【本編完結】ハリー・ポッターと何も知らない転生者   作:シャケナベイベー

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飴と鞭と昔話

 腕の骨を折ったドラコをマダム・ポンフリーに預け、ハグリッドの小屋へ戻っていると途中で魔法生物飼育学を受けていた筈のメンバーと鉢合わせた。

 何があったのか聞いたところ、どうやらあの後完全に落ち込んでしまったハグリッドによって授業は終了。そのまま解散となったようだ。

 

 その夜。夕食の時間になっても戻らないハグリッドに心配の極致に達したハリー達三人組によって、何故か俺も一緒に小屋まで様子を見に行くこととなった。

 

「なぁ、本当に俺も行かなきゃ駄目なのか?別に三人だけでも」

「リオンならハグリッドを慰めるのも得意でしょ!」

 

 横暴すぎる。ハリーの言い分に頭を抱えつつもハグリッドが気がかりだったのは事実なので大人しく連行されることにした。

 そして小屋に到着し、ハリーが扉をノックする。「……入ってくれ」との言葉を聞き、中に入ると強いアルコールの匂いが鼻を刺激した。

 家主であるハグリッドからは強烈な酒の匂いが放たれ、足元にはバケツほどの大きさのジョッキが置かれていた。

 ハグリッドは俺達を見て目を丸くしたものの、よほど気落ちしているのか言葉を掛けることもなく項垂れた。

 

「こんばんはハグリッド。少しいいか?」

「リオンか……すまねぇ、お前さんに言ってもらったのにこんなことになっちまって……」

 

 ハグリッドは項垂れつつ蚊の鳴くような声で言うと、ハンカチで目元を縫う。

 

「ハグリッド、そんなことないよ。あれはマルフォイの自業自得だしハグリッドが責任を感じる必要なんて」

「確かに八割はドラコが原因かもしれない。でもな、ハグリッド。あえて厳しく言うが貴方の責任もあるんだぞ?」

 

 ハリーがハグリッドを慰めるように優しく声を掛けるのに被せるように俺も意見を述べる。

 そんな俺を三人が責めるような目で見てくる。たださえ落ち込んでるハグリッドをさらに追い詰めるような発言をしたから当然なのだろうが最後まで聞いてほしい。

 

「今日の授業で貴方がたくさんのヒッポグリフを連れてきた時、俺は凄いと思ったんだ。彼らを刺激すれば今回のドラコのようなことになる。なのにハグリッドはそんなヒッポグリフを鎖で繋いで皆に触れさせてあげられるほど懐かれてるんだなって感心したんだよ。それに怪我人を出してしまったけどあれはドラコの自業自得な部分が大きいしね」

 

 ハグリッドをこれ以上落ち込ませないために努めて優しく語り掛ける。

 効果があったのか目を赤くさせつつも涙は流さなくなっていた。

 

「ハグリッドはどうしてあんなにヒッポグリフを連れてきたんだ?」

「それは……皆あいつらを誤解しちょると思って、こいつらは怖くねぇって教えたかったんだ……」

 

 なるほど。ハグリッドらしい動物愛に溢れた理由だ。しかし、動物愛だけを重視していては教師として務まらないと教えなくては。

 

「確かにハグリッドは魔法界で危険とされている魔法生物とも心を通わせられている。でもそれだけじゃダメだ。ハグリッドだけが懐かれたから他の皆も同じ様に懐かれるなんてことはない。そういった違いを理解して、尚且つ生徒にも寄り添えるような授業をすればきっと評判もよくなるはずだ」

「そんなのどうやって……」

 

 よしよし、食いついたな。怪訝そうな顔を浮かべるハグリッドに俺は言葉を続ける。

 

「例えば今日のヒッポグリフ。怖くないってことを教えるなら十数頭も要らないよな?せいぜい2、3頭で足りる。そうすればハグリッドも全体を見ることが出来て何かあったときの対処もしやすくなるだろ?それにこの動物と触れあうにはどうしたらいいか、どこが危険でどのように気を付けるのか。そんなことをより詳しく説明することが出来たら良いと思わないか?」

「け、けど俺にそんなこと出来るかどうか……」

「そこは安心してほしい。俺も一緒に考えるし紙に書いて纏めれば見返しやすいし進めやすいはずさ……さてグリフィンドール三人組。ルールに厳しいけど生徒の安全を考えてくれる先生はだーれだ?」

 

 俺とハグリッドの成り行きを見守っていた三人に質問を投げる。

 突然質問されたハリー達はポカンとしつつも、顔を見合わせて「マクゴナガル先生」と答えた。

 

「そう正解!マクゴナガル先生だな」

「ねぇリオン。話が見えてこないのだけど、何故マクゴナガル先生が出てくるの?」

「そりゃ俺とハグリッドだけじゃ考えるのに時間掛かるし、それなら誰か頼った方が早いだろ」

 

 ハーマイオニーの疑問に答えると改めてハグリッドに向き直る。

 

「そんなわけでハグリッド。明日また来るよ。今日はもう遅いし、ハグリッドも酔いを醒ました方がいいだろ?」

「そ、そうだな……ありがとなリオン」

「お安い御用だよ」

 

 そう言ってハグリッドと話し終えると、三人組を促して小屋から出ていった。

 

 

 

 

「君ってビックリするほどスリザリンらしくないよな」

「よく言われるよ」

 

それぞれの寮に戻る途中で呆れ半分、感心半分の表情をしたロンからそんなことを言われ、複雑な気分になりつつもそう返した。

 

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 翌日。マクゴナガル先生を捕まえてハグリッドの小屋に来てもらうようお願いすると快く承諾してもらい、授業の終わった夕方ごろに来てもらうこととなった。

 

 そして夕方。

 

「失礼しますハグリッド」

「マクゴナガル先生、ようこそいらっしゃいました」

 

 扉をノックしたマクゴナガル先生をハグリッドが出迎える。

 マクゴナガル先生は近くにあったソファに腰掛け、俺とハグリッドを交互に見ると口を開いた。

 

「それで、私をここに呼んだ理由はなんでしょう?」

「マクゴナガル先生は昨日のハグリッドの授業で起きた事故についてご存知ですか?」

「もちろんです。昨夜、その事でハグリッドの下を訪れましたから」

 

 ハグリッドを見ると彼は首を縦に振る。

 

「それなら良かった。実はそのハグリッドの授業のことでお話があるんです」

「これを見ていただきてぇんです」

 

 マクゴナガル先生は俺とハグリッドがそれぞれ差し出した二枚の紙に目を通すと、驚いた表情で俺達を見た。

 

「これは……貴方達が?」

「ハグリッドは一人で考えたみたいですけど、俺のはマークやランス、ハリーにロンにハーマイオニー、ネビルやスーザン、アーニー達に手伝ってもらいました」

 

 マクゴナガル先生が手に持っている紙には『魔法生物飼育学の改善内容及び授業の主な段取り』と書かれている。

 いわば飼育学の計画書みたいなものだ。

 最初は俺一人でやっていたのだが、流石に無理があるので他の魔法生物飼育学を受けた皆を頼った次第だ。

 

「……まさかここまでするとは思っていませんでした。グリフィンドール、ハッフルパフ、レイブンクロー、スリザリンのそれぞれに五十点を与えましょう」

 

 穏やかな笑みを見せたマクゴナガル先生がそれぞれの寮に加点する。

 

「大変素晴らしい働きですアーデル。ここまで他寮と協力して物事に当たったスリザリン生は長い教師人生の中で初めて見たかもしれません」

「俺もリオンがいなけりゃここまで考えることが出来なかったかもしれん。ありがとうな」

 

 マクゴナガル先生とハグリッドが嬉しそうな顔で俺を見てくる。

 それにむず痒さを覚えながらもマクゴナガル先生に対して言葉を掛けた。

 

「それで、マクゴナガル先生。どうでしょう俺達が考えた案は」

「どうでしょうも何もありませんよ。これだけの働きを無かったことにするなどあり得ません」

「!じゃあ……!」

「えぇ。後程ダンブルドア校長にも進言してこの件に対する認可証を渡しましょう」

 

 小さくガッツポーズをしてハグリッドを肘で小突く。

 

「それでは私はこれで失礼します。アーデル、あまり遅くならないように」

 

 そう言ってマクゴナガル先生は小屋を後にした。俺達はそれを見送り、俺は改めてハグリッドに向き直る。

 

「多分ダンブルドア先生なら認可証をくれるとは思うけど、くれぐれも事故は起こさないでくれよ?」

「あぁ……マクゴナガル先生が後押ししてくだすったんだ。絶対にやりきってみせる」

 

 やる気に満ち溢れたハグリッドに満足した俺も小屋を後にした。

 

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 

「うん?リオンじゃないか」

「あ、フランクさん」

 

 小屋から寮に戻る途中、声を掛けられた。振り返ってみればそこにいたのはホグワーツを警備しているフランクさんだった。

 

「久しぶりだね。元気にしていたかい?」

「もちろんです。フランクさんもお元気そうで。闇祓いに復帰なされたんですね」

 

 フランクさんは闇祓いの制服である黒のインバネスコートを纏っていた。

 

「アリスさんとは一緒じゃないんですね」

「アリスとは別行動さ。ホグワーツは広いから手分けして見回った方が効率が良いからね」

 

 なるほど。確かにホグワーツを二人一緒に見回れば時間も掛かるが手分けすればその時間を短縮できるわけだ。

 

「そうだ。俺、フランクさんに聞きたいことがあったんですけど……」

「なんだい?」

「どうしてシリウス・ブラックは闇の帝王の側に付いたんでしょう?」

 

 フランクさんは俺の問い掛けに顔を険しくさせたものの少し考えてから口を開いた。

 

「僕はそこまでシリウスと話すことが多かった訳じゃない。それでもいいなら」

「構いません」

「……シリウスはジェームズととても仲が良かった。そんな二人にリーマスとピーターを加えた四人で悪戯仕掛人(マローダーズ)なんて名乗って様々な悪戯を仕掛けてはマクゴナガル先生に怒られるのをよく見かけたよ」

 

 そう語るフランクさんの顔はどこか遠くを見ているようで夕日に照らされているのもあってか不思議な感じだった。

 

「例のあの人が本格的に死喰い人と共に魔法界を襲ったときも彼らは断固として例のあの人と対立した。だからシリウスがジェームズとリリーを裏切ったなんて信じられなかったんだ」

「何があったんです?」

「例のあの人が居なくなって少しした時、闇祓いに一つの連絡があったんだ。連絡してきたのはピーターで「ジェームズとリリーを裏切ったのはシリウスだ。自分はもう助からないだろうから代わりにシリウスを捕まえてほしい。彼がこれ以上誰かを殺すのは見たくない」……そんなことを言ってね。そうして駆けつけてみたらそこにいたのは高笑いを上げるシリウスと指一本だけとなったピーター、そして大勢のマグルの……すまない、これは言うべきではなかったね」

 

 フランクさんが気を遣って話を止めてくれる。気にしていないと伝えながらも俺はあることを考えていた。

 

(どうしてピーター・ペティグリューは闇祓いに連絡出来たんだ?いや、シリウス・ブラックから逃げ回ってる時に連絡した?そして追い付かれたシリウス・ブラックに命を……)

 

「その時に、シリウスを捕まえたのがレックスでね」

「え?」

「あれ?知らなかったのかい?」

「初めて聞きましたけど……」

 

 父さんがシリウス・ブラックを捕まえたのか?初めて聞いたんだけど?

 

「その場には大勢闇祓いがいたから、勝ち目はないと悟ったのか彼は大人しく捕まってそのままアズカバン行きとなったんだ。でもレックスは最後まで信じたくは無かっただろうね。あの四人と深く関わっていたから尚更信じられなかったんだろう……いや、もしかしたらアイツは真犯人が別にいるのかもとすら思っていたのかもしれないな」

「そうだったんですね……あの、時間を取らせてしまってすみません」

「大丈夫さ。僕としても君とは話してみたいと思っていたからね」

 

 フランクさんに頭を下げると、彼も穏やかな声で話してきた。

 そうしてフランクさんに別れを告げると寮に戻るために歩き出した。

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