【本編完結】ハリー・ポッターと何も知らない転生者   作:シャケナベイベー

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お久し振りです。
仕事で忙しかったり夏風邪になったりで執筆時間が取れず遅れました。いやほんとすいません……


ジェームズとリリー

 11月も半ばに入った今日。ついにクィディッチのグリフィンドールVSスリザリンの試合が行われる日になった。

 あの日以降、どこかピリピリとした空気を醸し出していた両チームだが穏便に試合を運んでほしいものだ。

 

 加えて湿気が凄く、空も曇り空で今すぐにでも雨が降りだしそうな天気だった。

 残念ながらクィディッチ日和とはいかないものの、お互いのチームはそんなことを気にすることなく一触即発の雰囲気を漂わせていた。

 そしてマダム・フーチが笛を鳴らし、両チームが空へ上がる。試合開始だ。

 

 

 

 

 

 

 戦況はスリザリンがやはり優勢だった。最新の箒であるニンバス2001を使っているからかチーム全体のキレが段違いだ。

 グリフィンドールも何とか食らいついているものの焼け石に水と言わんばかりに点差を広げられていった。

 ふとハリーの方を見てみるとブラッジャーに追われ、逃げ回っていた。

 

「いや、あのブラッジャーおかしくね?」

 

 疑問が口をついて出る。ハリーを追うブラッジャーは他の選手には目もくれず執拗にハリーだけを狙っている。スリザリンが何かしたのかと目を向けるが、相手もどこか困惑したようにブラッジャーを見ていた。

 事態に気付いたマダム・フーチが笛を鳴らすとブラッジャーは大人しくなりハリーから離れていったのだが、またしばらくするとハリーを狙い始めた。

 

 そうして執拗に自分を付け狙うブラッジャーから逃げ回っていたハリーだったが、ふとスピードを緩めた瞬間、ブラッジャーがハリーの腕に直撃し箒から落下する。

 観客席から悲鳴が上がり、フレッドとジョージがハリーを助けようと箒の高度を下げようとした所で教師陣のいる席から呪文が飛び、再びハリーに迫るブラッジャーを消失させてハリーの体が地面に激突するのを防いだ。

 呪文の飛んできた方に目を向けると、父さんが杖を構えていたのが見えた。どうやらやったのは父さんらしい。

 ホッと一息吐くと競技場に視線を戻す。地面に下ろされたハリーにマダム・フーチやマクゴナガル先生、グリフィンドールチームが駆け寄り、折れた腕を確認するとすぐさまマダム・ポンフリーの下に運ぶようにマクゴナガル先生から指示が下された。

 そして実況していたリー・ジョーダンがこの試合の結果を告げる。立ち上がったハリーの手にはスニッチが握られていた。

 なるほど、だからあの時スピードを緩めたのかと納得がいった。

 

「しかし去年といい、クィディッチの時には何かしら災難が降りかかるな……」

 

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 翌日。朝食を食べ終えた俺はハリーのお見舞いのために医務室を訪れていた。突然やって来た俺にマダム・ポンフリーはいい顔をしなかったものの何も言わずに通してくれた。

 

「ハリー。怪我の方はどうだ?」

「やぁリオン。一応マダム・ポンフリーのお陰で治ったよ。念のため半日は安静にするように言われちゃったけど」

 

 ハリーが折れた方の腕をブラブラさせながら言う。骨折してから後半日で退院していいとは、つくづく魔法の凄さを実感するよ。

 

「それで……リオンに聞いてほしい事があるんだけど……」

 

 そう言ってハリーが語りだした内容に思わず目を剥く事となった。

 ドビーという屋敷しもべ妖精がやって来て「ホグワーツに行ってはいけない」と忠告してきたこと。昨日のブラッジャーの件は自分だと告白したこと、「秘密の部屋」が開かれたことを伝えたと言う。

 

「それでドビーが言ってたんだ。秘密の部屋は昔にも開かれていて今回もそれが起きたんだって…」

「そうか…」

 

 昔にも開かれたと言うのは父さんも言っていたことだったか。

 

「まぁ、とりあえず今はゆっくり休め。考えすぎて体調を崩したらマダム・ポンフリーが発狂するかもしれないしな」

「そうだね。そうするよ」

 

 そう言って横たわったハリーを見て、俺も医務室を後にする。

 しばらくは当てもなく廊下を歩いていたのだが、視界の端に見覚えのある赤髪が映り込んだ。

 

「ジニーじゃないか。何してるんだこんなとこで」

「あっ、リオン……」

 

 ロンの妹であるジニーが、どこか落ち着かない様子で辺りを見ていたので声をかけたのだが俺を見たジニーがさらに挙動不審になる。

 

「……って、凄い隈じゃないか。顔も青白いし…マダム・ポンフリーのところに行ったらどうだ?」

「だ、大丈夫よ…そんなに心配しなくても…」

「いかにも『私、体調不良です』なんて顔になってたら心配するのは当たり前だろ。とりあえず医務室に行くこと」

「……分かったわ」

 

 そう言って少し覚束ない足取りでジニーは医務室へと向かっていった。

 

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 ある日。腕の骨折も治り、授業も終えたハリーはロンやハーマイオニーと別れ、一人ホグワーツを歩いていた。

 

「あ、ここだ」

 

 歩いていたハリーはとある扉の前で立ち止まる。この部屋の中にいる人物こそ、ハリーがここまでやって来た目的でもあった。

 

「失礼します。レックスさん、いらっしゃいますか?」

「ん?やぁハリー。どうしたんだい?」

 

 ノックをして入室してきたハリーを見て目を丸くしたレックスだったが、すぐさま椅子に座るよう促し、紅茶を用意した。

 

「その…レックスさんと初めてお会いしたとき、レックスさんは僕の両親と知り合いだって言ってましたよね?」

「そうだね。確かにそう言ったよ。それがどうかしたのかい?」

「あの……両親のことを教えていただけませんか?」

 

 椅子に腰かけたハリーが真剣な眼差しでレックスに頼み込む。そんなハリーを見て、しばし考え込むように唸っていたレックスだったが、顔を上げてハリーの顔をまじまじと見つめ返した。

 

「スネイプ先生には聞かなかったのかい?」

「スネイプは僕の事が嫌いなんです。だから聞いたって教えてくれないと思いますけど……」

 

 そう返すハリーに思わず苦笑する。どうやら親子二代に渡ってスネイプとは折り合いが悪いようだ。

 

「……まぁ、二人の事を話してあげる事は出来る」

「本当ですか!?」「ただし」

「ただし、私から伝えられるのは自分から見た彼らだ。この話を聞いてどう判断するかは君自身だ。それを覚えておいてくれ」

 

 そう言い終わったレックスは、さてどこから話したものかと考えを巡らせた結果、ハリーを見つめながら語り出す。

 

「そうだな……まずジェームズの事を一言で表すなら『傲慢な子供』ってところかな」

「傲慢……ですか?」

 

 思い描いていた父親のイメージからかけ離れた印象を伝えられ、ハリーは信じられないとばかりに聞き返す。

 

「あぁ。元々ポッター家は、昔は聖二十八一族に数えられた程でね。色々あって外されはしたもののかなりの名家だった。そしてジェームズの母親は高齢で待望の息子を出産した。するとどうなると思う?」

「……ものすごく甘やかす?」

 

 レックスの問いに、ハリーはダーズリー一家を思い浮かべながら答えた。

 

「その通り。過保護に育てられた事に加えて魔法の才能が飛び抜けていたこともあってか入学した時点でかなりの自信家だったらしい。それに加えて問題を起こしまくったものだから良い意味でも悪い意味でもジェームズは目立ってたよ」

「そう、なんですか…」

 

 しみじみと語るレックスとは反対に、ハリーの顔は暗くなっていた。

 無理もないだろう。尊敬していた父がそんな風だったなんてまだ子供のハリーからすれば到底受け入れがたいものだった。

 

「大丈夫かいハリー?やっぱりやめるか?」

「いえ、大丈夫です。続けてください」

「……そうか。……さて、リリーだが彼女は知っての通りマグル生まれでね。とある魔法族の少年から自分に魔力があると知ってからは姉のペチュニアに色々な魔法を使ったりしていたらしい」

「母さんが……その、母さんに魔法を教えた人って?」

「すまないがそれは教えられない。本人がその事を語るのを極端に嫌がっていたからね」

 

 ハリーの質問にレックスは首を横に振って答える。どうやら内緒ということらしい。

 

「それでリリーもホグワーツへ入学し、魔法使いとして人生を送ることになるんだが…当時の彼女は結構お転婆でなぁ。たとえ上級生相手でも臆さず物申してたんだ」

「そうだったんですか…?」

「意外か?」

「えぇっと、母さんは心優しいイメージだったので……」

「それも間違いではないよ。ま、若気の至りって奴さ。それと、ジェームズはリリーによくアタックしてはリリーに突っぱねられてたな」

 

 その言葉に、ハリーも思わず笑ってしまう。それを見たレックスはホッと一息吐くと紅茶を飲み干した。

 

「……そういえばレックスさんは父さん達とどんな風に知り合ったんですか?」

「あぁ。そこを話してなかったか。……私が二人と正式に顔を合わせたのは二人が二年生になってすぐの事だったかな。当時のグリフィンドールとスリザリンの確執は今より酷くてね。スリザリンの上級生五人に絡まれてた二人に加勢したのが切っ掛けだったかな」

 

 「まぁ、二人なら五人くらい問題なかっただろうけどね」とレックスは笑みを浮かべるが、ハリーは上級生五人に絡まれるのって相当なんじゃ…と冷や汗をかいていた。

 

「そんなこともあって二人とは長い付き合いになったんだ。産まれたばかりの君を抱っこしたこともあるんだよ?」

「えっ!?そうなんですか!?」

 

 驚きの事実を伝えられ、思わずといったように大声を出してしまう。

 

「そうだよ。当時は大変な時期だったから君と接する時間は少なかったけどね。その時のジェームズとリリーの顔といったらもう……本当に幸せそうだった……」

 

 どこか黄昏た表情を見せたレックスはハリーの頭をわしゃわしゃと乱暴な手つきで撫でる。

 

「え、ちょっ、レックスさん!?」

「ははは、いやすまない。思わず撫でてしまった。……なぁハリー。俺の話を聞いてどう思った?ジェームズとリリーがどう写った?」

 

 真剣な眼差しでレックスは問う。どこか哀しい目をしたレックスを真っ直ぐ見つめ返してハリーは口を開いた。

 

「確かに、父さんが問題児だったって言うのは驚いたし、母さんがそんなお転婆だっていうのにも驚きました。でも、でもそれ以上にちゃんと愛されてたんだって知ることができて凄く嬉しかったんです。だから、ありがとうございましたレックスさん」

 

 そう言ってハリーは頭を下げる。そんなハリーを見て面食らったような顔になったレックスだったが、ハリーに声を掛けて頭を上げさせると笑顔で返答した。

 

「私の方こそ。ありがとうハリー。こんなに大きくなって元気な姿を見せてくれて」

「……ッ!はい……!」

 

 その優しい言葉に思わず涙を溢しそうになったハリーだが、グッと堪え笑顔を見せた。

 

「……さぁ、そろそろ寮に戻りなさい。友達と過ごすのも学生としての有意義な時間の使い方だ。また明日、元気な姿を見せてくれ」

「あっ、はい!ありがとうございました!」

 

 

 レックスの言葉に、ハリーは急いで立ち上がるとレックスに一礼して部屋を出ていった。

 

 

 

 

 

 

 

「若いって良いねぇ……」

 

そんなことを呟きながら、レックスは机の上に積み上がっていた本を手に取った。

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