【本編完結】ハリー・ポッターと何も知らない転生者 作:シャケナベイベー
ついにと言うべきか待ちに待ったクリスマス休暇がやって来た。
この長期休みの間、家に帰る生徒や変わらずホグワーツに残る生徒もいた。といっても殆どの生徒が家に帰ったようだが。
俺はというとホグワーツに残り、閉心術を完璧なものにするべく奮闘していた。
「……どうでしょう?」
「完璧じゃよリオン。閉心術を見事に習得したようじゃ」
緊張した面持ちでダンブルドア先生に尋ねると穏やかな声で労いの言葉が返ってきた。
「おぉー……よぉし……!」
「これ程早く習得するとは驚きじゃ。君のひたむきさにスリザリンに十点を与えたいところじゃよ」
緊張の糸が切れたかのようにソファにどさりと座り込む。半年近くの期間を要したがこれで閉心術を扱うことが出来るだろう。
「……ん、ふわぁ……」
「おや、眠いのかね?」
「あぁいや、何だか最近眠れなくて……色々考えてたからですかね?」
「ならば少し横になりなさい。夕食の少し前になれば君を起こそうぞ」
「ホントですか?じゃ、遠慮なく……」
ソファで横になった瞬間、俺の意識は底深くへと沈んでいった。
◆ ◆ ◆
ソファで横になるリオンを見守っていたダンブルドアは彼がムクリと起き上がるのを見て「もういいのかね?」と声を掛けた。
「いやいや、これでもかなり眠った方ですよ?あ、それとも
起き上がった少年は笑みを浮かべながらダンブルドアと会話する。その笑みからはどこか先程の少年とは違う何かを感じさせた。
「いやいや、
エドワード」
その半月眼鏡の奥にある瞳を輝かせながらダンブルドアはリオンの事をそう呼ぶ。対して、エドワードと呼ばれた少年は否定するでも苦言を呈するでもなく、それが当然の事であるかのようにごく自然にしていた。
「それもそうか……お久しぶりです。ダンブルドア」
「久しぶりじゃのうエドワード。君と会話をするのは実に二十年振りかのう」
「俺が
殺されたとリオン───否、その内に宿るエドワード・アーデルは平然と口にした。
エドワードはソファから立ち上がると己の体のあちこちに手を翳し、「凄いですねこの子」と驚愕と歓喜が入り交じったような声で言った。
「才気に溢れている……貴方やトムには及びませんが潤沢な魔力にそれを活かせる才能、ホグワーツに入学した時点で失神呪文を覚えていた飲み込みの良さ、守護霊の呪文に閉心術といった高等呪文をこの歳で扱える天才性……少なくとも成長すれば十分強力な魔法使いになれますよ」
「……君はリオンを利用するつもりかね?」
「人聞きの悪い……それに貴方がそれを言いますか?フリーモントの孫を……ハリー・ポッターを奴を倒すために利用している貴方が。俺はこの子を護る。たとえリオンから拒絶されたとしてもこの子だけは護らなくては」
そう語るエドワードの目はどこか昏い目をしていた。
「それは茨の道じゃ。それにこの子は自ら危険に飛び込むことを厭わぬじゃろう」
「なればこそ力を付けさせなくては。奴に狙われた時、対抗できるだけの手札を持っておくことは悪いことではないでしょう?」
「分かっておる。しかし、それを選択するのはあの子自身じゃ。我々が関与していいものではないと知っておろう?」
「無論です。この子の人生はこの子だけのもの。どのような選択をするかはリオン次第。俺たちはその行く末を見守るだけです」
ソファに座り、杖をクルクルと弄びながらエドワードは語る。その目は先程と違い慈愛に満ちていた。
「しかし荒唐無稽な賭けにでたのう……そのロケットに自身の精神を移すとは」
「分霊箱から着想を得ましてね……とはいえ精神だけを切り離すつもりが魂の一部までひっぺがしてしまったようで。危うく本当に分霊箱になるところでしたよ」
「最初に閉心術の訓練をしたときに君の存在を知覚出来たがあのときは心底驚いたよ。まさかトムのように分霊箱を作ったのではないかと危惧したほどに」
そう。ダンブルドアはリオンに初めて開心術を使用したときにエドワードの存在を見抜いていたのだ。
「慌てて閉心術の訓練を始めたがこうして形になった。これで君の存在があやつに知られる心配も無いじゃろう」
「とはいえトム自身はリオンに……というかアーデルに執着しているようですしどのみち狙われることに変わりありませんが」
エドワードが心底呆れたようにため息を吐いた。
「しかしエドワードよ。こうして君が表に出てきたということは君自身も動くのかね?」
「いえ。基本的に俺は干渉するつもりはありませんよ。以前、リオンが服従の呪文に掛けられた際にそれをはね除けることはしましたがね。こうしてリオンの肉体の主導権を得て動けること自体が奇跡のようなものです」
「基本的に……ということは君が出てくる事態があるということかのう?」
「それこそ肉体を失ったトムが完全に蘇り、リオンを狙った場合とかですかね」
「君が直接戦うと?」
「当然。奴を止めるのは本来俺たちの世代が為さなければならなかったことです。それを下の世代に任せている現状は心苦しいものがあるのでね」
そう言って悲痛そうな顔で俯いたエドワードは、少しして顔を上げると改めてダンブルドアを見る。
「それに……気付いてますか?リオンは予知能力を開花させつつあります」
「───なんと」
「未だ漠然としか見れていないようですが、成長すればより鮮明に未来を見れる可能性があります」
「かつての君や───ゲラートのようにかね?」
「それはまだなんとも。しかし、この予知能力が目覚めたのは俺のロケットを受け取ってからの事ですから、少なからず影響を与えた可能性も否定できません」
それを聞いたダンブルドアは目を瞑り、深く思考の海に沈む。
リオンが目の前の少年やかつての友のように予知の力を目覚めさせつつある。
否、エドワードと
ならば隔世遺伝のような形で発現したとしても可笑しくはない。
「予言者としての能力を使いこなせればヴォルデモートの先を行く強大な手札となるかもしれない。まぁ、こればっかりは時を待つしかありませんね」
「しかし予言が為されたのはハリーのみじゃ。リオンは明言されておらぬ以上奴を倒すことは出来ぬ」
「確かに奴を倒すのは生き残った男の子の役目です。しかし、そこに至るまでの過程は別だ」
その言葉で察したらしいダンブルドアは穏やかな目とは違って悲しみの色を宿す。
「……それはあの子に恐ろしい道を歩ませることになる」
「貴方も同じだ。予言に基づいているとはいえハリー・ポッターを危険に晒している」
「分かっておる。しかし君のそれはあまりにも」
「未来ある若者を危険に晒した点で我々は同罪だ。ならばせめて彼らが笑い合える未来を作る。その為ならこの命も惜しくない……まぁ俺はとっくに死んでるんですが……」
苦々しい顔でエドワードが言う。それはかつつの親友を止められなかった責任感であり、孫を危険に晒さねばならない罪の意識でもあった。
「……っと。これ以上は限界か……ダンブルドア、まだ最善を掴み取れる余地は残っている。リオンのこと、くれぐれも頼みます」
そう言い残して、リオンの体がソファに倒れ込む。
「……最善か……この老いぼれにそれを選び取れる余裕があるのかどうか……」
◆ ◆ ◆
「リオン、そろそろ起きねば豪華な夕食が過ぎ去ってしまうよ」
「んん……ふわぁ、あ……あー、もうそんな時間か…」
先生の声で目を覚ますと、体を起こして軽く伸ばす。
「すみませんダンブルドア先生。ソファを占領しちゃって」
「構わぬよ。元よりソファを使っていいと言ったのは儂じゃからの」
ソファから離れ、校長室の扉へ向かう。すると「……リオンよ」とダンブルドア先生から呼び止められ振り返る。
先生はどこか言いづらそうにしていたが、やがて決心したのか重々しくその口を開いた。
「リオンよ、
「知ってますよ。ていうか、俺は俺らしく振る舞ってるつもりなんですけど……あれ、俺ひょっとして寝てる間になんかありました!?」
「いやいや。ただの老いぼれからの助言じゃよ。呼び止めてすまない。お腹一杯食べてきなさい」
【悲報】エドワード・アーデルさんの結婚相手、ゲラート・グリンデルバルドの娘だった。
これでリオン君の血縁にグリンデルバルドがエントリーしました。
明かされるの唐突?それは、そう…なんですが