ロックな姪と食べさせたい叔父さん   作:氷英

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ご覧になっていただきありがとうございます。

今回も廣井きくりの深酒日記からのお話。
に見せかけてその話の少し後という時間軸。


再びコンセプトカフェとイライザさんとえれちゃんの美味しくなる魔法とフー♡フー♡付きカルボナーラ

「シンサクー!私と一緒にコンカフェに行きまショウ!」

 

「え?」

 

とある日の新宿FOLTにて、SIDEROSとSICK HACKのライブと先日のコラボ動画で結束バンドの自主企画ライブの宣伝をしてくれたお礼も兼ねて差し入れを持っていったところ、イライザさんに聞き覚えのある所へのお誘いをされた。あれ?デジャヴかな?イライザさん、既に何人ものお客さんが来ているのにまたそんな大きな声で…ほーら、あなたのファンと思しき人数人がこちらを睨んでますよ?

 

「コンセプトカフェデス!忘れちゃいまシタカ?」

 

「いえ、コンセプトカフェのことは以前イライザさんと行った時にたくさん語ってくれましたから知ってますよ」

 

「じゃあ大丈夫デスネ!また一緒に行きまショウ!」

 

「あのできれば何故また私と行きたいのか説明を…」

 

「シンサクと私は今や同じえれちゃん推しのメーユーですカラネ!再びコンカフェに行くのはもはやシュクメイデス!」

 

わー物凄い笑顔だ。全然説明になってないね。この人相変わらず好きなことへの愛情表現がドストレートでわかりやすいな。しかしイライザさん、コンカフェ愛が強すぎて私との距離が物理的に近いことに気付いてないのかな?あーほらまたあなたのファンであろう人達の目付きが一層鋭くなってますよ?

「志麻さん!志麻さんはいませんか!?」

 

説明のため楽屋で打ち合わせ中の志麻さんが召喚された。

 

「志麻さん、急に呼び出してすいません」

 

「いえ、状況を見て大体察しました。イライザがまたおじさんをコンカフェに誘ってるってところですか?」

 

「あっはいそうです。助かります」

 

「イライザ…前にも言ったが、ちゃんと説明しないとおじさんがわからないだろ?何でおじさんと一緒にコンカフェに行きたいんだ?」

 

「それはデスネ~…前行ったコンカフェで今ダブルカップル限定の美味しくなる魔法付きランチフェスティバルが開催中なのデス!これはえれちゃん推しとしては行くしかない!と思ったのデスケド…」

 

「カップル限定の次はダブルカップルですか。色々なイベントがあるんですね。つまりそのダブルカップルの相手役を探していたということですか?」

 

「そのトーリ!新宿FOLTの中の人全員にお願いしてなんとか2人は確保できたんですケド、あと1人がどーしても見つからナクテ…」

 

「なるほどな。そこにちょうどおじさんが来たと」

 

「イエス!」

 

その流れもなんだかデジャヴだな。私もタイミングがいいのか悪いのか。正直前回のコンカフェの後、妙に迫力のあるオーラをまとった虹夏ちゃんと喜多さんにイライザさんがあげたイソスタ(えれちゃんにあーんされてる叔父さんの写真)について問い詰められて大変だったからあまり気乗りしないんだけど…。

 

「お願いですシンサク~また一緒にコンカフェデートしまショー?約束通り私からもあーん♡しますカラ~」

 

ガタンガタガタン

 

イライザさんはまっすぐに私の目を見つめて瞳を潤ませながら懇願している。イライザさんが私にあーん…そういえば前のコンカフェの後きたロインにそんなこと書かれてたな。あれ社交辞令じゃなかったのか。周りではイライザさんの発言に動揺したファンから熱烈な視線(殺気)が…。

「わっわかりました。私でよければまたご一緒しましょう。あとあーんはしなくていいですから」

 

「ホントデスカ!ワーイ♪これでまた推し活できルヨー♪」

 

「おじさん本当にいいんですか?」

 

「ええまあ、あそこの料理自体はとても美味しかったので純粋に他のメニューも興味がありますから」

 

「うちのイライザがどうもすいません。本当は私が行けるとよかったんですけど、その日は別件の用事があって…」

 

「いえいえ大丈夫ですよ。こんなおっさんで役に立てるなら」

 

「やっぱりシンサクは優しくて神デスネ!」

 

 

 

 

そんなやり取りを経てやってきたコンカフェデート?当日。

 

「シンサクー!時間ピッタリダネ!いい心がけダヨー♪」

 

「こんにちはイライザさん。冬の寒さを吹き飛ばすくらい元気ですね」

 

「トーゼン!今日は待ちに待った特別な日ダカラネ!では時間ももったいないから早速出発しまショー♪」

 

「あっはい」

前回同様待ち合わせ場所から既にイライザさんのテンションが高く、早々に私の腕に自分の両手を絡みつけ熱々カップルに擬態しながらの移動。イライザさんのビジュアルも相まってとても目立つ。すごく照れる。

 

「そういえば今日って他にあと二人来るんですよね?」

 

「イエス!前に私自らコンカフェの素晴らしさを教えて同士となった二人を呼びマシタ!さっき連絡したら先に着いてるって言っテタヨ!」

 

「へえ、それは楽しみですね」

 

「ハイ♪なので私達もレッツゴー♪」

 

少し歩いて到着した雑居ビルにあるとあるカフェ。バニーメイド『うさぎのしっぽ』と書かれた看板には、店の名前を象徴するようなバニーでメイドな格好をした女の子のイラストも描かれている。そうそう、確か店員さん全員がこんな服装で目のやり場に困ったんだったね。

 

「さあ行きますよシンサク!ここからが私達のステージデス!」

 

イライザさんは、どこぞのアーマードライダーみたいなことを叫びながら前回同様に躊躇なく店の扉を開けた。イライザさん、せめてこの絡めている腕は離してくれませんかね?

 

「いらっしゃいませ~あっイライザお嬢様♡今日はそちらの素敵なおじさまとご来店ですか?」

 

「ハイ♪今日はダブルカップルイベントのために来マシタ!先に2人来てるハズダヨー」

 

「ということはあちらのお嬢様方とのお約束ですね♪席までご案内しますー」

 

慣れた様子での店員さんとのやり取り。さすがはイライザさん。自然な流れで席まで案内してもらえた。それにしてもイライザさん、名前を覚えてもらっていてすっかり常連さんって感じだ。一体どれだけここに通っているのだろう。

 

「おかえりなさいませー♡お嬢様と旦那様~♡こちらの席にどうぞー」

 

 

 

 

「あ!出たわね3号のおじさん。本当どこにでも現れるわね」

 

「おっちゃんやっほ~。イライザの相手役ごくろーさん」

 

「きくりとヨヨコ~♪前よりも早く来ているなんてシュショーな心がけデスネ!」

 

先に来ていた2人は廣井さんとつっきーさんだったのか。前よりも早く…ということは2人も私同様イライザさんからコンカフェのあれこれをメイド愛の熱量たっぷりでレクチャーされたのだろう。そしてイライザさんのことだから推しのメイドである日向さんも紹介済みなのかな。

 

「これでダブルカップルのメンツがそろいマシタネ!今日も張り切ってえれちゃんに貢ぎマクルヨ!」

 

「イライザに大槻ちゃん連れてこいって言われたから来たけど何が始まんの?」

 

「廣井さんよくわからずにここまで来たんですね」

 

「だって場所はどうあれイライザの奢りだからね~」

 

「つっきーさんも意外と付き合いいいんですね」

 

「意外って何ですか。わっ私は廣井姐さんとランチできるっていうから付いてきただけよ!べっ別にここが気に入ってるとかじゃないですから!」

 

「ぎゃー!!ここだけ顔面国立美術館!!三美神ならぬ四聖美神!?えれこの中に混ざってまともでいられる気がしません!!」

 

4人掛けのテーブルに着いて廣井さんとつっきーさんの話を聞いていると、ハイテンションで賑やかなメイドさんがこちらにやってきた。イライザさんの推しメイドの日向さんだ。他の店員さんと同じくおおよそ健全とは言い難い制服を身に纏い、今日も過剰な愛を振り撒いている。相変わらず言動が謎過ぎるけど出てくる単語一つ一つに熱がこもっていて、こちらに対して好意的であることは物凄く伝わってくるね。

 

「うっ…出たわねミーハーメイド」

 

「えれちゃーん!キタヨー!!」

 

「おっちゃんもこの子目当てなん?いい趣味してるね~」

 

「えっいや私は違」

 

「給仕のおじさまもまた来てくださってえれ感激ですー♪今日もいい年のおじさまとは思えないビジュで目の保養~♡」

 

…うん、日向さんの瞳の奥に♡が見えるね。接客時のリップサービスじゃなくて本気で言ってるんだろうな…。他の3人はともかくただのアラフォーのおっさんにその反応は危ないですよ日向さん。

 

「ではえれちゃんにダブルカップル限定ランチ注文しチャウヨ~♪」

 

イライザさんはそんな日向さんに臆することなく全員分のメニューを注文。ウキウキでこれから始まる限定イベントについて私達に熱く語ってくれた。なんでもこのカフェの上級会員しか受けることができない推しのカワイイを凝縮したそれはそれはハッピーなサービス!!らしい。鼻息荒くして説明を続けるイライザさんに廣井さんとつっきーさんが軽く引いてるように見えたけどきっと気のせいだろう。

 

「お待たせしましたー♡ダブルカップル限定熱々濃厚カルボナーラでーす♡」

 

「待ってマシタ!」

 

「おお…なんか予想に反してちゃんとしたの出てきたわね」

 

「これは美味しそうだね」

 

「うひょー♪いい匂い~」

 

本日の昼御飯

熱々濃厚カルボナーラ

 

「ではみんな手を合わせてくだサイ!」

 

「あっはい」

 

「ん」

 

「はいよ~」

 

「「「「いただきます」」」」

 

今日の昼御飯はカルボナーラ。チーズと卵黄のソースとベーコンの味のコントラストがたまらない一品だ。まあ通常のカルボナーラであればの話だけど。限定と言うからにはきっとこのままでは終わらないのだろう。と予想していると案の定日向さんが動き出した。

 

「それではイライザお嬢様から始めますねー♡先ずは美味しくなる魔法をかけるのでえれの後に続いてくださーい♡」

 

「ハーイ♡」

 

そう宣言した日向さんは両手で器用にハートのマークを作りながらイライザさんと共に何やらノリノリで美味しくなる魔法とやらを唱え始めた。

 

「はい♪美味しくなる魔法がかかったので~」

 

次に日向さんはフォークで器用にカルボナーラを巻き取ってイライザさんの前に…なるほど、一口目のあーん♡も付いてるんですね。

 

「フー♡フー♡イライザお嬢様、熱いのでお気をつけて召し上がってくださいね♡はい、あーん♡」

 

「あーん♡モグモグ…ン~♡超絶デリシャスデス!」

 

フーフー(息を吹き掛けるんじゃなくて本当にフーフーって言ってる)までしてくれるんだね。さすが限定ランチだ。…あれ、まてよ。まさか今の一連の流れ全員分やるのかな?

 

「それでは今度は給仕のおじさま♡美味しくなる魔法をかけるのでえれに続いて一緒に唱えましょう♡萌え萌え」

 

「えっ」

 

「萌え萌え♡」

 

「もっもえもえ…」

 

「きゅんきゅん♡」

 

「きゅっきゅんきゅん」

 

「ワクワク♡」

 

「ワクワク」

 

「ドキドキ♡」

 

「ドキドキ」

 

「美味しくなーれ♪萌え萌えきゅん♡♡」

 

意を決して日向さんに倣って美味しくなる魔法を唱えると、仕上げ?の呪文を日向さんが唱えてくれた。あ、たくさんのハートがカルボナーラに入り込んでいってるね(幻覚)そして日向さんはイライザさんの時同様フォークにカルボナーラを巻き付けて私の前に…

 

「フー♡フー♡はい給仕のおじさまにあーん♡」

 

わあ…どうしよう。イライザさん達の視線も相まって一層食べづらい。しかし日向さんも一生懸命メイドとしておもてなししてくれているのだから腹をくくれ私!

 

「さあさあおじさま♡このカルボナーラは本場のグアンチャーレ(豚ほほ肉の塩漬け)とペコリーノチーズを使用してて粗挽き黒コショウのアクセントが効いたこだわりの一品ですよ~♡」

 

「前にも増してすごく本格的ですね!?わっわかりました。いただきます!あーん」

 

…おお!これは驚いた!パスタに絡んだなめらかなチーズと卵黄の濃厚な味わいにグアンチャーレの塩気が絶妙なバランスで主張している!

 

「うん、すごく美味しいですね」

 

「よかったです~♪ではでは次はこっちのお二人に」

 

「えっいや私はいいよ~普通に食べるから」

 

「わっ私も魔法とかフーフーとかいいから!」

 

「きくり!ヨヨコ!えれちゃんの魂のこもった美味しくなる魔法とフー♡フー♡を拒否するなんて失礼デス!そんなことじゃ立派なコンカフェニストになれナイヨ!」

 

「なれなくていいですから!ていうかコンカフェニストって何ですか!?」

 

「フー♡フー♡はい廣井さんあーん♡」

 

「うぇ!?いつの間に!?」

 

なんだろうこのカオス。

 

「シンサク♪ほらこっち向イテー?」

 

「えっどうしたんですかイライザさ」

「はいアーン♡」

「えっ何ムグッ…!?」

油断した。まさかイライザさんからもあーんされるとは。

 

「フフフー♪美味しいデスカ?約束したデショ?私からもアーン♡してあげるッテ!」

 

確かに誘ってくれた時にそんなことを言ってたけど、律儀に守ってくれなくてもいいんですよ?あ、カルボナーラは本当に美味しかったです。

 

 

ごちそうさまでした

 

 

「ハ~♡今日も大満足!えれちゃんの可愛さ堪能したヨ!」

 

「奢りとはいえ全然味わう余裕なかったよ~」

 

「色々誉めてくれるのは嬉しいけどなんか疲れたわ…」

 

「あはは…でもランチは美味しかったですね。すごく本格的でビックリしました。今度家でも作ってみようかな。ひとりちゃんに食べさせたいし」

 

「マジで?その時は呼んでよー。おっちゃんの家なら落ち着いて食べられそうだわー」

 

「なっ!?ちょっと3号のおじさん!廣井姐さんと2人きりは許さないですからね!」

 

「シンサクゥ~?彼女を差し置いてきくりを家に連れ込もうとはいい度胸デスネー?」

 

「えっ!?いや、そんなつもりは…そもそもその設定はダブルカップルイベントのものですよね?」

 

「むー…じゃあいいデス!この『シンサクが美味しくなる魔法からのえれちゃんのあーん♡に鼻の下伸ばしてる』動画を結束バンドの皆に送りマス!」

 

「すいませんそれは勘弁してください何でもしますから」

 

「ん?シンサク今何でもするって言ったネ?」

 

「えっあっはい」

 

イライザさんは少し意地悪そうにナニをさせてやろうかな~?みたいな顔をしている。できるだけ穏便に済むような内容でお願いします。




次回 マイニューグラビアと姪と◯◯

アンソロジーコミックからのお話だぜ

↓おまけ
異世界でも叔父さんは食べさせたい

※驚天動地のパラレルワールドです。

前回までのあらすじ
楽器の修理に必要な素材集め編の始まり。虹夏チームはアンダーノース地下ダンジョンで苦労の末に必要素材の1つであるヌマリゲーターの牙をゲットした!しかし山田リョウの空腹が限界なので撤退。次は叔父さんチームの番。

キャラ紹介
後藤ひとり
転生先の世界でも叔父さんと同居。スキルの効果で自力でモンスターを倒せない。でも前衛がすごく強いので全然問題ない。新たなスキルでいつでもギターが弾けるようになりました。

叔父さん
異世界でもひとりちゃん達に食べさせる生活を目指す。作った料理に体力と状態異常回復&経験値取得の効果が付くスキルを持っている。さらにパーティ内に女性が多いと物凄く強くなるスキルも習得。戦闘でも頼れる神おじさん。

山田リョウ
特典ほぼなしで転生してきた不憫な子。スキルのせいで戦闘中は強いけどすぐお腹が空くのであまり戦いたくない。叔父さんのご飯が大好きなので、まかないのために頑張って戦いました。偉い。

喜多郁代
叔父さんの家に住みながらSTARRY異世界店へ通う。戦闘もひとりやリョウの代わりに率先して行う聖人陽キャ。STARRY異世界店や結束ギルドの看板娘的存在。

伊地知虹夏
叔父さん以上に特典盛り盛りで転生してきた元下北沢の大天使。異世界でのライブハウス再開のために今日も奮闘する。一応この異世界のお姫様だけどその設定が忘れられそうな勢い。

伊地知星歌
伊地知虹夏と共に転生してきた伊地知虹夏の姉。叔父さんと一緒に保護者役として結束バンドの冒険に付いていく。STARRY異世界店の店長もやっている。怒らせると(物理的な意味で)とってもコワイ。

PAさん
しれっと転生していた黒髪ロングでピアスなお姉さん。朝が弱いのでお昼からなら働きます。ティズワラ編の時にお留守番だったのが寂しかった模様。なので素材集めは一緒に行きますが、叔父さんが一緒なので準備に時間がかかってます。

廣井きくり
転生特典で愛用のベースを持って転生してきたSICK HACKのベーシスト。伊地知姉妹のお城に住まわせてもらえるようになりました。ついでにお仕事も貰えたようです。今回の素材集めにはお城の兵士から借りたお金を返すために参加しました。


必要素材を集めよう 叔父さんチーム編その1

虹夏チームがアンダーノース地下ダンジョンへたどり着いた頃、STARRY異世界店前では出発準備中のPAさんが漸く店から出てきたところだった。

「すいませんお待たせしましたー…おはようございますー」

「PAさんおはようございます」

「おはようございまーす!」キターン

「あっおはようございます」

「あらあら?虹夏さん達がいないようですけど、先に出発した感じですか?」

「そうですね。虹夏ちゃんのチームはもう一つ目の目的地に向かってますよ」

「私達も早速行きましょう!」

「そうですね。あっちのチームに負けてられません。前回御一緒できなかった分私も頑張りますよー♪」

「行き先はどちらからにしますか?」

「私達のチームの担当は金属スライムの皮膚(ニューヤード周辺)とアナホリサンドラゴンのヒゲ(アンダーノース周辺)ですね。距離があるのはニューヤード周辺の方ですけど」

「近場の方を先に攻略してしまった方がいいですかねー」

「なるほど、じゃあアンダーノース周辺のアナホリサンドラゴンを探しましょうか。ひとりちゃんと喜多さんはそれでいいかな?」

「あっはい」

「はーい♪」キターン

「異議なしです♪」

アンダーノース周辺。主に初心者の森『ヤソークエの森』へ続く道と、お仕事と勉学の町『ニューヤード』へ続く道の周辺。はじまりの町の周りなので特に狂暴なモンスターが出現するということもない。ただし、脇道に大きく逸れたり特定の場所を縄張りとしているヌシ等例外もあるので注意が必要。

「さて、ここら辺のモンスターはそんなに強くないけど、アナホリサンドラゴンらしきモンスターは見かけたことがないから少し探し回る必要があるかもしれないね」

「ターゲットをあちこち探すのも冒険の醍醐味ですよね!」

「あっでも私、かっ肝心のアナホリサンドラゴンがどういう姿なのか知らないです…」

「フフフ♪そんなこともあろうかと私下調べしてありますよ~」

そう言ってPAさんはどこからともなく手帳を取り出してパラパラと中身を数ページめくり、お目当ての項目を見つけると得意気に解説し始めた。

「事前に訊いて回った情報によると、地元の人には別名『サワラヌカミニナントヤラドラゴン』と呼ばれている中型のモンスターみたいです。元の名前の通り地中に穴を掘って巣を作りそこで生活してるそうですよ」

「べっ別名がとても長くて怖い…!」ガクブル

「地元の人達が避ける程厄介な性質を持ったモンスターってことですね!」

「はい♪なのでアナホリサンドラゴンは普通にこの道を通っただけではエンカウントしないそうですー」

「なるほど。なら先ずは不自然に地面を掘り返されているような場所を探した方がよさそうだね。危ないから下手に分散しないで4人で一緒に探してみよう」

叔父さんチームはアンダーノースからニューヤードまでの道のりで根気よくアナホリサンドラゴンの巣を探し回り、ついにそれらしい穴を見つけることができた。

「あっあそこの地面土がすごく盛り上がってます」

「よく見たら周りにいくつもの穴が空いてますね!」

「情報の通りならアレがアナホリサンドラゴンの巣に間違いなさそうです」

「よし、早速それらしいモンスターがいないか調べてみよう。みんな注意してね」

叔父さんチームが穴の周辺を見回っていると背後からモンスターの影が…

「キュキューゥ」ドチラサンドスカ

「ぴゃ!?なっなんか大きめのヤモリみたいなのが」

「これがアナホリサンドラゴンなんでしょうか?思ってたよりも小さいですね」

「ヒゲは生えてないですね。もしかしてアナホリサンドラゴンの子供でしょうか」

「その可能性は大いにありますね。だとすると近くに親の個体がいると思うんだけど」

「キュッキュキュー」トーチャンカーチャンジャナイ

「目的はあくまでアナホリサンドラゴンのヒゲで討伐したい訳じゃないですからこの子を狩るのはよくないですよね」

「あっですね」

「じっとこちらを見つめてくるだけで何も危害を加えてくる気はなさそうですし…」

「キューゥ?」イジメル?

「それになんだかカワイイです♪叔父様!この子家で飼えませんか?」キターン

「それはさすがに難しいんじゃないかな」

そこに大きなモンスターの影が2体叔父さんチームに襲いかかってきた!

「ギュアァァ」ナニスンネンオゥ?

「グアグアァァ」オコルデシカシ

「きゃあ!?」

「あっ喜多ちゃん!?」

「危ない!みんな下がって!」

「これはなんて大きな…」

立派なヒゲを携えたアナホリサンドラゴン×2が飛び出してきた!

「ギャアギャアギュア」シヲクレテヤル

「グガァー」カイジントカセ

アナホリサンドラゴン×2は火炎放射をくり出した!

「ひっあっ熱っ熱っ」

「ひとりちゃん私の後ろに!」

喜多郁代は後藤ひとりに向かって放たれた火炎放射を代わりに食らった!

「喜多さん!」

「だっ大丈夫ですか!?今すぐ回復の魔法を!」

「ウフフ♪叔父様PAさん、大丈夫ですよ!私はスキルの効果で太陽が出ている間は火の攻撃は効きませんから!」キタキターン

「喜多ちゃんすごい…これが真の陽キャ」

「グルルル」ナンデヘイキナン

「グアグア」ハンソクヤン

「ここは私に任せてください!」キターン

喜多郁代はアナホリサンドラゴン目掛けて突撃して素早い斬撃をあびせた。アナホリサンドラゴン1に7、アナホリサンドラゴン2に9のダメージを与えた!

「喜多さんすごいですねー」

「あっ」

「でも1人で二体相手にするのは危険だよ。私も戦うから無理しないで」

叔父さんは喜多郁代の隣へ走り、アナホリサンドラゴンに向かって拳を構えた。

「叔父様提案なんですけど、私達の目当てはヒゲだけなのでなるべくモンスターを傷付けずに済ませることってできませんか?」

「あっわっ私もその方がいいと思います」

「確かに。このままこの2体を倒してしまったら、子供のアナホリサンドラゴンにとって私達は極悪略奪者になってしまいますね~」

「ふむ…」

よく見ると喜多郁代が切りつけたのはアナホリサンドラゴンのヒゲの部分で、アナホリサンドラゴンの体には一つも切り傷が付いてなかった。

「うん、そうだね。この子達の生活を壊してしまうのは良くないし、ヒゲだけいただいて帰る方が良さそうだ。私だと与えるダメージが高すぎてヒゲを取る前に倒しちゃうかもしれないから守りに徹しているよ」

「ありがとうございます叔父様!ヒゲは私が切り取ってみせます!」キターン

「私も微力ながらお手伝いしますよー♪」

喜多郁代は再びアナホリサンドラゴン1と2に素早く斬りかかり、PAさんはいつの間にか覚えていたという束縛(バインド)の魔法でアナホリサンドラゴンの動きを封じて喜多郁代をアシスト。結果、見事にアナホリサンドラゴンのヒゲのみを切り落とすことに成功した!

「すごい!喜多さんとPAさん、見事な連携だったね」

「ありがとうございますー♡こっそり魔法の練習してた甲斐がありました♪」

「やったわ!アナホリサンドラゴンのヒゲゲットよ!」キタキターン

「グガグゥゥ」ナンカスッキリシタ

「ガウガウゥゥ」カラダガカルクナッタゼ

「キュキュキュウ♪」トーチャンカーチャンヨカッタナ

「あっなんかヒッヒゲを切られたアナホリサンドラゴンが心なしかご機嫌なように見えます」

「本当!もしかしてこの長くて太いヒゲが邪魔だったのかしら?」

「もしかしたらサワラヌカミニナントヤラドラゴンの異名はこの立派なヒゲが邪魔でイライラしてる時の状態のことを言ってたのかもしれませんね」

「なるほど。私達がヒゲを切り取ったのはむしろ良い行いだったんですね!」キターン

「ガウガウ」アリガトヤデ

「ガガウウ」オオキニドス

「キュキュキュキュ♪」ホナマタ

アナホリサンドラゴンは叔父さんチームにペコリと頭を下げて巣穴に戻っていった。

「とりあえず無事アナホリサンドラゴンのヒゲを手に入れることができたね」

「この調子で金属スライムの皮膚もサクッとゲットしちゃいましょう♪」キターン

「あっでもこのヒゲすごく太くて大きいので、いっ一度STARRYに持ち帰った方がよさそうです」

「ですねー。これを持ち歩きながらニューヤード周辺まで行くのは大変そう」

「そうだね。じゃあ一旦STARRYまで戻ろうか。もしかしたら虹夏ちゃん達も戻ってきてるかもしれないし」

「はーい♪」

「賛成です♪」

「あっはいそれがいいですそうしましょう」

こうして特に苦戦することなくアナホリサンドラゴンのヒゲを手に入れた叔父さんチーム。1人一本ずつ(叔父さんは三本)抱えてSTARRYへと戻ったのでした。


「ただいま」

「ただいま帰りましたー♪」キターン

「あっ…おっ重かった」

「これは行く時よりもなかなかハードな運動になりましたねー」

叔父さんチームがSTARRYに戻ると既に虹夏チームが帰ってきていて、叔父さん達を明るく出迎えてくれた。

「晋作さん達おかえり~♪お疲れ様!ってそのぶっとい蔓みたいなのってまさか…」

「ウフフ♪そうです!アナホリサンドラゴンのヒゲ!無事ゲットしてきましたー」キタキターン

「おーやるな。こっちもなんとかヌマリゲーターの牙を手に入れてきたぞ」

「かなーり大変だったけどね~。しんどかったー」

「それは素晴らしい。虹夏ちゃん達頑張ったんだね」

「えへへ~♪でも今回はリョウが一番頑張ったかな」

「まあそうだな。あいつのスキルが本物だってことがわかったよ」

「リョウ先輩が!?ステキ♡さすがはリョウ先輩です!」

「あっでも、かっ肝心のリョウ先輩はどこに?」

「リョウなら空腹が限界突破してそこでダウンしてるよ」

「うう…し、晋作オジサン…」ガシ

「リョウさん!いつの間に私の足元に!?」

「私…今回頑張った…だからご飯…ください」グググググゥゥゥゥゥ

「あらあら未だかつてないお腹の音ですねー」

「リョウったら、この空腹は絶対晋作さんのご飯で満たすんだーって聞かなくて」

「それで私達が帰るのを待ってくれてたんだね。わかった!リョウさん、今から腕によりをかけて美味しいご飯作るからもう少しだけ待っててね!」

「な、なる早でヨロ…シク」グゥゥグググゥゥ

両チームともに目標の素材を1つずつ入手することに成功した。しかし満身創痍の子もいるため、今日の素材集めはここで切り上げることに。この調子で残る素材も無事に手に入れることはできるのか。

つづく(まーだまだゆーっくり続けるんよ)
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