こちら31Hホロックス! ぷらすみこにぇ! 作:たかしクランベリー
「では、我々が何者であるか。
吾輩から順に、自己紹介といこう。」
何事も始まりが肝心だ。
植え付けられた第一印象は
そうそう変わらない。
ここは慎重に……。
且つ、総帥としての
威厳を崩さない程度に。
「貴様ら、刮目せよ。
吾輩の名は――
ラプラス・ダークネスだッ!」
(ふっ。決まった……!)
「あたしは茅森・月歌。
……で、ラプちゃん。
厨二臭く振る舞うのは
構わないんだけどさぁ、
本当の名前教えてくんない?
大丈夫、あたしら笑わないよ。
苗字が山田でも……でも。
ふっ……あははは!
やっべ! すっげー似合う!!」
「おいッ! 勝手にツボるんじゃねぇ!」
「総帥への狼藉は……」
「そこまでにするでござるよ。」
チャキッ。
茅森と名乗る少女に、
幹部の銃口と侍の刀身が牙を向いた。
「うわー! ごめんなさいぃ!
馬鹿にするつもりは無かったんですぅ!」
「ひひゃ……!
全面戦争かァ? よかろう、
このワシが直々に――」
「やめておけ……死者が出るぞ。」
「死者じゃとォ?」
「この吾輩だ。」
「「「「「………………。」」」」」
「ラプたん。滑ってるよ。」
「よし。幹部、侍。武器を下せ。
自己紹介を続けるぞ。」
「「――YES MY DARK!」」
「みこを無視すんなよッ!!」
ヤバい。
初めてみこ先輩に感謝の念を抱いたよ。
みんなこのまま無言だったら
どうしよ……って内心思ってたぞ。
やっぱ吾輩にギャグセンスは
ないのだろうか。
殺伐とした空気を壊す為に、
少し無理をし過ぎたな。
「だから出しゃばるなって
言ったばかりだろ月歌。
今ここで相手方が偽名を名乗る
メリットは何一つねぇ。
それと、カレンちゃんも血の気を抑えろ。
相手の目的は戦闘じゃなく交渉だ。」
「うっ、ごめんユッキー。」
「くっ……それもそうじゃな。」
「悪いな。続けてくれ。」
「協力感謝する。
我々も事は手短に済ませたい。
とっととやっていくぞ。幹部。」
「待っ鷹ねー!
秘密結社holoXの女幹部、
鷹嶺・ルイでーす!」
「ばっくばくばくーん!
holoXの掃除屋、
沙花叉クロヱでーす!」
「一刀両断ッ! holoXの用心棒、
風真いろはでござる!」
「おはこよー! holoXのぉ〜ずのー!
博衣こよりだよー! よろしくねー!」
「にゃっはろー!
超絶エリート巫女の、
さくらみこだにぇ!」
良いぞ……!
この流れるような自己紹介。
これぞ求めていたスムーズさだ。
ようやくだ。
ようやく交渉の続きが出来るぞ!
「なんか
全員クセ強い自己紹介だね。
あたし、頭グルグルしてきたよ……。」
「落ち着け月歌。
相手は一つ一つ訊けば、
正確に答えてくれる筈だ。
順序立てて答えてもらうから、
大人しくしといてくれ。」
「ほーい。」
やっと
あちらも話をする気になったか。
「手短に済ませたいのは
あたしらも同じだから、
此方の自己紹介は後回しでいいか?」
「構わん。」
「それと交渉前に、
アンタらについて
確認したい事が幾つかある。
質疑応答の時間を
設ける事は出来るか。」
どうやら、まだ警戒が
解けきっていないようだな。
出会って間もないし、
それも当然か。
「良いだろう。5分だけだ。
答えられる範囲で答えてやろう。」
「この近辺に、
『ドーム』は点在していない。
つまりアンタらは
キャンサー蔓延る当作戦区域で
彷徨いていた事になる。
挙げ句、あたしらとの
交渉を求め接触した。
『ただのドーム住民』であれば、
そんな事不可能な筈なんだ。」
「…………。」
「答えてくれ。
アンタらは『ドームの住民』か。
それとも『軍や政府の関係者』か。」
▶︎ドーム住民だ。
▶︎軍や政府の関係者だ。
▶︎どちらも違う。
「……どちらとも違うな。
我々は偶然この異界に
居合わせただけの侵略組織だ。
貴様らも見たであろう。
――あの馬鹿でかい戦艦を。」
「「「「「――!?」」」」」
一同は驚愕の反応を見せるが、
眼鏡の少女は溜め息を吐きながらも
平然としていた。
「やはりか。これで合点がいった。」
「合点がいった?
どういう事だよユッキー。」
「要するに、奴らはキャンサーと同じ。
外宇宙から
来訪してきた侵略者って訳だ。
おそらくあの戦艦も、
奴らの有する軍事力の一部に過ぎない。
尚更、今ここであたしらが
死なずに対話出来てんのも
不思議なくらいだ。」
「え……あたしらもしかしてピンチ?」
「出方によるな。
だから月歌、彼女らの神経を逆撫で
するような真似はよしておけ。」
「お喋りは充分か?」
「……ああ。手間を取らせたな。
もうあたしらの知りたい情報は
大体得られた。
交渉の方に移ってくれ。」
「幹部、生贄を差し出せ。」
「はい。」
縄で縛り付けられた沙花叉を
鷹嶺が差し出した。
「え? 何これ。どゆ事。」
「生贄だ。惑星間交渉に於いて、
基本の交渉材料だぞ。
本当はもうちょっと
捕虜を用意してやりたかったが、
時間がなくてな。」
「いや、あたしら生贄とか
そういうの要らないんだけど。」
「マジか……。」
「うん。マジだよ。」
クソっ。
大抵の惑星外交官は
喜んで捕虜や生贄を受け取るのに、
コイツらの価値観はどうなってんだ。
(こうなったら……)
鷹嶺、またお前の力を貸して貰うぞ。
こんな事もあろうかと
両方の掌に『刀痕』を
つけといて良かった。
これでこっそり助けを求められる。
「ねぇユッキー、ラプちゃん
口に手当ててるけどあれ何してんの。」
「知らねーよ。なんか考えてんだろ。」
「幹部……幹部。
助けてくれ。こういう時
どうすればいいんだ?」
耳を当てた方の片手から、
ヒソヒソと幹部の返事が
刀痕越しに返ってきた。
「ここで交渉決裂する
訳にはいきません。
総帥、最終手段です。
一か八か、賭けてみましょう。」
「何だと……?」
「現在所有してる全ての野営物資を
交渉材料に回して下さい。」
成る程。
そういうことか。
正真正銘、最後の手段。
大きく出たが、
今はその策に賭ける他ない。
「……分かった。
幹部、アドバイス感謝する。」
「当然の事をした迄です。」
刀痕を付けた両手を下ろして、
向き直る。
「貴様らが生贄を
必要としないのは理解できた。
しかしだな、我々もここで
交渉を終わらせる気はない。」
「…………。」
「我々が現在所有している
全ての物資を
交渉材料として提供する。
それでどうだ?」
「提供する物資の量や質、
交渉の内容によるな。」
「我々が所望する
交渉内容は至ってシンプルだ。
我らを貴様たちの所属する組織に
4年間雇用して欲しい。
勿論、生活水準も
貴様らと同等の待遇で頼む。」
「……は?」
冷静に対処していた眼鏡の少女が、
突如あっけらかんとした
表情になった。
「どったのユッキー。」
「すまん月歌。一瞬だけ声を大にして
言わせてくれねぇか。」
「お好きにどうぞ。」
「――はぁぁああああ!?」
うるさ。どういうテンションだよ。
こっちにも叫びのうるさい
ピンク師弟が居るけども。
「どうユッキー、落ち着いた。」
「ああ。おかけでな。」
「用は済んだか?
判断は貴様らに委ねるが、
我々も出来れば穏便に済ませたいんだ。」
「で、どうすんのさユッキー。」
「受け入れるしかねぇだろ。
どの道断った時のリスクがデカ過ぎる。
下手したら、キャンサーより
何十倍も脅威だ。」
「オッケー。」
「決まったか。」
「ああ。少なくとも
あたしらは歓迎するよ。
だが、あたしらも一端の隊員にすぎない。
基地まで運べはするが、
最終的な判断を下すのは軍の上層部だ。
それでも良いか?」
「充分だ。協力感謝する。」
*
━━▶︎ セラフ基地。司令官室。
我々は組織の
基地へとヘリで運ばれ、
上層部の居る部屋へと連れて行かれた。
「その人たちが、
あなたの言っていた宇宙人ね。」
「司令官のクセに、
あっさり信じるんだね。」
「おい月歌、
司令官をあまりおちょくるな。」
「いいじゃんちょっとくらい。」
「よくねーわ。」
「信じるも何も、結果が出たのよ。
あなた達がヘリで移動してる最中、
関東地方全土のドームデータベースに
アクセスして確認したのだけど
該当する顔や姓名はヒットしなかった。」
「マジかよ……」
「それに、
ドローンの捉えた映像内で
人間離れした『能力』まで
使っていたわね。」
『刀痕』の事か。
コイツらもしかして、
戦闘中もずっと軍に監視されてるのか。
「…………。」
「あなた達の会話も、
樋口さんが設置した
ステルス・ドローン越しに
聴かせて貰ったわ。
4年間、当セラフ部隊に
隊員として雇用されたいようね。」
「その通りだ。」
「単刀直入に言うわ。
――判断しかねる。」