【本編完結】ハリー・ポッターと何も知らない転生者   作:シャケナベイベー

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本編後の一幕


お人好し

「あぁ……あぁ。分かった、事が片付いたらそっちに送るよ」

 

 会話を終え、電話を切るとスマホをポケットに仕舞う。電話の相手はハーマイオニーだ。

 

 どうも魔法力の兆候がある子がいて、その子をなんとか保護できないかとお鉢が回ってきたのだ。アーデルは弱き者の庇護者ならば、と。

 

「お人好しもお人好し……物好きな奴だよまったく」

 

 親愛なる栗色の髪をした女の姿を思い浮かべて小さく笑う。その子供がいるのはロンドン郊外の小さな一軒家だ。取って付けたようなインターホンを鳴らせば、中から顔を覗かせたのは一人の女だった。目は淀んでいて少なくともまともではない程に。

 

「……誰、ですか」

「こんにちは婦人。貴女の娘さんの事で用があるのですが」

 

 それを口にした瞬間、女の目がこれでもかと見開かれ勢いよく扉を閉めようとする──が、それに足を挟んで妨害した。いくら全力で扉を閉めようとしたところでドラゴン革のブーツはびくともしない、流石だ。

 

「帰れ、帰れ帰れ!! お前たちなんかに私の気持ちなんて分からないくせに!!」

「そりゃあね。望んで産んだ子で無いとは言えまだ年端もいかない子を虐待する奴の気持ちなんて分からなくて当然ですとも」

 

 すぐさま防音と認識阻害の結界を張り、あくまで丁寧に受け答えする。

 懲りずに何度も扉を閉めようとしてくる女を見て埒が明かないと浮遊呪文で彼女を退かして家に入った。

 

「お前!! ここが誰の家か分かって──」

「貴女を捨てた夫が貴女方に与えた家でしょう? ラバスタン・レストレンジと結婚して子を孕んだものの、ラバスタンは貴女と子を捨てて逃亡し、挙げ句闇祓いに捕まり処刑。残った貴女は忌み者のように娘を虐待……俺が介入するには十分な理由だ」

 

 女はいっそ哀れなほどに茫然と俺を見上げる。俺が誰か気付いたのだろう、その顔に恐怖が広がっている。

 

「り、リオン・アーデル……! 『闇殺し』の……!!」

「酷い異名を付けられてるなぁ……殺したのなんてごく一部なのに」

 

 やむにやまれぬ事情があったからだが女にその意味は汲み取れなかったのか慌てて媚びへつらうような態度を取り始めた。

 

「こ、子供が目的なのでしょう…? 差し上げますからどうか命だけは……!」

「命は取らないがアンタはアズカバン行きって決まってるよ」

 

 有無を言わせずに失神呪文で気絶させた女を逃げられないよう拘束すると家の奥へと進む。

 これが間違いなく純血とされていたレストレンジの人間がその妻と子に与えた家かと思うと涙が出てくる。これならまだ叫びの屋敷のほうが家としての機能は果たせるのではないだろうか。

 

 とにかくその奥にある厳重に施錠されている扉を開いて中に入る。その部屋には机も無ければ本もない。あるのは簡素な作りのベッドが一つだけ。そしてその部屋の住人であるまだ幼い少女はその母と同じように淀んだ目をしていたが、まだ救いようのはある方だった。

 入ってきた見知らぬ男を不思議そうに見上げる少女の前に膝をつき、なるべく目線を合わせて微笑むと右手を差し出す。

 

「リタだね? リタ・リコリス・レストレンジ。俺はリオン。リオン・アーデル。君と同じ魔法使いで、君を助けに来たんだ」

「助けに……?」

「あぁ。もし君が望むなら、この家から連れ出してやることも出来る。もちろんこれは押し付けじゃない、君の選択次第だ」

 

 ほんの一瞬迷う素振りを見せた少女だが、ギュッと俺の手を握り締めて笑みを浮かべた。

 

「私、ここから出たい……!」

「仰せのままに。小さなレディ」

 

 幼い少女の手を引く。そして廊下に出ればいつの間にやら到着していた魔法警察部隊が失神したままの女を連行していくところだった。

 

「お勤めご苦労さん。悪いなわざわざ」

「いえ。これも職務の一環ですから……それで、その子は?」

「俺が一度省まで連れて行く。その後は話し合って決めるさ」

 

 手を繋いだ少女に笑みを向けて俺たちは家を出る。まだ幼い少女に付き添い姿くらましはキツいだろうと言うことで手配したセストラルの馬車で魔法省に行くことにした。

 

 セストラルが見えない少女はどうやって馬車が空を飛んでいるのかが気になるらしく目をキラキラさせている。それを見ながら俺はこの子の将来について考えを巡らせた。

 

(ホグワーツには通うだろうから……そうなるとこの子の養子縁組を考えるべきか。出来れば引き取ってやりたいが今のアーデル家の現状じゃ厳しいし……)

 

 なんだかんだ家は三人目が生まれたばかりだ。手を取り助け出した手前俺が育てるのが責任なのだろうがこの子のことを考えると俺ではないもっと平穏なところに預けるのが穏便だろう。何せ父親が父親だ。それに母親もろくでなしとなれば出来るだけ家族の愛を与えてくれる人に触れさせてやりたい。

 そこでとある人物に思い至った俺は早速手紙を取り出して書き出す。リタが不思議そうに俺を見るがその頭を撫でてやればふにゃ、と表情を崩して幸せそうにしていた。

 そして書き終えた手紙を出現呪文である場所に飛ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ───キングズリー、養子を取るつもりはないか?




リタ・リコリス・シャックルボルト(レストレンジ)
ラバスタン・レストレンジの娘。長い黒髪に紫眼の少女。父親に捨てられ、母親に虐待されていたところをリオンに連れ出された。そして彼の計らいでキングズリー・シャックルボルトの養子となる……リタはリオンと一緒が良いとゴネたが。
ルクスとカレンが入学時点で六年生。寮はハッフルパフで監督生、友達も多い。リオンは心底安堵した。
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