【本編完結】ハリー・ポッターと何も知らない転生者   作:シャケナベイベー

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ヴォルデモートは斃された……ではその後は?


何も知らなかった転生者

「遅くなってごめんな…婆ちゃん」

 

 棺の中に眠る祖母に声を掛ける。

 ヴォルデモートが死んでから一時間。リオンは未だ勝利の余韻が残る大広間を離れて一人祖母が埋葬されている墓を訪れた。

 

「闇は祓われた……貴女達が遺してくれた希望のお陰で俺達は勝てたんだ。だから、ありがとう」

 

 棺の中に沢山の花と共に眠る祖母の顔を覗く。そこに腰から下げていた一本の杖を差し込む。祖父エドワードのリンゴに不死鳥の尾羽根の杖だ。

 

「爺ちゃんの身体は無いけど、せめて杖は一緒にあるべきだ……爺ちゃんもきっと許してくれるだろうさ」

 

 微笑んで棺に蓋をすると杖を振り墓を隠し防衛呪文で厳重に保管した。

 

「あなた達の死後がどうか安息で溢れていますように」

 

 短く告げて、その場を後にした。

 

 

 

 

 

「お、やーっと戻ってきやがった。どこ行ってたんだよ」

「ちょっと報告にな……で、皆揃ってどうしたよ?」

 

 リオンの視線の先にはマークにランス、ダフネにセオドールとブレーズ、ハリーにロンにハーマイオニー……それ以外にも沢山の人が一同に会していた。

 

「おいおい、戦争を終わらせた英雄を讃えるのに理由なんて必要ないぜ?」

「なんなら我々ウィーズリー・ウィザード・ウィーズ特製の悪戯グッズでお祝いを……」

「碌な事にならないから却下」

 

 ええー、と残念がる双子に呆れたように笑った後、リオンの目は自然とダフネに向かった。

 周りがリオンたちそっちのけで盛り上がるのを見てリオンはダフネの手を取ってその場を離れると森の中に足を踏み入れた。

 

「もう、どうしたの?」

「悪い悪い。ちょっと言っときたいことがあったからさ」

 

 困り顔のダフネに笑いかけ、リオンは背を木の幹に預ける。

 

「なぁダフネ……ヴォルデモートは斃された。予言も効力を失い、俺を縛っていた全部が綺麗さっぱり消えたわけだ」

「えぇ、そうね」

 

 どうしたのかとダフネが目線で聞いてくる。リオンは木の幹から体を離して一歩一歩しっかりとした足取りでダフネに近付いていく。

 

「つまり、俺はもうなんのしがらみも無くお前を愛せるってわけだ」

「…………え、えぇ」

 

 後一歩踏み込めば顔が触れ合うだろう距離まで来てリオンは囁く。顔が火照るのを自覚したダフネは思わず顔を背けようとするがリオンがそれを許さず、彼女の頬を優しく挟んで目線を自分の顔に合わせるよう固定した。

 

「俺を逃さないんだろ? なら俺も同じようにしたって構わないよな?」

「えぇ、そうねその通りだわ……ねぇ貴方、おかしなテンションになってないかしら?」

「全部取っ払われた解放感から確かにハイになってることは認めるよ。でもこの言葉も全部俺の正直な気持ちなんだ」

 

 そう言って軽くキスをする。少し目を見開いたダフネだがやがて目を閉じてそれを受け入れ、唇が離れると困ったように笑った。

 

「私の騎士様は積極的になったのね」

「男だからな、綺麗な恋人を前にしたらそうもなるさ」

「今までは一歩引いていたのに?」

 

 仕方の無い人、と彼女が微笑む。そして皆のところに戻るため今度はダフネに手を引かれた。

 

「ねぇリオン、全部終わったのよ。何かしたいことはない?」

「したいこと?」

「えぇ。貴方のことだから予言を受け入れて諦めていた事だって沢山あるでしょう」

 

 そう言われて確かにと思い出す。予言を聞くまでは卒業旅行で日本に行きたいと考えていたんだったな、ダフネやマーク、ランスたちも連れてとか。

 でもまだ暫くは難しいだろう。死喰い人の残党狩りもあるし、なにより今回の戦争で怪我をした人の治療や犠牲になった人たちの弔いも済ませなければならない。

 何よりグリーングラス家の血の呪いの治療法だって見つけなければならない。

 

(けど、焦る必要なんてどこにも無いよな)

 

 だって自分にはこれから多くの時間があるのだから。

 二人で手を繋いで森を抜ける。そして笑顔でこちらに手を振る友人達の下へ静かに微笑みながら駆けていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 よく晴れた秋の朝。妻に起こされ、身支度を整えて屋敷を出る。

 外では既に準備を済ませていた子供たちがソワソワしながら待っていた。

 

「遅いじゃんか親父!」

「悪かったな、今日の準備で遅くまで起きてたんだよ」

 

 怒る息子の頭をワシャワシャと撫でる。髪型が崩れるから止めろよ!と笑いながら叫ぶ息子に微笑んでいると服の裾を軽く引っ張られる。

 目線を向ければそこにいるのは息子と同じく今日からホグワーツに通うことになる長女の姿が。

 

「どうした?」

「父様、父様は私が何処の寮に入ると思う?」

 

 少し不安げに瞳を揺らす娘に答えてやろうとして「そろそろ出発しなきゃ遅れるわ」と二年後にホグワーツに通うだろう次女と手を繋いだ妻が呟く。そして長女の頭を撫でて「駅に着いたら話そう」と言ってからウズウズとしている息子の手も引っ張ってセストラル付きの馬車に乗り込み、キングス・クロス駅に向かってマグルには車に見えるよう魔法をかけた馬車は走り出した。

 

 

 

 そしてキングス・クロス駅に着くと息子と娘はリオンそっくりな黒髪と群青の瞳を輝かせてトランクを引く。それぞれの鳥籠に入ったフクロウが不満そうに鳴くと二人はスピードを落とす。

 

「二人とも、あんまり走ると転ぶわよ」

「ごめんなさい母様」

 

 微笑みながらダフネが注意すれば長女が頭を下げる。それを腰にしがみついて甘えてくる次女の頭を撫でながら見ていたリオンはやがて自分達の方にやってくる友人一家を視界に収めた。

 

「やぁリオン。ホグワーツ副校長がこの時間にここにいて良いのかい?」

「権力は正しく使わなきゃな。大事な息子と娘がホグワーツに通う日なんだからこれくらいはするさ」

 

 妻のスーザンと手を繋いでやってきた親友のマークにそう返す。そんな二人の息子はと言えば息子と娘と何やら話していたが、やがて娘がこちらに駆け寄ってくる。

 

「父様! アストラったらまたルクスと話してばかりで私に構ってくれないのだけど」

「おいどういうことだマーク」

「僕に聞かれても困るなぁ」

 

 娘の言葉にジロリと親友を睨めば困ったように笑われて顔を逸らされた。

 確かにマークの息子……アストラは長男のルクスと話してばかりいるが、やはり同性同士気が合うこともあるのだろう。

 

 仕方ないなと娘……カレンの前に屈むとその頭を撫でた。

 

「きゃっ、ちょっと父様!」

「大丈夫だよ。ルクスもアストラもお前を除け者にしたりなんてしないさ。お前がよく知ってるだろう?」

「それはそうかもしれないけど──「カレン!」きゃっ!?」

 

 と、そんなカレンに背後から誰かが抱きつく。銀の長髪に紫の瞳の少女……これまた親友のランスの一人娘、アリアだ。

 

「こらアリア! 走ったら危ないでしょう?」

「でもママ、せっかくカレンに会えたのよ?」

「そうかもしれなくても駅で走らないの!」

 

 駆け寄ってきたアリアの母、エミリーが彼女を叱るのを横目に俺とマークは寄ってきたランスを迎えた。

 

「ようランス。闇祓いの仕事は?」

「有給使ってやったぜ」

「良いな。僕なんて見送りが終わったら魔法省に戻らなきゃいけないのに……」

「そりゃホグワーツ理事会長なんてやってればそうもなるさ」

 

 ゲンナリしている親友の肩を労うように叩いて周囲に視線を走らせる。新入生だろう子達を連れた親子連れが多くなり、賑やかさも増している。

 ダフネはどこだろうと探すと、少し先にいるドラコとアストリアと話していた。スコーピウスはもう列車に乗ったのだろう、姿が見えない。

 

 そしてリオンは元気そうなアストリアの姿を見て静かに息を吐いた。一時期は危なかったが最近は回復してきている。このまま行けば数年以内に血の呪いも完治するだろう。そして俺が見ていることに気づいたのかダフネはマルフォイ夫妻に手を振ってそこから離れると俺の隣に立ち、次女のセレナの手を優しく掴んだ。

 

「カレンとセレナってば相変わらず貴女にそっくりねダフネ」

「そうかもしれないけどルクスこの人の血が濃いのよ。髪と目なんてこの人譲りだし、昔のリオンそのままだわ」

 

 話しかけてきたスーザンにダフネは困ったように笑う。確かにセレナは白金色の髪にアイスブルーの瞳だし、カレンはダフネ譲りの白金色の髪にリオンと同じ群青の瞳。ルクスはリオン譲りの黒髪と群青の瞳だ。確かにリオンの血が濃いのかもしれない。

 

 やがて出発する時間が近付き、リオンとダフネはセレナを伴ってルクスとカレンの下に向かった。

 

「ルクス、カレン。そろそろ特急に乗り込まないとまずいだろう」

 

 そうリオンが声を掛けると二人の目が父親を見上げる。それにどうしようもなく愛おしさを感じたリオンは二人を優しく抱きしめた。

 

「ちょ、親父!?」

「どうしたの父様?」

「はは、いや何でもない。二人とも、ホグワーツに行ったら俺のことはアーデル教授か先生と呼ぶように。良いね?」

 

 リオンの確認に二人が頷く。リオンは二人が入学する日になったら言おうと思っていたことを話すことにした。

 

「二人とも自分がどこの寮になるか、不安かもしれない。それでも四つの寮それぞれにいいところがあるんだ。勇気を持ちたいならグリフィンドールに。心優しくいたいならハッフルパフに。賢くありたいならレイブンクローに。誇り高くありたいならスリザリンに。お前達がどこの寮に行っても俺達は家族だ」

「でもアルバスはスリザリンに入るかもって戦々恐々としてたぜ?」

「だから言ってるだろう? スリザリンだって悪いところばかりじゃないって。俺だってアーデル家唯一のスリザリンだが友達は寮を越えて沢山いたんだ」

 

 納得いかなそうなルクスの頭を撫で、もう一度二人の目を見ながら最後に付け加える。

 

「組み分け帽子は確かに家柄を重視するがそれ以上に大切なのは本人の意志と、その本人がどこの寮の適性があるかだ。俺はスリザリンだがハリーやロン、ハーマイオニーからはグリフィンドールの方が合ってるって言われたくらいだ」

 

 だからそんなに気負わなくて良いよ、と二人の頭を撫でその小さな背中を押す。

 そして早くホグワーツに行きたいとせがむセレナを宥めていたダフネが二人の額にキスを落とし、特急へと入っていく二人を見送った。

 

「あの子達なら大丈夫よ。だって私と貴方の子だもの……それに何かあったら貴方がなんとかするでしょう?」

「大変厚い信頼をありがとう俺の奥さん」

 

 微笑み掛けてくるダフネに肩を竦め、ホグワーツ特急の中から手を振ってくるルクスとカレンを眺めた。

 

 

 あれから十九年。闇の兆しはなく、全てが平和に過ぎていった。

 

 

 

 

「今日も平和な日だ」

 

 紅の特急が走り出す。それを眺めながらリオンは穏やかに呟いた。




これにて『ハリーポッターと何も知らない転生者』の本編は完結となります!ここまでお付き合いしていただいた読者の皆様に、心から感謝の気持ちで一杯です!
今後の予定としては短い番外編をいくつか投稿し、この作品は本当の完結を迎えます。
その後、呪いの子編を新しく投稿するので気が向いたら是非ともご覧になっていただければ幸いです。


 そして少しだけ、呪いの子編の予告をば。






 ───誰もが私を見て言う。呪いの血を持つ望まれない子だと。

『僕はアルバス。君は?』

『スコーピウス。スコーピウス・マルフォイさ』

『私はカレン。貴女は?』

『リインよ。よろしくねカレン』

 ───呪いは密かに芽を出している。

『ニワトコとナナカマドの杖を持つものは惹かれ合うという逸話があるのです』

『違うんだアルバス、父さんはただ……!』

『マーク、すまないがカリアン家の力で調べてほしいことがある』

『なんてこと……ユスティア!!』




『目的はなんなの?』

『全てに決着を着けるの』

『クロードと蛇神様の予言だ。時の流れの中に───』




『────ヴォルデモートの姿を視たと』


 呪いの子編、近日公開予定。
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