【本編完結】ハリー・ポッターと何も知らない転生者   作:シャケナベイベー

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決闘クラブ

 “コリン・クリービーが石にされた”

それを聞いたとき、コリン・クリービーって誰だっけ?と考えてしまったものの、確かハリーの熱狂的なファンであるカメラを抱えた一年生だったと思い出した。

 そんな情報がホグワーツ全体に行き渡り、いよいよ生徒の不安が高まってきた頃に“それ”は行われることになった。

 

 

 

 

「決闘クラブ…?」

 

 朝早くに目が覚めた俺は一人大広間へと向かっていた。そんな時に玄関ホールの掲示板前に多くの生徒(その殆どがレイブンクロー生。真面目な彼らは朝起きるのも早いのだ)がごった返しているのが見えた。気になって掲示板を見てみると、そこに張られた張り紙には“決闘クラブを開催する”という旨の説明が為されていた。

 

「決闘クラブをやるなんて凄いことじゃない?」

「昔は毎日のようにやってたらしいけどな。今の時期に復活させたってことは何かあるんじゃないか?それと…おはようダフネ」

「えぇ。おはよう」

 

 いつの間にか隣に来ていたダフネの言葉に答えつつ、互いに朝の挨拶を交わす。

 

「決闘クラブってことは決闘をやるんだよな。ダフネ行くか?」

「そのつもりよ。学んでおいて損は無い筈だし」

「二人も決闘クラブに行くの?」

 

 ダフネと話していると後ろから声を掛けられる。振り返ればマークとランスが立っていた。

 

「二人“も”ってことはマークとランスも行くのか?」

「勿論。僕らも決闘を学んでみたいしね」

「決闘を学べば強くなれんじゃねえかなって思ってさ。行ってみようって事になったんだよ」

 

 どうやら二人も俺達と同じ考えのようだ。まぁ、決闘クラブに行く人なんて大抵似た考えなんだろうけど。

 

「開催は……今夜8時か。大広間でやるみたいだな」

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 夜も更け、決闘クラブの開始時刻が迫ってくる。大広間は多くの生徒で溢れており、決闘クラブということもあってか普段の騒がしさも二割増しと言った様子となっていた。

 参加メンバーの殆どがグリフィンドールとスリザリンの生徒で構成されていたものの、一部レイブンクローとハッフルパフからも参加していた。

 そして数分後。大広間の扉が開き、生徒が静まり返る。扉を開けてやって来たのは父さんとスネイプ先生、レイブンクローの寮監と呪文学の教授を務めているフリットウィック先生だった。

 三人は壇上に上がり、周りに集まった生徒を一瞥すると代表してフリットウィック先生が前に出た。

 

「さて。決闘クラブにこれだけの生徒の皆さんが参加してくれたこと、大変嬉しく思っています。僭越ながら決闘クラブの講師として私とアーデル先生、そして特別ゲストとしてスネイプ先生をお迎えして始めさせていただきます」

 

 特徴的なキーキー声で話し終えたフリットウィック先生に続くように紹介された父さんが頭を下げる。対し、スネイプ先生はいつも通りの仏頂面だ。そしてそんな三人に盛大な拍手が送られる。まだ始まってすらいないのにこれ程生徒が熱くなっているのも“決闘クラブ”故だろうか。

 

「決闘クラブとは、その名の通り決闘を学ぶための場です。昔は毎日のように行われていましたが時代が進むと共に行われることもなくなりここ数年では年に一度あるかないかとなってしまいました。しかし、最近になってホグワーツ内で様々な事件が起こることもあってかアーデル先生…というよりも魔法省の言伝により決闘クラブが再開される事となりました」

 

 フリットウィック先生の言葉になるほどと納得する。魔法省が決闘クラブを良しとしたのならホグワーツも大っぴらに開けるというものだろう。

 

「では決闘とはどのようにして行うのか?実際に見てもらった方が分かりやすいかもしれませんね。アーデル先生、スネイプ先生。お願いできますかな?」

 

 フリットウィック先生の言葉に頷いた二人はそれぞれ壇上の端の方へと移動する。それに合わせて二人の決闘を間近で見ようと生徒達が一斉に舞台付近へと集まって来たため前の方に居た俺は舞台と生徒に挟まれることとなった。

 

 

 

 

 

 

端の方へと移動したレックスとスネイプはお互いに洗練されたお辞儀をすると杖を構える。

 

「このように先ずはお互いにお辞儀をして杖を構えるところから始めます。神聖な決闘では礼儀を重んじることも重要なのです。そして三つ数えてから決闘を始めるのですが、当然相手を死に至らしめるような呪文は禁止です───それでは行きますよ……1…2の…3!」

「エクス……ペリアームス!!」

 

 フリットウィックが説明を終え、合図を出した瞬間にスネイプが武装解除呪文を唱える。

 杖先から放たれた赤い閃光は真っ直ぐレックスへと伸びていく──が、レックスは冷静に杖で呪文をいなす。弾かれた呪文はあさっての方向へ飛んでいき、着弾した場所に焦げ跡がついた。呪文がいなされたのを見たスネイプは小さく舌打ちを溢し、そんなスネイプを見たレックスは苦笑しつつもかつての後輩が本気で忌々しそうにこちらを睨む様を見て悲しくなった。

 

「見ましたか皆さん!今のが武装解除呪文です!基本的には相手の持っている武器を吹き飛ばす事しか出来ませんが強力な物であれば武器を持っている相手ごと吹き飛ばすことも可能となります。それでは二人とも、自由に決闘を始めてください。無論、分かっているとは思いますがルールを守るように」

 

 それを見たフレッドとジョージはどちらが勝つか賭けを始め、他の生徒も食い入るように壇上の二人を見つめる。特にスネイプに色々されてきたグリフィンドールはスネイプの負ける姿が見られるかもしれないという小癪な考えで笑みを浮かべていた。それを見たリオンも相変わらずのグリフィンドールのスネイプ嫌いには苦笑いするしかなかった。

 

フリペンド(撃て)!」

 

 そしてお返しとばかりにレックスがスネイプに向けて衝撃呪文を飛ばす……がこれは杖でいなされ、反撃に人体に影響の無い炎呪文が飛んでくる。

 

アグアメンティ(水よ)!」

 

 レックスは杖から水を噴出させて炎を消し去ると、辺りに散った火の粉を小鳥の形に変える。

 

オパグノ(襲え)

 

 変化させた小鳥達はレックスの呪文によってスネイプに殺到する。スネイプは舌打ちを溢すと消失呪文で小鳥を消失させた。

 そうそうお目にかかれないハイレベルの決闘を前にして生徒達から歓声が上がる。

 その後も一進一退の攻防を繰り広げていた二人だったが、お互いにヒートアップしてきたのか無言呪文での応酬になっていった。

 

 

 スネイプが繰り出した斬撃を防御呪文で防ぎ、反撃に炎呪文を返すもスネイプが発生させた風によって炎が巻き上げられ、竜巻のような形となってレックスに襲い掛かる。

 

フィニート(終われ)

 

 レックスが竜巻に向けて無言呪文を唱えると、たちまち炎は消えていき、辺りに火の粉が散った。そして再びレックスは火の粉を小鳥に変えるとスネイプに向けて放つ。スネイプも先程のように小鳥を消失させていたが、その隙を突くようにレックスの武装解除呪文が飛んでくる。

 これに焦りの表情を見せたスネイプは何とか全ての小鳥を消し去り、ギリギリで武装解除呪文をいなす。瞬間、フリットウィックの「そこまで!」という声が大広間に響いた。

 

「素晴らしい決闘でした!皆さん、お二人に盛大な拍手を!」

 

 ワッ!と割れんばかりの拍手がレックスとスネイプに送られる。下級生は純粋に素晴らしい決闘に対する賛辞を、上級生は二人のあまりのハイレベルな決闘に戦慄しつつも、高い技術によって繰り出される魔法の数々に興奮していた。

 そんな生徒達にレックスは笑みを浮かべながら頭を下げ、スネイプも相変わらずの仏頂面だが小さく頭を下げた。

 

「それでは、皆さんも近くのお友達とペアを組んで決闘を始めてみてください。主に扱う呪文は武装解除、失神、防御呪文ですよ」

 

 フリットウィックの言葉に生徒達が一斉に動き出す。尚、ペアを組むと聞いた瞬間、リオンは胃の辺りを押さえていた。何か嫌な思い出でもあったのだろうか。

 

 

 

 

リオンは近くに居たマークに誘われて決闘していた。二人とも二年生の中では頭一つ抜けているために決闘としては形が出来ていた。

 周りでは武装解除に苦戦するペア、勝ち負けを巡って原始的な殴り合いに発展するペア、純粋に決闘を楽しむペア、早々にルールを破って呪いをかけ合うハリーとマルフォイなど様々な形で行われていた。そして意外にも、ハリーとマルフォイ以外の二年生のグリフィンドールとスリザリンペアは上手くやれていた。

 

 それから少しして、フリットウィックの提案で代表して生徒ペアによる決闘を行うことが発表された。

 誰が出るか生徒の間で騒がれたが、スネイプがハリーとマルフォイを指名した。

 そして二人の決闘が始まったのだが、マルフォイが合図が終わるより先に呪いをぶっ放したのを皮切りに、お互いに決闘関係無しの呪いのぶつけ合いが行われた。

 

サーペンソーティア(蛇出でよ)!」

 

 マルフォイが蛇を出現させ、ドサッという音と共に地面に落ちる。周りに居た女子生徒達が悲鳴を上げて舞台から後ずさる。蛇の目が、近くに居たハッフルパフの女子生徒を捉え、そちらへ這いずっていく。

 流石に看過できないとレックスが杖を取り出した瞬間、シューシューという音がやけに鮮明に響き渡った。

 

 全員が、音のする方に顔を向ける。それを見た殆どの人が目に怯えの色を浮かばせた。あのマルフォイですら例外なく、その音を──正確にはそんな音を口から響かせる()()()に目を向けていた。

 そんな音に反応したかのように蛇がハリーの方を向き、お互いに数刻見つめ合う。

 スネイプがズカズカと舞台に歩き、杖を振って蛇を消失させる。

 ホッと一息ついたハリーは目をパチクリと瞬かせて、何故周りが自分にこんな目を向けるのか分からないと困惑した表情をする。

 そんな水を打ったかのように静まり返った大広間にフリットウィックとレックスが決闘クラブの終了を宣言し、退出を促す。

 ゾロゾロと大広間を出ていく生徒達だったが、彼らの目はハリーに対し、畏怖と怯えの感情を向けていた。そんなハリーも両脇をロンとハーマイオニーに固められながら大広間を後にした。

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

「あれはパーセルタング(蛇語)だ!」

 

 スリザリン寮に戻るや否や、ドラコが大声でそう言い放つ。その顔には隠しようもない恐怖の色が浮かんでいた。

 

「じゃああれか?継承者はポッターだったってことか?」

 

 ブレーズが面白そうに笑みを見せながらそんなことを言う。スリザリンの継承者と言われる人物がグリフィンドールにいるかもしれないという事実に可笑しさを隠せないのだろう。

 

「あら、それじゃあ今頃グリフィンドールは凄い騒ぎになってるんじゃない?だって同じ寮にこの事件を起こした犯人がいるんだもの」

「まだそうと決まった訳じゃないわ。憶測で引っ掻き回さないでパーキンソン」

 

 嘲笑を浮かべながら言うパンジーにダフネが反論する。それを聞いたパンジーは不愉快そうにダフネを睨む。

 

「あら、流石は『中立派』のグリーングラス家のお姫様ね。敵である筈のグリフィンドールの生徒の肩を持つなんて。もしかして貴女、ポッターに惚れたのかしら?」

「馬鹿を言わないで。私はポッターが蛇語使いであったとしても、それだけでこの事件の犯人と決めつけるのは良くないと思っただけよ」

「……調子に乗るんじゃないわよ。この蛇女が」

「あら。スリザリンのモチーフでもある蛇を使った渾名を言ってくれるなんて実に光栄ね」

 

 憎々しげにそう呟いたパンジーに対してダフネは余裕すら感じる笑みを浮かべながらそう返す。だが、ほんの一瞬ダフネの顔が強張ったのは気のせいではないだろう。

 

「……グリーングラスの言葉にも一理ある。ポッターが蛇語使いだと言ってもそれだけで継承者と判断するのは難しい。フリットウィック先生が言っていたがダンブルドアも蛇語使いのようだからそれだけで決めつけては余計な敵を増やすだけだ」

 

 と、珍しくセオドールもハリーが継承者ではないと支持した。

 

「お前はどうなんだリオン。ポッターが継承者だと思うか?」

「俺?いや、俺は継承者じゃないと思うよ。確かにハリーが蛇語を使えたってのは驚いたけど、けどそれだけだ。ハリーにはミセス・ノリスやコリン・クリービーを石にする理由なんて無いと思う」

「……という訳だ。あまり騒ぎ立てるのはお前のお父上が良い顔をしないと思うぞドラコ」

 

 そう言ってセオドールは部屋へと戻っていった。ドラコも罰の悪そうな顔をしながらクラップとゴイルを引き連れて部屋へと戻っていく。

 

「……お前もあんまり余計なこと言うなよ、ブレーズ」

「あ、俺?言わねぇ言わねぇよ。なーんか冷めちまったしな」

 

 念のためブレーズにも釘を刺しておいたが、こっちは問題ないだろう。逆に問題ありそうなのは未だに諦めてなさそうな顔をするパンジーだよなぁ。

 パンジーは納得のいかない顔をしながら女子寮の方へ戻っていく。こうして談話室には俺とダフネだけが残された。

 

「またポッターは大変な事になるでしょうね」

「あぁ。けど、他の皆もそのうち分かってくれると思うよ」

「そうかしら。私はそうは思わないわ」

「何でだ?」

 

 そう聞くと、ダフネは呆れたような顔をしながら俺を見つめて言ってきた。

 

「確かにポッターが継承者ではないことは分かるかもしれない。でも、蛇語を使えるという事実はもう既に証明されてしまった。それに関係する周囲の目線は変わらないはずよ。リオンもよく分かってるでしょう?」

「……まぁ、そうなんだけどさ」

 

 ダフネの言葉には確かな説得力があった。俺だって分かっているのだ。たとえハリーが継承者ではないと判明したところで蛇語を使っている以上、何かしらの疑いの目は向くだろうと。

 

「私はポッターの事を疑ってないわ。でも貴方はポッターを必要以上に庇ってしまっている。グリフィンドールとスリザリンという水と油の関係にも関わらずね。それがいけないことだと言うつもりもないし止めろとも言わないわ。寮の隔たりを超えて友人関係を築けるのは貴方の凄いところだもの。でもね、もし貴方がポッターに必要以上に関わって何か危ない目にあったりしたら……私はきっとポッターを許さないわ。たとえ貴方の方から首を突っ込んだとしてもそうなった原因を許すなんて出来ないし、勿論危ないことをした貴方も怒るけれど」

 

 そう語るダフネの目は真剣で、どこか凄みを感じさせるものでもあった。もう既にハリー関係というか、賢者の石で自分から首を突っ込んで危ない目にあっているのだが、そこら辺の事情をダフネは知らないので黙っておこう。言う必要もないし。

 

「とりあえず言いたいことは言ったからもう部屋に戻るわ。おやすみなさい、リオン」

「あ、あぁ。おやすみ……」

 

 談話室を出ていくダフネの背を見送り、一人になった俺はソファに腰掛ける。

 

「心配、されてるなぁ……」

 

 しみじみとそう呟く。俺が思っていた以上にダフネには心配をかけさせてしまったらしい。ひょっとかしたらマークやランスもこんな感じなのだろうか。

 なんだか胸に変なモヤモヤを抱えたまま、俺も部屋に戻って眠りにつくのだった。




想像していた以上にダフネに心配をかけていたリオン。ちょっと重たい感情向けられてない?大丈夫?
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