【本編完結】ハリー・ポッターと何も知らない転生者 作:シャケナベイベー
短め
「準備は出来た?リオン」
「勿論。バッチリだよ」
ホグワーツでの生活も終わり、夏休みへと突入したこの日。リオンとその母であるエレインは祖父母の家へ向かおうとしていた。
「それじゃあ、しっかり握っててね。バラバラになると危ないから」
「その発言は怖いなぁ……」
体がバラバラになるとはどんだけ恐ろしいのかと考えつつ、リオンは差し出された母の手をしっかりと握る。
次の瞬間、二人の体が回転し、ポンッという音と共に家の中から消えると二人の目の前には豪邸が鎮座していた。
今いる場所から別の場所へ瞬間移動できる魔法『姿くらまし』の派生版、『付き添い姿くらまし』をエレインは行ったのだ。
「さぁ、着いたわ。二人を待たせるといけないから急ぎましょうか」
そう言ってエレインが豪華な装飾が施された扉をノックする。少しして扉が開き、中からみすぼらしい格好の小さく横に尖った耳を持つ生物が現れた。
「あぁ、これはお嬢様!お待ちしておりました、旦那様と奥様が中でお待ちで御座います」
仰々しくお辞儀をして二人を出迎えた者の正体は『屋敷しもべ妖精』のフリッツ。長年イグネイシャスとルクレティアに仕えてきた妖精だ。
「久しぶりフリッツ。何度も言っているけれど、私はもうお嬢様なんて呼ぶような年齢ではないわよ?」
「とんでもないことです!! 私にとってお嬢様はいつまで経っても変わらぬお嬢様に御座います!!」
恐縮したようにフリッツが声を張る。相も変わらずなフリッツの様子に苦笑しつつ、エレインは待っていた荷物を預けた。
「久しぶりフリッツ」
「あぁ!!これはリオンお坊っちゃま!!お久しぶりで御座います。このフリッツ、今までお坊っちゃまに気づかずにいたとは何と失礼なことを──」
「気にしてないよ。それより、二人はもう待ってるの?」
リオンが尋ねると、フリッツは二人が既に広間で待っていることを伝える。それに感謝し、二人は邸宅へと足を踏み入れた。
「それでは、私はお食事のご用意を致します」
「えぇ、お願いねフリッツ」
フリッツはもう一度お辞儀をすると、二人の荷物を持って指を鳴らす。瞬間、フリッツの姿は消えていた。
◆ ◆ ◆
「久しぶりね父さん、母さん」
「あら、いらっしゃいエレインにリオン。よく来たわね」
「こうして直接顔を合わせるのは二年ぶりだな」
「久しぶり。爺ちゃん、婆ちゃん」
ソファにゆったりと座っていた老夫婦にエレインとリオンが挨拶する。
老夫婦はやって来た二人を出迎えると、二人の前にソファを出現させ、そこに座るよう促した。
この二人こそ、エレインの両親であるイグネイシャス・プルウェットとルクレティア・プルウェットだ。
(今年で七十になるっていうのに二人とも元気だよなぁ…)
基本的に魔法使いや魔女は長寿だと聞くしこれが魔法界の普通なのかもしれないと、リオンはしみじみとする。
「リオン、ホグワーツ入学おめでとう。楽しく過ごせているかしら?」
「勿論。充実してるよ」
ルクレティアからの問いに頷いて答える。すると、イグネイシャスが身を乗り出して聞いてくる。
「そう言えば今年はハリー・ポッターがいるんだったか?どうだった、彼は?」
「うーん……初めて会ったときはオドオドしてる感じだったけどホグワーツに入学してからは物事をはっきり言うタイプになってたよ。まぁ、スネイプ教授にイビられてるからかスネイプ教授のことは苦手というか嫌いみたいだけど」
「スネイプ…?」
「アイリーンの子供の名前がセブルスだった筈よ。アイリーンはマグルの男性と結婚したと聞いたしそうなんじゃないかしら?」
リオンの口から出た名前に考え込むイグネイシャスだったが、ルクレティアがそんなことを口にする。
「なるほどな……ふむ、リオン。儂と決闘するか!」
「え、唐突過ぎない?」
「そんなこともないだろう……エレイン、リオンの杖さばきはどれ程だ?」
「かなり良い筈よ。同い年だった頃の私やレックスを超えているもの」
それを聞いたイグネイシャスの目が子供のように輝く。これは逃げられそうにないなとリオンも覚悟を決め、杖を取り出す。
「イグネイシャス。立会人はどうするの?」
「それはフリッツに任せるとしよう」
「お呼びでしょうかご主人様?」
イグネイシャスか呟くと、姿あらわしでフリッツがお辞儀をしながら現れた。
「フリッツ、食事の準備は終わっているか?」
「はい。後は皆様のテーブルにお運びするだけでございます!」
「ならば、食事を運び終わったら儂とリオンの決闘の立会人を頼む」
「畏まりました。それではお食事をお運び致します」
フリッツが指を鳴らすとテーブルに豪勢な食事が出現した。
「さてリオン。儂らは地下の決闘場に向かうとするか」
「分かった!」
そしてリオンとイグネイシャス、フリッツは地下へと消えていった。
「まったく……イグネイシャスの決闘好きは筋金入りだわ……」
「そうね……ねぇ、母さん。ダンブルドアからのお手紙読んだかしら?」
「えぇ。読んだわ」
ルクレティアが懐から一枚の手紙を取り出す。
「驚いたわ。トムが…彼が生きていてホグワーツに侵入したなんて」
「取り憑いた形ではあったけど、それでも確かに存在していたのは確かよ。賢者の石を狙って復活しようと目論んでいたみたいだけど……」
エレインとルクレティアは手紙の内容に頭を抱える。
「これを受けて闇祓いも目を光らせておくとレックスが言ってたわ」
「肝心の居場所が分からないのでは意味が無いんじゃない?」
「とりあえずホグワーツにレックスが赴くそうよ。ホグワーツにヴォルデモートが学生時代に残した何かが有るかもしれないからそれの調査も兼ねるって」
なるほど、ヴォルデモートが何かを隠すとすればホグワーツがお似合いだろうとルクレティアは考えた。学生時代の彼はホグワーツを唯一の居場所と考えていた節があったからだ。
「まったく。平和に過ごしたいものね……」
そう言って、ルクレティアは紅茶を口に含んだ。
◆ ◆ ◆
俺はイグネイシャス爺ちゃんに連れられて地下の決闘場にやって来た。
「ふむ。まぁここで良いだろう」
爺ちゃんはそう言うと自分の杖を取り出し俺に向き直る。
「構えろリオン。早速始めるぞ」
「分かった」
爺ちゃんの言葉に俺も杖を取り出す。
「それではお二方。ご準備は宜しいですか?」
フリッツの言葉に頷きを返す。そして目の前に杖を掲げ、お辞儀をする。少し離れると同時に杖を構えた。
「どちらかが杖を取り上げた時点で終了です。それでは───一、二の、三!」
「ステューピファイ!」
「ほう……」
フリッツの合図と同時、失神呪文を唱えるが容易く弾かれてしまった。
「その年でもう失神呪文を使えるか……面白い!」
爺ちゃんの赤い目が愉快げに細められる。瞬間、爺ちゃんの杖から呪文が飛んでくる。
それを横に飛ぶことで避け、お返しにと呪文をいくつか放つが───
「プロテゴ」
「げっ……!」
展開された防御呪文で防がれた。こっちはまだプロテゴを使えないというのに卑怯ではなかろうか。
「さぁ次はどうする?」
「なんの…!ブラキアビント!腕縛り!」
俺がそう唱えると爺ちゃんの腕を紐が縛り上げた。
「なるほど。が、甘いな…エマンシパレ」
と、爺ちゃんが唱えた呪文で縄が解かれてしまった。
「タラントアレグラ!」
さらに爺ちゃんは杖を向け呪文を唱える。そして、俺の体が突然クイック・ステップを刻み始めた。
「うわっ…!悪趣味だなこの呪文!」
「ぶはははははは!!いやいや…年甲斐もなく下品な笑いが出てしまった…!久しぶりに使ったが相変わらず笑わせてくる呪文だ」
くっそ…爺ちゃんはこっちを見て爆笑してるし……こうなったら!
「フリペンド!」
「おっとと…フリペンド」
お互いに衝撃時を放ったが俺の衝撃呪文が弾かれ、吹き飛ばされる。
「ぐえっ…!」
「ここまでだな。エクスペリアームス」
吹っ飛ばされ地面に叩き付けられた瞬間、武装解除呪文で俺の杖が爺ちゃんの手の中に収まった。
「そこまで!この決闘、ご主人様の勝ちでございます」
フリッツのジャッジが下され決闘が終了する。少しばかり痛む体を起き上がらせ、爺ちゃんから杖を受け取る。
「まったく敵わなかった~…!爺ちゃんプロテゴ使うのはズルじゃね!?」
「何を言う。これでも大幅に手加減しているぞ。無言呪文さえ使っていないしな」
爺ちゃんに抗議するも、愉快げに目を細めたまま流される。
「だが、儂らが同い年だった頃と比べてお前は大きく力をつけている。まるで昔のエドワードのようだ」
「……そうかなぁ?」
褒められてむず痒くなりつつも服に付いた埃をはたき、こちらに寄ってきたフリッツに目を向ける。
「お二人とも、そろそろ戻られますか?」
「だね。俺、腹減ったよ」
そうして俺達は母さん達の下へと戻るのだった。
戦闘描写って難しいなぁ!!