【本編完結】ハリー・ポッターと何も知らない転生者   作:シャケナベイベー

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友情に綻びが生まれる

「街の外は吸魂鬼だらけだな」

「多分、死喰い人達が放ったんでしょうね」

 

 ハーマイオニーと二人、街の近くにある森の陰から様子を伺う。街の内部には入っていないがそれなりの数の吸魂鬼が辺りを彷徨いている。

 

「ハリーとロンが戻ってきたら直ぐに移動しよう」

 

 そう言って彼らの帰りを待つ事数十分。髪と衣服を濡らしたハリーとロンが帰ってきた。

 

「……なんだかいけないことをした気分だ」

「お金は置いていったろう? マグルのお金はよく分からないけどさ」

「とりあえず足りるくらいには置いてきたけどね」

 

 濡れた髪と衣服を乾かしながら買い物を済ませた二人は『検知不可能拡大呪文』を掛けたバッグから卵やパン、肉に野菜。缶詰もあって戦果は上々。これにはハーマイオニーも「二人とも流石だわ!」と喜び、ロンがニヤけた。

 

「念の為に近くの川から魚も頂戴してきた」

「それ食べれる魚?」

「川魚だからな。イケるイケる」

 

 リオンが魚を手に持って見せびらかせば他の三人からは懐疑的な目で見られた。そんな視線も気にせず、リオンは「人数分の魚は確保してあるぞ。塩焼きも良いし、何だったら多分刺身だって作れる」と誇らしげに言った。

 

「刺身って……確か日本の料理だよね? 魚を捌いて生のまま食べるっていう」

「マジかよ正気かリオン!? マグルのことはよく知らないけど魚を生のまま食べるって!?」

「日本人は毒のあるフグですら生のまま食べるんだ。なら俺らだってイケるさ」

「貴方のその日本への強い愛はどこから来るのかしら……」

 

 そりゃ元々は日本人だし……なんて言えるわけ無いので「日本への強い憧れがあるんだ」とだけ言ってはぐらかした。

 ホグワーツに来たばかりの頃は卒業旅行で日本に行きたいとかも考えていたのだが。もはや叶わぬ望みだろうか。

 

 

 

 そして吸魂鬼の目から逃れる為、四人は深い森の中を突き進んでいく。分霊箱であるスリザリンのロケットは交代で首に掛けつつ、リオンの『愛護の指輪』の力で分霊箱の邪な魔力を抑えたりもしていた。

 先程の食事でロンはお腹いっぱいになり機嫌が良く、ハリーは静かでハーマイオニーは俯いていた。

 

「とりあえずテントは建てたし、休息としようか」

 

 リオンの一声で三人もそれぞれ動き出す。リオンもテントの中に椅子を出現させてそこに座り、しばらく手をつけていなかった『終の書』を取り出した。

 

 パラパラと書を捲り、一文字ずつ解読していく。

 

「『悪霊の火、使い方を誤れば己すら殺しうる地獄の火』……闇の呪文解説か。こっちは──」

 

 

 ──多くの罪を成してしまった我が一族。けれどいつの日かこの書が正しき人の手に渡ることを、我ウィヌス・ゴーントは願う。

 

 

 軽く息を呑んだ。ここに来て、初めてゴーント家の魔法使いの手記を解読出来たからだ。指で文字をなぞり、その語りを追った。

 

 

 ──始まりは穏やかであった筈だ。父祖のサラザールも、その娘のリインも決してこのような在り方を望んでいた訳ではないはずだ。これを伝えようにも、いずれその枝の先でゴーントは破滅を迎えるだろう。

 我が二人の娘、ゴームレイスとリーニャにはこの事は伝えない。あの子達の根深い確執はもはや私ですら修復不可能だ……あぁ、動けぬこの身体が恨めしい。父として何もしてやれぬとは……。

 

 

 そこまで解読したところで、水音と足音が聞こえた。数は五人ほどか。ハリーたちもそれに気付いたのか顔を上げたが唇に指を当てて黙っているようジェスチャーした。

 段々と近付いてくる足音。話し声が聞こえ、それを捉えることに神経を研ぎ澄ませた。

 

「それで、テッドはどうして?」

「マグル生まれでね。妻は純血だし、私だけ家を離れたんだ。その途中でディーンと出会ったのさ」

 

 ハリーとロンが息を呑み、ハーマイオニーが手で口を覆った。そしてリオン達が近くにいることも知らず、彼らの会話は弾む。

 

「僕は生まれを確かめようがなくて……友達を頼ろうにも巻き込んでしまうかもしれないし。それが嫌でこうして旅に出てるんだ。ダークさんは?」

「私は一時期魔法省に捕らえられていたのだが、『不真面目な』闇祓いが拘束をうっかり緩くしていたようでね。抜け出してきたのさ」

「魔法使いの中にも話の分かる連中がいるとは。それに比べて上が腐っていると気付かぬ愚か者どもは……」

 

 最後に聞こえたのは小鬼の声だ。なにやら憤慨しているようだ。

 

「若い魔法使い、君はグリフィンドール生と聞いた。ならば剣のことは知っているだろう?」

「グリフィンドールの剣のこと?あれは校長室に飾られてて……」

「スネイプがグリンゴッツに移したと聞いたが」

 

 別の小鬼の言葉にディーンとダークが返すとクツクツと小鬼たちが可笑しそうに笑った。

 

「あれはよく出来た偽物ですよ。本物の剣の所在は未だ知れず。校長室にあるのは昔にグリフィンドール生だったアーデル家の魔女ととある高名な錬金術師によって鍛えられた写しだ」

 

 その言葉を最後に彼らが遠ざかっていく。そして完全に聞こえなくなった頃、リオンはハーマイオニーの方を向いた。

 

「ハーマイオニー、フィニアスの肖像画を」

「え? ……え、ええ。分かったわ」

 

 リオンの言葉に困惑した様子のハーマイオニーだが、直ぐ様鞄から一枚の肖像画を取り出す。

 

「ええい乱暴に扱うな! 穢れた血の女め、全く気に食わん……」

「お久しぶりですフィニアス様」

「なんだ貴様かアーデル。何の用だ私を呼び出して」

「グリフィンドールの剣の在処についてダンブルドアから何か聞いていませんか? 写しではなく本物の方を」

 

 リオンはフィニアスの肖像画に尋ねる。あの剣は真のグリフィンドール生にしか組み分け帽子から引き抜けない仕組みだが、ダンブルドアのことだ。どこかしらに隠していてもおかしくはないだろう。

 

「さて知らんなぁ。写しはスネイプがグリンゴッツに送ったと聞くし……まぁ移送の前に剣を奪おうと校長室に忍び込んだ馬鹿共が居たが。ロングボトムの倅だとか、赤毛のウィーズリーの女とか、頭のネジが2本ほど飛んでいそうなレイブンクローの女だとか……」

「ジニーが?」

「その声はウィーズリー家の末息子だな。全くけしからん! そもそもお前たちウィーズリー家と来たら百年前のあの時も……くそ、頭痛が……奴らは森へ行かされたぞ。校長室への侵入だと言うのにスネイプの甘さときたら!」

 

 本気で辛そうだ。肖像画の癖して更年期だろうか?とりあえずしっかり聞き出そうとリオンは改めてフィニアスの肖像画を持ち上げる。

 

「時間が無いんだフィニアス。ダンブルドアは何か言ってなかったか?」

「………最後に本物が使われたのはダンブルドアめが指輪を壊した時だ。その時に言っていたな──『血は究極の媒介。術を編み、壊すもの。故に分霊箱を壊すのに最適だ』とな」

 

 思わず四人とも顔を見合わせた。つまり、本物のグリフィンドールの剣であれば分霊箱を壊すことが可能なのだ。

 

 

 

「で。その肝心の剣が見当たらないわけだが」

 

 四人で焚き火を囲み、早速話し合う。だがどうにもロンの機嫌が悪い。ジニーが危ないからだろうか。

 

「でもどうしてグリフィンドールの剣で分霊箱を? ダンブルドアが使ったから?」

「それならダンブルドアが積極的に動くんじゃないかしら」

 

 ハリーとハーマイオニーが議論する横でリオンは頭を回転させた。ダンブルドア自身に分霊箱を破壊する能力とかは無い。ならグリフィンドールの剣自身に何かしらの特性があると考えていいだろう。

 

 分霊箱はヴォルデモート本体の魂を除けば六つ。マールヴォロの指輪、スリザリンのロケット、リドルの日記、推定レイブンクローの髪飾りとハッフルパフのカップ、そして蛇のナギニ。

 その内で壊されているのは指輪と日記。奪取しているのがロケット。指輪はダンブルドアがグリフィンドールの剣によって壊し、日記はハリーがバジリスクの牙で───

 

「………あ」

 

 そこまで考えて声を出す。ハリーとハーマイオニーがどうしたのかとこちらを向き、リオンは思わずハリーの肩を掴んだ。

 

「ハリー!! お前、二年生の頃に秘密の部屋でバジリスクを倒してたよな!」

「え? う、うん倒したけど……でもそれが今となんの関係が」

「どうやって倒した!?」

「どうやってって、フォークスがバジリスクの両目を潰してくれたから、グリフィンドールの剣で貫いて……あれ?」

 

 そこまで言って、ハリーも気付いたのだろう。目が徐々に見開かれていく。

 

「ねぇ、どうしたの? 何か分かったの?」

「ハーマイオニー。ハリーは二年生のときに分霊箱だったリドルの日記を壊してるんだ。バジリスクの牙で」

「うん。それでそのバジリスクを殺したのがグリフィンドールの剣なんだ。つまり──」

 

 ハーマイオニーが目を見開いて手で口を覆った。

 

「バジリスクの毒が付いていた剣だから壊せた……?」

「恐らくな。そしてダンブルドアが指輪を破壊したのは六年生になる直前……つまり剣にバジリスクの毒の力が付与されたと考えて良いだろう。たとえバジリスクの毒と言えど四年近くその効果が残るとは考え辛いからな」

 

 光明が見えてきたのだろう。ハリーとハーマイオニーの顔が明るくなる。そしてもう一度声をかけようとしたところで徐ろにロンが立ち上がって叫んだ。

 

「それでどこにあるかも分からない剣を探すわけだ。浮浪者みたいに!」

「落ち着いてロン」

 

 吐き捨てるように言ったロンの肩をハリーが掴む。

 

「なんだ、またジニーに探させるのか?また森に行かせるのか。冗談じゃないぞ!」

「座るんだロン。今の君、正気じゃないよ」

「正気でいられるもんか。一体いつまで続ければ良いんだ? そうしてる間にも死喰い人達が迫ってきてるじゃないか。剣がどこにあるのかさえ見当もつかないんだぞ!」

「ダンブルドアは剣を奪われないように偽物とすり替えてどこかに隠したんだ」

「なんでダンブルドアから全部聞いてないんだ」

「聞いたさ。漏れはなかった。もし先生が生きていればきっとロケットだって壊せてた」

「でも出来なかったじゃないか」

 

 ロンが皮肉を浴びせるとハリーの顔色が変わる。リオンはため息を吐いた。

 

「そんなに駄々をこねるなら出てってくれて構わない。大好きなママのところに帰れよ!」

「そうしてやるさ」

 

 ロンがロケットを草地に叩きつけて背を向けて歩いていく。ハーマイオニーは凍りついたように動かず、ハリーも苛立たしげに椅子に座り直した。

 

「エクスペクト・パトローナム」

 

 リオンが杖を振るうと杖から八咫烏の守護霊が現れ、ロンの去っていった方向に飛んでいく。

 

「リオン」

「去っていったなら止めはしない。けど死なれるのだって困るだろう?」

 

 そう言えばハリーは何も言わなくなった。

 

 

 

 

 

「………魔法省を奪還されたか」

 

 マルフォイ家の館で顔半分が焼け爛れたヴォルデモートが低く呟く。周りの死喰い人は恐怖で固まり、彼の前に跪くヤックスリーは一層身体を震わせていた。

 

「わ、我が君……」

「クルーシオ!」

 

 部屋一帯にヤックスリーの絶叫が響く。他の死喰い人は肩を震わせた。

 

「忌々しい……俺様に抵抗する奴らがまだ残っていたか」

「我が君……私めにご命令下されば今すぐにでも魔法省を落として──」

「不用意に動くなベラ。元より魔法省は長い間掌に収まるとは考えておらん……コーバン、魔法省の奪還で特に動いていたのは誰だ?」

「っ、は……カリアン家の魔法使い達かと」

 

 痛みに呻きながらも答えたヤックスリーを他所にヴォルデモートは笑みを深める。脳裏に浮かんだのはかつての同級生であり、ヴォルデモートが唯一執着するエドワード・アーデルと交友していたジェラルド・カリアンの姿だった。

 

「カリアン家は中立不可侵……手を出せば手痛い目に遭うだろう。潰せぬこともないが益にならん」

「では、どうするおつもりで?」

「俺様はしばらく旅に出る。ベラ、他の者をよく見ておけ……そして、ポッターとリオンに関すること以外では俺様を呼び出すな」

「畏まりました我が君……」

 

 ベラトリックスが恭しく頭を下げるとヴォルデモートはナギニを伴って屋敷を出る。

 

 

 

「俺様は手に入れる。最強の杖を……そして決着を付けようぞリオン・アーデル。貴様を殺した時にこそ、俺様は無敵となる……そうだ、もう一度」

 

 ──俺様は貴様を殺すぞ。エドよ

 

 

 誰に聞かせるでもなく呟いたヴォルデモートは自身の傍を這うナギニを引き寄せて姿くらましを行う。彼が向かうのは最強の杖……ニワトコの杖を持っていたとされる者の場所。マイキュー・グレゴロビッチの家である。

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