【本編完結】ハリー・ポッターと何も知らない転生者 作:シャケナベイベー
「どうしようハリー?」
「どうしようね……」
すっかり辺りも暗くなった頃。暴れ柳に突っ込んだ車の中でハリーとロンは悩んでいた。
そもそも何故二人が列車に乗れなかったのかと言えば、何故か九と四分の三番線に向かうための柱に二人だけ弾かれ、さてどうするかと思っていたところハリーを迎えに来た時に使っていたアーサーお手製の空飛ぶ車でホグワーツに行こうという話になり、こうしてやってきたのだが誤って暴れ柳に追突してしまい、絶賛暴れ柳が車をぶっ壊そうと暴れまわっている最中であるからだ。怖い。
「ねぇハリー、このままじゃ車が壊されちゃうよ…!」
「でもここから出たら僕達が殺られちゃうじゃないか!」
ホントにもうどうしようもないと二人が諦めかけていると、暴れ柳の向こうから二人を呼ぶ声が聞こえた。
「おーい!大丈夫かー?」
「この声誰だろう?ハリー知ってるかい?」
「知らない…筈…いや、どこかで聞いたことあるような…?」
自分たちが助かるかもしれないという希望を見出だした二人は自分たちの居場所を知らせるため大声で呼びかける。
「ハリーとロンか。いやはや親子だな…痛っ、おい殴るなよセブルス…何?とっとと引き上げろ?分かってるさ…全く…ジェームズに似ていると言ってもここまで邪険にしなくてもいいだろ……」
何事かを呟いた男性は杖を振るって暴れ柳を傷付けないように車を取り出し、暴れ柳から離れた場所に降ろした。
そしてハリーとロンが車から降りると車は独りでに禁じられた森へ走り去っていってしまった。早すぎる一人立ちである。
「パパに殺される……」
「そんなことはないと思うけど…」
顔を青くするロンに何とも言えない言葉をかけるハリーだったが、誰かがこちらに近付いてくるのに気付きそちらを向く。
「災難だったな二人とも。怪我はないかい?」
「あ、レックスさん!?えっとはい、怪我はしてません」
話し掛けてきたのが友人であるリオンの父親のレックスだと知ったハリーとロンは肩の力を抜く。
「レックスさんで良かった~…もしマクゴナガル先生やスネイプだったらどうしようかと……」
「あー……その事なんだが……」
胸を撫で下ろすロンを見てレックスは気まずげに声を掛ける。ハリーが不思議がっていると、後ろからぬぅっと人影が躍り出た。
「はてさて、もしかしたらそのスネイプ先生は暴れ柳に車が突っ込んだという知らせを受けて、ましてや生徒が乗っていると聞いて心配でたまらなくなりやって来たのかもしれませんな」
冷ややかな声と共にスネイプがハリー達に告げる。スネイプの姿を見た二人はあからさまにゲンナリとした表情になり、そんな二人を見てスネイプは歪んだ笑みを浮かべた。
「来いポッター、ウィーズリー。マクゴナガル先生のところに行くぞ」
「あぁ、荷物は私が運ぼう」
そう言って、ハリー達が持てない分の荷物をレックスが杖で持ち上げ運び出す。そしてロンのペットのネズミを見たレックスが不思議そうな顔を浮かべるも、スネイプの呼ぶ声に気付きそのまま歩き出した。
◆ ◆ ◆
翌日。朝食を食べに大広間に行くとそこにはハリーとロンが居た。どうやら二人とも無事に……とは言いづらいもののホグワーツに到着したようだった。
そしてスリザリンのテーブルで朝食を取っていたのだが、ロンのペットであるフクロウのエロールがロンの下に一枚の手紙を運んでくる。
手紙は独りでに開き、大きな口の形になると喋り出した。
「ロナウド・ビリウス・ウィーズリー!!車を盗み出して運転するなどもってのほか!!それにマグルにまで見られて!!すぐに気付いた闇祓いが対処していなければ貴方は日刊予言者新聞の一面の見出しに載っていたでしょう!お父さんは役所で尋問を受けたのですよ!!昨夜校長先生からの手紙で事態を知りました!レックス先生とスネイプ先生が引き上げて助けてくれたと!!お父さんなんて恥ずかしさのあまり倒れるのではと──」
そうして吠えメールはハリーとロンに二、三回ほど警告と説教を繰り返した後、先生達に謝罪と感謝の言葉を述べ、ジニーの入学を祝うとそのまま火花となって消えてしまった。
それに聞き耳を立てていたスリザリン生の多くが爆笑し、ハリーとロンはさらに縮こまっていた。
そして授業を終えた昼休み。俺は中庭に出てブラブラとしていたのだがハリーとロン、ハーマイオニーを見かけたのでそっちに向かった。
「ようハリー、ロン、ハーマイオニー。何してるんだ?」
「あ、リオン。見てよこれ。僕の杖、折れちゃってるんだ」
そう言ってロンは自分の折れた杖を見せてくる。その杖を受け取り、しげしげと眺める。
「うわぁ…派手にやったな…何だってこんな折れ方するんだよ?」
「その…暴れ柳に突っ込んだ時に折れちゃって……リオンなら直せないかなって思ったんだけど…」
「完全に直すのは無理だと思うけど……まぁやれるだけやってみるよ」
杖をロンに持ってもらい、「レパロ」と唱える。すると折れていた杖が綺麗に修復され表面上は問題ない形に収まった。
「駄目だな、杖の芯がイカれてる。新しいのを買った方が良いと思うぞ」
「そんなぁ……」
「それに外面上は良くても、杖から魔法が逆噴射する可能性もあるから新しいのを買うのを勧めるよ」
ロンが肩を落とす。まぁウィーズリー家は裕福とは言えないから杖を買うのも苦労するんだろう。今ロンが使っている杖もお兄さんのお下がりだと聞いたし。
「午後の最初の授業って何だっけ?」
「闇の魔術に対する防衛術よ」
ハリーのそんな言葉にハーマイオニーが答える。同時に俺の口から重い溜め息が溢れた。
「あらリオン。貴方って防衛術の授業が嫌いだったかしら?」
「そんなんじゃないさ。問題なのは父さんが教師やってる点だよ」
俺のぼやきに三人は訳が分からないようで俺をじっと見つめてきた。
「だって親が担当する授業だぜ?息苦しいことこの上ないんだよ……」
「別にアーデル先生は貴方を贔屓するなんてことないと思うけど」
「そりゃそうさ。父さんがこういうことで俺を特別扱いしないことなんて俺が良く知ってる。それでも気まずいんだよなぁ……」
そんなことを延々と喋っていると、ついに防衛術の授業が始まった。
「さて、今日から一年の間だけだが闇の魔術に対する防衛術の授業を担当することになったレックス・アーデルだ。所属は魔法省魔法法執行部闇祓い局。まぁここでは一人の教師だからそんなに気にしなくていい」
そう自己紹介しつつ、父さんは杖を振るい一冊の本を俺達の手元に配っていく。
そして早速ハーマイオニーが手を上げる。
「どうぞミス・グレンジャー」
「この本は何ですか?」
「簡単に言えば教科書に書いてあることをさらに詳しく説明するための本だ。教科書で分からないことがあればその冊子を見てくれれば理解できると思う。もしそれでも分からなければ私を頼ってくれても構わない」
話し終えた父さんが「これで満足かなミス・グレンジャー?」と聞くと、ハーマイオニーはお礼を言って姿勢を正した。
「さて、今年君達にはより深く闇の魔術について知ってもらう。基本的に座学と実技、その両方をバランス良く教えていくつもりだ。実技では基礎的な呪文の実践、呪文が放たれたときの避け方に関する体の動かし方等について勉強していく。反対に座学では教科書に書かれている事の説明や実際に闇の魔法使いと出くわしたときにどのような行動を取るのが良いのかといった事について学んでいく。たまに周りの生徒でグループを組みながらの話し合いや月一の簡単なテストなども実施する予定だ」
一通り説明し終えたのか、父さんは周りをぐるりと見渡すと「それでは早速始めていこうか」と手を叩く。
「それでは机を動かすから皆立ち上がって離れてほしい」
その言葉に俺達はゾロゾロと席を立って後ろの方へと歩いていく。
全員が離れた事を確認した父さんは杖を振るって机を左右にどかし、中央に空きスペースを作り上げるとそこに杖を持った木の人形を引っ張ってくる。
「さて。今日皆が学ぶのはこの呪文だ──エクスペリアームス!」
父さんが唱えると杖先から赤い閃光が走り、人形の持っていた杖を吹き飛ばした。
「今のが武装解除呪文。文字通り相手の武器を吹き飛ばして無力化する魔法だ。これを使えるようになれば相手の命を奪うことなく戦闘を終わらせられる」
そう語りながら父さんは人形に杖を戻す。
「まぁ初歩的な呪文だがこう見えて難易度は高い。相手の武器に狙いを定めて唱えなければならないからね。とりあえず今日はこの人形相手に練習してみようか。さぁ、一列に並んで」
全員が一列に並び、一人一人人形に向けて呪文を唱えていく。しかし父さんの言ったように難易度が高いからか中々成功する人が現れない。しかし──
「エクスペリアームス!!」
放たれた呪文は真っ直ぐ人形の杖へと直撃し、杖は回転しながら地面に落ちていった。
「ブラボー!おめでとうミスター・ポッター。君が最初の成功者だ。グリフィンドールに二点加点しよう」
ワッと驚きと称賛に満ちた歓声が上がり、ハリーの周りに人が集まっていく。
その後も呪文の実践は続き、これまでにハーマイオニーとマークにドラコ、そして何とネビルが成功させていた。(ダフネとランスは惜しくも呪文が逸れ、ロンは杖から魔法が逆噴射して吹っ飛んでいた)
そしていよいよ俺の番となった。
「さて、準備は良いかなミスター・アーデル?」
「はい。大丈夫ですアーデル先生」
杖を握りしめ標的に向ける。大丈夫…俺なら出来る…俺なら出来る…!
「エクスペリアームス!!」
杖から迸った閃光は真っ直ぐ人形の杖へと伸びていき、バチッという音と共に人形の杖を弾いた。
「エクセレント!やったなリオン!武装解除成功だ、スリザリンに二点加点!」
やや興奮したように父さんがそう告げる。普段依怙贔屓しない筈の父さんがここまでの反応を示したことに驚愕していると、マークとランスが肩を組んでくる。
「やったなおい!成功したじゃねぇか!さっすが俺の親友だな!」
「やったねリオン!完璧じゃないか!」
二人がそう笑顔で称賛してくるのでむず痒くなりつつ俺も肩を組み返す。
「おめでとうリオン」
「おう、ありがとなダフネ」
ダフネも笑顔で称賛してくる。それに返すとマークとランスがニヤニヤしながら俺とダフネを見てくる。
「…何だよ」
「何でもないさ。いやぁ、良いね!」
何だコイツら……と思っていると父さんが呼び掛け、机を元の位置に戻すと席に戻るよう促す。
「さて、実技の方はこれで終了だ。今回成功しなくても焦る必要はないし、成功した人も一度成功したからと言って次も成功するとは限らないから気を付けるように。思った以上に時間を取ったので少しばかり巻きで行くが座学に移ろうと思う。教科書の9ページを開いてくれ──」
こうして、二年生となって初めての防衛術の授業は進んでいった。
始まっていきなり武装解除呪文を教える武闘派レックス先生