【本編完結】ハリー・ポッターと何も知らない転生者   作:シャケナベイベー

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今回はリオンの父親であるレックス視点でのお話となります。


前半はちょいシリアス……ちょっとね

※この世界の魔法省は有能度合いが原作より高いです。ファッジとかきれいなファッジです。


贖罪  それでも前へ

魔法省にある食堂。そこで黒のスーツに黒のインバネスコートを羽織った男が食事をしていた。

 

「やぁレックス。相席してもいいかい?」

 

そんな男───レックス・アーデルに声がかかる。手を止め、顔を上げればそこにいたのは同僚であるキングズリー・シャックルボルトだった。

 

「キングズリーか。勿論いいとも。一人では味気ないしね」

「ありがたい。殆どの場所が埋まっていてね」

 

そう言ってキングズリーはレックスの正面に座り、早速パイを胃に流し込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば。もう入学したんだったかな、リオンは」

 

しばらく無言で食事をしていた二人だったが、食事が一段落したキングズリーがそんなことを問いかけた。

 

「あぁ。入学したよ。あの子はスリザリンに組分けされたようだ」

「スリザリンに……それは、大丈夫か?昨今のスリザリンは色々と問題が多いが……」

「私としても心配ではある。あるが、ホグワーツにいる間はどうにもできない。もし辛いことがあるのなら帰ってきたときに聞いてみるさ」

 

そう語るレックスの顔はとても真剣であり、息子への愛情が滲み出ていた。

 

「そういうお前はどうなんだキングズリー?」

「どうとは?」

「結婚だよ。妻子を持たないのかと聞いてるんだ」

 

レックスがキングズリーに問いかける。

キングズリーは間違いなく純血とされる聖二十八一族のシャックルボルト家の一人息子だ。

もし彼が結婚しないのらば、シャックルボルト家は断絶となるだろう。

 

「私としてはそれでも構わないと思ってるんだ」

「結婚しなくてもいいと?」

「あぁ。……私は、きっと怖いのだろう。妻と子を守れないのが」

 

その言葉に、思わず唇を噛む。

あぁ、そうだ。キングズリーは知っているのだ、子供を守れず死んでいった者達のことを。

見せしめとして子供を先に殺されて、その後でゆっくりと時間をかけて殺される。

死喰い人がとある家族に行った行為だ。その悲惨さを知っているからこそ、キングズリーは怖いのだろう。

それをされて自分は耐えられるのだろうかと。

 

 

「彼らが──マーリンとエドガーがそうだった。あの行いで二人は殺された。どれだけ、苦しかっただろう。どれだけ、悲しかっただろう。どれだけ、助けたかっただろう。そう考えると、私は結婚しようとは思わなくなるのだ」

 

 

顔を覆ったキングズリーを見る。

キングズリーの気持ちが分からないわけではない。寧ろ、レックスという男にとってエドガー・ボーンズとマーリン・マッキノンは関わりの深い人物だった。

それ故に二人が死んだときのレックスの怒りは凄まじいものだった。

それこそ『許されざる呪文』を使おうと考えるまでには。

 

 

「そうか……悪いな、変な事を聞いた」

「いや、構わないさ。とはいえ湿っぽくなってしまったか」

 

 

 

 

「あぁ、良かった。まだ居たわね二人とも」

 

二人してしんみりした空気を醸し出していたところによく響くテノール声が聞こえた。

視線を向ければ、短い白髪を持つ女性が二人の方向へ歩いてきた。

 

「ボーンズ先輩じゃないですか。一体何のご用で?」

「学生時代の呼び方に戻っているわよレックス。ボーンズ“部長”と呼ぶように。用件としてはルーファスとファッジ大臣が二人を呼んできてほしいと」

 

用件を尋ねたレックスにピシャリと言い放った魔法法執行部部長、アメリア・ボーンズはやって来た目的を簡潔に話す。

 

「ファッジ大臣とスクリムジョール局長が?何故です?」

「疑問は後!早く立つ!」

 

その言葉にレックスとキングズリーは急いで立ち上がり、ズンズン先へと進むアメリアの後を追った。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆  ◆  ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁキングズリー。私達何かやらかしたか?」

「何もしていないだろう。……強いて言えばドローレスに冷ややかな態度を取ったぐらいだろうか」

「あれはアッチが悪い。入ってきたばっかりの新人をイビってたんだから冷ややかな態度にもなるさ」

 

アメリアの後ろを歩きながら、二人はヒソヒソと会話する。

話しながら、二人の脳内には良い歳して全身ピンクコーデのガマガエルと見間違う女の姿が浮かんだが即座に脳内に浮かんだ姿をオブリビエイトする。

こんなときにまでその姿を想像などしたくない。

 

「ルーファス、ファッジ大臣。二人を連れてきました」

「ご苦労。入ってくれ」

 

扉の前でアメリアが声を掛けると、中から渋い男の声が聞こえた。

アメリアは「失礼します」と断りを入れて扉を開けると、早く入れと言わんばかりの視線をレックスとキングズリーに向ける。

視線を受けた二人が足早に入室すると同時、扉が閉められた。

 

「来たか二人とも。まぁ、適当に座ってくれ」

「……失礼します」

 

スーツに身を包んだ男性──闇祓い局局長・ルーファス・スクリムジョールがやって来た二人に座るよう促す。

二人が着席したことを確認し、ルーファスが口火を切った。

 

「二人に来てもらったのは他でもない。来年のホグワーツの闇の魔術に対する防衛術の教師に関することで話があるのだ」

「防衛術の?ついに候補者が0とかですか?」

 

ルーファスの内容にレックスが訝しみながらも自身の予想を口にする。

それに答えたのはルーファスではなく、ルーファスの横に座る現魔法大臣・コーネリウス・ファッジだった。

 

「いや、候補者はいたのだ。数多くな」

 

そう言って、アメリアが多数の資料を渡してくる。

渡された資料に軽く目を通したレックスとキングズリーは思わず頭を抱えた。

 

「……最近までアズカバン送りになってた魔法使いに、マグルに呪いをかけるやら諸々の罪でマホウトコロを追われた日本人に、過去死喰い人をやってた馬鹿が候補って……流石にこんなの認められませんよ」

「だろうね。そしてその中で唯一まともな候補者がいるにはいたのだが──」

「ギルテロイ・ロックハート…現在闇祓いでマークしている魔法使いですね。忘却術を使って様々な悪事をしている証拠が出揃っている事から近々逮捕に踏み切るという話も持ち上がっていますが」

 

あまりにもあんまりにな人選にレックスが苦言を呈し、苦笑したファッジがとある資料を見せるも、これまた色々と問題のある人物な為にあのキングズリーでさえ溜め息を吐いた。

 

「そうだ。それ故に理事会の方でも問題となっていてな。何とかしろと親愛なるルシウス・マルフォイから頼まれたのでこうして集まって貰ったのだ」

「ルシウスめ…余計な仕事を回してくるなぁ!」

 

レックスの脳内に、あの異常に世渡りの上手い金髪の魔法使いが浮かぶ。

てかそもそもこういうのは理事会で解決しろよ闇祓い(俺達)にまで回してくんじゃねぇと、心の中で吐き捨てていると「と言う訳で…」とファッジが続ける。

 

「まぁ、我々としても未来ある若者達にとってこんな役に立たない──失礼、問題のある者達をホグワーツの教師として雇うわけにはいかないと内々で候補者を募ったのだ、募ったのだが──」

「立候補したのがドローレス・アンブリッジただ一人という有り様ね」

「チェンジで」

 

アメリアの口からその名前が出た瞬間、反射的にレックスは却下の意思を表明した。当然である。

 

 

「あの女が教師?あんな奴から学ぶことなど何もないと思いますがね。これならまだこのリストに載ってる連中の方が有意義な授業を行えるでしょう。それにアンブリッジが教師になるくらいならマンドレイクの叫び声を子守唄にして眠る方が万倍もマシです」

 

 

レックスはツラツラと如何にアンブリッジが無能で人を苛立たせる天才であるかということを捲し立てていく。

その様子にファッジとキングズリーは苦笑し、ルーファスは何度も頷き、アメリアは呆れながらも諌めるような事はしなかった。

もはやアンブリッジの人望の無さはマーリン一等勲章ものである。

 

「──と、すみません。長々と鬱憤を晴らすような真似をしてしまいました」

「いやいや。構わないよ。私としても色々と彼女に思うところはあるわけだしね」

 

辛いよね。そうですね…とレックスとファッジはお互いに慰め合う。哀れドローレス・アンブリッジ。

 

「と、このように散々たる結果だった為、我々三人としては君達の内のどちらかを来年度の防衛術の教師として理事会に推薦したいと思っているのだ」

「私はレックスを推薦します」

「キングズリー???」

 

あまりにも早い推薦。レックスの頭の中で宇宙猫が浮かんだ。

 

「私自身は教師には向かないでしょう。反対、レックスは子供が今年ホグワーツに入学したとあって生徒の相手も出来ますし、教えることにも向いています。どうでしょう?」

「どうでしょうってキングズリー、お前な──」

「なるほど…確かにレックスは新人の闇祓いの教育係として目を見張るものがあった。実際彼に教えて貰った者達は、その多くが大成している」

「えぇ。教えるという点においてレックス以上の適任は居ないと思います」

「ふむ、では理事会にはそう推薦しておこう」

 

なんかトントン拍子で話が進んでいく。俺の意見は?

 

「ちょ、ちょっと待ってください。私は一言も──」

「ではドローレスやロックハートが教師として赴任してもいいと?」

 

反対意見は述べる前に封殺された。確かに自分が立候補しなければ問題のある奴らしか残らないので実質断るという選択肢は無いも同然なのである。

 

「わ、分かりました。思うところが無いわけではありませんが納得はしました」

「うむ、ありがとうアーデル。これでホグワーツの生徒達にもより良い未来の選択肢が与えられることだろう」

 

大袈裟である。

 

「ふむ──となるとこの話はキングズリーに回した方が良いか……キングズリー」

「はい、何でしょう?」

 

ルーファスがキングズリーに声を掛ける。

 

「実は急用で日本の魔法省へ出向かなくてはいけなくなってな。それ故、私が不在の間の局長代理として動いてもらいたいのだ」

「謹んでお受けいたします」

「頼んだぞ」

 

一瞬で決まった。となるとキングズリーが局長となるわけか…とレックスはコーヒーを飲みながら考える。

 

「所で急用というのは?」

「日本の各地でグリンデルバルドの信者を名乗るイギリスの魔法使いが暴れたようでな。殆どが制圧されているのだが未だ逃亡している魔法使いも居るため、その救援に向かうことになった。元々は我々イギリス魔法省が担当する案件だ。迷惑をかけてしまったお詫びとして我々も協力を要請し、許可されたので出向くというわけだ」

「グリンデルバルドの信者……ですか。未だにその爪跡は残っていると…」

「例のあの人が現れるまでは最強の闇の魔法使いと恐れられた人物よ。彼がヌルメンガードに収容された今でも彼の悲願を果たそうと暗躍する魔法使いも少なくないわ」

 

滅茶苦茶傍迷惑だ。大人しくしててくれ。

 

「さて、とりあえず用件はこれで終わりかな。教師の件は追ってボーンズ女史を通して理事会から伝わるだろう」

「分かりました」

 

こうして、五人の話し合いは終わりを迎えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

「しかし、私が教師とは…人生何が起きるか分からないな」

 

話し合いを終え、キングズリーと別れたレックスは魔法省をブラブラと散歩していた。

 

「いや、まだ決まったわけではないし、別の誰かが候補として上がる可能性も「油断大敵!!」うぉわっ!?」

 

独り言を呟いていたレックスの背後から大声が聞こえた。

肩を跳ねさせ、勢いよく振り返るとそこには馴染みの人物が隣に一人の女性を伴って立っていた。

 

「ムーディ先生!?」

 

アラスター・ムーディ。別名マッドアイ・ムーディとも呼ばれる片目が義眼の恐ろしげな風貌をした老練の魔法使いはしっかりとした足取りでレックスの方に歩いてきた。

 

「久しぶりだなアーデル。息災か?」

「お久しぶりですムーディ先生。先生こそお変わりありませんか?」

「儂はいつも通りだ」

 

かつての上司の変わらずな姿を見てレックスの顔に笑みが浮かぶ。

ふと、ムーディの横に立つ女性の姿がレックスの目に留まった。

 

「……お子さんですか?」

「あぁ、こやつは──」

「初めまして、ニンファドーラ・トンクスと言います。名前があまり好きではないのでトンクスと呼んでください」

 

ピンクの髪をした女性が頭を下げる。その時、彼女の髪の色が黄色に変わった。

 

「七変化か」

「はい。生まれつきの能力なんです」

「そりゃまた珍しい。変身術はだいぶ楽だったんじゃないか?」

「苦労することはありませんでしたね」

 

そう言って笑顔をみせるトンクスにレックスも笑顔になる。

 

「トンクスは儂の秘蔵っ子なのだ。こやつはドジでな。七変化のお陰で変身術は満点だったのだが隠密が危うく落ちるところだった。とはいえ才能もあるからな。こうして儂が預かることになったのだ」

「ムーディ先生直々とは……大丈夫かい?辛くなったら言うんだよ」

 

ムーディが直々に鍛えると知って、レックスは極めて優しい声音でトンクスに話しかける。

ムーディ先生の鍛え方はスパルタなんて言葉が生易しく感じるくらいだ。

危険な魔法生物の巣に放り込まれたり、ムーディ先生率いる闇祓いの精鋭に対して一人で向かってこいと言われたり──キングズリーやフランクやアリスと共に地獄を見たものである。

そのお陰で今こうしていられるのも事実なのだが。

 

「アハハ、大丈夫ですよ。私も生半可な覚悟で闇祓いになった訳じゃないので」

「……そうか。頑張れよ」

 

若く、未来ある才能を激励する。こういう奴はきっとどんな困難にも立ち向かえる強さを備えるだろう事をレックスは良く知っていた。

 

「トンクス。そろそろ行くぞ。ではなレックス」

「ちょっ…!待ってくださいよムーディ先生!そ、それではまた!アイタッ!」

「えぇ……」

 

トンクスがかけ出した瞬間、躓いて転んだ。なるほど、天性のドジかもしれないなとレックスは去っていく二人を見て思う。

 

 

 

 

 

「なぁエドガー、マーリン、フランク、アリス。俺はさ、今こんなにも満ち足りてるんだ。だから……見守っててくれよ」

 

もう言葉を交わすことも出来ない友人達に向けて呟く。

もう、俺は大丈夫だ。




ちょっとした人物紹介

エドガー・ボーンズ
不死鳥の騎士団創立メンバーの一人で、レックスのホグワーツ入学初日で仲良くなった親友の一人。グリフィンドール所属。
ベラトリックスやドロホフなどの上位死喰い人の襲撃を受け戦死。
我が子と妻を先に殺され、それでも死喰い人に立ち向かい、襲撃してきた内の三割を倒したもののドロホフによって片足と片腕を抉られ、更に磔の呪文を食らった上で死の呪文によって死亡した。

マーリン・マッキノン
不死鳥の騎士団創立メンバーの一人で、レックスとは幼馴染みに当たる。レックスと同じくレイブンクロー所属。
幼い頃、レックスに好意を抱いていたが結局想いを打ち明けることはなく死亡した。
夫と共に子供を守るために戦うもベラトリックスによって夫と子供を殺され、トラバースによって自身も死亡した。
そして、その死体を慰み物としてトラバースに使われそうになるものの駆けつけたレックスが失神呪文を六発ぶち当てた為、その尊厳を汚されることはなかった。

レックスの死喰い人絶許リスト
殿堂入り∶ヴォルデモート、ベラトリックス
殺意マシマシ∶ドロホフ、トラバース、クラウチJr.、ロジエール
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