ロックな姪と食べさせたい叔父さん   作:氷英

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御覧になっていただきありがとうございます。
前作の完結から数日しか経ってないのに懲りずにまた投稿させていただきます。ゆるりと長く続けたいと思います。


ぼっちな姪とチーズハンバーグ

私の名前は後藤晋作。仕事と趣味に生きる独身貴族だ

先週職場の近くに引っ越したばかりだが荷解きも

そこそこに今日も趣味に精を出す。私の趣味は料理

仕事帰りの買い物や通販、ふるさと納税等で旨そうな

食材を仕入れては料理して食べるを繰り返す。

1人分だし無駄に時間と手間をかけて、お店で出されても

遜色ないような一品を作るのが私の何より至福のひとときなのだ…今日はお肉屋さんでいい感じの挽き肉が手に入っ…

 

 

ピリリリリッピリリリリッ

 

っとこんな時に電話だ…私のスマホが鳴るなんて珍しいな

画面を見ると『兄さん』の文字。これまた珍しい…

普段連絡なんてしてこないのに何の用だろう?

 

「もしもし」

 

『もしもーし!晋作か?久しぶり!』

 

「私の携帯にかけてるんだから私に決まってるじゃないか」

 

『それもそうだアハハハハ!』

 

相変わらず兄さんは人生を楽しんでるな…

「で用件は?」

 

『あーそうそう、晋作さ最近引っ越したんだよね?』

 

「そうだけど引っ越し祝いでもくれるのかい?」

 

『それもなんだけど…引っ越し先は下北沢だったよな?』

 

「そうだよ。職場に近いとこにした。というかなんで知ってるの?」

 

『だってお前イソスタに料理の写真あげた時に書いてたじゃん』

しまったそうだった…不覚。

 

『それで相談なんだけどひとりが今度高校生になるんだ』

 

「ひとりちゃんが?そういえばもうそんな歳になるか」

 

『ただ、通う高校が家からだと片道2時間かかるんだ』

 

「2時間!?何でまたそんな遠いところに…」

 

『色々事情があってね…でさ、学校がある平日の間だけひとりをそっちに住まわせてくれないかな?あっもちろんその間の生活費諸々は払うよ?』

 

「…急だね。私は構わないけどひとりちゃん自身はいいのかい?第三者目線で言えば独身中年男性の家に女子高生が単身で寝泊まりしに来ることになるんだけど…」

 

『そこなんだけど、晋作の部屋って防音室付いてるよな?』

 

「えっ何で知ってるの?」

確かに引っ越してきたこの部屋には、一畳ちょっとの大きさの防音室がある。これは私がそういう部屋を希望した訳でも自作した訳でもない。たまたま前の住人が、大家さんの許可を得て魔改造したのを大家さんがそのままにしてたそうだ。私は予算内の一番良い物件を選んだだけで、大家さん曰く「防音室でスペース取ってる分他の部屋より割安にした」とのこと。私は不動産事情に詳しくないけど普通逆じゃない?

 

『父は娘のためなら何でも調べられるのさ』

 

「怖っ」

 

『まあ冗談は置いといて、ひとりがその防音室使わせてもらえるのと平日限定なら大丈夫だって』

 

「兄さん的にはいいのかい?さっきも言ったけどこんな独身のおっさんと一緒に住むんだよ?」

 

『俺は晋作を信用してるしな。それに…』

 

「それに?」

 

『ひとりに万が一のことが起こったら俺が地の果てまで追いかけてでもお前のことをブチ◯すから♪』

 

「怖っ」

 

というやり取りがあったのが3月のこと。それからどんどん話は進み、姪が同居しに来る日になった。

 

 

ピンポーン

 

「はーい」

 

チャイムが鳴り、玄関を開けると見覚えのあるピンク色のジャージに身を包んだ髪の長い女の子と兄が立っていた。

 

「やあ、晋作久しぶり!」

 

「こないだ電話したじゃん」

 

「会うのは久しぶりだろ?ほらひとり挨拶して」

 

「あっ…こっこんにちは…へへ」

 

「うん、こんにちは。ひとりちゃん久しぶりだね」

 

「じゃあ約束通りひとりの部屋に荷物運んでいくぞ?」

 

「ああ、わかった。ひとりちゃんも確認してね」

 

「あっはい」

 

大人2人であっという間に必要な荷物を防音室付きの部屋に運び込み、兄とひとりちゃんで配置していった。持ってきた荷物はそんなに多くなく、お役御免の私は2人に振る舞う夕食の準備に取りかかった。何せ今夜のメニューは時間がかかるから早めに仕掛けておきたい。

 

しばらくして部屋のセッティングを終えた2人が戻ってきた。

 

「終わったぞー。ひとりの部屋完成だ」

 

「はいお疲れ様。もうすぐ晩御飯だよ」

 

「今日のメニューは何かな?」

 

「これだよ」

 

私はそう言って調理中のフライパンを見せる。

「ひとりちゃんの大好物だって聞いたから今日はハンバーグです」

ジワジワと音を立てるフライパンを見てひとりちゃんが「ふぁぁ…」と声を出した。かわいい。

 

「盛り付けて、最後に仕上げです」

 

「お、何だ何だ?」

 

「これを乗っけます」

 

「あっチーズ…」

 

別の小鍋に溶かしておいたチーズをハンバーグを覆うようにかける…「完成」

 

本日の晩御飯

 

炊きたてご飯(コシヒカリ)

叔父さん特製チーズハンバーグ(付け合わせブロッコリー、ニンジングラッセ、小さいハッシュドポテト)

トマトサラダ

コンソメスープ

 

「では、手を合わせてください」

 

「あっはい」

 

「はいよ」

 

「「「いただきます」」」

 

と言いつつ私は2人がハンバーグを口に運ぶのを見届ける。作り手としてはやっぱり1口目のリアクションが気になるのだ。自信作ではあるけど、普段自分の料理を人に振る舞ったりしないから尚更だ。

 

「んっまっ!噛むほどに肉の旨味が染み出てくるみたいだ。店で出しても遜色ないぞ!どうやって作ったんだ?」

 

「良い挽き肉が手に入ってね…後は焼き方かな。フライパンに置いてから火をつけて、油引かないし蓋もしない。とろ火でひたすらゆっくり焼くと肉汁を全部閉じ込めたまま焼けるんだ。その分時間かかるけど。ひとりちゃんはどう?お口に合ったかな?」

そう聞きながらひとりちゃんの方を向いた時に私は衝撃を受けた…。「ん~♪」っと声を漏らしながら口いっぱいにハンバーグを頬張るその姿に、今までにない感情が溢れてきたのだ。なんて…なんて幸せそうに、そして美味しそうに食べるんだ!これはもう一目惚れと言っていい。

 

 

「晋作?なに間抜けな顔してるんだ?」

 

「あっいや、なんでもないよ」

いけないいけない、ひとりちゃんの食べる姿につい目を奪われてしまっていた。

 

「あっハンバーグ美味しいです」

 

「そっか。よかったよかった」

口元にソースが付いたまま微笑んで感想を言ってくる様が愛らしい。人に料理を食べてもらうのはこんなに嬉しいんだな…。ひとりちゃんには感謝しなくては。

 

 

 

ごちそうさまでした

 

 

 

「じゃあ父さん帰るから、ひとりしっかりな!晋作も娘をよろしく頼むぞ?クレグレモタノムゾ?」

 

「あっうん」

 

「わかってるよ。あと最後の声のトーンが怖いよ…」

 

兄さんを見送った後改めてひとりちゃんに向き直す。

 

「ひとりちゃん、学校のある平日の間だけだけどこれからよろしくね。たくさんご馳走作るからね!」

 

「あっはははははい…」

 

うん、思い返せば今日会ってから今まで1度も目が合ってないなぁ…兄さんからひとりちゃんが少々人見知りの気があるって聞いてたけど…少々?中1くらいの時に会った時より悪化してない?若干前途多難感があるけど…兎に角、私がこの子にしてあげられることは美味しいご飯を作ってやることぐらいだ。またひとりちゃんのあの顔が見たいし頑張ろう…。

 

「あっあのっ」

 

「ん?どうしたの?ひとりちゃん」

 

「ごっご飯…美味しかったです。あっ明日からもよっよろしくお願いします」

 

「うん、とびきりの作るから楽しみにしててね」

よし、めっちゃ頑張ろう。

 




次回 話しかけられたい姪と◯◯
(◯◯にはその日の献立が入ります)

↓人物紹介

後藤晋作
本作の主人公。といってもやってることは自宅で晩御飯を作ってるだけでぼっち・ざ・ろっく!本編に関わることは少ない。前は作った料理をイソスタに上げてから食べるのが趣味だったが、姪(ひとりちゃん)が幸せそうに食べる様を見て以来、他人に食べさせる喜びに目覚めてしまった。料理を振る舞いたい欲が強いこと以外は人畜無害な優しい人。

後藤ひとり
叔父さんに胃袋を掴まれちゃった系女子その1。片道2時間の通学より防音室付きの叔父さんの家に同居することを選んだ高校生。平日だけ叔父さんと同居する以外は原作のまま話が進行します。但しその話を本作で描写することはあまりありません。
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