今回はアンソロジーコミック第6巻からふたりちゃんメインのお話。にいつものように叔父さんを混ぜ混むよ。
投稿遅くなって申し訳ない。
「おじちゃーん!」
「晋作きたぞー!」
「はいいらっしゃいふたりちゃん」
日曜日の昼間。ライブの準備のためにこっちに来ていたひとりちゃんが自宅に財布を忘れたというので、金沢八景からわざわざ届けに来た私の愛すべき姪ふたりちゃんのご到着。届けるついでに来る自主企画ライブに出演させてもらえるようになった挨拶がしたいという兄さんも一緒だ。さらにふたりちゃんがSTARRYに行く前に手土産とは別に差し入れを作りたいというので、それならば私の家で作っていこうという流れになったのだ。頼ってもらえて嬉しいね!兄さん曰く、何を作るかもふたりちゃんに任せてあるとのこと。ここに来る前に買い出しを済ましてあったようで、兄さんとふたりちゃんの手にはそれぞれ幾つかの食材が入ったマイバッグが…それもなかなかな量の。気合い入ってるね!
「おじちゃん台所かしてください!」
「はいどうぞ。今日はふたりちゃんは何を作るのかな?」
「えへへ~♪あのね、ふたりは今日クレープを焼きます!」
「えっクレープ!?」
「ふたりがオーチューブで【フライパンでひたすらクレープを焼く】ってショート動画を見つけてな。それで自分でもやりたい!って言い出したから、じゃあ今度STARRYのお姉さん達にあげる用の作ろうか!ってことになったんだよ」
「へぇ、なるほど。ならすごいの作ってSTARRYのお姉さん達を驚かせちゃおうね」
「うん!」
ふたりちゃん…自作のおやつをSTARRYの人に振る舞いたいなんて、なんて優しい子なんだ!叔父さん感動した!それに前にやった手打ちうどん並のこの行動力。私も見習わなければならないな。
ふたりちゃんは意気揚々とキッチンへ移動し、持ってきた食材をマイバッグから出して並べていく。私も隣で必要そうな調理器具を準備してふたりちゃんをサポート。今回私はなるべく出しゃばらないでふたりちゃんのやりたいようにやらせてみよう。
「おじちゃんのフライパンおっきい!」
「そうだなー。ふたりに使いこなせるかなー?」
「うんがんばる!」
「じゃあ最初は生地を作るところからかな」
ボウルにはくりきこをふるいいれて、ときたまご、さとう、しお、ぎゅうにゅうをすこしずついれながらまぜる。
「おおー!いいぞふたり。キレイな生地に仕上がってきてるぞー!」
「ふたりちゃんすごく手際がいいね」
「あのね、おじちゃん家に来る前にオーチューブとか見て作り方をいっぱい調べておいたの!しみれーしょんもバッチリだよ!」
ふたりちゃんは泡立て器片手にフフン♪と得意気にそう話してくれた。そのドヤ顔は反則すぎる。かわいい。
「さすが我が娘!でもふたり、火を使う作業は晋作おじちゃんに手伝ってもらおうな?」
「うん!おじちゃん、次はこのバターを溶かしてこっちの生地に入れてください!」
「はい、おまかせください」
無塩の溶かしバターを生地に加えてよく混ぜたらラップをして冷蔵庫で30分休ませる。
「生地を休ませてる間にクレープの中に入れるものを準備しようか。ふたりちゃん、今日は何クレープを作る?」
「今日作るのは~…コレ!」
ふたりちゃんが声高らかにたくさんある食材の中から一つを選び取り、両手でそれを掲げてみせた。
「このバナナでチョコバナナのクレープを作ります!」
ジャジャーンという効果音が聞こえてきそうな程元気よく宣言するふたりちゃん。なるほどチョコバナナか!クレープの王道にして究極のフレーバーと言っても過言ではない。ふたりちゃんわかってるね!
「このバナナを薄く切ってクレープにキレイに並べるの!」
「うんうん、それはきっとすごく美味しいものになるね」
「えへへー♪」
「いいチョイスだぞふたり!危ないからこの前のうどんみたいにお父さんと一緒に切ろうな!」
「えーふたりおじちゃんとがいい」
「ガーン!!晋作キサマ!いつの間にひとりだけでなくふたりまで誑かしたんだこのすけこましめ!」
「兄さん落ち着いて。バナナを切るだけだから。あとそもそもひとりちゃんのことも誑かしてないから」
バナナのかわをむいて、ななめにうすくきる。くろくへんしょくしないようにレモンじるをかけておく。
「バナナきれた!」
「すごいねふたりちゃん。ちゃんと色が変わらないようにレモン汁も使っててエライ!」
「あのね、動画のお姉さんがワンポイントアドバイスでへんしょくしにくくなるって言ってたの!」
すばらしい。動画で得た知識を取り入れて、食材を美味しく食べられるようにする努力も惜しまないとは…すごいねふたりちゃん!良い意味で末恐ろしい子だ。
「フフフバッチリ撮れたぞ…このふたりと晋作が仲睦まじくバナナを切る画像をひとり経由で虹夏ちゃんに送って嫉妬されるがいい!」
「兄さんは兄さんで楽しそうだね。あと何でそこで虹夏ちゃんが出てくるんだい?」
ボウルにはいったなまクリームをこおりみずをあてながらあわたてる。
「生クリームもふたりが作りたい!」
「そうだね。じゃあちょっと大変だからこの電動のハンドミキサーを使おうか。私が下のボウルを持っておくから兄さんはふたりちゃんのサポートしてあげて」
「よしきた!ほっぺた落ちるような極上のクリームにしてやるぜ!」
とちゅうでれんにゅうとバニラエッセンスをくわえてクリームがモッタリするまであわたてる。
「ふむ、泡立てるのはこのくらいでいいかな。ふたりちゃん味見してみて」
「うん!あーん…ん~♡甘くておいし~♪」
「ならクリームはこれで大丈夫そうだね。次はいよいよクレープを焼く作業だよ」
「うん!がんばる!おじちゃんお手本見せて」
「了解。なるべくゆっくり焼くから見ててね?」
フライパンに油を引き火にかける。火を弱めてクレープ生地を流し入れ、フライパンを回しながら円形に形を整える。生地のふちが焼けてきたらひっくり返して15秒程焼き、皿に移す。
「はい、これにトッピングをして包んだら出来上がりだよ。ふたりちゃんもやってみよう」
「フライパン熱くなってるから気を付けて焦らずゆっくりだぞー?」
「うん!」
クレープきじをながしいれてフライパンをまわしながらまるいかたちにととのえる。
「よし、良い感じだね。そうしたらフライ返しでひっくり返すよ」
「危ないからお父さんと一緒にな?」
「はーい!」
きじをひっくりかえして15びょうくらいやいたらおさらにうつす。
「焼けた!あとはバナナとチョコソースとクリームをつけるよ!」
「また叔父さんにお手本見せてもらうか?」
「んー大丈夫!家でクレープ包む練習いっぱいしてきたから自分でやる!」
あらねつがとれたクレープきじのまんなかにバナナとなまクリームとチョコレートソースをトッピングしてつつみこむようにおりたたんだら「かんせーい♪」
わーい♪と超上機嫌な様子で完成を喜ぶふたりちゃん。かわいい。これは是非ともSTARRYの皆に食べてもらいたいね!
「おとーさんおじちゃん早く!早く行かないとクレープ腐っちゃうよ!」
「お、そうだな。行くぞ晋作!我が娘の力作の味をSTARRYの皆さんに知らしめてやろうぜ!」
「えっ私も行く流れ?」
まあ行きますけどね。ふたりちゃん作のクレープに対する皆のリアクションがみたいからね!
「こんにちはー!」
「えっふたりちゃん?こ…こんにちは」
「あらあら珍しいお客さんですねー♪」
「おっちゃんもいるじゃーん。やっほ~」
ふたりちゃんの元気な挨拶とともにSTARRYへ入ると星歌さん、PAさん、廣井さんが出迎えてくれた。
「どうもー。娘が財布を忘れていったみたいで届けにきましたー」
「ああぼっちちゃんのお父さんもどうも。ぼっちちゃんは今スタ練行ってるけどもうすぐ戻ってくると思いますよ」
「おねーちゃんいないの?」
「そだよー。戻ってくるまでお姉さん達と遊んでよーねー」
「わーい♪」
ひとりちゃんがいないことを知って少し残念そうなふたりちゃんにすかさずフォローを入れる廣井さん。意外とそういう気遣いとかできるんですね。
ブゥゥゥゥンブゥゥゥゥン
「おっとすいません会社から電話が…ふたり、良い子にして待ってるんだよ?」
「はーい」
兄さんは電話のために星歌さんによろしくお願いしますと一礼した後外へ出ていった。心配しなくてもふたりちゃんはここにいる大人達を困らせるような行動はしないと思うけど。
「ふたりちゃん何して遊ぶー?ってかこの年頃の子って普段何して遊んでんの?おままごととか?」
「いやさすがにもうちょっと別の遊びするだろ」
「うん、おままごとは時々お友だちとやるよ!」
「マジか」
「じゃあ決まりー!皆でおままごとだー!ふたりちゃん配役決めてよー」
「うん!わかった!」
おっと、唐突にふたりちゃんと兄さん以外の大人全員でおままごとをやることになってしまった。ふたりちゃんは腕を組んでうーんうーんと真剣に配役を決めている。なるべく難易度の低い役をお願いします。
「はい決めました!まずふたりはおかあさん役ね!」
「背伸びしたいお年頃なのか…」
ふたりちゃんがやるお母さんか。モデルが美智代さんだとしたらどんなお母さんになるのか興味があるのと心配なのが半々かな。
「それでねーそっちの黒いおねえちゃんはペットの犬役ね!」
「ワンワン♪お母さんみたいなかわいい人が飼い主で幸せだワーン♡」
PAさんが犬役。本人はノリノリでやってるし楽しそうだ。なんとなく声がジミヘンに似てるような気がする。
「お酒くさいおねえちゃんはのんだくれのおとうさん」
「う~い♪酒持ってこーい!」
廣井さんが酒飲みのお父さん役…うん、適任すぎる。
「おじちゃんはふたりのこどもね!」
「えっふたりちゃんの子供?」
「もうー、しん君お母さんのこと名前で呼んじゃダメでしょ?」
「しん!?…あっごっごめんねお母さん」
急にふたりちゃんの息子役になった上に既に始まっている。これがふたりちゃんクオリティのおままごとか。奥が深いね。
「よかったな晋作さん。かわいいお母さんができて」
「そ、そうですね。ふたりちゃん、星歌さんは何の役なんだい?」
「ツンツンのおねえちゃんはー…あかちゃん!」
「え!?私が赤!?」
「はーいねんねしましょうねー♪」
「うぇ!?」
ふたりちゃんは床にちょこんと座り、膝をポンポンと叩いて赤ちゃん役の星歌さんに膝枕をしようと両手を広げながら真っ直ぐ星歌さんを見つめている。うわぁ~なんという破壊力だろう。星歌さんもふたりちゃんの太ももに目が釘付けになってるね!その目がちょっと怖いのは多分気のせいだね!
「はっ!い、いやいや私みたいのが子供の真似するとかさすがにどーよ…」
「えー先輩何恥ずかしがってんですかノリ悪ーい」ブーブー
「私も犬役やったんですから店長もやらないとー」ブーブー
「前におねえちゃんにやったかわいい髪型似合ってたからかわいいあかちゃんの役ピッタリだと思ったんだけどな…」シュン
「うう…」
星歌さん…これは断れないやつですね。南無三。
そうして星歌さんはふたりちゃんの膝枕の中に収まり、ふたりおかあさんに寝かしつけられることになりました。
「せーかちゃんいいこねー。ねんねしましょーねー」ナデナデ
「ば…ばぶー…///」
「ほらほらしん君もおにーちゃんなんだから妹のめんどー見ないとだめでしょー?」
「あっはい、えっと星歌ちゃんいいこだねー…」ナデナデ
「ちょっ…晋作さ」
「ごめんなさい今だけは耐えてください」
「そーだ!兄妹はなかよく一緒に寝ないとー。ほらしん君こっちおいでー」
「えっ」
「いいね~おっちゃん…じゃなかった。息子よーお母さんに存分に甘えちゃいな~」
「ワンワン~♪」
それはマズイ。幼女(姪)に膝枕されるおっさんの絵面は本当によろしくない。星歌さんにだけやらせておいてなんだけど、何とか回避する方法はないものか…あっそうだ!
「ボクお腹空いたなーおやつ食べたいなー。具体的にはさっきお母さんが作ってたアレがいいなー」
「あ!そうだった!ふたり、みんなのためにクレープ作ってきたの!しん君カバン取ってー」
「あっはい」
「お姉ちゃんただいまー…ってお姉ちゃん何してんの!?」
「あってっ店長さん!?」
「おおーこれはまた可愛らしい絵図だね」ニヤニヤ
「普段クールな店長さんが膝枕されてるなんて!映えの予感だわ!」パシャパシャ
「ふたりの面倒見てくれてありがとうございます」
ふたりちゃんが星歌さんに膝枕をしながら、カバンからクレープを取り出しているところへ結束バンドがスタ練から帰って来た。ついでに兄さんも会社の電話が済んで戻ってきたみたいだ。またなんというタイミングで…あ、星歌さん顔を真っ赤にしたままフリーズしてるね。
「あ、皆ちょうど良いところに!今からふたりちゃん特製の差し入れを食べるところなんだよー」
「えっふたりが作ったの?」
「うん!お父さんとおじちゃんとがんばって作ったよ!はい、これお姉ちゃんの分」
「あっありがとう」
本日の差し入れ
ふたりちゃん特製チョコバナナクレープ
「えっすご!ちゃんとしたクレープだ!」
「妹ちゃんなかなか気が利くじゃないか。スタ練後でちょうど小腹が空いていたところ」
「形が崩れないように一つ一つラッピングもされててステキね♪」キターン
「じゃー手を合わせてください!」
「「「「「いただきます」」」」」
今日の差し入れはふたりちゃん作の特製クレープ。生地の作り方やバナナの切り方にまでこだわった至高の逸品だ。結束バンドを始め、大人組にも配れるようにたくさん作ったけど皆の反応はどうだろう。
「はむはむ…ん~♪しっとり柔らかなクレープに包まれたバナナとチョコがたまんないね!」
「んっ…あっ美味しい。すっすごいね。こんなに美味しいクレープ私なんかじゃとてもとても…」
「うむ!うまい!何気に生クリーム単体もかなりのクオリティ」
「ふたりちゃんの美味しいものを食べてもらいたい気持ちがすごく伝わってくるわね♪」キタキターン
「うまうま~♪酒のあてにはならんけどこれは絶品だね!ねー先輩?」
「んっああ、これはうまいな。将来は大人気のクレープ屋になってるかもな」
「ほんと?よかったー♪」
「頑張って作った甲斐があったなふたり」
「うん!」
STARRY内では皆口々に美味しいと連呼してクレープを食べている。うんうん、確かに美味しい。ふたりちゃんのクレープ大作戦大成功だね!ついでにふたりちゃんの膝枕の&星歌さんと添い寝も回避できたので一安心だ。
ごちそうさまでした
「ふたり、財布届けてくれてありがとう。クレープもすごく美味しかったよ」
「おねーちゃんギターのこと考えると他のことすぐ忘れちゃうもんねー今度のライブもがんばってね!」
「うっうん、ありがとう。頑張るね」
「ふたりのやつ、ひとりが今度の自主企画ライブにものすごく気合いが入ってるの知ってて、ちゃんと面と向かって応援したかったんだよ」
「なるほど、だから家でクレープまで作って…」
ふたりちゃんが姉思いの優しい子なのは知ってたけど、自分で差し入れを作って激励にくる程とは…いやはや恐れ入った。その思いやりを聞いただけでこっちの心が温かくなってくるね。
「あ、そうだ!おじちゃん!」
「ん?どうしたのふたりちゃん」
「今度おままごとする時はおねえちゃんがおかあさんでおじちゃんをおとうさんの役にしてあげるね!」
「えっ」
その「おねえちゃん」は誰のことを言ったのかな?いや誰のことだとしても相手に悪いから遠慮願いたいです。
次回 ゲーセンと姪と◯◯
アンソロジーゾーン継続です
↓おまけ
異世界でも叔父さんは食べさせたい
※パラレルワールドといったらパラレルワールドなんです
↓前回までのあらすじ
虹夏チームは無事バリカタシの木の枝をゲットしたよ!残るは叔父さんチームの金属スライムの皮膚だけ!がんばれ叔父さんチーム!
キャラ紹介
後藤ひとり
転生先の世界でも叔父さんと同居。スキルの効果で自力でモンスターを倒せない。でも前衛がすごく強いので全然問題ない。新たなスキルでいつでもギターが弾けるようになりました。
叔父さん
異世界でもひとりちゃん達に食べさせる生活を目指す。作った料理に体力と状態異常回復&経験値取得の効果が付くスキルを持っている。さらにパーティ内に女性が多いと物凄く強くなるスキルも習得。戦闘でも頼れる神おじさん。
山田リョウ
特典ほぼなしで転生してきた不憫な子。スキルのせいで戦闘中は強いけどすぐお腹が空くのであまり戦いたくない。叔父さんのご飯が大好き。現状真面目に戦うと結束ギルド内で一番強い。
喜多郁代
叔父さんの家に住みながらSTARRY異世界店へ通う。戦闘もひとりやリョウの代わりに率先して行う聖人陽キャ。STARRY異世界店や結束ギルドの看板娘的存在。お日様が出てる間は火と光属性無効の無敵陽キャ。
伊地知虹夏
叔父さん以上に特典盛り盛りで転生してきた元下北沢の大天使。異世界でのライブハウス再開のために今日も奮闘する。一応この異世界のお姫様だけどその設定が忘れられそうな勢い。
伊地知星歌
伊地知虹夏と共に転生してきた伊地知虹夏の姉。叔父さんと一緒に保護者役として結束バンドの冒険に付いていく。STARRY異世界店の店長もやっている。怒らせると(物理的な意味で)とってもコワイ。
PAさん
しれっと転生していた黒髪ロングでピアスなお姉さん。朝が弱いのでお昼からなら働きます。ティズワラ編の時にお留守番だったのが寂しかった模様。事前の情報収集も欠かさない出来る大人。
廣井きくり
転生特典で愛用のベースを持って転生してきたSICK HACKのベーシスト。伊地知姉妹のお城に住まわせてもらえるようになりました。ついでにお仕事も貰えたようです。今回の素材集めにはお城の兵士から借りたお金を返すために参加しました。
必要素材を集めよう!叔父さんチーム編その2
素材集めチームその1である虹夏チームがヤソークエの森に集まっている頃、叔父さん、後藤ひとり、喜多郁代、PAさんの4人は2つ目の素材である金属スライムの皮膚を探すためにアンダーノースからニューヤードへ続く道を移動しているところだった。
「さて皆、今回はニューヤード周辺を探索することになるから前回よりも移動距離が長くて出てくるモンスターも手強くなるから気を付けていこうね」
「はーい♪」キターン
「あっはい」
「ウフフ♡今の時間の私はスキルの効果でとってもか弱いのでおじさま守ってくださいね?」
「そうですね。金属スライムが出現する所までは極力戦闘は避けるつもりですけど、やむを得ず戦うことになったらPAさんは私の後ろに下がっててくださいね」
「ありがとうございます♪」
ニューヤード周辺
アンダーノース~ニューヤードまでの道は大したことはないが、ニューヤード~ティズワラまでの道のりで急に難易度の上がる初心者泣かせの道。一般人は腕の立つ護衛や送迎を付けないと安全に通るのは難しい。そのため修行で腕を磨く冒険者も少なくない。
「よし、とりあえずは目的地に到着だね」
「うっ既に結構疲れた…」
「さあ頑張って探すわよー!そうだ、PAさんアナホリサンドラゴンの時みたいに何か情報はありますか?」
「もちろん♪今回もリサーチ済みなので金属スライムについての情報ありますよー」
PAさんは、前回同様どこからともなく取り出した手帳をめくり、金属スライムに関するページを開くとそれを読み上げた。
「金属スライムはこの近辺に生息するスライム族の中でも特に希少な種類でめったにお目にかかれないレアモンスターらしいです」
「先ず見つけるのがとても大変ということですね」
「そっそんな貴重なモンスターを探すんですね。きょっ今日中に出会えるかな…」
「なかなか出会えないなんて映えの予感!」キターン
「ウフフ♪情報はまだありますよー。実はこの金属スライムを誘き寄せる方法があるのです」
「おお、それはいいですね。いったいどんな方法なんですか?」
「金属スライムはとにかくやわらかいものが大好きらしいんです」
「柔らかいもの?好きな食べ物のことかしら?」
「あっ食パンの真ん中とかマシュマロとかですか?」
「なるほど。好物のエサで釣るということか。やってみる価値はありそうですね」
「はい♡なので私、色々なやわらかいものを持参してきましたー♪」
PAさんは持っていた道具袋から自分で持ってきたという各種『やわらかいもの』を取り出してみせた。
「ふむ、パンにバスタオルに枕…」
「リボンにゴムボールに綿…それとお水?」
「あっ軟水…?」
「フフフ♪これだけたくさんの『やわらかい』があればどれか1つくらい反応すると思いませんか?」
「確かに。よし、じゃあこれらを仕掛けて各自金属スライムが出てくるのを見張ってみよう」
「賛成です!楽しくなってきたわね!」キターン
叔父さんチームは叔父さんとPAさん、後藤ひとりと喜多郁代の2組に分かれて、『やわらかいもので金属スライム誘き寄せ大作戦』を決行した。しかしなかなか金属スライムは現れず、時間だけが無情にも過ぎていき時刻は早くも正午を迎えようとしていた。
「うーん…金属スライム出てきませんね」
「やはり食べ物系はおじさまに頼んだ方がよかったのでしょうか」
「一先ずひとりちゃん達と合流してお昼ご飯にしましょうか。しっかり休息を取って、午後からは皆で辺りを探し回る作戦に切り替えましょう」
「それが良さそうですね。すいませんおじさま、お役に立てず…」
「いえいえ、そもそも遭遇するのが困難なレアモンスターなんですから色々試してみましょう」
「…っはい♡ありがとうございます♪」
\キャー!!/
その時喜多郁代のものと思われる悲鳴が叔父さんとPAさんの耳に届いた。2人は急いでその声が発せられた場所へ向かう。するとそこには…?
「ひとりちゃん!喜多さん大丈夫!?」
「叔父様、PAさん大変です!ひとりちゃんが!ひとりちゃんが!」
「後藤さんがどうされたんですか?」
「ひとりちゃん一体どうし…え?」
叔父さんとPAさんがひとりちゃんの方に目をやると、そこには銀色の物体にのしかかられて身動きが取れなくなっている後藤ひとりがいた。よく見るとその銀色の物体は後藤ひとりの体に纏わり付いたままグネグネと動いており、これが叔父さん達が探していた金属スライムである可能性が高かった。
「2人で仕掛けたやわらかいものを見張ってたら後ろからいきなりひとりちゃんに襲いかかってきたんです!」
「もしかしてこれが金属スライムなんでしょうか?」
「そっそのようですね。ひとりちゃん大丈夫かい?」
「うっあっはい…ダッダメージはそんなにないんですけど、ぜっ全身に絡み付いてて動けないです…あっ//やっやめて…そこは…あう///」
後藤ひとりに付いた金属スライムをよく観察してみると、主に後藤ひとりの胸やお尻辺りでモゾモゾ動いているのがわかった。
「まさか金属スライムの好きな『やわらかいもの』って…ひゃ!?いつの間にか私の足元にも金属スライムが!?」
後藤ひとりの様子を見ていたPAさんの背後からもう一匹の金属スライムが現れ、後藤ひとり同様PAさんの体に纏わり付いてきた。
「んっあっ私も身動きが…ひっ!?このスライム私の弱いところを的確に…///」
「PAさん!?大丈夫ですか!?」
「大変!ひとりちゃんだけじゃなくてPAさんまで金属スライムに捕まっちゃうなんて!叔父様!早く助けましょう!」
「うん!そうだね!待ってて2人とも今そのスライム倒すからね!」
叔父さんと喜多郁代は、後藤ひとりとPAさんに絡み付いている金属スライムに攻撃した!しかし金属スライムの体は想像以上に硬く、大したダメージを与えることはできなかった。それどころかその衝撃に反応して余計にモゾモゾ動きまわり、その度に2人からよい子にはお聞かせできない艶やかな声が発せられた。
「あっ//うっ//おっ叔父さん喜多ちゃんたっ助け…ぴゃああぁぁ♡」
「んっ♡はっ♡あん///ダ、ダメですおじさまの前でこんなはしたないあ♡」
「………」
「…叔父様?何で動かないんですか?早く助けましょうよほら早く。それとも今のひとりちゃんとPAさんに何か変な感情でも抱いたんですか?どうなんですか?」キタァーン?
「えっあっいやまさかそんな不謹慎なこと考えてないよ?どうやって2人からスライムを剥がそうかなと思ってただけだよ」
叔父さんは何故か目のハイライトが消滅している喜多郁代とともに、金属スライムを引き剥がそうとあれこれ手を尽くしたが…
「むぅー…全然取れませんね。ずっとこのままだったらどうしよう…ひとりちゃん大丈夫?苦しくない?」
「うっ///あっはい。べっ別にキツく巻き付いてるわけではないので…あっ//でっでも時々その…ひっ//もっ揉みしだかれて変な声が出ちゃいます…んっ//」
「PAさん、金属スライムについての情報他にありませんか?どんな些細なことでもいいです」
「んひっ♡きっ金属スライムはやわらかいものをふぁっ♡満足するまでたっ堪能したらあんっ//脱皮をして去ってくそうですんはぁ♡」
「えーとつまり…」
「金属スライムの気が済むまで待つしかないってことですか」
「あっ…そっそんな、助けて…んあぁぁ//」
30分後
「ピキキー」エエヤワラカサヤッタワ
「ピキピキ」コレデアシタモガンバレルデ
「はぁ…はぁ…やっと離れてくれました」
「うう…ひどい目に遭った」
「金属スライム達、ものすごい早さで逃げていったわね」
「2人とも大丈夫かい?どこか怪我とかしてない?」
「あっはい。特には…それどころかなんだか体がすごく軽いような…」キラキラ
「ですねー。肩こりや疲労感も一切ないです」ツヤツヤ
どうやら金属スライムは天然の全身マッサージ器だったようだ。そして2人の服に脱皮した金属スライムが残していった皮が張り付いていた。
「もしかしてこれが金属スライムの皮膚なのかしら?」
「そうですねー。金属スライムの皮膚は金属スライムを倒しちゃうと手に入らない貴重な素材なんですよー」
「あっいっ一応素材を手に入れるための正攻法ではあったんですね…」
「手に入ったのもだけど2人が無事で何よりだよ。助けてあげられなくてごめんね」
「あっいえ…そっそれにしてもなっ何で金属スライムは私とPAさんを狙ったんでしょうか」
「それは…な、何でだろうね」チラ
「叔父様?何で一瞬私の方を見たんですか?何か言いたいことがあるんですか?」キターン?
「えっあっいや誤解だよ喜多さん!」
「私には金属スライムがよってくるようなやわらかいところがないと言いたいんですか?そうなんですね?なんなら確かめてみますか?」キタキタァーン?
「そんな事思ってないよ!喜多さん近い!目が!目が怖い!」
「あらあらおじさま~。喜多さんと随分仲良しですねー?さっきまで私にあんなに熱烈な視線を向けてたのにもう他の女の子に目移りですか~?」ニヤニヤ
「PAさんわかってて弄ってますよね?って痛い痛い!喜多さん腕の肉をつねらないで!」
「あっあわわわ…おっ叔父さん大丈夫ですか?なっなんで急に修羅場な展開に!?」
叔父さんチームは叔父さんと喜多郁代の関係以外は無事に目的である金属スライムの皮膚を手に入れることができた。これでようやく結束バンドの楽器を修理することができるのか…?
つづく(グダグダ進行でも続けるのです)