ロックな姪と食べさせたい叔父さん   作:氷英

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今日はあの子が叔父さんのご飯を食べるらしいよ。


金欠腹ペコベーシストと姪と麻婆豆腐

ある日のライブハウス『STARRY』にて

 

「あっお疲れ様でした。おっお先に失礼します…」

 

「ぼっち…」

 

「あっリョウさん、お疲れ様でした」

 

「ごめん、お金貸して」

 

「え?またですか?すっすいません今日貸せるほど持ってきてなくて…」

 

「うう…ここ数日野草生活でそろそろ限界で…」

 

「にっ虹夏ちゃんには…?」

 

「無理。虹夏に話したら自業自得って一蹴された」

 

どうしよう…本当にお金持ってないし…あっ、叔父さんなら食べさせてくれるかも…

「あっあの、お金は貸せませんけど…ごっご飯ならなんとかなるかもしれません」

 

「えっ本当?」

 

「あっはい。おっ叔父さんに聞いてみます」

 

 

 

 

ピロン

ひとりちゃんからロインだ。そろそろ帰ってくる時間か。

 

 

すいません、今日リョウさんっていうバンドメンバーで

バイトの先輩が叔父さんのご飯を食べたいそうなんですけど連れていっても大丈夫ですか?

 

 

ふむ、ひとりちゃんの先輩のバンドメンバーか。失礼のないようにおもてなししないとね。返信。

 

 

大丈夫、お腹いっぱい食べさせてあげるから連れておいで

 

 

さて、ではでは仕込んでいきますか。今日は中華だ。

豆腐を賽の目に切って軽く湯がく。中華鍋にゴマ油を引き、微塵切りのニンニク、生姜、葱、豆板醤を炒める。豚挽き肉を入れてさらに炒め、鶏ガラスープを加える。酒、砂糖、醤油、味噌で味をつける。さっきの豆腐入れて軽く煮込む。水溶き片栗粉でとろみを付ける。火を止めて最後に鍋肌にラー油を数滴たらして…。「完成」

 

もう一回中華鍋を用意して、油と鷹の爪とニンニクを入れて弱火でジワジワと香り油を作る。ほうれん草の根の部分を先に炒める。続けて茎、葉の順に入れて炒めて鶏ガラスープの素、塩コショウ、醤油で味を付ける。「完成」

 

 

さあ、これでいつ帰って来ても大丈夫。

 

 

ピンポーン

ご飯の支度がほぼ終わった頃に玄関のチャイムが鳴る。

「はーい」

扉を開けるとひとりちゃんともう一人、ひとりちゃんより長身で青い髪色の女の子がいた。

 

「あっただいまです。こっこちらロインで言ってたせっ先輩の山田リョウさんです」

 

「…どうも」

 

「はいいらっしゃい。…なんか山田さん顔色悪い?大丈夫かい?」

 

「あっリョウさん最近草しか食べてないみたいで…」

 

「草?何でそんなことに」

 

「あ…いい匂い…もう…駄目」

 

山田さんはそう言うとその場にへたり込んだ。

 

「リッリョウさん!?」

 

「しっかりして、すぐご飯にするからね!」

 

「腹が…へ…った」

 

 

本日の晩御飯

炊きたてご飯(ななつぼし)

麻婆豆腐

青菜炒め

人参シリシリ

中華玉子スープ

 

「では手を合わせてください…山田さん大丈夫?」

 

「いただきます!」

 

「あっどうぞどうぞ。じゃあ私達も」

 

「あっはい」

 

「「いただきます」」

 

手にしたレンゲを使い一心不乱に麻婆豆腐を掻き込み出す山田さん。すごい気迫を感じる。

 

「おっ落ち着いて。喉につまらせないようにね」

 

「んぐっんぐっ…はぁっ…美味。オジサン料理上手だね」

 

「ありがとう。よっぽどお腹空いてたんだね」

 

「はい。私今(お小遣い使い果たして)金欠でここ数日野草ばっかり食べてて…親にも(お小遣い貰ったばかりだから)

頼れなくて…」

 

「そうか、そうだったんだ…たくさん食べてね」

きっと今まで苦労してきたんだね。それに家で晩御飯食べられないなんて複雑な事情があるみたいだ…。

 

「あっあの叔父さんちっ違」

 

「この草いい香り…んっんっ、…っ!?こんなに美味しい草は初めてです。ご飯が進む!」

 

「普通のほうれん草だよ…おかわりもあるから遠慮しないでね。ひとりちゃんもどんどん食べて」

 

「あっはい」

 

ひとりちゃんが何か言いかけてたような気がするけど気のせいか…。麻婆豆腐を取り皿に移してモグモグし始める

ひとりちゃんを横目に山田さんのおかわりのご飯をよそう

2人ともよく食べてくれて嬉しい。

 

「麻婆豆腐辛すぎなかったかな?」

 

「あっちょうどいいです。美味しいです」

 

「絶妙な旨辛。匠の技。スープおかわりいいですか?」

 

サムズアップと玉子スープのおかわりを器用にやってのける。この子、中々の手練れだね。

 

気に入ってくれたようで何よりだ。多めに作って大皿に盛った麻婆豆腐はあっという間に空になった。ご飯も多めに炊いて正解だったね。

 

 

ごちそうさまでした

 

 

「ふぅ…満腹。2日分くらい食い溜めた」

 

「あっよかったです」

 

「たくさん食べてくれてありがとうね」

 

「あっその、お世話になりました。急に押し掛けてごめんなさい」

 

山田さんは私が声をかけると、見事な早さで三つ指をついて頭を下げてきた。

 

「そっそんなに畏まらないで。あっデザートに杏仁豆腐あるけど食べ「いただきます」

 

「そっか。ひとりちゃんは?」

 

「あっはい。いただきます」

 

さすが女の子。甘いもの用の別腹も標準装備だね。

 

 

 

「今日はありがとうございました。助かりました…あの、また来てもいいですか?」

 

「うん、またいつでもおいで。今度はあんな限界ギリギリになる前にね?」

 

「…はい」

 

「外暗いし送っていくよ」

 

「あっわっ私も行きます」

 

山田さんを送った帰り道、ひとりちゃんは山田さんについて話してくれた。

 

「リッリョウさんはここ数日、わっ私の書いた歌詞を元にずっと作曲編曲してて…たっ体力とか集中力とか全部そっそこに使っちゃったんだと思います」

 

「へえ、じゃあひとりちゃんと山田さんが力を合わせた

結束バンドの曲がもうすぐできるんだね。楽しみだね」

 

「あっはい。楽しみです」

 

「でもあんなにフラフラになるまで頑張るのは、周りの人が心配するからひとりちゃんも気にかけてあげてね」

 

「あっはい。見ておきます」

 

「また連れておいで。叔父さんお腹いっぱい食べさせることだけは得意だから」

 

「あっはい。…必ず」

 

ひとりちゃんは何気に仲間のことを見ているんだなぁ…。と、叔父さん改めてひとりちゃんのスゴさに気づいたよ。

こんなに良い子の作詞と山田さんの作曲でできる曲…

きっと素敵な曲になることだろう。




次回 猛練習する姪と◯◯

↓人物紹介3

山田リョウ
叔父さんに胃袋を掴まれちゃった系女子その3。叔父さんの家という便利なお食事処を見つけてしまった。叔父さんは叔父さんで腹ペコな山田さんをお腹いっぱいにしたいのでWin-Winな関係かもしれない。健全な意味で。
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