ロックな姪と食べさせたい叔父さん   作:氷英

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ご覧になっていただきありがとうございます。

来月またぼざろ関連コミックが発売。楽しみだね!

今回はアンソロジーコミック第5巻からのお話。

原作の後藤姉妹の絡みをもっと増やしてください。


ケンカした姪と大学芋

「おねぇちゃんなんかだいきらい!」

 

「うぐぐ…」

実の姉に対してなんという暴言。私はこんなにも苦しんでいるというのに…今日は叔父さんの家へ行かずに直接STARRYへ行く事になっているからと、いつもより長めに布団に潜って朝寝坊を決め込んでいたら(叔父さんの家だと朝御飯の時間に叔父さんが起こしにくる)ふたりのイタズラで前髪をガッツリ切り落とされてしまった。いくら幼稚園児のやったこととはいえ、責任は取ってもらわねばならない!という事でふたりにはSTARRYまでの道のりを付き添ってもらってるのだが…現在下北沢の道の真ん中で姉のこと嫌い宣言をそこそこの大声でかましてくれている。道行く人がこっちをチラチラ見ているので恥ずかしい。しかしこちらもなけなしの姉としての威厳が少しばかり残っているので引き下がるわけにはいかない。何より私の前髪をご機嫌な長さまでちょん切ってくれたことをまだ許していない。うう…おかげで普通におでこが見えちゃうし、いつも以上に周りの視線が気になってまともに顔を上げられない。

 

「ムスー…」

 

そっぽを向いたふたりの顔は、普段の無邪気な笑顔とは対照的なあまり見せたことのない不機嫌顔だ…。でも、それでも私と繋いだ手を離す様子はない。うーん、本当に大嫌いなら私と手なんて繋がないしSTARRYまで一緒に来てくれることもないだろう。ふたりから真意を訊いてみようかな。

「ねえ、ふたり」

 

「…なに?」

 

「おしえて?なっ何でお姉ちゃんの前髪切っちゃったの?」

 

「だって…」

 

 

 

 

土曜日の昼間、私はSTARRYに持っていく差し入れに何を作ろうか考えていた。本日ライブのある結束バンドの皆が少しでもいい演奏ができるような、やる気と結束力の上がる差し入れにしたいよね!ひとりちゃんから自分の家からSTARRYへ行くという連絡をもらっていたので、朝からひとりちゃんにご飯を食べさせられてなかったことで貯まっていた私の食べさせたい欲も満たせたらいいな。

 

 

さつま芋(紅はるか)を一口大に切り、10分水にさらしてから水気を切ったらキッチンペーパーでしっかり水気を拭き取る。160℃に熱した油でさつま芋を5分揚げて一度取り出し、油の温度を180℃にしてからもう一度表面がカリッとするまで揚げる。フライパンに水、醤油、砂糖、はちみつを入れて熱し、トロミが付いてきたらさつま芋を入れて絡める。クッキングシートにさつま芋を並べて仕上げに黒いりごまを振りかけたら「完成」

 

よし、後はあら熱が取れたら保温性抜群のタッパーに入れてと…これで準備完了!冷めないうちにSTARRYへ持っていこう。皆喜んでくれるかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんにちはー。皆調子はどう?差し入れ持ってきたよ」

 

「あっ♪晋作さんいらっしゃい!」

 

「晋作オジサンちょうどいいところに来たね」

 

「えっ?いいところ?」

私がSTARRYへ入ると、階段を降りたすぐ側に虹夏ちゃんとリョウさんがいた。2人の前にはパシャパシャとスマホで何かを一心不乱に撮影している喜多さんもいる。今どういう状況なんですか?

 

「叔父様!ひとりちゃんとふたりちゃんを見てください!おそろいの前髪ですごくかわいいんですよ!!」キターン

 

喜多さんは、満面の笑みでそう言いながら今まで撮影していたであろう被写体の2人を見るよう促してきた。そうか、ひとりちゃんとふたりちゃんを撮ってたんだね。…って

「ひとりちゃん、その髪…」

 

「あっ叔父さん…やっやっぱり変ですよね。わっ私なんかがこんな前髪短くしておでこ出しなんて…」

 

「えっなんで?すごくかわいいよ。普段は目元が隠れちゃってるのがふたりちゃんと同じくらいの長さになってとても魅力的に見えるね!」

 

「かわっ!?」

 

「やっぱり!おじちゃんもそう思うでしょ?」

 

「うん。でもひとりちゃんにしては珍しいね。自分で切ったのかい?」

 

「あっそれはかくかくしかじかで…」

 

 

ひとりちゃんの話によると、自分とおそろいにしたかったふたりちゃんがひとりちゃんが寝ている間にイタズラでバッサリ前髪を切ってしまったらしい。ふたりちゃんは、前々からいつも前髪でひとりちゃんの顔が隠れているのが気になっていたようだ。そのせいでひとりちゃん達はさっきまで珍しくケンカをしていたんだそうだ。まあふたりちゃんの気持ちは少しわかる。私もせっかく整った顔立ちのひとりちゃんがうつむき気味で尚且つ前髪で隠れているのはもったいないって思ってたから。

 

「それで前髪キャストオフしたぼっちを見て郁代がフィーバーしてたところ。しかし幼女とお揃いの前髪した美人ギタリスト!この写真は売れる!」パシャパシャ

 

「こうなった喜多ちゃんは気の済むまで撮影するまで止まんないからね~。てかリョウはそれ売るの禁止!」

 

「えー売れるのに」

 

「なるほど」

 

「それはそうと、晋作オジサンが持ってる袋からすごくいい匂いがするんだけど、もしかして私達への差し入れ?」

 

「ああこれ?もちろんそうだよ」

 

「またリョウは目敏いな」

 

「リョウ先輩らしいですね!」

 

「おじちゃん何持ってきたの?」

 

「今日はねー、美味しいさつま芋が手に入ったからおやつを作ってきました!」

 

「さつま芋!ふたりの分もある!?」

 

「あるよー。たくさん作ってきたから皆で食べようね」

 

「わーい♪」

 

本日の差し入れ

叔父さん特製大学芋

 

「うわ~♪晋作さん大学芋にも本気出しすぎだよ」

 

「お芋ツヤツヤで美味しそう!」

 

「この照りと匂い!王道の見た目も相まって映えること間違いなしね!」キターン

 

「あっおいしそう…そっそれに大学芋ならそこまでキラキラ陽キャなメニューじゃないから落ち着く…」

 

「さあ食べよう今すぐ食べよう」グゥゥゥ

「では手を合わせてください」

 

「「「「「「いただきます」」」」」」

 

今日の差し入れは大学芋。今回はしっとり系さつま芋の代表格である紅はるかを使ってみたけど皆の反応はどうだろうか。皆はそれぞれの小皿に取り分けた大学芋をつまようじに刺してパクリと頬張った。途端に方々から私が幸せになる声が聞こえてくる。

 

「んっんっうん!おいしー!お芋あまーい♪」

 

「あむっ…ん~♪カリッとした外側の食感とトロッとした中の芋の舌触りがたまらないね!」

 

「表面のタレの甘しょっぱさが絶妙でドンドン食べれちゃいますね!」キターン

 

「うむ!うまい!周りに付いてる黒ごまがいい仕事してるね。ライブ前のこの差し入れはパワーが漲る!」

 

「んっんっ…あっ甘くておいしいです」

 

「気に入ってもらえてよかったよ。星歌さん達の分は別に分けてあるから遠慮せずいっぱい食べてね」

 

「んう~♪本当においしい。晋作さん、これ何て言う種類のさつま芋なの?」

 

「今日使ったのは紅はるかといって、加熱すると中がしっとりクリーミーになるのが特徴のお芋だよ」

 

「紅はるか!その名前聞いたことある。確か焼き芋にするとスゴく美味しいやつだよね!」

 

「そうだね。最近だとスーパーの野菜コーナーでも簡単に手に入るようになってきたから虹夏ちゃんの家でも作ってみるといいよ」

 

「うん♪その時はいっぱい作るからふたりちゃんも食べに来てね」

 

「わーい♪」

 

「あーほらふたり、ほっぺにごまが付いてる…」

 

「おねぇちゃんとってー」

 

「もう…」

 

ふたりちゃんの口の周りに付いた大学芋のタレを甲斐甲斐しく拭き取るひとりちゃん。普段天真爛漫なふたりちゃんに翻弄されがちなイメージだけど、こういう時はしっかりとお姉ちゃんしてるね!かわいい。

 

「ひとりちゃんとふたりちゃんの仲良し姉妹画像!2人ともかわいすぎ!!」パシャシャシャシャ

 

「うむ。次の物販はバカ売れ間違いなしだね。ぼっち、次は妹ちゃんとスク水を着て2人で雌豹のポーズを」

 

「おいこらリョウ、悪用するならスマホのデータ消すよ!」

 

「そんなご無体な!」

 

「あはは…」

リョウさんの企みはともかく、皆差し入れに満足してくれたかな。これで結束バンドとふたりちゃんの士気上昇に貢献できたみたいだね。この後のライブが楽しみだ。

 

 

ごちそうさまでした

 

 

 

\コンバンハーケッソクバンドデース!/

 

 

「おねぇちゃんたちやっと出てきた!」

 

「そうだね。ちゃんと応援してあげようね」

 

「うん!」

 

今日はふたりちゃんと一緒に結束バンドのライブを観る。ひとりちゃんも妹が応援してくれているからきっと一層気合が入って演奏を…

 

「ウェッ…ウェーイ!下北盛り上がってるかーい!」

 

「…あれ?」

 

「ねえおじちゃん、おねぇちゃんなんで目隠ししてるの?」

 

「さ、さあ…なんでだろうね?」

ライブの後でひとりちゃんに訊いてみたら、前髪を切られて視界良好になったことで逆にお客さんの視線が気になって演奏に支障が出るから目隠ししてライブを乗り切ることにしたそうだ。私からしたらそっちの方が難易度高そうなのに…ひとりちゃんはスゴいね!

 

 




ひとりちゃんとふたりちゃんのケンカの全貌はアンソロジーコミックを読んで確かめよう!

次回 キノコとリョウさんと◯◯

アンソロジーの流れはまだ続くぜ

↓おまけ

異世界でも叔父さんは食べさせたい

※何がなんでもパラレルワールドです。

前回までのあらすじ
自分達の楽器を探すためにティズワラへ向かう結束バンド一行。途中寄ったニューヤードという町で転生して彷徨っていた廣井きくりに出会う。


キャラ紹介
後藤ひとり
転生先の世界でも叔父さんと同居。スキルの効果で自力でモンスターを倒せない。でも前衛がすごく強いので問題ない。

叔父さん
異世界でもひとりちゃん達に食べさせる生活を目指す。作った料理に体力と状態異常回復&経験値取得の効果が付くスキルを持っている。戦っても強いけどその様子はカットされている。

山田リョウ
特典ほぼなしで転生してきた不憫な子。スキルのせいで戦闘中は強いけどすぐお腹が空くのであまり戦いたくない。仲間が増えたから戦闘をサボる時間が増えてきた。

喜多郁代
叔父さんの家に住みながらSTARRY異世界店へ通う。戦闘もひとりやリョウの代わりに率先して戦う聖人陽キャ。

伊地知虹夏
叔父さん以上に特典盛り盛りで転生してきた元下北沢の大天使。異世界でのライブハウス再開のために今日も奮闘する。

伊地知星歌
伊地知虹夏と共に転生してきた伊地知虹夏の姉。叔父さんと一緒に保護者役として結束バンドの冒険に付いていく。

PAさん
しれっと転生していた黒髪ロングでピアスなお姉さん。朝が弱いのでSTARRY異世界店でお留守番。

廣井きくり
転生特典で愛用のベースを持って転生してきたSICK HACKのベーシスト。誰かにベースを盗まれてしまったので結束バンド一行と共にティズワラへ向かうことにした。


ティズワラで楽器を探そう


旅のお供に廣井きくりを加えた結束バンド一行は、アンダーノースとティズワラの間にある町“ニューヤード”で休憩と補給をした後、今度こそ自分達の楽器を求めてティズワラへ向かうのであった。

「それじゃあ出発!皆遅れないようにね!」

「張り切るのはいいけどここからモンスターも手強くなってくるから注意しろよ?」

「先輩~私レベル低いから守って~」

「あっわっ私も戦闘に貢献できないんで…」

「私もお腹が減るからパス」

「おいコラ陰キャ共」

「まあまあ、モンスターの戦闘は極力避けてどうしても戦わなくちゃいけない時は私と星歌さんが頑張るよ」

「はいはーい!私も戦いまーす♪」キターン

「もう…しょうがないな~あたしも頑張るから皆行くよー」

道中数回モンスターと戦闘になったが、前衛4人がとても強くて全く苦戦せずにティズワラへと到着した。

「今度こそ来たぞティズワラー!」

「そこらじゅうにいろんな音が鳴ってますね!あちこちで誰かが楽器を演奏してるみたい!」

「おおーこれは期待できる!」

「私のスーパー酒天童子EXよ何処~」

「晋作さんお疲れ」

「いえいえ、星歌さんもお疲れ様です」

「こっここが音楽の町…ここにギターやお姉さんのベースがあるのかな?」

「よーし!じゃあ早速楽器を探していこう!」

「でもこの町の楽器屋全部回るのは骨が折れる」

「あっですね…」

「それなら二手に分かれて探すのはどうですか?私とひとりちゃんでギターを探します!」キターン

「ならあたしとリョウでベースとドラムを探すよ!お姉ちゃんと晋作さんと休憩しててね!」

「わかった。そうさせてもらうよ」

「皆気を付けてね」

「誰か私のも一緒に探して~」

結束バンドと廣井きくりはティズワラ中の楽器店を見て回り、遂に念願のギター、ベース、ドラムセットを見つけることができた。しかし…

「どうしようお姉ちゃん…見つけたんだけどどれも予算オーバーだよ~」

「全部揃えるにはお金が全然足りませんね」

「買えたとしてもどれか1つ。しかも次来た時にまだ置いてある保障はない」

「うう…せっかく見つけたのに…」

「なるほど、またお金を貯めて来てもその時にはもう売れちゃってるかもしれないのか」

「この世界の人からしたら異世界の珍しい楽器だからな。その手のマニアに需要があるんだろう」

「リョウみたいな人がいっぱいいるってことか…」

「人をすぐ楽器にお金使う浪費家みたいに言うね」

「実際そうでしょ!」

「でもどうしましょうか。どれか1つでも買って確保しておきますか?」

「うーん…残念だけどそれがベストかな…?残りの楽器は次来た時に残ってることを願うしかないか」

「仕方ない。では急いでさっきの楽器屋でベースを」

「だめ!ここは公平にジャンケンで決めるよ!」

全員の楽器を揃えられずに落ち込む結束バンド一行。とりあえず1つでも手に入れておこうとジャンケン対決を始めようとしていたところに別行動していた廣井きくりが帰ってきた。

「みんなここにいたんだ~。ちょっと聞いて聞いて!私のスーパー酒天童子EX見つけたよー!」

「あっお姉さん…」

「廣井さんのもあったんですね。でも値段高かったでしょ?」

「ううん、それがね~。町の恒例行事?っていうので楽器演奏大会みたいなのやっててさ~。参加者の中で優勝者決めて賞金もでるらしいんだけど、その優勝者への副賞が私のベースだったんだよ~」

「がっ楽器演奏大会ですか?」

「あは♪その大会に優勝すれば私達の楽器が揃えられるようになるかもしれないですね!」キタキターン

「それに廣井さんのベースも戻ってきて一件落着だね!」

「うむ、出ないという選択肢はない」

「あっですね。じゃっじゃあリョウさんお願いします」

「えっ何言ってるのぼっち」

「えっ」

「そうよひとりちゃん!このチャンスを生かせるのはひとりちゃんしかいないわよ!」

「えっ」

「ぼっちちゃんお願い!今こそギターヒーローの力を貸してほしいの!」

「えっ」

「ぼっちちゃん頼んだよ~?私のベースも取り戻してね!」

「えっ」

「そうと決まれば急いでぼっちちゃん用のギターを買いに行くよ!」

「「「おー!」」」

「えっ!?あっあのちょっ…」

「ひとりちゃん…なんというか、頑張ってね」

ティズワラの楽器演奏大会に出るためにほぼ全財産で後藤ひとりのギターを買うことにした結束バンド一行。果たして後藤ひとりは楽器演奏大会を優勝して賞金とスーパー酒天童子EXを手に入れることはできるのだろうか。


つづく(スーパースローペースでごめんね)
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