「もっと嬉しそうにしろよ。

こんなご褒美、滅多にねぇぞ?」

「びみょー。」

 

「はぁっ!? ざけんな!

もっとマトモな感想寄越せよ!」

「感想と言われても――ッ。」

 

あ……れ。

視界が一瞬、ぐらついて。

 

「い……ろは? おい。」

 

「時間、みたいでござる。」

 

「――死なせる訳ねェだろ!

馬鹿みてぇな事言うな!!

博士なら治せる! 基地まで

吾輩が連れてってやっから……

諦めんな!!」

 

結果は分かってるのに、

どうしてそこまで

必死になれるんだろう。

 

(風真には、分からないや。)

 

「…………。」

「おい! 何死にそうな顔してんだよ!

いつもみたいに吾輩を罵れよ!

チビで生意気なガキだってよォ……!」

 

「ラプ殿は懐が……広くて、

誰よりも真面目で……

立派な総帥でござる。」

 

「違ェよ! 吾輩は無力だ!

無力なんだよ!!

目の前で消えようとしてる

仲間1人救えない……

ダメなっ……ガキなんだっ。」

 

ポタっ、ポタポタ。

 

風真の頬に、

ラプ殿の溢れた涙が落ちる。

 

「風真は、

正規に至れない未熟者。

ここで消えて当然の……

足軽でござる。」

 

「んな訳ねぇだろ!!

いろはっ! 

なんで吾輩がお前を

〝正規雇用しない〟のか

まだ分からねぇのか!?

そんなん理屈とか

実績じゃねぇよ!!」

 

「え?」

 

「聞いたからには

絶対死ぬなよ!!」

「…………。」

 

「それはなァいろはっ……!

吾輩は、どうしようもなく

お前のことが……―――」

 

(もう、聞こえないでござる。)

 

必死で何かを

伝えてるんだろうけど、

耳が遠くなって。

視界も真っ暗になって。

 

次第に五感も消え失せて。

意識が

黒く濁った底なし沼に沈んで。

 

次に目が覚めたら。

 

 

 

 

「駅に居た。っちゅー事ですな。」

「そういう事でござる。」

 

「そんじゃ、最初に言ってた

ラプラスに対する後悔は、

ぐしゃぐしゃな泣き顔をさせた

罪悪感……って事で

あっとるばい?」

「その通りでござる。」

 

「だったら尚更、

再度顔を合わせる必要が

あるっちゃんな。

よーし! 

らでん、一肌脱ぐぞぉー!」

 

片腕をぐるぐる数回回し、

意気込むらでん殿。

気怠そうに手を口に当てる

カリオペ殿。

 

この対照的な2人を

なんとも

言えない気持ちで見てたら、

ついにソレは始まった。

 

「〝ちょいと一席

付き合ってみませんか?〟

――演目『死神』」

 

 

……………………。

 

 

…………。

 

 

 

━━▶︎ DAY ???

 

ツンと鼻腔を抜ける

エタノールのような刺激臭が、

否応無しに風真の意識を起こす。

 

目を開くとそこは……

医務室のようだった。

 

白い天井が瞬き越しに

視界へ映ると同時。

 

バッ! ぎゅっ!!

 

「いろはぁああっ!!」

 

飛びついてくる小さな身体。

銀髪がふわっと舞って、

烏が羽ばたいた。

 

「ラプ殿、おはようでござる。」

「馬鹿っ! 

どんだけ心配したと思ってんだ!」

 

「それは悪かったでござるな。」

 

ラプ殿の身体を離し、顔を覗く。

その顔は、

とても幸せそうだった。

 

「ほんっと、

世話の焼ける用心棒だな。」

 

「……風真。大伍郎お爺ちゃんや

カリオペ殿、

らでん殿に会ってきたでござる。」

 

「そうか。」

 

「みんなが助けてくれなきゃ、

風真はここに帰って来れなかった。

感謝しても、

感謝しきれないでござる。」

 

「気負う必要なんてねェよ。

誰かに支えられて生きる……

そりゃあ人として

当たり前の事だろうが。

生きて互いに喜びを

分かち合ってくれりゃ、

それでいい……充分なんだ。」

 

(ラプ殿は、

どこまでも優しいでござるな。)

 

「吾輩に『4文字』で言うべき

事があるだろ?」

 

「ごめんね。」

「違ぇよ。もっと考えろ。」

 

……あ。そっか。

言い忘れてたでござるな。

 

「――〝おかえり〟でござる。

ラプ殿。」

「ああ、〝ただいま〟だ。」

 

「おやぁおやぁ〜、

面白いコトに

なってるこよねぇ〜。」

 

「あっ、こより殿。」

「もしやこれは……こよが

お邪魔しちゃいけないやつかな?」

 

「「――何もしないわ!!」」

 

クスクスとこより殿は笑い、

意地悪な表情を浮かべた。

 

「そういえばラプ殿、

風真を正規雇用しない理由が

あるとかなんか言ってたで

ござるが……あれは一体――」

 

「なんもねェよ。」

 

ラプ殿はそっぽを向いた。

代わりに、ニヤニヤした

こより殿が顔を寄せる。

 

「むっふっふ……

知りたいかい? いろはちゃん。

こよが特別に教えてもいいよぉ〜。

ラプちゃんがぁ、

いろはちゃんをholoXに

正規雇用しない理由はねぇ〜……」

 

「ばっ、馬鹿言うなッ!

言ったら減給すんぞッ! 

オイッ!!」

 

「それはねぇ〜、

『社内恋愛禁止』っていう〝縛り〟を

holoX全社員に設ける事で、

祈願成就の

効力を底上げしてるんだよ。

ホント困っちゃう話だよねー。」

 

「そこまでしてラプ殿は……

何を叶えたいんでござるか?」

 

「オイッ! 

吾輩の警告が聞こえないのか!?

オオイッ!!」

 

「ふふっ、それはねぇ〜……」

 

ガシャァァン!!

 

絶妙なタイミングで、

医務室のドアが力強く開けられた。

そのドアを開けたのは。

 

「「――沙花叉ァ!?」」

「クロたん!?」

 

「みんなみんなヤバいよ!

31Aの連中がまた

ゲリラライブやるんだって!!

……ヤバくね! 早く行こ!!」

 

「おっしゃ行くぞいろはぁ!」

「なんでいろはちゃん

蘇ってんの!?」

 

「細かい話は後だよクロたん!

早くみんなで聴きに行こ!!」

 

「あーもう分かったよ!

言い出しっぺの沙花叉が

連れてってやりますよぉぉ!!」

 

ドタバタしながらも、

風真たちはアリーナに

連れてかれた。

 

どうやら今回のライブは

特別仕様らしく。

ビーチを再現構築した

ライブステージになっていた。

 

夕景を照らす

輝かしい照明の数々に、

どデカいスピーカーが数十台。

 

豪華に飾られた

仮想ステージ上には、

31A全員が楽器を

構えて、待機していた。

 

ガヤガヤと談笑し、

席のない砂浜に

立ち並ぶ観客たち。

……すぐ様その中に、

風真たちも加わった。

 

そして、茅森殿が

マイクに口を近づける。

 

「聴いてくれ。

――『さよならの速度』。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





どうも、たかしクランベリーです。

改めて。お疲れ様でした。
これにて、
『こちら31Hホロックス!
ぷらすみこにぇ! (season1)』
は終了で御座います。

色々とありまして。
一旦こちホロは幕を閉じよう
という結論に至りました。

これからは
只の1ヘブバンユーザーとして、
ヘブバンを楽しんでこうと思います。

そして皆様、最後まで
当作品に付き合ってくださり
本当にありがとうございました。
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