【本編完結】ハリー・ポッターと何も知らない転生者   作:シャケナベイベー

101 / 118
開戦

 ここに彼らは集った。逸れていたディーン、ルーナ、ランスも必要の部屋に合流し……ランスの顔を見たエミリー・フォーリーが歓喜して飛びつき抱きついたのを見てリオンはニヤニヤした……そして壁を這い上がってやってきたウィーズリー兄妹やチョウ、セドリック、他にも様々な人がやってきて皆がハリーたちの助けになると言った。

 

 そしてレイブンクローの髪飾りを……分霊箱を探す手がかりを求めてダンブルドア軍団は動き出した。

 それに合わせてリオンもまた、とある人物の元へ……一番の解決策だろう人の元へ走り出そうとしたところでマークに肩を掴まれた。

 

「どうしたマーク?」

「リオン、確かに髪飾りも大事かもしれないけど、君はそれ以上に大事なことがある」

「うん? 一体何のこ──「ダフネに会わなきゃ駄目だろう!」うるっさ!! でもその通りだ!」

 

 怒鳴られたリオンは耳を押さえながらハリーに手短に伝えて必要の部屋を出る。透明呪文を駆使して廊下を走り、やがてスリザリン寮のある扉の前に着いた時、リオンは最も重大な事を失念していたことを思い出した。

 

「………しまった、合言葉分かんねぇや」

 

 とんだドジである。リオンはどうしようかと唸り、壁の前をウロウロしていると、やがて蛇の紋様が現れて扉が出現しそれが開く。

 そして扉が完全に開いてそこから現れた人物を見た時、リオンもその人物も身体を硬直させた。

 

 腰まで流れる白金色の髪。アイスブルーの瞳に美しく整った顔立ち……少し痩せただろうか……を持つ少女、リオンにとっての最愛、ダフネ・グリーングラスの姿が確かにそこにあった。

 

「───ダフ「こっちに来て」うおっ!?」

 

 喉を震わせ、その名前を呼ぼうとした瞬間に腕を引っ張られて寮の中へと引っ張り込まれる。そしてダフネはリオンの腕を二度と離さぬとばかりに握ったまま来た道を戻っていき、談話室に足を踏み入れた。そしてダフネを見送ったはずのパンジー・パーキンソンは友人が戻ってきたことに訝しげな顔をした。

 

「あらダフネ。何か忘れ物───は?」

「えぇ、忘れ物と言えば忘れ物かしら。なにせようやっと最後に必要な人が帰ってきたのだもの」

 

 ダフネはリオンから手を離し、彼を談話室の中央に放る。そして大声で言った。

 

「皆! お馬鹿な騎士様のご帰還よ!!」

 

 ダフネがそう声を張り上げた瞬間、男子寮女子寮の両方からスリザリンの生徒たちが談話室になだれ込んでくる。皆が皆とはいかないまでもほとんどのスリザリン生がリオンを見て歓声を上げた。

 

「えーと……ダフネ?これは一体どういう……?」

「どういうことも何もないぜリオン」

 

 困惑するリオンの肩をブレーズ・ザビニが叩く。さらに横からセオドール・ノットとトレイシー・デイビス、ミリセント・ブルストロードとパンジー・パーキンソン、その他リオンと同学年の七年生のスリザリン達がリオンの周りに集まった。

 

「やっと帰ってきたかアホめ。お前が僕達をその気にさせておいて当の本人がいないのは不公平極まるからな」

「そうだよー! リオン君ってばみんなに好かれてるんだからね?」

「ま、皆が皆とは言えないかもだけどね」

「アンタ、あれだけ啖呵切っといて一人で解決しようってのは馬鹿でしょうよ」

 

 ワイワイガヤガヤと揉みくちゃにされながらリオンは彼らの言葉を聞くことしかできなかった。そして一通り彼らが話し終えた後、アストリア・グリーングラスがリオンの正面に立った。

 

「アストリア……」

「リオンさん……ごめんなさい!」

 

 へ?と声を上げた瞬間、リオンは頬に鋭い痛みが走ったのを感じた。思わず叩かれた方の頬を押さえてアストリアを見れば、彼女は目を真っ赤にしてリオンを見ていた。

 

「この、大馬鹿のスリザリンらしくないスリザリンの姉さんの恋人さん!! 姉さんがどれだけリオンさんがいなくなってから意気消沈してたか分かりますか!?」

「………いや、完全には………」

「でしょうねもしこれで分かるとか言ってたら私はもう一回叩いてました!! 良いですかよく聞いてくださいリオン・アーデル!!」

「はい!!」

 

 普段は温厚で滅多に人を怒らないアストリアの本気の怒りにリオン含め周りの誰もが軽く体を震わせた。

 

「貴方が大馬鹿で自分より他人を優先してしまう性格なのは私もこの五年近くでよく知ってます! でもだからこそ! 姉さんを悲しませるような真似だけはしないでください!! 私のたった一人の姉なんです、姉さんには幸せになってほしいんですよ!! 姉さんを幸せにできるのは、それができるのは他でもない貴方だけなんですリオンさん!!」

 

 ハァハァと肩で息をするアストリアを呆然と眺めていたリオンはやがてその目を自身の最愛の片割れへと向ける。そして二人の視線が交差し、ダフネは小さく微笑んでからリオンへと歩み寄った。

 

「私が言おうと思ってたこと全部アストリアに言われたわね。リオン、私は貴方が抱えているものがどれだけのものか知っているつもりよ。あの天文台の塔で話してくれたことが全てなら、だけど。だから私が言うのはこれだけ……お帰りなさい私の貴方」

 

 その言葉にリオンはダフネを掻き抱く。ずっと焦がれていたその温もりを確かめるように強く、強く。

 やがてダフネの耳元でリオンの湿った声が聞こえた。

 

「ただいま……それと、待たせて悪かった……」

「良いのよ。貴方は自分の心に従っただけだもの」

 

 リオンの背中をトントンと労うように叩き、ダフネは穏やかに微笑んだ。

 そして二人が離れ、しばし沈黙が訪れる───が、そこに新たな人物が談話室に転がり込んできた。

 

「はっ…はっ…その、皆。僕は───うん?」

 

 転がり込んできた少年……親愛なるドラコ・マルフォイは自分を見つめる皆の目がなんだか呆れたものを見るような目になっていることに気付いて首を傾げた。

 

「ようマルフォイ坊っちゃん。死喰い人としてのあれこれは良いのかよ?」

「ブレーズ……いや、僕は……僕は例のあの人を見限ったんだ」

 

 その言葉を聞いた瞬間、スリザリン生の殆どがどよめいた。無理もないだろう、リオンだけは静かにドラコを見つめていたがやがて彼の正面に立った。

 

「その意味を分かって言ってるのかドラコ。お前は闇の帝王に真っ向から反逆すると?」

「………あぁ。あの人は、あの人は僕の両親を馬鹿にした。僕の愛する父上と母上を……それでも僕はあの人と戦う勇気なんてない。それでも二人を守るためにこうしてここにやってきたんだ」

「はぁ………」

 

 ドラコは動揺しているのか言っている内容が支離滅裂な感じがしたが、とりあえず嘘は無いし両親のためにこちらにつくと言い切ったのだ。ならば信じてやろうではないか……なにせそうなる未来もあるのだから。

 ならば、とドラコをアストリアの横につけて座らせたリオンは改めてスリザリン談話室に集まったメンバーを一通り見回して口を開いた。

 

「さて皆……俺がここに戻ってきた理由はただ一つ。闇の帝王……ヴォルデモートを倒し魔法界に平和を齎すこと。それだけだ」

「お、おいアーデル! あの人の名前を呼んだら勘付かれて……!」

「どうせ遅かれ早かれ奴はここにやってくる。どの未来も全てこのホグワーツに終結しているからな」

 

 ドラコの動揺を抑え、淀みなくリオンは答える。そしてまた皆の方を向いて今度は優しい顔つきになった。

 

「だからどうか皆の力を貸してほしい……これは強制じゃないし、少なくとも上級生限定だ。四年生以上のな。それより下の子達は悪いけど安全な場所にいてくれ」

 

 軽く不満の声が上がるがリオンはそれを片手で制す。

 

「そして何も真正面から死喰い人達とやり合えって訳じゃない……スリザリンはグリフィンドールのような勇気を武器にする寮じゃなくて機転と狡猾さを武器にする場所だ。だからそれらを使って死喰い人と戦ってほしい」

 

 どうだ?と問いかければドラコ、ダフネ、セオドール、ブレーズ、トレイシー、ブルストロード、クラップ、ゴイル、その他スリザリン七年生全員と一部の四から六年生の生徒が立ち上がる。

 

「僕らは戦う!」

「悪霊の火だって覚えた」

「そうだぞリオン。クラップとゴイルときたらあのカロー兄の防衛術の授業で最も早く悪霊の火を覚えたんだからな……理由を聞いたら友達のマルフォイを助けたいからと聞いた時は思わずポカンとしたが」

 

 セオドールの言葉にドラコが呆気にとられたような顔をし、クラップとゴイルは恥ずかしそうに笑っている。それを一層優しい顔で見たリオンは立ち上がってくれた生徒たちに言い聞かせるようにして続けた。

 

「一つ忠告……というかお願いを。危なくなったらすぐに逃げろ、逃げて良いんだ。何より大切なのは自分の命なんだから」

「どの口が言うのかしらね私の騎士様?」

「リオンらしくて良いじゃねぇか」

 

 ダフネが呆れ、ブレーズが笑い飛ばす。そうして意志を一つにした彼らの下に寮監であるスラグホーンが寝間着姿のままスリザリン寮に転がり込んできた。

 

「さぁ諸君! 緊急事態だ、急いで避難を───おやリオン?君も戻っていたのかね?」

「お久しぶりですスラグホーン先生。何かありましたか?」

 

 飛び込んできたスラグホーンはリオンを見て目を丸くしたがやがて状況を簡潔に分かりやすく話してくれた。

 

「スネイプは逃走、カロー兄妹は捕縛済みと……分かりました。先生、今立ち上がっている彼らは今から始まる戦争に参加すると表明した人達です。ですから彼らは他のメンバーと合流してもらって、先生は残りの子達の避難誘導をお願いします」

「……いや、しかし……うむ……分かった。君の言う通りかもしれん、さぁ早く!生き延びることを最優先に!」

 

 スラグホーンの指示で生徒たちが慌ただしく動く。リオンもまた目的のため動き出そうとして、一度ダフネに近寄り囁いた。ダフネの雪のように白い肌が紅く染まりリオンを見上げる。

 

「これから戦いなのにそんな……」

「言える時に言わなきゃ後悔するからな。だから言うんだよ。愛してるってな」

 

 額にキスを落とし、今度こそリオンはスリザリン寮を飛び出していった。

 

「アイツ、たらし技術が上がってないか?」

「男は皆獣だ、仕方ねぇさ」

 

 セオドールとブレーズはリオンが去っていった方向を眺めてため息を吐いた。

 

 

 

 

 

 廊下をひた走り、目的の人影を探すが一向に出てこない。神出鬼没なのは百も承知だったがまさかここまでとは。

 

「私をお探しかしら。私の子、アーデルの子」

「レディ」

 

 そして唐突に現れた人影……レイブンクローのゴーストこと灰色のレディはリオンを見てたおやかに微笑み、リオンもまた膝を折って魔法騎士の礼をした。

 

「知っての通り私は生者ならざる影。戦の助力は──」

「レディ……いえ、ヘレナ・レイブンクロー様。レイブンクローの髪飾りの所在についてお聞かせください」

 

 ひゅ、と目の前の淑女が息を呑んだ……気がした。顔を上げればヘレナの顔は青ざめて唇はワナワナと震えていた。やがて膝が崩れ、ヘレナは手で顔を覆った。

 

「軽蔑したでしょう……私は母を超えたかった。子を捨てて、アルバニアの森に逃げて……」

「そしてレイブンクローのゴーストとなり、トム・リドルに出会った」

 

 ヘレナが頷いた。これではっきりした、彼女はリドルに髪飾りの在処を告げてしまったのだろう。

 

「あの少年は……」

「今ホグワーツに牙を剥かんとしている敵であり、俺の祖父母を殺した」

 

 硝子にヒビが入り、ヘレナの身体が震える。その時、懐にしまっていたゴーント邸で手に入れた手鏡が独りでに浮かび上がりその鏡面に何かを映す。

 

「それはリインの……」

 

 ヘレナが震える声で呟く。それと同時、あの地下で見た過去の光景が頭の中で蘇った。

 

『■■■■■の■には既に無いわ。だけれどこれを使えばその在処が分かるはず』

 

 ■■■■■の■───淀みが消え、言葉が鮮明になる。アルバニアの森……即ち、遠き蛇の先祖が残したそれは現代のスリザリンの血を汚す者への断罪となっていたのだ。

 手鏡を引っ掴み、鏡面を覗き込む。

 

 

 髪飾りを手に持ったトム・リドル。そしてとある壁の前で三度ほど往復し、現れた扉に入っていく。やがて出てきた頃には髪飾りを持ってはいなかった。

 

 

「必要の部屋か……!」

「見えたのね?」

「はい、確かに」

 

 ヘレナの問いに頷く。それと同時、宙に終の書が現れ、勝手にめくりとあるページで止まった。

 

『分霊箱を壊す方法は数多ある。バジリスクの毒、そしてそれを吸収した特殊な金属の武器。そして悪霊の火』

 

 随分と都合の良い書である。この場合はタイミングが良いと言うべきか。書が消えるのを見守っているとヘレナがドレスの裾を翻して告げた。

 

「全てを終わらせるの。ゴドリック先生もサラザール先生も母もヘルガ先生もこんな事は望んでいなかった」

「分かりました」

 

 リオンの答えに満足したのか微笑んだヘレナは再び宙に目を向けるとそれを伝えた。

 

「男爵。我らは過去の残影だけれど、今を生きる者たちの助けとなりましょう」

「仰せのままに。ピーブズめにも妨害させましょう」

「えぇ。そのように」

 

 男爵が消え、ヘレナもまたリオンに一言「お行きなさい」とだけ伝えて姿を消した。

 

 

 

 

 大広間に駆け込み辺りを見回す。そしてハリーたちを見つけ、そちらに駆け寄った。

 

「リオン!」

「髪飾りは必要の部屋だ。それと壊すならバジリスクの毒か悪霊の火が最適だろう」

「なら僕が行くよ!」

 

 ロンが立候補しそれに続くようにハーマイオニーも頷く。リオンもバジリスクの毒は彼らに任せることにする。

 そして広間に集まったダンブルドア軍団、教師陣、リーマス、シリウス、アルバートその他不死鳥の騎士団員、パーシーも戻ってきたことで全員揃ったウィーズリー家、そして魔法省から派遣された闇祓い数十名、そして勇敢な生徒たち。

 そんな彼らを見渡してたリオンの下にレックス、エレイン、クロードが駆け寄ってくる。三人ともがアーデルの戦装束を身に纏い戦意を滾らせている。

 

「ヴォルデモートの手勢がすぐそこまで来ている。マクゴナガル達が時間を稼ぐとはいえ突破されるだろう」

「分かってるよ」

 

 指を鳴らし、リオンも戦装束に着替える。衣は黒、留め具は金。その上からアーデルの家紋が刺繍されたローブを羽織る。そして闇と戦うため掲げられた多くの家紋の旗の中にリオンも杖を掲げてダンブルドア家とアーデル家、そして偉大なる四寮の旗を加えた。

 

 ぐるりと大広間を見渡す。生徒の避難はほぼ完了しているようだ。本来ならもう少し掛かるはずがどうやら好転したらしい。

 そして冷たい声が大広間に響いた。

 

『ハリー・ポッターとリオン・アーデルを差し出せ……無駄な血を流す必要もあるまい……そして俺様と決着を付けようではないか。なぁリオン?』

 

 ヴォルデモートの声が響く。フン、と誰かが鼻を鳴らした。レックスだ。

 

「俺から散々奪っておいて今更従うとでも思ったか」

 

 実に正論だ。大広間に集まった者たちの目が壇上のハリーとリオン……正確にはリオンに集まる。

 リオンはコホン、と一つ咳払いをしてから鋭く彼らを見据えて告げた。

 

「魔法騎士の名の下に、アーデルの名の下に確約し告げよう───あれの首を刎ねる時だ」

 

 

 大広間に雄叫びが響き渡る。

 

 

 

 

 そしてこの日、ホグワーツの戦いが幕を開けた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。