【本編完結】ハリー・ポッターと何も知らない転生者 作:シャケナベイベー
ダフネ・グリーングラスという少女にとってリオン・アーデルという存在は不思議な存在であった。
アーデル家という聖二十八一族程でないにせよかなりの名門の出であるのにも関わらず、それを感じさせないほどに誰にでも気さくに接する親しみやすさや、スリザリンでありながら、多くのスリザリン生が持つ純血主義を全く持たない男の子。
それがダフネが思うリオンの人物像だった。
「少しいいかしら。リオン」
とある日、朝食も食べ終え大広間を出ようとした時にグリーングラスから声を掛けられた。
「いいけど、どうしたんだ?」
そう聞くと、誰にも聞かれたくないのだろうか辺りをキョロキョロと見回すと「ちょっと来て」と、俺の手を引いて歩き出す。
グリーングラスが突如として俺の手を引いた事に驚きの声やら黄色い歓声やらが上がるのもお構い無しに俺たちは大広間を出ていった。
「その──突然連れてきてしまってごめんなさい…」
「いや、謝らなくて良いんだけどな…」
人気の無い場所へとやって来た俺はグリーングラスの横に座り、彼女からの用件を聞くことにした。
「人気の無い場所ってことは誰にも聞かれたくない話なのか?」
「そういう訳じゃ、無いんだけど…」
グリーングラスは言いづらそうに顔を背けていたが、やがて決心したのか口を開く。
「色々と聞きたいことがあって…いいかしら?」
「大丈夫だけど…」
「ありがとう──その、リオンはドラコやカリアンをファーストネームで呼ぶじゃない?けど、私の事はファミリーネームで呼ぶから少し距離を感じてしまって…」
そういう事か。確かに俺はドラコやハリー、マークの事は名前で呼ぶがグリーングラスに関しては一貫してグリーングラスだ。と言っても未だファミリーネームで呼んでいるロングボトムがいるが(ロンに関しては兄弟もいるということでしばらくして名前で呼ぶようになった)
グリーングラスはその事で疎外感を感じていた…ということだろう。
「別に除け者にしてたとかじゃないんだ。俺が異性と距離感を詰めるのが苦手でさ、いきなり名前で呼ぶのも失礼かなって思ってずっとファミリーネームで呼んでたんだ。不安にさせたなら、ごめん」
そう話すと、グリーングラスは安堵したようにホッと息を吐く。
「良かった…嫌われてるんじゃないかって心配だったの。でもそうじゃないみたいで安心したわ」
「いやほんとごめん」
これに関しては俺は頭を下げるより他にないだろう。
そんな俺を見たグリーングラスは右手を差し出してきた。
「改めて。ダフネ・グリーングラスよ。ダフネと呼んでほしいわ」
「……おう。リオン・アーデルだ。改めてよろしくな、ダフネ」
お互い、晴れやかな顔で握手を交わした。
───そういえば、であるが。
この前、初めての飛行訓練を行ったのだがそこでハリーがとんでもない飛行の才能を持っていることに気が付いた。
あのクィディッチに並々ならぬ情熱を注いでいると噂のマクゴナガル先生が、まだ一年生のハリーをグリフィンドールのクィディッチチームに引き入れたというのだから、それは天才というべきだろう。
それに人一倍悔しがっていたのがドラコだ。
彼はコンパートメントでハリーに拒絶されたあの日からハリーに対してかなりの敵対意識を持ってしまっているようだ。
出来ることなら仲良くしてほしいもんである。
◆ ◆ ◆
十月三十一日、今日はハロウィーンの日だ。
ホグワーツの大広間のテーブルにはいつもより豪勢な食事がズラリと並び、生徒は食事と談笑を楽しみつつハロウィーンを満喫していた。
無論、俺もその一人だ。
スリザリンのテーブルにやって来たマークやランス、ダフネなども交えて和やかに食事をしていた。
「へぇー!リオンの父親は闇祓いなんだな!」
「あぁ。家では母さんに怒られてばっかりだけどね」
ランスが俺の両親について聞きたがったのでとりあえず父さんが闇祓いであるということを話しておいた。
……けど、ランスはマグル生まれだし闇祓いとか分かんないよなと思い、闇祓いについて説明しようとするとマークとダフネが闇祓いについて話してくれた。
「悪いな、マーク、ダフネ」
「お安いご用さ」
うん、持つべきは良き友人だなと考えているとダフネが「そういえば…」と、こちらに顔を向ける。
「リオンのお母様の旧姓ってプルウェットなのよね?」
「そうだよ。エレイン・プルウェット。ロンのお母さんの従妹に当たるかな?」
ちなみに母さんの両親──俺にとっての祖父母はイグネイシャス・プルウェットとルクレティア・プルウェット(旧姓∶ブラック)で、かの有名なシリウス・ブラックとは一応血縁関係にあるらしい。
ロンのお母さんと俺の母さんが従妹だというのは俺が両親宛に出した手紙の返事で知ったことだった。
「アーデル家とプルウェット家の息子がスリザリンなんてーって陰口も叩かれてたけどな。なんか知らない内に聞かなくなったけど」
何だったんだろうな、あれ。陰口を言ってたのは殆どがスリザリンの上級生だったが。
と、その時バタンッと大きな音を立てて大広間の中央の扉が勢いよく開かれ、そこからクィリナス・クィレル教授がやって来る。
クィレル教授は唯でさえ不健康そうな顔をこれでもかと言うほどに青白くしながらフラフラとダンブルドア先生が座るテーブルに近付いていき、静まり返った大広間で告げた。
「トロールが……地下に……お知らせしなくてはと……」
その言葉を最後にクィレル教授がバタンと倒れた。
一瞬の静寂の後、生徒から悲鳴やら興奮の叫びやらが混じってたちまち大広間は混乱状態になった。
「トロールってあのトロール?」
「俺の知ってるトロールとみんなが知ってるトロールがおんなじならそうなんだろうさ……ヤバくね?」
なんで!地下に!トロールが!いるんだよ!!
そんな俺の心の叫びと共にダンブルドア先生が立ち上がり、杖から紫色の爆竹を打ち出して生徒の騒ぎを収める。
立ち上がったダンブルドア先生は俺達を見回すと迅速に指示を飛ばした。
「監督生の諸君は急いで他の生徒を寮に案内するのじゃ。先生方は校内の見回りをお願いしたい」
その言葉を聞いた監督生達が大声で生徒達を寮へと帰す一方で先生方も慌てて大広間を飛び出していった。
俺も指示に従って移動していたのだが、ふと倒れていたはずのクィレル教授が起き上がるのが見えた。
起き上がったクィレル教授は先程までの青白い顔ではなく、どこか恐怖すら覚えるような顔で辺りを見回すと先生達が出ていった方とは別の扉──ダンブルドア先生が近付かないようにと警告していた西側の廊下に続く扉から出ていってしまった。
「あっ…!ちょっ…クィレル教授!!」
「えっ…?リオン!?何処に…!」
思わず飛び出した俺を見てマークが呼び止めてくるが構わずにクィレル教授の後を追う。
(さっきのクィレル教授の表情…嫌な予感がする…!)
クィレル教授を追って全力疾走すること数分。流石に息切れを起こして、階段の手すりに掴まる。
「クソッ…!足、早すぎんだろ…!」
だけど、クィレル教授の目的地であろう禁じられた廊下は目と鼻の先にある。
念の為に杖を握って歩を進める。すると──
「……!……!」
「ッ!悲鳴!?」
廊下の先から悲鳴らしき声が耳に届く。杖を握る手に自然と力が入り、ギュッと音がした。
物陰から様子を伺おうと顔を覗かせる。
「スネイプ教授!?」
目に飛び込んできたのは、顔が三つある巨大な四足歩行の犬のような生物がスネイプ教授を襲っている姿だった。
対してスネイプ教授は足を噛まれたのか血を流しており、その近くには探していたクィレル教授の姿もあった。
(クィレル教授は…なんだ?何かを探してるのか?)
仮にも同僚が襲われているというのに、クィレル教授はそちらには一切目もくれず、何かを探すようにしゃがんでいた。
先程の氷のように冷たいクィレル教授の顔が思い浮かぶ。
あの表情に今の行動……少なくとも、クィレル教授は何かしらのヤバイことを仕出かそうとしているのは理解できた。
しかし今はそんなことより襲われているスネイプ教授の助けになることが先だ。
杖先を真っ直ぐ三頭犬に向けると、呪文を唱えた。
「ステューピファイ!!」
杖から放たれた紅い閃光は真っ直ぐ三頭犬の三つある頭の内の一つに当たり、その巨体を昏倒させた。
「よっし!」
思わずガッツポーズをする。この呪文は杖を貰ったその日に父さんから「覚えておくと便利だぞ」と教わった呪文の一つだった。
……何故か母さんは呆れていたが。
「アーデル!?」
「ア……アーデル君……」
スネイプ教授とクィレル教授が現れた俺を見て驚いた表情をする。そりゃそうか。
「すみません…クィレル教授が立ち入り禁止の方角に走っていくのが見えたもので…呼び戻そうと声を掛けたんですが聞こえていなかったようで。それでスネイプ教授が襲われているところを見て勝手に体が動いてしまいました…ご迷惑でしたでしょうか?」
嘘は言っていない。声を掛けてはいないがクィレル教授を追ってきたし、勝手に体が動いたわけでもないがスネイプ教授を助けようと呪文を使った。事実である。
「それより…この生物はどうしますか?」
「…廊下の奥に押し込めておくとしよう」
そう言ってスネイプ教授が杖を振るうと、三頭犬の巨体が独りでに浮き上がり、禁じられた廊下の奥へと押し込められていった。
「それよりアーデル。君は早く寮に戻りたまえ。我輩も自分の寮から点を取り上げたくは無いのでね」
「そうですか…分かりました」
グリフィンドールからは滅茶苦茶引いといてよく言うよ。とは口に出さず、二人に頭を下げて背中を向ける──と、そうそう忘れてた。
「そういえばクィレル教授。先程禁じられた廊下でなにやら探し物をしてたみたいですけど、お探しの物は見つかったんですか?」
「えっ……あ、あぁ……み、見つかったとも……」
「ほう。差し支えなければ我輩にも見せては頂けませんかな?先程の生物より大事なものとなると我輩としても興味をそそられましてな」
驚いたことにスネイプ教授もクィレル教授に詰め寄っていた。
「貴様ら……ッ!い、いえ……二人が気にするほど大したものでは…あ、ありませんよ……そ、それでは……」
そう言うとクィレル教授は足早に立ち去っていった。
「怪しいですね」
「怪しいな」
去っていったクィレル教授の方角を眺めつつ、二人して同じことを呟く。
その事に気付いたスネイプ教授が一瞬だけ嫌そうな顔を俺に向けたものの、すぐに元の表情に戻った。
「さて、君はいい加減寮に帰りたまえ。何度も言うが──」
「自分の寮から点を取り上げたくはない、ですよね?分かってますよ」
「……ならばよろしい」
その言葉を最後に、俺はスリザリン寮へ戻っていった。
戻ってきた俺を見て、泣きそうになっていたダフネには悪いことをしたなと思いました。まる。
皆さんのハリポタで好きな呪文は何ですか?自分はエクスペリアームスです。