【本編完結】ハリー・ポッターと何も知らない転生者   作:シャケナベイベー

30 / 118
少年の気持ち そして黒犬の強襲

 ダフネの告白から日が経ち、ハロウィーン当日。今日も俺はダンブルドア先生による閉心術の訓練を受けていた。

 

「ぜぇ……ぜぇ……」

「ここまでにしようかの」

 

 肩で息をする俺を見かねたダンブルドア先生の提案を受け、ふかふかのソファに腰掛けると用意された紅茶を口に含んだ。

 

「身に付いてきておる。これならば次から難易度を落としても良さそうじゃ」

「それは……ありがとうございます」

 

 穏やかな笑顔でそう語るダンブルドア先生に感謝しつつも、俺の心には未だモヤがかかっていた。

 

「ふむ……リオンよ、君はグリーングラス嬢との関係で悩んでいるね?」

「あっ……開心術ですか。……そう、ですね。俺は悩んでるんだと思います」

「この老いぼれで良ければいくらでも話を聞こう。口に出すことで晴れることもあるだろうて」

 

 先生の開心術で内心を見透かされた俺は隠していても意味が無いと思い、この前のダフネとの一件を話した。

 

「……ふむ。なるほどのう」

「ほら、俺って前世の年齢も含めれば精神年齢は三十を超えてるんですよ。だからと言っていいのか分からないんですがどうにも気後れしてしまって」

「難しい問題じゃ。しかしリオン。君がそこまで深く考える必要はない」

 

 先生は極めて穏やかな声で諭すように話す。

 

「今、君は生きておる。かつての君ではなく今ここにいるリオン・アーデルとしてじゃ。誰かを好きになることに年齢などないようなものじゃよ」

「……ダンブルドア先生は誰かを好きになったことが?」

「あるとも。しかし、愛とは異性だけで成り立つものではない。友達の愛、家族の愛、同性の愛……様々な愛の形がある。愛とはまっこと素晴らしき魔法じゃ」

「ダンブルドア先生は、その人を好きになったことを後悔していないんですか?」

「さて……後悔しておらぬのかと言われれば恐らく後悔だらけじゃろう。しかし後悔したとしてもいつかは前に進まねば」

「前に…進む…」

 

 どこか遠くを見つめるような目をしたダンブルドア先生が淡く微笑む。

 あぁ、けどそうか。そんなことだったんだ。

 

「ありがとうございますダンブルドア先生。モヤモヤが晴れた気がします」

「それは良かった。リオンよ、君は後悔のないようにの。……私は、後悔だらけだった」

「やっぱり、ダンブルドア先生も人間なんですね」

「……それはどういう意味かのう?」

 

 俺が口にした言葉にダンブルドア先生が首を傾げる。

 

「なんていうか、世間じゃ皆先生のことを今世紀最も偉大な魔法使いって言ってるじゃないですか。俺も最初はそう思ってましたし。でも今回の話を聞いて先生は偉大かも知れなくても、どこにでもいるような一人の人間なんだなって思ったんです」

 

 

 

 そう言って笑う少年の顔があまりにも眩しくて、老人は目を細めた。

 

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 そして夜。ハロウィーンの宴が始まった。

 どこのテーブルにもところ狭しと料理が並び、飲めや騒げやのどんちゃん騒ぎだ。

 

「ダフネから告白されたんだってな。すっかりその噂で持ちきりだ」

「ドラコか……一々報告しなくたって分かってるよ」

 

 かぼちゃジュースを飲んでいると、隣に座ってきたドラコが話し掛けてくる。

 ドラコお付きのクラップとゴイルは離れたところで食事をしているようでドラコ一人で俺に近付いてくるというのは初めてのことだった。

 

「それで、どうするんだ?」

「嬉しくはある。気持ちも日にちが経って少し整理が付いた。……返事を返そうかと思う」

「そうか」

 

 それを聞いたドラコは手元のかぼちゃジュースを飲み干す。

 

「……マルフォイ家とグリーングラス家は長い付き合いだ」

「……そうみたいだな」

 

 話の意図が見えず、ドラコの顔を眺める。向こうも見られていることに気付いたのか俺と目を合わせてきた。その目にはいつもと違い、ただただ真剣な光が宿っていた。

 

「幼い頃から彼女を知っているから言えるんだが、ダフネはあまり笑う事が無かった。笑う事があるとすれば妹のアストリアのことくらいだ。そんな彼女がお前と話すようになってからは格段に笑顔を見せることが多くなった」

 

 湯水のようにドラコの口から言葉が溢れてくる。その勢いに圧倒されつつも、真剣に耳を傾ける。

 

「カリアンの奴はそれが嬉しかったんだろう。お前とダフネの仲を取り持とうと色々やっていたようだからな」

「そうらしいな。あのホグズミードだってアイツらが計画したみたいだし」

 

 この前のホグズミードで俺にダフネを誘わせるよう提案したのはアストリアだと聞いた。

 しかし自分一人では大変だと悟った彼女は俺とダフネ、両方と深い関係があるマークを頼った。

 まぁ当の本人はそのことをうっかり忘れてしまい俺のホグズミードの誘いに了承しそうになっていたが、これまたアストリアから相談を受けていたランスのカバーによって事なきを得た。

 俺を誘導する役目はマーク(ミスをカバーする形でランス)、ダフネを誘導するのはアストリアと言ったように最初から仕組まれていたと三人から聞かされた。

 

「そうして自分の想いに気付いたダフネは君に打ち明けた」

「そうだな……今のところ先延ばしにしてるけど」

「答えないよりはマシな筈さ───リオン。これは僕の個人的な願いなんだが」

「うん?」

「どうかダフネの隣に居てあげてほしい」

 

 ドラコが座りながらも頭を下げた。それに驚いた様子の周りだが、俺も驚いている。

 プライドが高いはずのドラコが他人のために頭を下げるなんて考えられなかったからだ。

 

「ドラコ……お前……」

「余計なお世話なのは百も承知だ。だけどお願いだ……ダフネを受け入れてあげてほしい」

「……なんでお前がそこまでするんだ?俺とダフネを気にかけて何かあるのか?」

 

 ドラコがここまで俺達を気にする理由が分からず、困惑した表情で目の前の少年を見つめる。

 ドラコは少し俯きながら「さっきも言ったようにマルフォイ家とグリーングラス家は長い付き合いだ」と語り出した。

 

「両者とも聖28一族であることに加えて代々スリザリンの家系だから結び付きが強かったんだ。クラップやゴイル、パーキンソンにブルストロートにノットも同じだ」

「……ん?あれ、それだとカリアン家はどうなんだ?あそこスリザリンって訳じゃないだろ?」

「確かにそうだ。だけどカリアン家は王室直属の家系であったし、かつての戦争でどちらの陣営にも属することは無かった中立不可侵だ。あそこは昔からイギリス魔法界を支えている重要な柱。そこと仲良くすることは得することはあっても損することはない」

 

 なるほどと納得する。カリアン家はその家の在り方からどちらの陣営にも属さず、中立に判断を下す家だ。

 だからこそカリアン家とコネクションを持っておくことはそれだけで重要なアドバンテージとなる。

 カリアン家の庇護下であれば最低限の保証は約束されるからだ。まぁヴォルデモートなら最悪そんなこと関係なしに襲う可能性もあるが。

 

「ともかく。そんな風に付き合いのあった僕らなんだが一度僕とダフネを婚約させようっていう話が持ち上がってね」

「……へぇ?」

 

 思わず、低い声で聞き返してしまう。「あっ…!いや、違くてだな…!」と慌てるドラコを気にせずトーストを頬張り先を促した。

 

「その時は両親が決めたことだからと僕は従ったんだがダフネは反対してね。私は結婚するつもりはない、って一蹴されたんだ。今となってはそっちの方が良かったとも思うけど」

「だから俺に頼むのか?自分は断られたから?」

「そうじゃない。リオン、お前はダフネに寄り添う事が出来た。あまり笑う事が無かった彼女を笑顔にし、尊重した。そんなお前だから頼むんだ。幼馴染みとして」

 

 笑みを浮かべて語るドラコから顔を逸らし、頭の中で考える。

 ダフネは俺のことを好きだと言ってくれた。なら俺はどうなのだろう。前世という異端である俺はこの感情を恋愛と呼んで良いのだろうか。妹や子供に向けるような感情ではないのか。

 それでも、俺は嘘をつきたくはない。

 

「ダフネはじっくり考えてくれと言ったんだろう?こんな風に話した僕が言うのもなんだが今すぐに答えを出さなくていい」

「……大丈夫だ。気持ちはある程度固まった。近い内に答えを出すよ」

 

 笑顔でそう告げると、ドラコも微笑みを返しテーブルから離れていった。

 

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 パーティーも終わりを迎え、皆それぞれの寮へ戻っていると突如として大広間に集まるよう伝えられた。

 

 大広間に集まり何が何やらと顔を見合わせる。いつにも増して騒がしいグリフィンドールを見るにグリフィンドールで何かが起きたのだろうがそれが何故、生徒を集める理由になるのか考え付かなかった。

 

「教師全員で城内をくまなく捜索せねばならん」

 

 大広間の扉という扉をすべて閉めきり、壇上に立ったダンブルドア先生が語った。曰く、シリウス・ブラックがホグワーツに侵入しグリフィンドール寮の『太った婦人』をナイフで八つ裂きにしたと。

 それに驚愕したように大広間がマンドレイクの叫びもかくやと言ったような喧騒に包まれる。

 驚いているのは俺も同じだ。一体どうやってホグワーツを……それも外部をディメンターが、内部を闇祓いの精鋭に教師陣が溢れる場所を突破して侵入出来たのか。

 そもそも何故太った婦人を襲ったのか。目的はハリーなのだろうが彼もホグワーツ生であったのなら今日がハロウィーンであることは知っていたはず。…まぁ長い投獄生活の中で精神が狂った可能性もあるが。

 ───もしくは内部の人間が手引きしたか。

 

 

 

「ブラック、どうなるのかしらね?」

 

 その後、大広間の監視を監督生に任せ、教師陣は城内の捜索に乗り出した。

 そうして去り際にダンブルドア先生が出現させた何百とある布団を床に並べて就寝の準備をする。

 監督生のパーシー・ウィーズリーが寝るように声を張り上げているのも構わずにダフネが話し掛けてきた。(ちなみに何故かわざわざ俺の隣に布団を敷いていた。近くにいた生徒が満面の笑みで譲っていたのを見るに他寮の人間にも伝わっているのだろう。悲しきかな、ホグワーツの情報網)

 

「少なくとも城内に侵入していたのを誰も感知出来ていないのを見るに内部の人間が手引きしたか、あるいは何らかの抜け道やディメンターやフランクさん達の目を掻い潜る手段があるかだ」

「内部犯なんて、考えたくないわね」

「俺もさ。───けど、もしかしたら」

「リオン、何か言った?」

「いや、何でもない。おやすみ」

 

 ダフネは俺が聞こえないように呟いた内容を聞き返してきたが、それをはぐらかして完全に寝る体勢に入った。

 そんな俺を見てダフネも寝る気になったのか「おやすみなさい」と呟いて数秒後にはすぐ横から寝息が聞こえてきた。

 

「……寝るの早っ。こっちは緊張して眠れないってのに……まぁいいか」

 

 異性の隣で寝ることに疑問を持っていないダフネに呆れつつ(もしかしたら俺の事が好きだから。というのもあるのかもしれないが)、俺も仰向けになって先ほど言わなかった言葉を思い返していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(もしかしたらシリウス・ブラックは冤罪なんじゃないか、なんて。なんの根拠もない馬鹿みたいな考えだよな本当に)




リオン∶ドラコとダフネが婚約者になるかもしれなかったという事実にちょっと嫉妬する。自分の心に整理がついた。シリウスが冤罪なんじゃないかと考えた

ダンブルドア∶愛に悩む少年の後押しをした。彼なら自分のようにはならないだろうと思いながら

ドラコ∶迫真のアシスト。一応ドラコはリオンの事を友人と思ってる

マーク∶他人から自分の家について語られた人。アストリアから相談を受けて親友達のために尽力した

ランス∶アストリアからの頼みを忘れたマークをカバーした。これからはマークと一緒にリオンとダフネを後方理解者面しなから見守ってくんじゃないかな

アストリア∶姉のために一肌脱いだ子。家族思いの良い子

ダフネ∶想いを告げてからリオンに対し積極的になった。リオンの理性は死にかけ!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。