【本編完結】ハリー・ポッターと何も知らない転生者 作:シャケナベイベー
「そりゃこんな場所に入り口があるんじゃ見つからないわけだ……」
あの後、入り口を伝ってトンネルへと降りたハリー達は秘密の部屋に向かって進んでいた。
地面には小動物の骨だけとなった死骸が辺り一面に散乱し、ベタついた嫌な感触が足から伝わってくる。そんな場所を杖先に明かりを灯して進みながらランスが呟く。
「というか、何だってサラザール・スリザリンは女子トイレなんかに入り口を作ったのか……いや、入り口を移動させたのかな?それかサラザール・スリザリンが女性だった可能性も……」
「うわぁぁぁぁぁ!!!」
入り口について考察していたマークの耳にロンの叫び声が飛び込んでくる。
何だとそちらを振り向いてみればロンがハリーの袖を掴みながら震える指で何かを指差していた。
「あ、あ、あそこに何かある……!」
指差す方向を見てみれば、そこには巨大な物体があった。マークとランスが杖の明かりを掲げて物体を照らしながら周りを歩く。
「これは……すごいな。蛇の脱け殻だ。それもとても巨大なね」
「ってことは、これがハリーとロンが言ってたバジリスク…の脱け殻か?」
「恐らくね」
確認し終えたマークはハリーとロンに手招きし、安全であることを知らせる。
「大丈夫。ただの脱け殻だよ。でもこれ程大きいとなると生半可な呪文は通じそうにないな」
「た、戦うつもりなの?」
「まさか。戦って勝てるとは思っていないさ」
バジリスクは目を見た相手を石に変える。ならば目を見なければ大丈夫だろうと考えていたハリーとロンにとって、まさかバジリスクがこれ程巨大な蛇とは思っていなかった。
「とにかく先に進もう」
ハリーの声に全員が一歩踏み出す。
その瞬間、トンネルが突如として揺れ出し、巨大な岩が四人の頭上から落ちてくる。
「ごほっ…ごほっ!皆、大丈夫!?」
なんとか岩の下敷きになることを免れたハリーが声を張り上げる。
そして岩の向こうからロンの声が聞こえてきた。どうやら三人と分断されてしまったらしい。
「岩を砕くことは出来るけど何が起きるか分からない。かといってここで待つっていうのも──」
「僕一人で行くよ」
考えを巡らせるマークに被せるようにしてハリーが言う。
危険だと三人が止めるもハリーは「ここで待っているだけじゃリオンとジニーがもっと酷いことになっているかもしれない」と無理矢理に納得させた。
「ハリー、絶対帰ってこいよ」
「ありがとうロン。でももし、僕が一時間経っても戻ってこなかったら……」
「分かった。その時は先生達を呼ぶよ」
「俺達もなんとか安全な方法で岩を砕けないかやってみる。解決してもここから出られないんじゃな」
そうして三人と別れたハリーは奥へと進んでいく。
やがて巨大な蛇が彫られた扉が見えた。その扉は独りでに開き、中の光景が見える。
「リオン!ジニー!」
そこで大切な友人達が横たわっていた。
◆ ◆ ◆
「ジニー、ジニー目を覚まして…」
「彼女は目覚めない」
ジニーに駆け寄り、軽く揺さぶるハリーにトムが声を掛ける。
突然現れた青年に驚いたハリーだったが、その青年がトム・リドルだと直感する。
それを聞いたトムは俺にしたのと同じように自分の名前を空中に描き出し、それを組み換えて自分がヴォルデモートだと名乗った。
「君がヴォルデモートだって?そんな!」
「事実さハリー。僕が遺していた日記を拾った哀れなジニー・ウィーズリーを利用してバジリスクを使い石化事件を引き起こした。実に御しやすかったよ彼女は。まぁ日記を捨てた事には驚いたが、次に拾ったのがまさかハリー・ポッターとは!!」
トムは邪悪に嗤い、ジニーとハリーを馬鹿にする。
「だがまさか日記をレックスに預けるとは予想外だった。奴の手元にある間は動き出さずにやり過ごしたが何、エドワードの名前を出せば動揺したからね。こんな奴に未来の僕は手こずったらしい……まぁそんなことはどうでもいいんだ。君はここで死ぬのだから」
シューシューとトムの口から蛇語が紡がれる。そして部屋の奥からバジリスクが姿を見せた。
「ハリー・ポッターを殺せ!!」
蛇語で何かを命令したトムが笑みを浮かべる。するとバジリスクはハリーに向かって襲いかかった。
杖を武装解除され杖なしでバジリスクと戦わなければいけなくなったハリーの下にダンブルドアのペットである不死鳥のフォークスが組分け帽子と共にやって来る。
ダンブルドアのちっぽけな援軍をせせら笑うトムには目も向けずハリーはバジリスクから必死に逃げる。
しかし、時間が経つにつれてバジリスクの動きが鈍くなる。良く見ればバジリスクの体からどす黒い血が流れていた。
「ちっ…!レックスにやられた傷が塞がっていないのか。だがどういうことだ?バジリスクに生半可な呪文は意味を為さない筈……まぁいい。いつまでも逃げることは出来ないぞハリー・ポッター!!」
バジリスクの体当たりがハリーの体に当たり、地面を転がる。
ハリーは咳き込みながらも、フォークスが運んできた組分け帽子を藁にもすがる思いで掴む。
すると組分け帽子の中から一振りの銀色に光る剣が現れハリーの手に納まる。
剣を引き抜いたハリーはバジリスクの攻撃をかわし、動きが緩慢になった隙を突いてその喉元に刃を突き立てた。
「まさかバジリスクを倒すとは……だが、やはりこちらの方が都合が良いか」
そう言ってトムは武装解除したハリーの杖を向ける。満身創痍のハリーには呪文をかわすことは出来ない。
だからこそ、今動ける彼が動いた。
「
立ち上がったリオンが武装解除呪文を唱える。放たれた呪文はトムの腕から杖を吹き飛ばし、杖は空中で回転しながらリオンの手に納まった。
妨害されたトムがリオンにその赤い目を向けた瞬間、フォークスがハリーの下に日記を落とす。
それを見たハリーは無我夢中で近くにあったバジリスクの牙を振り上げる。やめろ!という制止の声が聞こえたのも構わずに勢い良く振り下ろした。
凄まじい絶叫が響き、トムの体から光が溢れるとその体は塵となって消えた。
少しして、ジニーが目を覚ます。返り血を浴びたハリーを見て恐怖からか、はたまた安堵からかジニーはワッと泣き出した。
「ハリー、リオン。ごめんなさい、私、私……」
「操られてたんだろう?仕方無いさ」
しばらくして泣き止んだジニーが謝るのをハリーは慰めていた。実際操られていただけのジニーがここまで責任を感じることはないのだ。
「どうやら俺たちを上まで運んでくれるらしいよ」
フォークスが自分達の頭上を飛ぶのを見たリオンが言葉を掛ける。
フォークスが先を行くのを追い掛け、三人は歩き出した。
◆ ◆ ◆
「ジニー!良かった、ホントに心配したんだぞ!」
道を戻っていると、通路を塞いでいた巨大な岩は完全に砕かれており、戻ってきた三人を見たロンがいの一番にジニーに抱き着く。
ジニーは「苦しいわよロン」と言いつつもその顔には笑顔が浮かび、そんな二人をハリーは安心したように眺めていた。
「まさかマークとランスも来てたなんてな」
「友達のピンチだからね。叡智に優れたレイブンクロー生でも友達を助けるためにはなりふり構っていられないさ」
「レイブンクロー関係あるか?」
一方でリオンはまさか来ているとは思っていなかったマークとランスと会話していた。
とりあえずそうやって話していると、フォークスが鳴いて頭上を旋回する。
「捕まれって言ってるのかな?」
「不死鳥だしね。僕ら全員を運ぶくらいなら訳ないんじゃないかな」
ハリーがフォークスの尾羽根に捕まり、そんなハリーと全員が手を繋ぐ。
そして六人捕まっているとも思えないほど軽やかな動きでフォークスは飛び立った。
◆ ◆ ◆
その後、戻ってきたハリーを見て残念そうにしていたマートルに別れを告げて先導するフォークスに従って歩いていると、マクゴナガルの部屋に着いた。
静かにノックし、扉を開ける。
部屋にはここの主のマクゴナガルにダンブルドア、ウィーズリー夫妻にエレインも居た。
しばらく時が止まったかのように静かだったが、モリーの娘を呼ぶ声で現実に引き戻される。
モリーは娘に抱き着き、ロンに抱き着き、ハリーに抱き着きと忙しそうだった。抱き着かれた三人とも嫌そうな顔ではなかったが。
一方でリオンも心配をかけたということでエレインに抱き締められていた。
「レックスが石になったと聞いて飛んできてみれば貴方が居なくなったなんて!!本当に、無事で良かった……」
「あー……いや、その、ごめん。母さん」
そりゃ夫と子供が危ない目に遭ったなんてすっ飛んでくるよなと考えつつ、リオンはされるがままになっていた。
「あの、ダンブルドア先生。石にされた人たちは……」
「既にマンドレイクによる治療は済んでおる。全員無事じゃよ。とりあえずジニーとリオンは至急医務室に行くと良いじゃろう」
「いえ、俺は大丈夫ですのでジニーだけを……」
「貴方も行くに決まってるでしょう!!」
自分は大丈夫なのでジニーだけを医務室に行かせるよう進言したリオンだったが、エレインが鬼の形相でそれを否定する。
「じゃあ僕たちは先に戻ってようか」
「だな。あ、リオン。この事ダフネも知ってっから帰ったら覚悟しといた方がいいぞ」
「は?……ちょっ、おい待て!マーク、ランス説明を……おーい!!」
ランスとマークが去り際に残した爆弾発言にリオンが戦慄している間に、ハリーはダンブルドア達に今回の事件の真相を語っていた。
「回復して何よりじゃのうレックス」
「ご迷惑をお掛けしましたダンブルドア先生……」
事件解決から一日経って、無事全快したレックスはダンブルドアの下を訪れていた。
「あの日記の管理をもっとしっかりしていればと悔やむばかりです。そろそろ引退とか考えるべきですかね?」
「恐ろしいことを口にするのう。君ほどの闇祓いはそうおらぬ。」
互いに紅茶を飲みながら会話する。レックスのジョークとも本気とも取れる発言にダンブルドアは苦笑していた。
「この日記、お主はどう見る?」
ダンブルドアは懐から穴の空いた日記を取り出す。
「とてつもない忌避感があります。それにとても高度な魔法がいくつも厳重に掛けられていましたので何かあるのではと疑っていましたが……」
「儂はこれを分霊箱ではないかと思っておる」
「…分霊箱…」
ダンブルドアが出した単語にしばらく考え込むような仕草をするレックスだったが、やがてダンブルドアの目を見る。
「これが分霊箱だとして……なぜホグワーツに?」
「ルシウスがジネヴラ・ウィーズリーの鞄に忍ばせたようじゃ。ルシウスはこうなると分かっていなかったようじゃがな」
元凶がルシウスであることにレックスは深いため息を吐く。
「なぜルシウスがそんなものを……ということに関しては生前のヴォルデモートが渡していたのでしょうね。それに、そんな大事なものを奴がルシウスにおいそれと渡す筈がない。となれば」
「分霊箱は複数あると考えた方が良いじゃろう。それならばあやつのあの霞のような姿にも納得がいく。ゲラートでさえ行わなかった禁忌を彼奴は行ったのじゃ」
「問題は分霊箱がどれだけ作られているか分からない…ということですね」
改めてヴォルデモートの規格外さを思い知らされることとなった。
「とりあえず闇祓いに戻ったらこの件に関して共有しておきます。外部から探れることもあるかもしれません」
「頼んだぞレックス」
これが始まりでしかないのだと二人は分かっていた。そして魔法界の未来のために自分が為すべきことも、同時に理解したのかもしれない。
◆ ◆ ◆
学期末のテストが無くなったことでホグワーツはお祭り騒ぎとなった。
生徒達は一足早い夏休みの気分で遊び呆ける者が殆どだった。
「リオン、ここにいたのね」
「ん?」
中庭でボーっとしていると後ろから声が掛けられる。振り向けばダフネがそこに立っていた。
「隣、良いかしら」
「勿論」
ダフネが隣に座り込む。そしてお互い何をするでもなく無言で空を見上げていた。
「……無茶、したわね」
空を見上げていたダフネが溢す。しかし怒っているというわけではなく、心配するような声音だった。
「あぁ。まぁハリーの方が無茶したしな……なんて言うつもりはないさ。確かに俺は無茶をした。ジニーに取り憑いていた例のあの人を煽って磔の呪文まで喰らったんだ。そりゃ怒るよな」
「怒っている訳じゃ……いえ、怒ってるわね。でもそれ以上に無茶をした貴方のことが心配だったっていうのが大きいかしら」
「そうか」
その会話を最後に、ただ時間が過ぎていった。
そしてあっという間に二年目は終わりを告げた。
二年目、完!!
最後の方がぐだった気がしないでもないですがそこはそれ。
次回からアズカバンの囚人編へ移行します!
その前に閑話を挟むかは今のところ未定です