【本編完結】ハリー・ポッターと何も知らない転生者 作:シャケナベイベー
死の秘宝最終話で手違いを確認したので編集しました
「……しばらくはドラゴンの名前も顔も見たくないわ」
ロンドン郊外、人気のない場所で私───ステラ・アーデルはそっと息を吐いた。傍らには気を失い倒れるドラゴンとそれを検分する魔法省の役人たち───私たちが事を収めるまで出てこなかった連中だ───と、そんな彼らのそばには凄惨な姿となった一人の男性の亡骸。実に刺激的な光景だ、お肉はしばらく控えよう。
「いやはや流石は魔法騎士アーデルの姫君。竜退治すら五年生でこなすとは」
「退治じゃないわ捕縛よ。それにこのドラゴンは元からかなり弱っていた……操られた痕跡だってあるもの。それくらい分かっているでしょうライアン」
そっと隣の少年───幼馴染のライアン・マッキノンに呟けば彼はニヤニヤとしていた笑みを引っ込めて肩を竦めて同意した。
「お前が視た未来だとどうなってた?」
「ドラゴンが街中に墜落してマグルが大混乱。死者も出て隠蔽もほとんど不可能な状態だった」
「それはマズイな」
彼が冷や汗を流す。機密保持法崩壊待ったなしかもしれなかった未来だ、ともすればイギリス魔法界はここで終わっていたかもしれない。
「だからこそ君の未来視には感謝してるのさステラ」
と、そこに第三者の声が掛かる。振り返りそれが見知った顔であることに安堵した私は笑み浮かべてそれに答えた。
「お久しぶりですマルスさん。卒業式以来ですね」
「久しぶりだねステラ……それと、いい加減こっちを見てくれてもいいんじゃないかな弟君?」
「なんでお前ここにいるんだよ。お前まだ研修生だろうが」
少し不機嫌そうにライアンが聞けば、彼の兄であるマルス・マッキノンは肩を竦めて笑った。
「現場にも慣れておけと連れてこられたのさ……闇祓い候補生に見せる現場としては中々にショッキングだと思うよ」
「まぁ、それはそうですね……」
なにせ亡骸はドラゴンに噛み砕かれ手足はバラバラ、繋がっていてもあらぬ方向に折れ曲がっているのだから。この男性───ジョージというらしい───もこんな最期になるとは思っていなかっただろう。
「それで? ステラの未来視には他に何か映ってた?」
「ええと、彼が乗っていた馬車には彼の他に馬車の運転者と、フィグ先生と転入生の子が乗っていました……運転者は姿くらましで、フィグ先生と転入生の子はポートキーで脱出したみたいです」
「ポートキー?」
マルスさんの疑問に頷く。詳しい場面までは見えなかったが生きていることは視えた。恐らくホグワーツには無事にたどり着くだろう。
「そうか……あ、なら辺りに散らばってた学用品もその転入生の子の物かな?」
「恐らくそうかと」
「いくつかは駄目になってるけど無事な物もある。届けに行ってあげてくれ」
「分かりました」
未来視によればその転入生の子はハッフルパフに組み分けされるそうなので同じハッフルパフの私が届けるのが筋というものだろう。
「二人とも、僕がホグワーツまで送ろうか? ていうかどうやってここまで来たんだい?」
「馬車がドラゴンに襲われる場面を視たステラが特急から箒で飛び立とうとして、それを止めるために車内販売のばあさんと大立ち回りをしてたから俺が加勢して二人して特急から空の旅へって感じだ」
「……無茶するねぇ」
その言葉に何も言い返せなかった。まぁ特急から出ようとした私も私かもしれないが仕方ないではないか。危うく人死にと機密保持崩壊の危機だったのだから。
「まぁ良いか。どうせこの件は魔法省が処理するだろうし……二人ともまだ学生なんだから危ない事は極力控えるように」
「絶対にやめろとは言わないんだな?」
「禁じられた森に密猟者がいる時点で今更さ」
確かに、と二人して頷きマルスさんと共に馬車に乗ってホグワーツに向かった。
この出来事が私たちの運命に関わるとは、この時の未来視でも見通せなかった。