こちら31Hホロックス! ぷらすみこにぇ! 作:たかしクランベリー
〜SIDE『ラプラス・ダークネス』〜
「見事な刀捌きだ……風真。」
遥か先にまで伸びた薄萌葱色の帯。
もとい、風真の斬撃によって
生み出された『刀痕』は
期待以上の長さで敷かれていた。
「にぇぇぇええ゛え゛えっ!?
いろはちゃんそんな事出来たのぉお゛!?
みこ、そんなんできるって
聞いた事ないんだけどぉお!!」
さっきから、ずっとうるせぇな。
なんだ?
凹ましたら叫ぶタイプのトリ型玩具か?
一々にぇぇええ、って叫ばなきゃ
死ぬ呪いにでもかかってるのか?
「そ、そんな褒めないで欲しいで
ござるよぉ〜。
もちろん、訊かれたら何でも
答えてやるでござるよぉ〜。」
「風真、多分お前褒められてないぞ。」
「うるせぇなぁ……!
舐めてるとシバくぞガキぃ!」
「何で吾輩にだけそんな辛辣なの!?
一応総帥なんですけどぉ!?」
「ブフォッ……!
最高だよ風真たんっ……!」
先輩め。笑ってやがる。
博士が居るからって
調子に乗ってんな。
……仕方あるまい。
吾輩が悪巧みのプロって事を
分からせてやるか。
「博士、みこ先輩が
マヨネーズ一本飲みたいそうだぞ。
幹部も協力してやれ。」
「御意。」
幹部が素早く移動し、
逃げれぬよう背後から
みこ先輩の両肩をガシッと掴んだ。
「え、ちょっと待ってぇ!
みこの身体動かないんだけどぉ!?
両肩ギシギシいってるよぉ!!
何したのルイ姉ぇ! にぇってばぁ!」
「ハッハー↑」
「笑い事じゃねぇよッ!」
そんな彼女の様子を気にも留めず、
博士の方は
吾輩の戯言に興味津々だ。
「え!? ホント!」
下手な回答をすると
ボロが出そうだな。
…………よし。
ここは、博士の感受性に
訴えるとしようか。
それに吾輩自身、
人心掌握術には少々自信がある。
総帥という役職柄ゆえ、
自然とそういう能力が
育まれてしまったのだろう。
私怨で利用してすまないな博士。
いつかボーナス上乗せして
やるから、
この茶番に付き合ってくれ。
「与えるも与えないも貴様の自由だ。
大事なのは、後輩として
先輩を慕う在り方。
……違うか?」
「ありがとラプちゃん!
こよ、分かった気がするよ!
みこ姉さん。
こよのスペシャルマヨネーズDX♡
丸々一本、たーんと味わってね♪
はいっ♪ あーーんっ❤︎」
「ぁぁあ゛あ゛っ!
ごめんってラプたんっ!!
嘲笑うようなマネもうしないからっ、
ちゃんと謝るからっ、
みこを許しでぇええ゛っ!!」
「分かればよろしい。幹部、あれを。」
「はい。」
スッ。
「んぐぐっ……ぶはあっ!」
みこ先輩の口に押し付けられたのは
マヨネーズではなく、
吾輩のカラスだ。
「えー、またルイ姉の
『イーグル・トリック』かぁ。
こよちゃーん! ショック!」
「ん? 博士のクセに、
妙にあっさり引いたな。
どうした?」
「いやさ。マヨのプレゼントは
今じゃなくても出来るなって思って。
『刀痕』を敷かせたって事は、
そうゆう事でしょ?」
「物分かりがいいな。
さすがholoXの頭脳だ。」
吾輩の口車に
容易く乗せられる点を除けばな。
「――総帥、如何致しましょう。」
「そう焦るな幹部。
準備は整ってるも同然、
後は乗り込むだけだ。」
「え……乗り込むって何処に?」
みこ先輩は
何が何だか分かってない様子だ。
まぁ、刀痕の性質を
初見で理解する事の方が無理がある。
「風真の斬った所をよく見ろ。
帯みたいなモノがあるだろ?」
「うおっ!? 凄ぇええ!
風真カラーのリボンが
地面にくっついて光ってるーー!」
「風真カラーではない。
薄萌葱色だ。
あと、それはリボンじゃねぇ。」
「ん……うすもえぎ色?
何それ、何言ってんのラプたん?」
「ぽえぽえ〜?
何言ってんのかなぁ〜ラプちゃん?」
沙花叉、お前は流石に知ってろよ。
割と一緒に行動してる方だろ。
「博士、みこ先輩はどうやら
色の勉強をしてみたいそうだ。
今度付き添いで教えてやれ。
燕脂色とか、甕覗色とか、
一目で分かるくらいに
叩き込んで構わん。」
「え? こより、
みこ姉さんと2人きりで
図書館デートOKなの!?」
「……ああ。諸々の事が済んだら、
吾輩も貴様らの師弟関係が
より良好になるよう手回ししてやる。」
「やったー!」
「やったーじゃにぇよッ!
何みこ巻き込んでくれてんだぁ!!」
「ごめんねぇ〜、みこ姉さん。
総帥は筋金入りの
絵画オタクちゃんだから、
色の分別に関しては
少し手厳しいんだぁー。」
みこ先輩の顔が真っ青になった。
散々吾輩たちを馬鹿にしたんだ。
タダで済ませるつもりはない。
愛弟子の歪んだ溺愛の中で、
一生その罪を償ってもらおう。
そうでないと吾輩の気がすまない。
「大丈夫だよみこ姉さん。
こよの頭脳とみこ姉さんの
エリート頭脳が合わされば、
1週間で覚えられるよ!
エナドリと不眠薬キメて、
一緒にがんばろー!!」
「…………。」
良い虚目だ。
はっ……ざまぁみろとは
まさにこの事だな。
最っ高に清々しいぞ。
マヨの刑より
よっぽど効果的じゃないか。
「みこ先輩、まさかだけどさぁ……
ここまでやる気になった愛弟子の
気持ちを無下にするような真似……
しないよなぁ?」
「…………くっ。
(許せねぇ……ラプたん。)」
「総帥?」
「ああ、すまない幹部。
ちょっと私語が多過ぎたな。
博士、『刀痕』について
要点だけかい摘んで説明してやれ。
奴らが立ち去っては元も子もない。
……なる早で行くぞ。」
博士が頷きながら
ネクタイをキュッと正し、
説明に入った。
「説明しようっ!
全ての『刀痕』は繋がっているのだ!
以上っ、こよの特別リークでしたぁ!」
「分がった!!」
何のリークにもなってないし、
おそらく先輩の方も
分かってないだろうが良しとしよう。
なんせ、時間がないんでね。
「吾輩と風真が
先陣を切って『刀痕』に入る。
幹部は沙花叉をおんぶ。
博士は
みこ先輩をおんぶして乗り込め。」
「「「「「――YES MY DARK!!」」」」」
「YESじゃねぇよッ!
みこ自分の足で歩けんだけどぉ!
どんだけみこの事舐め腐ってんのぉ!」
「それは違うよ、みこ姉さん。」
「……こよ?」
「今は細かく話せないけど、
刀痕内の移動は少しコツが居るんだ。
下手すると体が捩れちゃうからね。」
「みこそんな恐ろしい所に
今から入るの!?」
「うん。だから、
そうならないように
こよの背中に乗っていて欲しいんだ。
……いいかな?」
「分かった。」
よくやった博士。
吾輩の言葉の真意をすぐさま理解し、
説得までこなしてしまうとは。
下心丸出しだが、
頭脳担当の名は伊達じゃない。
……因みに、
刀痕に入ると体が
捩れるというのは真っ赤な嘘だ。
自由の身である
みこ先輩が勝手に動いては
何が起こるか分からない。
未然に起こりうる
トラブルの可能性……種を潰す。
博士はその意志を、
短い指示の中で読み取ってくれた。
であればもう、
言うことは何も無い。
(……気は乗らんが、進むか。)
「待たせたな。もうお喋りは無しだ。
行くぞ貴様ら!」
「「「「「――YES MY DARK!!」」」」」
*
敷いた刀痕を潜り抜け、
遂に吾輩たちは異界生物との
接触を果たした。
ズズズズズッ……!!!
(数は12か……。
さて、どう様子を伺おう。)
「うわっ!
なんか変な仮装集団が湧いてきた!?
まだまだハロウィンは先なのに!?」
「おい、誰が仮装集団だ?
我々を見縊るのも大概にしろ。
制服で戦闘してた貴様らも、
我々の目から見たら
不自然そのものだぞ。」
「いやいや、お嬢ちゃん達の方が……」
「いやいや、
吾輩的には貴様らの方が………」
「いやいやいや……」
「いやいやいやいや…………」
「「……………………。」」
「「――無限ループ!!」」
「総帥、戯れている場合では
ございません。」
「……ごほん。」
危ない危ない。
幹部の注意がなければ、
下らない言い合いで
折角の機会を棒に振る所だった。
これ以上、
グダグダする意味もない。
……本題といこう。
「どったの?
急に咳き込んで。」
「仕切り直す為に決まってるだろ。
我々は明確な目的を持って、
貴様らに会いにきたのだ。」
「明確な目的だと?」
「そうだ。我々は
貴様らに交渉をする為に来た。」
「交渉……?」
「月歌、後の話はあたしに代われ。
お前だと余計な発言が目立つ。」
「分かったよ、ユッキー。」
短髪の少女が渋々とした表情で下がり。
代わりに、
背後に居た女が我々に近寄ってきた。
「交渉と言ったな。
アンタらが何を企んでるかは
知らないが、何処の馬の骨とも
知らない相手に
交渉を吹きかけられて。
はいそうですそうしましょうと、
素直に聞くと思うか。」
「それもそうだな。
社会的な交渉及び取引を行う
前段階として、
名刺交換を行うのは
基本中の基本であり礼節。
そこを疎かにしたことは謝ろう。」
「…………。」
「では、我々が何者であるか。
吾輩から順に、自己紹介といこう。」
何事も始まりが肝心だ。
植え付けられた第一印象は
そうそう変わらない。
ここは慎重に……。
且つ、総帥としての
威厳を崩さない程度に。
「貴様ら、刮目せよ。
吾輩の名は――」
どうも、たかしクランベリーです。
風真いろは生誕祭2023、最高でした。
愛らしい動きで、
とっても癒されました。
今後も、ぽこべぇを
応援していこうと思います。
さて、突然ですがお知らせです。
水曜更新から月曜更新に変わります。
よろしくお願いします。