【本編完結】ハリー・ポッターと何も知らない転生者   作:シャケナベイベー

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なんか筆が乗ったので二話目を投稿します


確かな幸せを

「う~~む……ちょっと油断したかなぁ?」

 

 目を覚ましたリオンが最初に見た光景は一面真っ白な世界と黒に黄色の混じりあったハッフルパフのローブを着たリオンより少し背の高い少年がリオンを見て首をかしげている姿だった。

 

「あ、君いま『どうせなら目が覚めて初めて見る顔はダフネが良かった』って考えてる?いや~、青春してるね~?」

「いや、お前誰だよ」

 

 恐らく歳は同じくらいだろう少年はリオンの心を見透かしたように語り、ウンウンと頷く。それに思わずリオンも素でツッコミを入れてしまう。

 というかなんだ。別に目が覚めて一番初めに見るのがダフネの顔であることくらい良いだろう。恋人なんだからなどと考えつつ、リオンは立ち上がって一面白しかない世界を見回す。

 

「お?何々どうした?」

「いや、ここはどこだ?俺、さっきまでホグワーツにいたはずなんだけど……」

「あぁ。そのこと」

 

 少年はリオンの疑問に納得したように頷くと後ろで腕を組み、リオンの周りをゆったりと歩く。

 

「まぁ、ここは簡単に言えば生と死の狭間をさ迷う人間が訪れる場所……なんてことはなくて君の精神世界だよ」

「……俺の……精神世界?」

 

 何を言ってるんだこいつはと言わんばかりの顔で少年を見つめるリオン。

 

「まぁ信じられないのも無理はないよ。けどまぁ、そういうものだと思ってくれればいい。……で、何で君がそんな場所にいるのかと言うと俺が引っ張りこんだからだね」

「お前が?」

 

 少年の言葉に怪訝な顔をするリオン。そんな反応は予想していたのか少年は笑みを絶やすことなく話を続ける。

 

「そう。君……あの、セクタム・センプラだっけ?その呪文を喰らって意識を失ったんだよ。いずれ目が覚めるかもだけど、その間に君と話しておきたいと思ったからこうして引っ張りこんだわけ」

「……あぁ。そういえばそんな呪文喰らったっけ」

 

 ペティグリューが唱えた呪文がそんなのだったっけなとリオンは直前の記憶を掘り起こす。

 

「あの呪文一体何なんだよ。全身にすげぇ激痛が走ったんどけど?」

「さぁ?少なくとも俺の時代にはなかったものだしなぁ……分かることはあの呪文は闇の魔術であること。その開発者は相当イカれてるのかもしれないってことだけさ。闇の魔術の誕生経緯なんて、大抵負の感情を爆発させた結果か狂気に満ちた好奇心に従った結果なんだろうしね」

 

 そう語る少年の目には何が映っているのだろうか。しばらく沈黙が流れるがリオンが思い出したように「あっ!」と声を上げた。

 

「ん?」

「てか、ハリー達大丈夫か!?あそこにはディメンターや狼人間になったルーピン先生だって居たし……!!」

「とりあえず君は自分の心配をした方が良いんじゃない……?とりあえず、あの場にいた彼らは大丈夫だと思うよ。君の意識が途絶える寸前にレックス含めた数人の闇祓いが来てたしどうにでもなるんじゃないかな?」

 

 一番の重傷者であるはずの自分を差し置いて他人の心配をするリオンに呆れつつ、少年は大丈夫だろうと口にする。そこには計り知れないほどの信頼の情が含まれていた。

 

「そう……なのか?はぁ~……なら良かった……」

「……なんだか君ってホントにスリザリンらしくないよな。俺の知ってるスリザリンなんて他者のことは見下すわマグル生まれを差別するわ自分達が一番だと信じて疑ってない奴ばっかだったんだけどなぁ?時代の違いか?」

「……いや、俺のところも似たような奴はいるよ。だけど皆が皆そうじゃない。他人を思いやって行動する奴だっているよ」

 

 リオンの態度に首をかしげる少年にリオンは顔を綻ばせながら語る。

 

「……まぁアーデル家からスリザリンが出るってのも珍しい───というか初めてだしな。アーデルって基本ハッフルパフかレイブンクローだし……だからこういうスリザリン生がいるのも不思議じゃないのかも」

「え、そうなの?」

 

 少年が語った内容に目を丸くするリオン。

 

「そうだよ?……ていうか本来なら君はハッフルパフに組み分けされるはずだったんだよ。だけど“君”はスリザリンだったってことか」

 

 その瞬間、リオンは心臓を鷲掴みにされたような息苦しい感覚に陥った。

 

「……な、にを……」

「あれ?ひょっとして怖がらせてる俺?ごめんごめん!そんなつもりじゃないんだよ!別にスリザリンになったことを糾弾するつもりなんてないしただ純粋にそう思っただけなんだって!」

 

 掠れた声で呟いたリオンに怖がらせたかと悟った少年は必死に弁明する。そのお陰もあってかリオンは落ち着きを取り戻した。

 

「……“俺”のこと、知ってるんだな」

「そりゃあ君の中にいるわけだし」

「え?俺の中にいるの?」

「そうだけど?じゃなきゃ君の精神世界なのに俺が君を引っ張ってこれるわけないでしょ」

 

 そうかもしれないがそんなことは初めて聞いたのだ。驚愕くらいするだろう。

 

「……いつから?」

「さぁ、いつからだろうねぇ?」

「いや怖っ。体の中にもう一人いることなんか気付かなかったんだけど!?」

「そりゃ気付かれないようにしてたしね。まぁそれは置いといて「いや置いとけないが?」いいんだよ置いとけって。……まぁ俺が■■■■という人間のことを知ってるのは俺が君の中にいて君の記憶を閲覧してるからでした!君の感じたこと、見ている光景は俺にも共有されます!」

「いや普通に嫌なんだが」

 

 少年の言動にドン引きするリオン。まぁこればかりは仕方ないだろう。

 

「まぁここで喚いたって仕方無い。慣れだよ慣れ」

「慣れたくないなぁ……」

 

 あっけらかんと言う少年に遠い目となるリオン。

 

「とにかく!君がスリザリンになったのは■■■■という人物の影響もある。組み分け帽子はそれを汲んで君をスリザリンへ組み分けした。スリザリンの特徴は狡猾であり、野心家であり、蛇のように危険をすり抜ける俊敏さ、そして身内を大事にする心。これらの要素をかつての君は多分に含んでいた。だからこそ組み分け帽子は君をスリザリンに選んだのさ」

「えぇ……でも皆からスリザリン生らしくないって言われるんだけど?」

「それは君がリオン・アーデルだからだ。さっきも言っただろ?リオンは本来ならハッフルパフに組み分けされるはずだったと。君がリオン・アーデルとして生きることを選んだ時点で君の意識は■■■■のものではなくリオン・アーデルとして切り替わった。それらの行動理念は今の君に強く影響している。だから君はスリザリンでは少し浮いてるんだよ」

 

 長々と語る少年は真剣な眼差しでリオンを見据える。

 

「だけど、だからといってこれまでの君の行動がリオン・アーデルの理念によるものかと言えばそうではない。君は確かに君として存在している。……まぁそんなに難しい話じゃない。君は君のまま自由に振る舞えばいい」

「自由に……」

「そうそう。張り詰めすぎても体に毒だ。適度に力を抜いていこうぜ?───と。そろそろか」

 

 白い空間にガラスのヒビのような亀裂が走る。

 

「これは……?」

「君の意識が戻ろうとしてるんだ。安心していい」

「そっか……あ、そうだ。名前聞いてなかったよな?名前何て言うんだ?」

 

 徐々にひび割れていく空間でリオンは名も知らぬ少年に尋ねる。しかし、少年は困ったように笑うだけだった。

 

「教えてやりたいのは山々なんだけど……悪い。今は言えない。けど、いつかちゃんと伝えるよ」

「そっか……なら、そのいつかを楽しみにしてるよ」

「あぁ。楽しみにしてろ───と、そうだったそうだった。次に目が覚めたとき、この場所の出来事は覚えてないから」

「───なんて?」

 

 そんな衝撃的な発言を最後に世界は完全に砕けた。

 

 

 

 

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

 

 

 何か、暖かい物に触れている気がする。

 徐々に鮮明になっていく意識の中で左手に違和感を感じたリオンはその正体を掴むべくギュッと握り返した。

 それが人の手だと気付いた瞬間、リオンはゆっくりと瞼を上げた。

 

「───知らない天井じゃなかった」

 

 リオンが見たのは白い天井。残念ながら初めて見る天井ではなく一年に一回はお世話になっている気がする医務室の天井だったが。

 次に違和感を感じた左手に目をやるとその正体を掴むことが出来た。

 手を、握られていた。無事を祈るように固く、だけど包み込むように優しく両の手でしっかりと。

 その手の主である金髪の少女は目を開けたリオンに驚いたように目を見開いたものの徐々にその青い瞳に涙が溜まっていく。

 

「……ダフネ?」

「……また、無茶ばっかりしてぇ……!!この、バカぁぁっ……!!」

 

 きっと、叱ろうとしたのだろう。さんざん忠告したのに無茶ばかりする(恋人)を。手まで振り上げてその頬にキツい一発をお見舞いしようとして───出来なかった。

 先に、涙が零れてきた。耐えるつもりだった。目の前の分らず屋の頬をはたいてそこから思いっきり抱き締めてやろうと考えていた。無事で良かったと。

 そこまで考えていたのに、出来なかった。それは殴る気力も失くすほど愛想を尽かしただとか、誰かがやって来たから止めたとかではない。そもそもたとえ誰かが来たとしてもダフネは目の前の馬鹿に一発お見舞いしてやるつもりだった。

 では何故止めたのか?───答えは単純だった。

 

 

 

 

 

 

 その自分を見つめるリオンの瞳があまりにも愛に溢れていたから。

 愛おしくて堪らないと、蜂蜜のように甘く蕩けた瞳で自分を見つめてくるものだから振り上げた手を下ろしてしまった。

 

「───ダフネ」

 

 彼がもう一度自分の名前を呼ぶ。もう、我慢できなかった。

 彼の無防備な胸に自分の全身を以て飛び込む。

 「ぐえっ」と奇妙な声を漏らした彼の体がベッドに倒れ込む。しかしそんな状況でも自分を傷付けさせないように支えながら倒れたのだ。うん、好き。私のリオンは世界一だ。

 そんなことを考えながらダフネは倒れたリオンの胸に自分の額をグリグリと押し付ける。殴れない代わりの精一杯のお叱りだ。甘んじて受け入れるべきだろう。

 

「イタタタッ……!な、なぁダフネ?そんなことするとマダム・ポンフリーが来る──「マダム・ポンフリーなら今は席を外しているわ」いや、だとしても怪我人に対する仕打ちとしては中々に酷では」

 

 尚も言い募る彼に頬を膨らませる。何よりも大切な恋人を悲しませておいてまだそんなことを言うかと頬を引っ張る。

 痛い痛いと呟く彼を無視して今度は頬に手を添える。

 

「大事な大事な恋人を悲しませたのにごめんなさいの一つもしない悪い口はこれかしら?」

「いや、あのダフネ?ここ学校───んむっ!」

 

 なんだか物凄くどうでもいいことを言ったリオンの口をダフネの口が塞ぐ。

 数秒続けたところで離れ、間髪入れずにまた唇を重ねる。それを三度、四度と繰り返し、五度目に抵抗しようとしたリオンの両手をベッドに置いて自分の手を重ねて指を絡ませる。

 今度は先程までと違い、長く唇を重ねる。蛇のようにして指を絡ませ、絶対に離さないと行動で示している。

 

「ぷはっ……!」

「げほっ……げほっ……!ダ、ダフネ……お前……」

 

 ようやく唇を離したダフネと違ってリオンは急激に酸素を取り込んだことで思わず咳き込む。

 そんなリオンを見下ろしたダフネは唇を離した時に出来た銀の糸を掬って口にし、妖麗な笑みを見せる。

 実に淑女らしくないはしたない行為だと分かっていても今のダフネには関係のないことだった。

 何せ何よりも愛しくて大好きな彼との逢瀬だ。邪魔される謂れは無いし、邪魔する奴がいるなら全力で追い出す。それくらいの気迫を今のダフネは手にしていた。

 

「……お前らしくないな。こんなことするなんて」

「あら、大好きな恋人相手なのだからこれくらいは普通じゃないかしら?」

「時と場合ってもんがなぁ、あるんじゃないかなぁ?」

 

 とはいうリオンも別段この行いに不満があるわけでもなく、ダフネの積極性に驚きはしたもののそれだけだった。

 つまるところリオンにとってもウェルカムである。

 

 そしてもう一度深くキスしようとしたところで───

 

 

 

「ダフネー!リオンの様子はどうだー?」

「果物とか持ってきたよ」

「姉さん、リオンさんどう?」

 

「「あっ」」

 

 タイミングが悪く、マークとランス、アストリアといったいつものメンバーがカーテンを開けてやって来てしまい、顔をほぼゼロ距離まで近付けた二人の姿を見ることとなった。

 その後、マダム・ポンフリーに追い出されるまで三人による追及にリオンとダフネは追われることになるのだが、それはまた別のお話。

 

 

 

 

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

 

 

 翌日。無事医務室を退院出来たリオンはハリー達から聞いた話に従ってリーマスの研究室を訪れていた。

 ノックして扉を開け、中に入る。

 中ではリーマスが鼻唄を歌いながら杖で様々な物を鞄に詰め込んでいた。

 

「やぁリオン。いらっしゃい」

「こんにちはルーピン先生。今、お時間よろしいですか?」

「勿論だとも。さぁ座って座って」

 

 リーマスに促され、リオンはソファに座る。沈み込むソファの感触がリオンは気に入っていた。

 そして対面にリーマスが腰掛けると静かに口を開いた。

 

「……教職を辞すると聞きました」

「……そうだね。私が狼人間であることが学校中に知れ渡った以上、こうなるのは目に見えていたよ」

「……先生はこれまで沢山の事を教えてくれました。他の皆にもそれは伝わっているはずです」

 

 朗らかに言うリーマスだが、やはりどこか無理をしているようにリオンには感じられた。

 

「ありがとう。……だけど、私が狼人間であることは事実だし、なによりそれを生徒の皆が許容してくれたとしても彼らの親御さんがそれを許さないだろう。それに私自身がこういったことには慣れているのさ」

「……やるせないですね」

「仕方のないことさ。未だ狼人間へ恐怖を抱く人間は多い。君のような人が例外な程さ」

 

 そこまでいってリーマスは荷造りを終えた鞄を手繰り寄せる。

 

「もう行くんですか?」

「あぁ。長く留まるわけにもいかないからね……ありがとうリオン。君のお陰で私は変われた気がするよ」

「こちらこそありがとうございました。いずれまたどこかで会いましょう。それまで、どうかお元気で」

 

 そう言って二人は握手を交わした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『───ピーター・ペティグリュー逮捕!十二年前の真実!』

 

 その日の日刊予言者新聞の見出しはそんな一文がデカデカと掲載されていた。

 内容としては十二年前のポッター夫妻の襲撃事件の密告者がシリウス・ブラックではなくピーター・ペティグリューであったというもの。

 これを受けて魔法省はピーター・ペティグリューのアズカバン送りを決定すると同時にシリウス・ブラックの今までの冤罪であった罪状の取り消し、及び賠償金をシリウス・ブラックに譲渡した。さらに魔法大臣のコーネリウス・ファッジ、魔法省魔法法執行部部長のアメリア・ボーンズ、闇祓い局局長のルーファス・スクリムジョールらがシリウス・ブラックの下を訪れ深々と頭を下げて謝罪したそうだ。

 

 

 うん、内容としては俺がハリーから聞いた情報の殆どが載っていた。

 俺がペティグリューの呪文によって意識を失った後、フランクさんの連絡を受けてホグワーツにやって来た父さん率いる闇祓いの精鋭がペティグリューを捕らえて魔法省に連行し、さらにはディメンターの撃退と狼人間となったルーピン先生の無力化までやってくれたのだから闇祓い様々である。

 その後、目が覚めたスネイプ教授が血だらけの俺を見て治療し医務室まで運んでくれたようだ。ここについては後でお礼を言っておいた。本人は少し嫌そうだったが。

 それにだ、ディメンター撃退にはハリーも噛んでいたらしく、ハリーも守護霊を出して追い払っていたらしい。さすがはハリーだ。

 

「あ、居たリオン!」

「ん?」

 

 コンパートメントでそんな考え事をしながら百味ビーンズを食べて鼻くそ味とゴキブリ味に当たって悶絶しているマークとランスを眺めていたら突然俺を呼ぶ声が響いた───まぁ言うまでもなくハリー達三人組だ。

 彼らはどこか嬉しそうにしてその手に一枚の紙を手に持っていた。

 

「それは?」

「シリウスからの手紙!僕ら宛とリオン宛にあったんだ!」

 

 俺の疑問にハリーが興奮ぎみに答える。これからしばらくシリウスさんと一緒に過ごせるからか妙にテンションの高いハリーに苦笑しつつ手紙を開封する。

 俺以外の全員も気になるのか側に寄って来る。そして手紙を開いて中に目を通した。

 

 

『親愛なるリオンへ

 君とはあまり話せていなかったものだからこうして手紙を書かせてもらった。まず、ピーターが申し訳ない事をした。アイツの友人であった人間として謝罪させてほしい。君に怪我を負わせてしまいすまなかった。

 君は問題なく元気にしていると聞いて胸を撫で下ろしたよ。それと、これはレックスにも言ったことなんだが改めて言わせてほしい。

 

 

 私を信じてくれて、ありがとう。

 

 追伸

 もしルクレティアのところに行くことがあったら俺は元気にしていると伝えておいてくれ』

 

「シリウスさん、意外と元気そうだな」

 

 そんな事を呟き、手紙をポケットに仕舞う。もうすぐでキングス・クロス駅に到着する。

 また一年が過ぎ、そして新たな物語が始まろうとしていた。




これにてアズカバンの囚人編完結です!長かった!
そして次回から炎のゴブレッド編です。やっとお辞儀様に会えるよ、やったね!

そして今話の冒頭でリオンと話していた人物、いや~誰なんでしょうね~?
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