【本編完結】ハリー・ポッターと何も知らない転生者   作:シャケナベイベー

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嘘か真か 牙城は脆く

 ある日、何の気なしにホグワーツを歩いていたところやって来たロンとハーマイオニーに捕まり、廊下の端まで拉致された。

 

「で?人を拉致しといて何の用なんですかね」

「急にごめんねリオン。でも、見てほしいものがあるんだ」

 

 辺りに人が居ないことを確認しつつ、連れられた俺を待っていたらしいハリーは手に持っていた真っ黒な表紙のノートを俺に見せてくる。

 

「これは?」

「日記だよ。三階の女子トイレに落ちてたんだ」

「──は?」

 

 ハリーの言葉に、思わず絶句する。

 え、女子トイレって……おま、え?

 

「……あー…っと、女子トイレってのは?」

「あ、えっと…嘆きのマートルに用があって行ってたんだ。そこでトム・リドルって人が持ってたらしい日記を拾ったんだけど……」

「そ、そうか…」

 

 とりあえずハリーが不純な動機で女子トイレに行ったわけではないらしいことが分かり、安堵の息を吐く。

 改めてハリーの持っていたノートを手に取り、パラパラと捲ってみる。

 

「名前からして男っぽいけど何だって女子トイレに?」

「それは分からないけど……この日記、直接やり取りが出来るんだよ」

「直接やり取りが?」

 

 ハリーの言葉に思わず懐疑的な顔をする。

 

「本当よ。私たちも信じられなかったけどハリーが実際に会話しているところを見たもの」

 

 さらにハーマイオニーもそう言い、ロンも頷いている。この三人が俺を騙すような理由が存在しない為に信じることにした。

 

「それは良いけど…何だってこの話を俺に?」

「実は──」

 

 そこでハリーはここまでの経緯を話し始めた。女子トイレで日記を拾い、日記を開いてみると独りでに文字が浮かび上がったこと。その文字の主──五十年前のホグワーツ生であるらしいトム・リドルと話をしたハリーは秘密の部屋について聞くことにした。

 すると日記が光り出して、過去の光景を見せられたという。

 そこでは秘密の部屋が開かれたことで一人の女子生徒が亡くなったこと、トム・リドルとダンブルドア先生が会話したこと。トム・リドルはスリザリンの怪物を当時生徒だったハグリッドが飼っていた魔法生物のアクロマンチュラだと突き止めたことを見せられたらしかった。

 

「それで、リオンなら何か分からないかなって思ったんだけど…」

「と言われてもなぁ…俺も何が何だかさっぱりだ。もしかしたら父さんなら分かるかもしれないけど」

「あ、そうか。レックスさんなら……」

 

 そんな訳でグリフィンドール三人組プラス俺という面子で父さんのいる部屋を訪れた。

 

「父さん、いるか?」

「ん?やぁリオン……と、ハリーにロン、ハーマイオニーも一緒だったのか。どうした?」

「失礼しますレックスさん。実はお聞きしたいことが……」

 

 代表してハーマイオニーがこれまでの経緯を話し始める。最初は穏やかな顔で聞いていた父さんだったがトム・リドルの名前が出た瞬間、その顔が険しいものへと変わっていった。

 

「今、何て言った?」

「えっ?」

「名前だよ。その日記の持ち主の名前だ」

「トム・リドルですけど…」

「ミドルネームは分かるかい?」

「Mでした」

「M……“マールヴォロ”か。まだその日記は手元にあるか?」

「はい。ここにありますけど……」

「ありがとう。……しばらくの間、この日記を預かっても良いかな?」

「大丈夫です」

 

 父さんがハリーから日記を受け取り、近くの引き出しに仕舞う。

 

「父さん、その日記に何かあるのか?」

「……そういうわけではないさ。だが、今の持ち主と実際に会話することのできる日記など怪しいことこの上ないからね。少し調べるだけさ」

「そうなのか……じゃ、俺たちも戻るか」

「だね。ありがとうございましたレックスさん」

 

 父さんとの会話を終えると、ハリーたちを伴い部屋を出ていった。

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

「……さて」

 

四人が部屋を出たのを確認したレックスは、引き出しから先程預かった日記を取り出すと表紙を開く。

 

「見たところ怪しいところは無い。…レベリオ(現れよ)

 

 試しに呪文をかけるが、効果は無かった。

 

「これも駄目か。だけど、奴の日記なら何かしらの仕掛けがあるはず」

 

 そう言いながら、羽根ペンにインクをつけて文字を書こうとする。すると、白紙だったはずのページに文字が浮かんできた。

 

“貴方は誰ですか?”

 

「なるほど、こういう感じなのか」

 

 突如浮かんできた文字に軽く驚いたレックスだが、改めて日記に筆を滑らせる。

 

“私はレックス・アーデルです”

 

 自分の名前を書くと、すぐさま返事が返ってきた。

 

“アーデル!?もしかして、貴方はエドワード・アーデルを知っていますか?”

 

 その名前が浮かんだ瞬間、ペンを握る手に力がこもる。何とか抑え、それに対する返答を記入する。

 

“はい、知っています。エドワードは私の父親です。ところで貴方は何と言うお名前でしょう?”

“へぇ!君はエドワードの子供なんだ!それと、僕の名前はトム・リドルって言うんだ。エドワードから聞いてないのかい?”

“少しだけ聞いていました。とても仲の良い友人だったと”

“そっか……エドワードは、僕の親友なんだ”

 

 それを見た瞬間、レックスは日記を閉じる。顔は平静を装っているものの胸の内では激しい感情が渦巻いていた。

 

「親友…親友だって!?父さんを殺しておいて、止めようとした父さんと母さんの言葉に耳を傾けなかったお前が…!!」

 

 そこまで口に出したところで、レックスは一度深呼吸する。

 冷静になれ。考えるな、思い出すな。今の()には守るものがある。優先順位を見誤るな。

 

「はぁー……とりあえず、もう少し調べてみよう」

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 早いもので、もう五月の中頃だ。あれからトム・リドルの日記はハリーに返却されたようだが、その時の父さんの様子がどこか変だったとハリーから聞いた。俺も様子を見に行ったもののその時にはいつも通りの父さんに戻っていた。聞いてもはぐらかされたので深く追求することは無かったが、父さんはあの日記に何か不審な点を見つけたのだろうか。

 それに石化事件の方だが、ハッフルパフのジャスティンとグリフィンドールの寮憑きゴーストでもある“ほとんど首無しニック”が同時に石にされるという事態となり、ホグワーツは恐慌状態となってしまった。

 だが被害はそれだけではなかった。

 

「まさかハーマイオニーまで被害に遭うなんて……」

 

 レイブンクローの監督生であるペネロピー・クリアウォーターとハーマイオニーが石化の被害に遭ってしまった。

 ハーマイオニーが石にされたということもあってかハリーとロンは今まで以上に犯人探しに躍起になっていた。それとハーマイオニーが石にされたことでハリー=継承者説は一先ずの収束を見せた。あの三人組の仲の良さを知っている人達がハリーが犯人のはずがないと言い回っていたらしい。

 

「これでハリーの問題は解決したな…あとはマンドレイクさえ調合できれば石にされた人達が回復するだろう」

 

 ほんの僅かに、事件解決への光明が見えたことに安堵した。

 

 

 

 

 

 

 ハリーとロンはハグリッドの小屋に向かっていた。ハーマイオニーが石にされたことで犯人探しに躍起になっていたのだが、レックスに助言を貰おうにも新たな犠牲者が出たことで先生達も慌ただしく動いていた。

 これでは助言は期待できそうにないということでかつての秘密の部屋事件で容疑者として疑われていたハグリッドに話を聞きに行くことした。

 

 それまでは良かったのだがハグリッドの小屋にハグリッドとレックス、ダンブルドアと見知らぬ老人が入っていくのが見えたことで予定を変更し、中の様子を窺うことにした。

 

「あの人、魔法大臣のコーネリウス・ファッジだよ!パパの所のボスで凄いやり手だって!」

 

 と、ロンが興奮ぎみに話しているもののハリーには魔法大臣がどれほど偉いのか今一理解できなかった。そもそも魔法界に関わってまだ二年目だ。生まれた頃から魔法を知っているロンとは雲泥の差だろう。

 

 

 

「わざわざ夜更けに時間を取らせてしまいすまないな、ハグリッド」

「いえ……俺は構いません魔法大臣閣下……」

 

差し出されたお茶を飲み、ファッジとハグリッドが言葉を交わす。

 

「状況は悪くなる一方だ。マグル出身者が三人も被害にあった…」

「お、俺は、決してそんなことは…」

 

 ため息を吐きながら話すファッジにハグリッドが顔を青くしながら否定する。

 

「君が犯人でないだろうことは我々とて承知の上だよ。しかしウィゼンガモットの奴らはそう考えてはいない。かつて君がアクロマンチュラを飼育していた事を掘り返すなりして、最悪ホグワーツに直々に乗り込んででも君を捕まえる可能性がある。今はボーンズ部長が抑えてくれているが時間の問題だろう」

「やりかねませんね……それで、どうするつもりなんです?」

 

 米神を押さえながら呻くように話すファッジにウィゼンガモットならやりかねないと確信を持っているレックスがどうするのかを伝える。

 

「ハグリッドを魔法省に連れていくしかないだろう」

「正気かファッジ?少なくとも今回の件に関してハグリッドは無実だ。無実の人間を連行など…」

「コーネリウス。儂はハグリッドに全幅の信頼を置いておる。今回の事件、ハグリッドは無関係じゃよ」

 

 ファッジの言葉にレックスとダンブルドアが反論する。無実の人間を捕まえるなど愚かとしか言いようがないからだ。

 

「分かっている。何もアズカバンに送るわけではない。私とボーンズ部長が用意した部屋で過ごしてもらうだけだ。この件で私の支持率が下がることは構わないが他の部署やホグワーツにまで余計な手間をかけさせる訳にもいかないだろう」

 

 そう言われては何も言い返せない。ファッジとて苦渋の決断だろうと思い、納得することにした。

 

「してレックスよ。例の日記は見つかったかね?」

「それが全く。どこにも見当たりません。生徒達の間に渡っているのならば早急に対処するべきでしょうが……ハリーが持っていたのが何者かに盗まれて以降、影も形もありません」

 

 ダンブルドアとレックスが会話する。トム・リドルの日記が紛失した件について、この二人は殊更重く受け止めていた。

 

「二人でも見つけられないとなると余程高度な魔法が掛けられているのか……やれやれ、相当厄介だな」

 

 秘密の部屋にトム・リドルの日記。これだけでもファッジの頭を悩ませるには十分過ぎる内容だった。

 

「それに理事会があらゆる方法で圧力を掛けてきている。悠長にしていられないか……」

「理事会が?」

 

 ファッジが呟いた内容にレックスが目を丸くする。

 

「大体の内容はウィゼンガモットの連中と同じだ。今回の事件の犯人はハグリッドだと言って聞かん。それにルシウスが何やら怪しい動きを見せている。それにも注意を払わねばならないとなると……」

「……噂をすれば、か」

 

 ファッジの言葉を遮りレックスが扉に杖を振るうと扉がひとりでに開き、そこに小さく笑みを浮かべたルシウス・マルフォイが立っていた。

 

「これはこれは、わざわざありがとうアーデル。それに校長先生に魔法大臣までいらっしゃったとは。嬉しい誤算と言うべきですかな?」

「ルシウス……」

「何の用だ!俺の家から出ていけ!!」

 

 わざとらしい手振りで驚きを示すルシウスを見て苦々しく呻くファッジと怒りを爆発させるハグリッド。

 

「無論、すぐ出ていくとも。私は親愛なるアルバス・ダンブルドア校長にお届け物をしに来たのですからな」

 

 そう言ってルシウスは一枚の羊皮紙を突き付ける。その紙には、『アルバス・ダンブルドア 停職処分』と書かれていた。

 

「なっ…!?」

「状況が分かっているのかルシウス。こんな時に」

「ルシウス、お前な…!」

 

 あまりにも唐突過ぎる内容にハグリッドは絶句し、ファッジはルシウスを睨み付けレックスはルシウスに詰め寄ろうとする。

 

「ホグワーツ校長の就任も退任も理事会が決めることが出来る。お忘れではありますまい大臣?」

「承知している。だが、今回の件はあまりに唐突すぎる。このタイミングでの処分は魔法大臣として苦言を呈せざるを得ない」

 

 言葉を選んで慎重に話すファッジだが、ルシウスはそれを一笑に伏し言い放つ。

 

「理事会に圧力をかけているとも取れる発言ですな」

「断じてそのような意図はない。……分かってくれルシウス。今アルバスを停職処分にしてしまえばホグワーツの守りが大きく崩れる。そこを突かれることになれば被害がさらに広がるぞ」

 

 冷ややかに述べるルシウスを何とか止めようと懇願するファッジ。そんな二人を制し、ダンブルドアがゆったりとした口調で話し出す。

 

「それが理事会の決定であるのなら、儂は従うまでじゃよ」

「それはダメだアルバス!本当に死人が出るぞ!!」

 

 粛々と従おうとするダンブルドアに強い口調で詰め寄るファッジ。そんな二人をルシウスは小さく笑みを浮かべて見ていた。

 ダンブルドアは改めてルシウスに向き直り、そのブルーの瞳を一際強く輝かせる。

 

「一つ、忠告しておこうかのうルシウス」

「何でしょう?」

「“ホグワーツでは助けを求める者には、必ずそれが与えられる”。覚えておくのじゃ」

「……大変ご立派な心意気で」

 

 真剣にそう語るダンブルドアを冷ややかに見つめたルシウスは「明日が最後です。どうぞ楽しまれると良いかと」と言い残し、ハグリッドの小屋を出ていった。

 

 

 

 

「最悪の事態だ……」

 

 ルシウスが小屋を出た後、振り絞るようにしてファッジが言う。

 

「アルバス、何故理事会の方針に従った?」

「そうせねば彼らは無理矢理な手段を使うじゃろう。それに、理事会の決定に否を唱えられる権利は儂には無い。今のホグワーツに新たな火種を持ち込まれるのは君とて不本意じゃろう?コーネリウスよ」

「それはそうだが……」

「それにもし、儂が申し出を拒めば魔法大臣たる君にも被害が及ぶ。今の魔法界には君が必要なのじゃコーネリウス」

 

 そう語るダンブルドアの目は至って真剣であり、ファッジを強く信頼するが故の言葉だった。

 

「はぁ……了解した。君の配慮に感謝する」

「すまぬのう」

「とりあえずだ……ハグリッド、準備をしてくれ。君を連れていくのが今日なのでね。あぁ森番については魔法省から適切な人材が送られるから安心してほしい」

 

 立ち上がりファッジはハグリッドに指示を出す。ハグリッドもそれに従い、必要なものを揃える。

 

「レックス。儂が留守の間ホグワーツを頼む」

「分かりました。その間の代理はマクゴナガル先生が?」

「うむ。彼女以上に儂の後を頼める人などおるまい」

「それは確かに……明日のいつ頃出る予定で?」

「……少しだけ君の子供と話をしておきたい。空いている時間を使うとすれば夕方ぐらいに出るかのう?」

「リオンに……?」

 

 ダンブルドアが息子に何の用だろうと気になったもののあまり詮索するべきことではないと思考をカットする。

 

 

しばらくして四人が小屋を出た後、ハリーとロンも被っていた透明マントを剥ぎ取る。

 

「なんか、凄いことになっちゃったね……」

「うん……」

 

 会話の全てが聞き取れた訳ではないものの、なにか良くないことが起きるのではないかという不安が二人の中に渦巻いていた。




ルシウス・マルフォイ、渾身の横やり
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