【本編完結】ハリー・ポッターと何も知らない転生者   作:シャケナベイベー

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──ずっとずっと苦しかった。でも、奇跡が起きたんだ


奇跡が起きた日

『フランク!!アリス!!』

 

『ヒャハハハハ!!遅かったじゃないかアーデル?お前の仲間はほぉら、人形みたいになっただろ?』

 

『何やってるベラトリックス!!早く逃げるぞ!!』

 

『逃がすかぁ!!』

 

 

 

 

『フランク……アリス……俺がもっと早く……ごめん、ごめん…!!俺の、俺の…せいで…!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───が、これは───」

「───てる。もしかしたら───」

 

 声が聞こえる。何かを話し合っているようで若い女性と男性の声が自分の近くから聞こえてきた。

 

「こ……こ……は……?」

 

 うっすらと目を開け、声を出すと近くにいた二人が驚いたように目を見開くのが見えた。

 

「なっ…!!お、起きた……起きた、起きたぞ!!先生を呼べ!!」

「大丈夫ですか?私の声が聞こえますか!?」

 

 自分の声に反応したらしい男性が大慌てで駆け出していき、側にいた女性が聞いてきたので頷きを返す。すると、女性の目に涙が溜まっていき、「良かった…良かった…」と嗚咽しながら呟いていた。

 一体どういう状況なのだろうとベッドから体を起こして辺りを見回すと、自分の隣のベッドに夫が居ることに気付いた。

 

「……フランク……?」

「アリス……?」

 

 夫──フランク・ロングボトムも困惑した様子で何が何やらさっぱりと言った感じだ。

 すると、扉の向こうからドタドタと慌ただしい足音が聞こえ、ガラッ!!と勢いよく扉が開かれる。そうして飛び込んできたのは先程慌てて飛び出していった青年と、少し草臥れた白衣を纏った金髪の男性だった。

 

「……バルツ?」

 

 私はその姿に見覚えがあった。と言うか同級生だった。最後に会ったときより老け込んだ印象の彼は「信じられない……」と呟くと私たちに駆け寄ってきた。

 

「フランク…アリス…私のことが分かるか?」

「バルツ・カリアンでしょ?覚えてるわよ、友人だもの」

「なぁバルツ。今がどういう状況か説明してくれないか?僕とアリスも結構混乱しているんだが……」

 

 私達がそう問いかけると、バルツは涙を流して私達の手を握り締めた。

 

「お、おいバルツ?大丈夫か?」

「あぁ……あぁ……!私は大丈夫だ……それより二人は何ともないか?どこか痛いとかないかい?」

 

その問いに首を横に振って答え、バルツを見つめ返す。しばらくすると彼も落ち着いたのか目元は赤いものの涙は流さなくなっていた。

 

「……というか、僕達は何でここにいるんだ?僕達は確かベラトリックス達に……」

 

 そこまで言いかけて、フランクが口を閉ざす。流石にこの場で言うのは不味いと思ったのだろう。

 

「……そこまでの記憶はあるんだな。なら話しても構わないか。実は───」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれから十年以上経ってるの!?」

 

 思わずここが病院だということも忘れて大声を上げてしまう。だって私達二人ににとってこの状況は寝て起きたらここにいた位のもので、まさか襲撃を受けてから十年も経っているとは思わなかった。

 

「えっ、じゃあベラトリックスとかはどうなったの!?」

 

 私とフランク、そしてバルツ以外居なくなった病室でそんなことを聞いた。

 

「二人を襲撃した死喰い人は全員が駆け付けた闇祓いに捕まったよ。今は戦争時と比べると平和そのものさ」

 

 その言葉に思わず脱力してしまう。あれから、魔法界は平和を取り戻したらしい。私達の努力は決して無駄では無かったのだと酷く安心した。

 

「というか、ネビルにゴミを渡してたって何よ~…!あの子にはもっと沢山プレゼントしたいものだってあったのに……!!」

 

 バルツの話に出てきた『廃人状態だった私達がお見舞いにやって来たネビルにゴミを渡していた』という事実に顔を覆った。しかもネビルはそれを捨てずにちゃんと保管してあるという……何て健気なんだ家の息子は……

 

「……待てよ、なぁバルツ。ひょっとしてネビルはもうホグワーツに通ってるのか?」

「あぁ。つい昨日やって来て一年生を終えたと聞いたよ」

 

 その言葉を聞いたフランクが天を仰ぐ。私も似た気持ちだ。まさか、我が子の記念すべきホグワーツ入学を見送れないなんて……親としてなんという不覚……ッ!!

 

「じゃ、じゃあネビルが何処の寮か知ってるか!?」

「グリフィンドールらしいけど…」

 

それを聞いた私達は大声で叫び、バルツに「静かにしろ」と怒られてしまった……

 

「ネビル君、どうやらハリーやリオンと仲良くなったそうだよ。嬉しそうに話してたからね」

「ハリーとリオン……ジェームズとリリーにレックスとエレインの子供か…そういえば同い年だったっけ」

「そう。リオンは僕の息子とも仲良くしてくれてるそうだよ……と、連絡していた甲斐があったね」

 

 その言葉と共に、またもや廊下から慌ただしい足音が聞こえてくる。ガラッ!!と扉が開かれ、そこから姿を見せたのは──

 

「まぁ、まぁまぁまぁ!!何と言う、なんという……!!」

 

 既に目を赤くして涙を流す義母のオーガスタ・ロングボトムと、オドオドしながらもこちらを見つめる何よりも愛しい我が子(ネビル)の姿だった。

 

「お母さん……お父さん……?」

「ネビル……こんなに大きくなって……!!」

 

 我が子の成長した姿に胸が暖かくなる。出来るのならその成長を一番間近で見守りたかったという想いもあるが、こればかりはどうしようもない事だろう。

 駆け寄ってきたネビルの頬に触れ、優しく撫でる。

 本当に、大きくなって──

 

「おはようネビル。今日はいい日ね」

 

 

 

 

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

 

 

 夏休みも中盤に差し掛かってきた今日この日。俺は父さんに連れられて聖マンゴ病院へとやって来た。

 

「あっ!レックスさん、お見舞いですか?」

「えぇ。今日は息子を紹介しようと思って……」

「でしたら早く行ってあげてください。きっと喜びますよ」

 

 笑顔で語る女医さんに訝しげな顔をした父さんだが、俺に声を掛けて目的の病室へ歩きだした。

 

 

 

 

 しばらく歩くと目的の病室が見えてきたのだが、その扉の前には数名の男女がいた。

 その中の一人は俺でも知ってるネビルだった。

 

「ネビル?こんなところで何やってるんだ?」

「あっ、リオン!」

 

 俺が声を掛けると、ネビルが笑みを浮かべて寄ってくる。心なしか、ホグワーツにいた頃より元気なような…?

 

「ネビル。お友達かえ?」

 

 ふと、ネビルの後ろにいた老婆が声を掛けた。その老婆はデカイ鳥の羽根を付けた帽子を被った人で、恐らくネビルの祖母だろう。

 

「初めまして。リオン・アーデルです。ネビルの友達です」

「えぇ、えぇ。ネビルがよく話していましたよ。初めまして、私はオーガスタ・ロングボトム。ネビルの祖母です」

 

 互いに自己紹介をして、握手を交わす。ふとオーガスタさんの目が父さんに向いた。

 

「おやレックス。今日もお見舞いに来たのかい?」

「そうです。けど、何だか皆さん嬉しそうですね?」

 

 父さんの言葉にオーガスタさんとネビルが一層笑みを強くする。

 

「それは中に入ってみれば分かりますよ。さぁ、お入りなさい」

 

 オーガスタさんに促され、病室に入る。入った先には、二人の男女がベッドに腰掛けていた。

 

「………は?」

 

 父さんが呆けたような声を上げると、二人の視線がこちらに向いた。

 

「あらレックス!久しぶりね、元気にしてた?」

「十年経ったけどお前はあんまり老けてないな?」

「な、なん…で…?」

 

 父さんの知り合いなのだろう二人は笑顔で父さんに話しかけるが、肝心の本人は呆然としたままだ。

 

「それで、君がリオン君?」

「あ、はい。リオン・アーデルです。お二人は……」

「私はアリス・ロングボトム。こっちは夫のフランクよ」

「やぁ初めまして。いつもネビルと仲良くしてくれてありがとう」

 

 なるほど、二人はネビルのご両親だったのか。何だかネビルと似た雰囲気を感じるかと思ったけどそういう事だったのか。

 

「それにしても……おーいレックス。いつまで呆然としてるんだ?」

「は……!い、いや、誰だってこうなるだろ!?ふ、二人とも、何で……!」

「奇跡が起きた……としか言えないさ」

 

 父さんの言葉に答えたのは、新しく病室に入ってきた金髪の白衣を着た男性だった。

 

「やぁリオン君。私はバルツ・カリアン。いつもマークがお世話になってるね」

「マークのお父さん!?は、初めまして、リオン・アーデルです」

 

 やって来たのはマークのお父さんだった。聖マンゴで働いてるのか…

 

「バルツ。奇跡が起きたというのは?」

「二人の状態を何とかしようと脳に刺激を送ったりして回復を促していたというのは知ってるだろ?それが実を結んだのか、はたまた別の要因なのか分からないが、今朝二人が急に回復してね。私としては原因までは分からないものの本当に喜ばしい限りさ」

「あぁ。本当にそうだな……」

 

 バルツさんと父さんが会話し、そんな二人をニコニコとアリスさんとフランクさんが眺めている。

 

「悪いレックス。話したいことがあるんだが……」

 

 フランクさんがそう切り出し、俺とネビルに視線を向けた。なるほど、俺たちには聞かせたくない話なのだろう。

 

「リオン、ネビル。これで何か飲み物でも買ってきなさい」

「分かった。よし、いくぞネビル!」

「う、うん!」

 

 俺はネビルを伴って、飲み物を買うために病室を出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……それで。話っていうのは?」

「あぁ。闇祓いに復帰しようと思うんだが……」

 

 フランクの言葉に片眉をピクッと上げる。

 

「……二人ともか?」

「えぇ。何もせずにいるというのもね」

「俺は構わないけど……オーガスタ夫人とバルツはどうだ?」

「私としても異論はありませんよ。元より闇祓いとはそういう場所ですから」

「私も問題ないが、せめて半年から一年のリハビリが必要だ。さらに実戦の勘を取り戻すとなれば二年はかかるぞ」

 

 二人からも許可が降りたので、問題もないだろう。

 

「一応、ルーファスとファッジ大臣に言っておくよ。二人が復帰するとなればそれを断る人も居ないだろうしな」

「ありがとうレックス」

 

 

 

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

「良かったなネビル。ご両親が元気になって」

 

 近くにあった自販機で飲み物を購入し(ネビルは俺が自販機を使えることに驚いていたが)、ネビルに渡すとベンチに座って談笑していた。

 

「うん…僕も嬉しい。話すことは出来ないんじゃないかって思いかけてたから」

「そっか」

 

 今のネビルは、一年生の時と比べて格段に明るくなった。ご両親が元気になったからだろうか、前向きになった気がする。

 

「これからは一緒に暮らしていけるんだ。本当に良かったな」

「うん。ありがとうリオン」

 

 

 

そうやって笑うネビルを風が優しく撫でていた。




というわけで、フランクとアリス・ロングボトムが回復しました!
次からはいよいよ秘密の部屋編です!
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