【本編完結】ハリー・ポッターと何も知らない転生者   作:シャケナベイベー

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今回はリオンの祖母、ユスティアのお話


光をくれた貴方へ

「穢らわしい半巨人が! 近づくなよ!」

 

 その声が聞こえた瞬間、ホグワーツのグリフィンドール三年生であるルビウス・ハグリッドはこうなるのも仕方なしと言われたことを受け止めていた。

 皆口に出さないだけで自分の事をそのように見ているだろうことは何となく察せていた。自身と同じ寮生で同級生のアラスター・ムーディやミネルバ・マクゴナガル、オーガスタ・ロングボトムなどはそんな輩が目についた瞬間にアラスターとオーガスタならば実力行使で、ミネルバならばできるだけ理性的に追い詰めるのだろうとぼんやり考えながら。

 

 だから、その甘い声が聞こえた時に目の前の自身と同じ三年生らしいスリザリン生は先に挙げた彼らによるものより酷い目に遭わされるのではないかと思ったのだ。

 

「あらあら。随分と品のない言葉を並べ立てる子もいた事───縫い付けてしまいましょうね」

 

 ハグリッドとスリザリン生の間に割って入った影が瞬時に杖を振るえば、スリザリン生の口が強制的に閉じ、彼はモゴモゴとしか発せなくなった。

 

「産まれで差別し、挙げ句それを愉しげに語るのなら──貴方はそんなことが出来るほどに裕福な生まれなのかしら? もしかしてブラック? それともマルフォイ? ノット? レストレンジ? まさか『リスト』に載っていない家の者が、ましてや誇り高くあるべきスリザリン生が生まれで差別するなんてこと、あるはずが無いでしょう?」

 

 甘い蜜のような声で──その実それは毒を含んだものだが──語りかけてくる自寮の監督生の姿にすっかり恐怖したらしい目の前のスリザリン生は慌てて駆け出していく。静かにその背を見送った少女はハグリッドの方へ振り返った。

 

「大丈夫ハグリッド? 近くに貴方のお友達は居ないようだったから助けに入ったのだけれど……迷惑だったかしら」

「そ、そんなこたぁねぇ! 助けてくれてありがとうユスティア!」

 

 辺りを見回し、少し困ったように笑うこのスリザリンの監督生にハグリッドは必死にお礼を言った。それを聞いた少女──ユスティアはその銀の瞳を細めて「それなら良かったわ」と微笑んだ。

 

「また何か言われたならしっかり言い返しておきなさい……ああいう愚かな子達は学ばず何度でも同じことをしてくるから」

 

 まるで見てきたかのようにそう語ったユスティアは再度気を付けるようにハグリッドに念を押してからその場を離れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 パチリと目が開く。懐かしい夢を見たものだと息を吐くと、まず目に飛び込んできたのは黄色と黒のネクタイと白のシャツだった。

 そしてそれ越しに伝わる仄かな熱と静かな寝息に自分がどこにいるかを思い出す。

 

 ここはホグワーツにいくつもある隠し部屋の一つ。千年続く魔法騎士の家系、アーデル家とそれに認められた人間のみが入ることを許された特別な場所。

 ゴーストや肖像画に邪魔されないよう魔法を掛けて、そのまま──

 

 そこまで考えて首を振る。これ以上は顔が爆発しそうだと、そっと自身に回された腕から離れた。

 

「……馬鹿な人。他を選ぶこともできたでしょうに」

 

 未だ眠りについている男の髪を指で梳く。彼は引く手数多だ、私のような悪徳の血を引く女でなく他の誰かの手を取る方が安全で、幸せなはずなのに。

 

『俺の手を取れ』

 

 六年生の終わり頃。世間ではグリンデルバルドの脅威が最高潮に達し始めた頃だった。当然そんな男の血を引く私は今まで以上に遠巻きにされ、時には呪詛を向けられることもあった……返り討ちにしたが。

 一人で生きていくのだと思っていた、幸せなど望むべくもなく自分が誰かの隣に立つ権利など無いのだと。

 

 だがそんなことなど知らないと、エドワード・アーデルは天文台で私の腕を掴み叫んだ。俺の手を取れ、と。

 

『もうたくさんだ。なんでお前が幸せを諦めなきゃいけないんだ罪を背負うのは親だろうが!!』

 

 それに涙を流し、首を横に振った。どこまで行っても私はグリンデルバルドの娘なの。それは覆らないし私を苛み続けると。

 だから私のような人間と一緒になってはいけない、貴方ならもっと素敵な人がいるでしょうと。だがそれはエドワードの怒りをさらに強めるだけだった。

 

『ふざけるな。離れようとするな逃げようとするな背を向けるな!! ウンザリだお前のその幸せを諦めたような目を見るのは!!』

 

 お前が逃げるなら俺はどこまでも追いかけて捕まえてやる!!

 そう叩きつけるように叫んで彼は己の心臓に杖を突きつけると呪詛を打ち込んだ。それは最高位に位置する呪い。生き方を縛る呪いだ。

 愛する人に背を向け裏切ったのなら心臓が爆ぜて死ぬようにという、破れぬ誓い以上に残酷な呪い。

 

『俺がお前と一緒になると決めたんだ。ならこれくらいは当然だ』

 

 あっさりと自身の命を天秤の片翼に捧げ、彼は笑った。呪詛を解呪しようとしても駄目で、私は捕まったのだ。獰猛な獣のような熱を持ったその瞳に。

 

「……ほんとに、馬鹿なんだから」

「馬鹿で悪かったな」

 

 膝の上に乗せたエドの顔が口を開き、すぐさまその腕が私の腕を掴む。

 起きていたの、とかいつから聞いていたのとか色々言いたいことはあったがとりあえずそれを呑み込んで彼の腕の温もりに身を委ねることにした。

 

「ホントに大馬鹿よ貴方。酔狂で頑固者で……」

「嫌じゃないんだろ?」

「そうね、心地良いわ……泣きそうなくらい」

 

 立ち上がり、背中に回された腕の感触を感じながらエドの胸に顔を埋める。

 だからこそ、今度は私の番だ。トムの蛮行を見逃し、苦しむ彼の力になる。私に沢山のものを与えてくれた何よりも大切な貴方のために。

 

 

 私の貴方、光をくれた貴方。どうかその道を歩く貴方の隣にいることを許して欲しい。

 

 

 

 

 貴方がそうしてくれたように私も貴方に愛を返すから。




ムーディ、ハグリッド、マクゴナガル、オーガスタが同級生っていうのは完全に作者の妄想。

マクゴナガルは1935年生まれだとかファンタビにミネルバがいるやんとかなって生年月日分かんないので好きにします
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