【本編完結】ハリー・ポッターと何も知らない転生者   作:シャケナベイベー

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筆がノッたので二話目を投稿しまぁす!!


お前を殺す

 戦場を駆ける。マクゴナガル達の張った防壁は破られ、そこから死喰い人やら吸魂鬼やら巨人やらがなだれ込んでくる。どこもかしこも命の奪い合いだ。

 

「アーデル!」

「黙れ」

 

 襲いかかってきた死喰い人の股間をドラゴン革のブーツで蹴りつける。何かが潰れたような音がすると死喰い人は「おギョッ!」と変な声を上げて口から泡を吹いて倒れた。

 ハリー達は髪飾りとカップを破壊するために秘密の部屋と必要の部屋に向かった。リオンは戦場に出て死喰い人達と戦う。役割分担だ。

 

 しかし如何せん数が多い。こちらも相当数を揃えてきたのだがそれより闇の陣営が多いのだ。やがて校庭の少し先、そこに一人の男がいる。薄汚い上背の高い男。マルフォイ家にいたなと思い出した。

 

「フェンリール・グレイバックか」

「アーデルのガキかぁ……お前は美味そうだなぁ!!」

 

 飛び掛かってきたフェンリールに杖を向けようとして───それより早く奴の片足が斬り飛ばされた。

 フェンリールとリオンの間に影が割り込む。白金の髪に淡い群青の瞳。父だとすぐに分かった。

 

「息子を殺せると思ったか犬畜生が」

「……父さん」

「コイツは俺に任せて先に行きなさい」

 

 簡潔に告げた父に頼むとだけ言って校庭をひた走る。

 走り去っていく息子を見届けたレックスは片足を斬り飛ばされたことで痛みに呻いているフェンリールを冷酷に見下ろした。

 

「フェンリール・グレイバック……リーマスの人生を壊した元凶、それ以外にも多くの人を人狼にした畜生。もはや生かしておく価値など無い……どうせかつての戦争でも使ったんだ。今更使ったところで何の躊躇いもない」

 

 ───アバダ・ケダブラ

 

 レックスの杖から緑の閃光が飛び、フェンリールの命を呆気なく終わらせた。そして周囲に素早く目をやり、飛び込んできたエレインと背中合わせになって二人を囲む死喰い人の軍団を睨んだ。

 

「トラバースにエイブリー、その他諸々……これはこれは。俺たちにとって最高の機会だな」

「そうね。なにせマーリンとエドガーの仇たちだもの」

 

 二人は冷ややかに死喰い人達を眺め、素早く呪文を飛ばした。

 

 

 

 

 走る、走る。迫りくる死喰い人を失神させトロールを引き倒して死喰い人を下敷きにしたりしてリオンは駆けていた。

 遠くの方ではとあるグリフィンドール生が怪我をしたスリザリン生を庇いながら戦い、とあるハッフルパフ生が投げた噛み噛み白菜をレイブンクロー生が増殖させて死喰い人に向かって投げまくっていた。

 そしてリオンの下に一枚の手紙が出現呪文で現れる。素早く掴んで目を通した。

 

『ハリー達が髪飾りとカップの破壊に成功。リーマス、トンクス含めた十名が重傷。一命は取り留めたものの戦闘続行は不可能。闇祓い三名、生徒五名が死亡』

 

「クソが……!」

 

 これは戦争だ。だがやりきれない気持ちが抑えられない。舌打ちをして迫りくるトロールに杖を向けた瞬間、そのトロールが落ちた雷に穿たれて絶命した。

 リオンの隣に影が立つ。トロールに雷を落とした人物───アルバート・クラウンは爽やかに笑った。

 

「ここは僕が引き受けるよ」

「頼めますか」

「勿論。こいつらはランロクが変身したドラゴンに比べれば屁でもないさ」

 

 頼もしいその言葉に軽く頭を下げてからその場を走り去る。道中死喰い人やら人狼やらを薙ぎ倒しながら戦場を駆けているとまるで全身の血が脈動したかのようにざわついた。

 

「っ……呼ばれてるな」

 

 誰が、とは言わない。感覚的にそれはヴォルデモートだろうと当たりをつける。

 どこにいるのかなど皆目見当が付かないが……それでも導かれるようにリオンは校庭を飛び出した。

 

 

 

 

 叫びの屋敷。暴れ柳の根元を投擲した小石でぶつけて動きを止める。そしてそのまま屋敷の奥へと進んでいき……そこにいた。

 

 その部屋に足を踏み入れた瞬間、魔力が熱を持ってリオンの肌を焼く。その魔力の発生源であるその男は紅い瞳をギラつかせながらやってきたリオンを見ていた。その男の横には愛する大蛇が不思議な球体に包まれながら床を這っている。

 

「来たな……来たなリオン・アーデルよ」

「あぁ。来てやったぜヴォルデモート」

 

 歓喜に震える魔力が灼熱となる。ヴォルデモート……愚かなトム・リドルジュニアはリオンを真っ直ぐ見据えてその口を三日月に歪めた。

 

「さぁ杖を抜け、魔力を迸らせろ! 俺様に屈する時だ!!」

 

 互いに杖を抜く。じっとりと背中を流れる汗が嫌に気持ち悪い。だが為すべきことを為すだけだ。

 

「躊躇なんてしない。全力で……お前を殺す」

「それでこそだ!!」

 

 二人の紅と青の魔力が爆ぜ、杖が動いた。

 ヴォルデモートが出始めに死の呪文を飛ばし、リオンはそれを体捌きで躱すと失神呪文を飛ばすが軽くいなされる。

 

 呪文が飛ぶ。ヴォルデモートの作り出した炎の大蛇が木で出来ていた、もはや原形を留めていない叫びの屋敷を燃やしていくがすぐさま巨大な水の渦を作り出して大蛇をかき消し、火種もろとも消失させる。

 そして単純な吹っ飛ばし呪文でヴォルデモートが壁を突き破り暗闇の中へと消えていく。

 

 それを追って屋敷を飛び出したリオンは右斜め後ろから飛んできた呪文を障壁で防ぐと直ぐにその方向に失神呪文を飛ばした。

 

「クハハッ……! 格段に強くなっているな。もはやベラと同等か?」

「お前のお墨付きとはな。ならお前が大人しく死んでくれれば楽なんだが」

「いや、死ぬのは貴様だリオンよ」

 

 ヴォルデモートが再度死の呪文を飛ばしてくる。リオンはそれを先ほどよりも余裕を持って躱したが僅かに体幹がズレた。

 魔力が切れかかっているのだと分かった。

 

 (爺ちゃん!)

 

 ───任せろ!

 

 だがリオンはすぐさま内の祖父に身体の主導権を明け渡す。精神が引っ張られ意識がブラックアウトした次の瞬間には素早く身体のズレを修正したエドワード・アーデルがヴォルデモートに真っ直ぐ杖先を向けていた。

 

「エドだな?」

「そうとも親愛なるトム。リオンだけじゃ不満だろうと出てきてやったぞ」

 

 その言葉にヴォルデモートの笑みがさらに深くなる。エドワードは杖先に魔法陣を展開、収束させて威力を強めた失神呪文をヴォルデモートに放つがヴォルデモートはこれを盾を展開して防ぎ再度死の呪文を放つ。

 エドワードはこれを近くの木を石像に変えることでそれを盾にして防ぐとヴォルデモートとの距離を一気に詰めた。

 

「アバダ・ケダブラ!」

 

 奴が詠唱を付けて死の呪文を唱える。それをギリギリ躱し、直ぐに距離を取りつつ複数の呪文をほぼ同時と言えるタイミングで飛ばしたが全て防がれた。

 小さく舌打ちをして地面にと、と降り立つ。お互いに杖を相手に向けたまま睨み合った。

 

「クク、どうした? いつになく慎重ではないか」

「お前相手ならそうもなるさ」

 

 短く言葉を交わし再び呪文を撃ち合う。時間にして数分ほどそうしていただろうか、エドワードの放った斬撃がヴォルデモートの頬を掠め血が飛び散り、奴の身体がぐらりと傾いた。

 

 ───今!

 

 ここしかない。渦を発生させヴォルデモートの背後に出現し杖を向ける。不意はつけた、ならばここで痛手を与える───

 

 

 

「なるほどお前らしい策だエド……だが、詰めが甘かったな」

 

 衝撃と共に身体が吹き飛び、叫びの屋敷の残骸に叩きつけられる。全身を斬り裂かれ血が溢れる。激しい痛みの中でエドワードは己の失態を悟った。

 

 ───読み負けた……!

 

 詰めが甘かった、功を焦った。なんたる失態なんたる短慮。ヴォルデモートを前にしてそんな思考をしたなど愚の骨頂以外の何物でもないというのに……!

 ヴォルデモートは肩をすくめ、全身から血を流す友を見た。

 

「愚かだな。俺様を前にして焦るなど。だがこれでハッキリした……やはりお前であっても俺様は殺せんということがな」

 

 心底残念だと言うようにヴォルデモートが倒れ込むエドワードを見つめる。その隙にエドワードは愛護の指輪の力を使って少しずつ傷を癒していく……まだだ、まだ終わったわけではない。

 

 

 

 するとそこに、新たな人影が馳せ参じた。

 

「我が君、これは……?」

「おお、来たかセブルス」

 

 やって来たのはセブルス・スネイプだった。彼は崩壊した叫びの屋敷と血を流し倒れる元教え子を見て唖然としているようだった。

 そしてエドワードもまたスネイプを見、僅かに顔を歪めた。

 

(アイリーンの子か……!)

 

 かつての後輩の顔を思い出す。そうしている間にもヴォルデモートとスネイプの話し合いが始まった。

 

「セブルス、俺様は考えた。なぜこのニワトコの杖は俺様に従わぬのか、なぜ伝説通りの力を発揮せぬのか……そうして考えに考え抜いて思い出した───」

 

 ──ダンブルドアを殺したのはお前であったな?

 

 

 

 止めろと叫ぶ間もなかった。ナギニの牙がスネイプの首に深々と突き刺さり、スネイプの顔からより一層血の気が失せて青白くなっていく。

 やがて栓をしていた牙が引き抜かれ、スネイプの首から血が噴き出る。それを見たヴォルデモートは「残念なことよ」と心にも無いことを言って、もう一度エドワードに視線を寄越してからナギニを連れ立ってその場から失せた。

 

 ある程度回復した身体を動かし大蛇の牙に貫かれた男に近付く。すると近くに隠れていたのかハリー、ロン、ハーマイオニーも飛び出てきた。

 

「リオン、貴方その傷……!」

「気にするな、ある程度治っている」

 

 ハーマイオニーの愕然とした顔を見ることもせず、エドワードから身体の主導権を返してもらったリオンは傷口に杖を押し当てた。

 

「ヴァルネラ・サネントゥール」

 

 最上級の癒しの呪文を唱える……が、傷は一向に塞がらない。思わず歯噛みした。

 

「無駄だ……もはや長くない」

「うるっせぇ黙ってろ!!」

 

 諦めようとするスネイプに叩きつけるようにして叫び、再度癒しの呪文をかける……が、やはり効果が無い。悔しそうにするリオンを見たスネイプは痙攣する手で杖を握りしめ、額に押し当てようとしているが手先が震えて上手くいかない。なんとか手を支えて杖先を押し当てるとそこから銀色の光が引き抜かれるようにして現れる。

 

「これを、取れ……これを……」

 

 スネイプの言葉に従って素早く瓶を取り出し、その中に銀色の光を詰める。

 スネイプの目がより虚ろになる。その黒い淀んだような目がハリーを捉えた瞬間、その目に生気が戻った。

 

「僕を……見て、くれ………」

 

 その言葉を最後にスネイプの身体から力が抜けてドサリと地面に横たわり、それきり彼が動く事は無かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 どうやって校長室にまで来たのか、まるっきり記憶にない。あまりに多くのことが起こりすぎて処理しきれていないのだ。

 ハリーが『憂いの篩』を取り出し、その中にスネイプから取り出した記憶を注いで揺するのをボンヤリと眺める。あの記憶はハリーに宛てたもので自分が見る権利は無いだろうとハリーの誘いを辞退したのだ。

 

 ハリーが水盆に顔を突っ込みスネイプの記憶を覗く。数分か数十分か。どれだけかは分からないがそれなりの時間が経った頃にハリーが水盆から勢い良く顔を離した。

 

「見終えたのか」

「うん……全部分かった。スネイプが……彼があそこまでした理由も、僕がやらなきゃいけないことも」

 

 頷きソファから立ち上がる。そしてハリーの横に立ち彼の肩を叩いた。

 

「その片道切符、俺も同伴させてもらうぜ」

「うん……記憶の中のダンブルドアが言ってた。君もなんだね……」

 

 何が、とは言うまい。俺達の目的は同じなのだから。

 校長室を出て階段を駆け下りる。向かう先は奴がいるだろう禁じられた森。

 

「ハリー! リオン!」

 

 階段を降りる二人に声が掛かる。見上げればネビルが数段飛ばしで階段を駆け下りてこちらに向かってきていた。

 

「君達、一体どこに───」

「ネビル、お願いがあるんだ。ヴォルデモートの……アイツの傍にいる蛇を殺してほしい。あの大蛇を」

「お前ならやれるって信じてるぞネビル。お前は強いって俺たち知ってるからさ」

 

 去り際に肩を叩き、校舎から校庭へ。校庭から森へと移動した。

 道中で死喰い人を見かけることはなかった。どうせ最後の慈悲をくれてやろうとかそんな感じで引き上げさせたのだろう、想像がつく。

 

 そして森の入り口に立ち、ハリーがスニッチを取り出す。ダンブルドアから遺品として受け取ったもので『私は終わる時に開く』と書かれている。互いに顔を見合わせ呟いた。

 

「僕たちは」

「俺たちは」

 

「「死ななければならない」」

 

 同時に口にした瞬間、スニッチが開いてそこからゴーントの指輪が転がった。嵌まっているのは死の秘宝の最後の一つ、『蘇りの石』に他ならない。

 ハリーが手の中で石を三回転がすと陽炎が立ち昇った。そこから二人の人影が現れる。

 一人はハリーと同じ背丈、くしゃくしゃの髪に眼鏡、目の色だけがハリーと違う。もう一人は赤く長い髪を背中に流し、ハリーと同じ緑の目で二人を眺めている。

 

 リオンは少し下がり、親子水入らずの時間を少しでも過ごさせるべきだと考えた。しかしジェームズとリリーは何でもないように笑ってリオンを見た。

 

「君だってここにいて良いんだ」

「だって貴方たちは本当に頑張ったもの」

 

 ハリーが嬉しそうに微笑む。リオンもまた小さく笑んだ。

 

「死ぬのは怖い?」

「いや。驚くほどに一瞬だ」

 

 ハリーの囁きにジェームズが答える。そしてリリーがその緑の目に目一杯の愛情を宿してハリーとリオンを見た。

 

「大丈夫、いつまでも一緒にそばにいるわ」

 

 その声に頷き、ハリーとリオンは森の中を進む。ジェームズとリリーがそばにいるからか吸魂鬼達も近づいてこない。

 やがて森の開けた場所に出ればそこでヴォルデモートは他の死喰い人達と共に待っていた。その顔が喜色で歪み、自ら命を捧げに来た勇敢で愚かな子供たちを称えた。

 

「素晴らしいぞポッター、リオン。お前達の勇気ときたら───」

「御託は良い。さっさとしたらどうだトム・マールヴォロ・リドル?」

 

 ヴォルデモートの言葉を遮り、リオンが心から嘲りを込めてその名前を呼べばその顔から色が消えた。

 

「貴様───」

「『死の飛翔』なんて大層な名前を付けても結局お前は死に怯えているだけだ。グリンデルバルドの方が上手だったな」

 

 死喰い人が凍りつき、ヴォルデモートから凄まじい怒りが放たれる。杖先がリオンに向く。そうだそれでいい。

 

「よほど死にたいらしい」

「準備は出来てるんだよ。俺たちより長生きのくせに逃げてばっかのお前と違ってな」

 

 それにもはや我慢ならぬとばかりに奴が杖を振り上げ、唱える。

 

 

 

「アバダ・ケダブラ!!」

 

 迫りくる緑の閃光をリオンは穏やかな顔で眺める……その刹那群青の目が見開かれ、リオンの視界を緑が覆う。

 

 

 リオンの身体が地面に倒れるのと同時に彼が常に身につけていた祖父エドワードのペンダントがパリン、と音を立てて砕け散った。

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