【本編完結】ハリー・ポッターと何も知らない転生者   作:シャケナベイベー

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ホグズミード・デート

 10月も下旬に突入し、ホグワーツに入学して三度目のハロウィーンが近付いてきた。

 しかし今日。ついにホグズミードへ行くことが出来るとあってか三年生以上の生徒たちは皆浮き足立っていた。

 

 

 

 そんな日の朝。

 ついにホグズミードへ行けるとあって興奮した様子のブレーズに叩き起こされた俺とセオドールは寝惚け眼のまま大広間へと向かう。

 玄関ホールに行くとグリフィンドール三人組と遭遇し、手を上げて挨拶をする──と俺を見つけた三人がすぐさま俺の両脇を掴んでグリフィンドールのテーブルへと連行していく。

 その様子を見ていたであろうセオドールとブレーズは、我関せずといったようにさっさとスリザリンのテーブルへ向かってしまった。薄情な奴らだ。

 

 そうしてグリフィンドールというスリザリンの俺を敵視している人達が多いであろう場所へと連れてこられ、ハリー達に朝食を食べるよう促される。

 正直俺を良く思っていないだろう生徒のいるところで朝食を取る気も無かったのだが、流石に何か食べないと不味いということで適当にトーストを手に取って胃に流し込んだ。

 

「で?俺を連行して何がしたいんだ?」

「連行だなんて失礼な。僕ら酷いことしてないぜ?」

「有無を言わさず連れてきたろうが」

 

 問い掛けるとロンからそんな言葉が飛び出してきたので一刀両断する。了承を得ずに連れてくるなど拉致同然だ。

 

「リオンはさ、ホグズミード行くの?」

「ん?あぁ。誰かを誘って回る予定………あ」

 

 ハリーの顔がみるみる暗くなっていく。ほぼ脊髄反射で答えてしまったからハリーがホグズミードに行くための許可証を貰えていないことを失念していた。

 

「い、いや!ハリーを虐める意図は無くてだな!」

「いや、いいよ。変なこと聞いてごめん」

 

 慌てて弁明しようとするとハリーは曖昧な笑みを浮かべて首を振る。

 よく耳を澄ませてみれば周りはホグズミードの話で盛り上がっていた。唯一ホグズミードへ行く許可を貰えなかったハリーからしてみればとても辛い状況だろう。

 そんな彼を俺の軽率な発言でさらに追い詰めてしまったことに胸を痛める。

 

「ほんとにごめん……でも、一年の辛抱だ。来年になればきっと許可証を貰えるはすだ」

 

 気休めにしかならないだろうが慰めの言葉を掛ける。それを聞いたハリーはほんの僅かに笑顔を見せたもののだいぶ無理をした笑顔であることは明白だった。

 よほどホグズミードへ行けないことが堪えている証拠だった。

 

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 

「マーク、ランス。ちょっといいか?」

 

 朝食を終えてしばらくすると廊下を歩いていた二人に声をかける。

 

「リオンか。どうしたんだよ?」

「今日のホグズミードなんだけど、一緒に回らないか?」

「あぁ。特に予定もなかったからだいじょ「おーいおいおい!ちょっ、わりぃリオン!マーク借りるな!」むぐっ」

 

 返事を返そうとしたマークの口を塞いだランスがマークを連れて離れていく。

 

 

 

「ぷはっ…!何するのさランス!」

「お前……お前な。ホグズミードだぞ?娯楽たっぷりの場所だぞ?」

「知ってるよ。一緒に回るならいいじゃないか。何が不満なんだよ」

「こういう時は俺ら以上の適任がいるだろうが!」

「え、一体誰───あ」

「気付いたか?そういうことだよ」

「考えたねランス!よし、そうと決まれば」

 

 

 

 何やら小声で話し込んでいた二人が顔を上げて、俺の方に戻ってくる。

 

「ごめんリオン!ランスに言われて思い出したんだけど僕ら別の用事があって行けそうにないんだ」

「あ、そうなのか?ならごめんな無理に誘ったみたいになっちゃって」

「いやいや問題ねぇよ。あと、俺らは行けないけどダフネとか誘ってみたらどうだ?」

「ダフネを?」

 

 二人が笑顔で提案してきた人物に目を丸くする。意外な人選という訳でもないがこの二人からそういうことを言われるとは予想外だった。

 

「……分かった。ならダフネを誘ってみるよ。元々誘おうかと思ってたし。ありがとうな」

 

 二人と別れて俺はダフネの下へと歩き出した。

 

 

 

「お膳立てとしては十分かな?お節介かもしれないけど」

「余計なお世話だって言われないことを祈るしかねぇさ」

 

 

 

 

 

 

「えーと……ダフネは……お、いた」

 

 ダフネを探してホグワーツを歩いていると中庭でベンチに座りながらアストリアと話すダフネが見えた。

 

「ダフネ!」

「え?……あらリオン。どうしたの?」

「今、いいか?」

 

 やって来た俺に気付いたダフネはベンチから立ち上がる素振りを見せたもののそれを制止して問い掛ける。

 

「えぇ。大丈夫よ……どうしたの?」

「あー……その……」

 

 いざ誘おうと口を開こうとすると、どうにも恥ずかしくなり言葉に出来ない。

 そして中々言い出そうとしない俺を見て段々心配そうな顔になったダフネが「どうしたの?」と声を掛けてくる。チラリとアストリアを見ると、俺の雰囲気から何かを察したのか小さくガッツポーズをしてきた。かわいい。

 

「ダフネ!!」

「きゃっ……!な、何?」

「ホグズミード!ホグズミード、良かったら一緒に行かないか?」

「え?」

 

 俺の提案にダフネは一瞬ポカンとした表情を見せると、すぐに笑い始めた。

 

「……笑うことないだろ」

「ふ、ふふふ……!ご、ごめんなさい…!だって何かあったのかと思ったのにホグズミードの誘いなんだもの…!!」

 

 むくれる俺を見てダフネは肩を揺らす。そうしてひとしきり笑ったダフネは「お誘い、喜んでお受けするわ」と了承してくれた。

 

「それで、どうするの?今から行く?」

「いや、ちょっと時間を空けてから行くよ。昼になったら玄関ホールで会おう」

「えぇ。楽しみにしてるわ」

 

 そう言って、俺は一度スリザリン寮に戻ることにした。

 

 

 

 

 

「ふぅ……」

「ね・ぇ・さ・ん♪」

「ひゃっ…!な、何?どうしたのアストリア?」

「どうしたの?じゃないわよ!デートよデート!まさかリオンさんから誘うなんて予想外だったけど好都合ね!」

「デ…ッ!?ち、違うわよ!ただホグズミードに一緒に行くだけ!!」

 

 リオンが去り、一息ついたダフネに満面の笑みで問い掛けるアストリアにダフネは顔を赤くしながらも反論する。

 

「それをデートって言うんじゃない!姉さん、帰ってきたら感想聞かせてね!」

「だから違うってばー!!」

 

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 

「ごめんなさいリオン!待たせちゃったわね」

 

 昼食を食べ終え、玄関ホールでダフネを待っていると俺を呼ぶ声がする。

 

「いや、俺もさっき来たところだからだいじょ……お」

 

 小走りで駆け寄ってくるダフネに言葉を返そうとしたところで思わず驚きの声を漏らしてしまう。

 最近は後ろでポニーテールにされていたダフネの金髪が一年生の時のようにストレートになっていたからだ。

 

「どうかしら?髪型を元に戻してみたのだけど……」

「久しぶりに見たなぁそれ。相変わらず似合ってるよ」

「そう?なら良かった」

 

 恥ずかしげな表情から一転して笑顔になったダフネに「早く行きましょう」と促され、ホグワーツを出た。

 

 

 

「リオンはホグズミードで行きたいお店とかあるの?」

「ゾンコの悪戯専門店と三本の箒に行ってみたいって考えてるよ。ダフネはどうだ?行きたい店とかはあるか?」

「良いわね三本の箒!私も一度行ってみたいって思ってたの。あとはハニーデュークスも気になるかな」

 

 ダフネの隣で歩きながらそんな他愛もない会話をする。

 そうしてしばらく歩くと、ついにホグズミードに到着した。

 

「着いたな、ホグズミード」

「そうね。……やっぱり人が多いわね」

「俺達みたいな三年生や上級生に加えて他の魔法使いの人もいるからな」

 

 辿り着いたホグズミードは多くの魔法使いで賑わっていた。はしゃぐ声、笑い合う声、叫び声などいろんな声が辺りから響いてくる。

 

「じゃあまずどこ行こうか?」

「ゾンコの悪戯専門店で良いと思うわ」

 

 ダフネの提案に頷き、俺達はゾンコの悪戯専門店へと歩を進めることにした。

 

 

 

 

「ここがゾンコか……」

「凄い人ね……」

 

 目的のゾンコの悪戯専門店に到着したのだが中は物凄い人でごった返しており、入店するのさえ一苦労といった有り様だった。

 

「さて、なに買おうかなー」

 

 内心のワクワクを声に出しながらも店内を散策する。

 何度か他の生徒とぶつかりそうになりながらもいくつか品物を購入してダフネの手を引くと店を出た。

 

「予想はしてたけど人が多いのなんの。もし夏に来ようもんならぶっ倒れること確実だぜ?」

「流石に夏場ならあそこまで混まないと思うわ。それより、何を買ったの?」

 

 ダフネが興味深そうに俺の手に持っている袋を見つめるので袋を顔の前に掲げた。

 

「『臭い玉』に『伸び耳』その他諸々。楽しい買い物になったよ」

「楽しめたようで何より。さぁ、次はハニーデュークスに行きましょう」

「了解。お嬢様」

 

 浮き足だって歩くダフネを追い掛けながら、ゾンコを後にした。

 

 

 ハニーデュークスにやって来た俺達はさっそく店内に入る。

 

「それで、何を買うんだ?」

「百味ビーンズでしょう?蛙チョコレートにアストリアから砂糖羽根ペンを頼まれてるからそれも買わなきゃ」

 

 ダフネが口に出した商品名に「思ったより一般的な奴を選ぶんだ……」と思いながら俺も手頃なお菓子を購入した。

 

 

 

 

「楽しめたか?ダフネ」

「えぇ。とっても」

 

 ハニーデュークスで大量のお菓子を購入し満足げなダフネと共に共通の行きたい店として挙げていた『三本の箒』を訪れると、バタービールを注文して近くのテーブルに腰掛けた。

 大ジョッキに並々と注がれたバタービールに口をつけると適度な甘さが口の中に広がった。

 

「それにしても、どうして私を誘ったの?カリアンやパーシヴァルを誘うかと思ったのに」

「あー、実は二人とも誘ったんだけど予定があったみたいでさ。そしたらダフネを誘ってみたら?って言われてな。元々君を誘う予定もあったから……ってところかな」

「ふーん……私が最初じゃなかったんだ……ふーーーん」

「……あ」

 

 俺の発言で不機嫌になったダフネがジョッキのバタービールを飲み干し、テーブルに勢い良く叩き付ける。

 

「や……あの、ダフネ……ダフネさん?」

「ええ、ええ。怒ってないわよ。私を最初に誘ってくれなかったんだーとか、二人は気軽に誘えたみたいなのになんで私の時はあんなに緊張してたのかなーって思ってるだけよ?」

「いや、それ怒って「は?」ごめんなさい!!」

 

 怖い怖い!顔は笑ってるけど目は笑ってない!

 

 

 その後、ホグズミードからホグワーツに戻るまで俺はダフネのご機嫌取りに尽力することとなった。

 

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 

「やぁ、お帰りリオン。ホグズミードは楽しめた?」

「マークか……いや大変だった」

「?」

 

 ホグワーツに戻り、中庭で寛いでいると顔に満面の笑みを浮かべたマークがやって来て隣に腰掛ける。

 そんなマークに俺はホグズミードの顛末を語った。

 

「はははははは!!そ、それでダフネが怒って機嫌を治そうとしてたんだ!」

「笑い事じゃないんだよ…まじで大変だった……まぁホグワーツに着く頃には理不尽に怒りすぎたって言ってくれたけどさ」

「なら良かったじゃないか。仲違いするようなことは無かったんだから」

 

 肩を落とす俺を慰めるマークだが未だニヤニヤと笑むその端正な顔は崩れていなかった。

 

「まぁ、もう一回くらい謝っておくよ」

「そっか。それじゃ頑張って。僕はこの話をランスにも共有しておくよ」

「鬼かお前」

「失礼な。魔法使いさ」

 

 そう言って俺はスリザリン寮へと歩いていった。

 

 

 

 

 

 

 

「あれ、ダフネ一人か?」

 

 合言葉を唱え、談話室に入るとそこには暖炉の前で本を読むダフネしか居なかった。

 

「あら。私一人だと何か悪いかしら?」

「えっ!?いや…そういう訳じゃ……!」

「ふふ、冗談よ。……座って。話したい事があるの」

 

 慌てる俺を見て笑ったダフネは隣のソファをポンポンと叩く。

 そのジェスチャーに従ってダフネの隣に座ると、しばらく無言の時間が流れる。

 

「……ねぇリオン」

「ん?」

「私は、貴方に会えて良かったと思ってるの。貴方に出会えなかったら、きっとこんな風に自分の意見を通すなんてことしなかったと思うから」

 

 そんな穏やかな声でダフネは語り始める。俺と出会えたことで自分に自信が持てたこと、俺のお陰で色んな人と関わりを持てたこと。

 そんな事を俺に語り、笑みを湛えながらこちらに身体ごと向き直る。

 

「それでリオン。私ね───」

 

 

 

「貴方のことが好きよ、リオン」

 

 

 

「…………んん?」

 

 たっぷり三十秒言葉の意味を呑み込むのに使い、それでも疑問が口をついて出る。

 

「えっと、なんで?」

「なんでもなにも貴方が好きだからよ」

「いやそうじゃなくてだね?俺を好きになる切っ掛けなんてあったか?」

「たくさんあるわ。教えてほしい?」

「………いや止めとく。なんか俺が恥ずかしさで死ぬ未来が見えた」

 

 別段、好意を持たれていたことが嬉しくない訳じゃない。素直に嬉しいし喜ばしくもある。

 それでもなぜダフネが俺を好きになったのかは理解が出来なかった。

 

 

 

 

「別に今すぐ答えを出してほしい訳じゃない。じっくり考えてから聞かせてちょうだい。少なくとも、私の気持ちは変わらないわ」

 

 言い終えるとダフネはさっさと部屋に戻ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「………俺の気持ち、か」




唐突に恋愛描写を差し込む作者は私です
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