ロックな姪と食べさせたい叔父さん   作:氷英

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ご覧になっていただきありがとうございます。

今回はアンソロジーコミックと廣井きくりの深酒日記が少し混ざったようなお話。


ゲーセンと姪とぼっかけ焼きそば

「女子高生分が不足してきたわ…」

 

「あっえっ?きっ喜多ちゃん?」

 

「キラキラ成分が足りてないわー!」キラキターン

 

「ぐわっ!?まっ眩しい!」

 

「おーこれは…」

 

「もしかしてまた喜多ちゃんの発作?」

 

「郁代は定期的にこの状態になるよね」

 

12月某日、自主企画ライブに向けて練習を重ねていた私達結束バンド。一区切りついて小休止しているところ喜多ちゃんが御乱心。リョウ先輩も言ってるように喜多ちゃんは定期的に爆発するなぁ…最近の喜多ちゃんは出演バンドが集まるかとか、集まらなかった場合の箱代どうしようとか心配事が続いていてまともに女子高生的活動ができていなかったみたいで大変な様子。その気持ちは…ダメだ、ド陰キャな私には全然わからない。しかしこうなった喜多ちゃんは誰も止められない。また喜多ちゃんが満足するような陽キャイベントをこなして落ち着いてもらうしかないのかな。

 

「まあ最近自主企画ライブのことで気が張りすぎてたし息抜きは必要かな。で、どうする喜多ちゃん。前みたいに下北沢散策する?それともまた晋作さんの家で皆でご飯作るとか?」

 

「晋作オジサンの家でタダ飯は大歓迎」

 

「あっなら叔父さんに連絡を…」

 

「それなら私皆さんで行ってみたいところがあるんです!」キターン

 

「あっえっ行ってみたいところですか?」

 

 

 

 

 

 

「フフフ…ついにこの日がやってきた!」

休日の昼間。下北沢のとあるゲームセンターに訪れた私は、ひとりちゃんにご飯を作る時くらい気合いが入っていた。その理由は本日、私の大好きなアニメ『孤独・な・ろっく』の最推しキャラであるロンリーちゃんのプライズフィギュアが入荷される日だったからである。今回のロンリーちゃんは、学生服姿でギターを構えたまま座っている体勢のやつのとても可愛らしい代物。普段UFOキャッチャーとか全然やらないけど、景品がロンリーちゃんならば話は別。できれば鑑賞用と保存用で最低二体はお迎えしたいところ。今回の軍資金は5000円。これだけあればゲーム下手っぴな私でも取れるはず!では後藤晋作いざ参る!

 

 

 

 

15分後

 

 

 

「うぐぐ…あと一回…あと一回で取れるはず…」

はい、普通に沼りました。あっという間に軍資金の残りが500円。いや、財布に少し100円玉が残ってたはずだから延長戦は可能だ。しかしできればこのターンで決めてしまいたい…あ、またアームが奥に行きすぎちゃった…。も、もう一回!次こそは!

 

「あれ?ぼっちさんの叔父さんこんなところで奇遇ですね」

 

「え?あっ長谷川さん。どうもこんにちは」

UFOキャッチャーの景品が取れずに延々と沼っていた私に声をかけてきてくれたのはSIDEROSの長谷川さん。聞けば長谷川さんはよくこのゲームセンターに来ているそうで、今日は孤独・な・ろっくのロンリーちゃんのフィギュアを始め、幾つかの新商品が入荷される日なので物色しに来たということらしい。そういえば長谷川さんはオーチューブでもゲームの実況とかしてたしかなりのゲーマーなのかな?

 

「ぼっちさんの叔父さんもゲーセンとか来るんですね」

 

「ええまあ、今日はたまたま。この景品が入荷するのを知ったので」

 

「あー孤なろ人気ですよね。ぼっちさんの叔父さんロンリーちゃん推しなんですか?」

 

「あはは、実はそうなんですよ。どことなくひとりちゃんに似ててつい応援したくなっちゃうキャラなんですよね」

 

「なるほど、それでゲットしたいけどさっきからずっと苦戦していたんですね」

 

「うっ…見られていたんですね。お恥ずかしい…でも全然取れなくてね。今日はもうあと500円分やってダメだったら止めておこうかなと思ってたところなんだ」

 

「ふむふむ…この台か。ぼっちさんの叔父さん、ウチに300円…いや200円預けてもらえませんか?ウチが二手で取ってみせます」

 

「えっそれはいいけど、長谷川さんここから二手で取れるの!?」

 

「ここからは無理ですね。素直に店員さん呼んで初期位置に戻してもらいましょう」

 

そう言うと長谷川さんは、近くにあった店員呼び出しボタンを押して私が見事に沼り倒したロンリーちゃんフィギュアを元あった位置に戻してもらった。私の数千円の苦労がなかったことに…ちょっと複雑な心境だな。

 

「じゃあいきます。こういう滑り止めの棒の橋渡しになってるやつはとにかく箱のきわきわを狙って箱を横向きにするといいですよ」

 

「なっなるほど」

 

一手目。長谷川さんは、宣言通りロンリーちゃんフィギュアの箱の右下辺りに右のアームが少しだけかするくらいギリギリの位置でアームを下ろした。すると…

 

「あっすごい!箱がほぼ90℃左に回転した!」

 

「フフフ…計算通りっすね♪二手目は手前の棒と箱の隙間を狙います」

 

二手目。長谷川さんは、またもや宣言通りに箱と棒の僅かな隙間に右のアームを滑り込ませた。そして…

 

ガコン

 

「はい取れました」

 

「おお!本当にたった二手で!?素晴らしい!」パチパチ

 

「はい、ぼっちさんの叔父さんにあげます」

 

「えっ!?いやいいよ。これは長谷川さんが取ったものだし」

 

「ウチを信じて200円預けてくれたじゃないですか。普段こういう代行はしないんですけど、この前のふーちゃんとのコラボ動画出てくれたお礼ですよ。再生数伸びててふーちゃんも喜んでたんで受け取ってください」

 

「あっありがとう。そういうことならいただきます」

 

「それとぼっちさんの叔父さんこの台にどれくらい使いました?」

 

「えっえーと、5000円いくかいかないか位かな」

 

「じゃあその分取り返しましょう。付いてきてください」

 

「は、長谷川さん?」

 

そこから長谷川さんのUFOキャッチャー無双が始まり、大量に入ったうめぇ棒や大袋のポテチ等のお菓子、鼻セレブリティやサラサララップ等の雑貨に至るまで次々と景品をゲットしていった。

 

「はい、ぼっちさんの叔父さんと半分こっす」

 

「こ、こんなに貰っていいのかい?」

 

「今回だけ特別ですよ。ゲーセンは楽しむ所なんでこれを機にぼっちさんの叔父さんもまた来てくれると嬉しいです」

 

「長谷川さん…ありがとう」

 

「ウチもぼっちさんの叔父さんとゲーセンデートできて嬉しかったですよ。…結束バンドの皆さんには内緒にしててあげます」

 

「え?なんで秘密にする必要が?」

 

「…じゃ、ウチはこれで帰りますね」

 

帰り際の長谷川さんは少しだけ素っ気なかった気がした。さて、自力では無理だったけど長谷川さんのおかげでお目当てのロンリーちゃんフィギュアもゲットできたし私も帰ろうかな。

 

「あれ?晋作さんじゃん!」

 

「え?虹夏ちゃん?」

 

「晋作さんもゲーセンとか来るんだね~」

 

今度は虹夏ちゃんとの遭遇。今日は普段行かない場所で知り合いにエンカウントする日なのかな?

「そうだね。ちょっと取りたい景品があって…虹夏ちゃんは皆と来てるのかい?」

 

「うん!喜多ちゃんがいつもの発作起こしてね~。今皆でプリシー撮って喜多ちゃんがデコってるところ。あっちに溶けたぼっちちゃんとリョウもいるよ」

 

「そっか。ひとりちゃんも楽しそうで何よりだよ」

 

「というか晋作さん随分いっぱい景品取ったんだね~」

 

「あーこれは…まあ、たまたまうまくいって」

さっきの長谷川さんのセリフから察するに、長谷川さんは私と一緒にいたことを結束バンドの皆に知られたくないようだから黙っておこう。

 

「伊地知先輩♪たくさん盛れましたよ!って叔父様!」

 

「あっおっ叔父さんどうも…」

 

「晋作オジサン…財布から3000円消滅した私にお恵みを…」

 

虹夏ちゃんと話していると、プリシー(プリントシール)のデコりが終わった喜多さんとそれを待っていたひとりちゃん(半分溶けてる)とリョウさんも合流した。一気に賑やかになったね。

 

「叔父様見てください!ひとりちゃんがこんなに可愛く盛れてるんですよ!」キタキターン

 

「あっあっ…きっ喜多ちゃんあんまり人に見せないで」

 

「あたしの後ろにいるリョウがやたら小顔に見えるのズルくない?」

 

「フフ…これは私の元々のポテンシャルだよ」ドヤ

 

ふむ、プリシーのひとりちゃん目がクリクリになっててこれはこれでかわいい。結束バンドの仲良し感が出てていいね。あ、そうだ。

「皆この後予定ある?よければ家でご飯食べてい「行く。さあ行こう晋作オジサン。そして磨り減らした財布の中身と心と胃袋を満たして」スタスタスタスタ

 

「いや早っ!ていうか晋作さん連れていくな!」

 

「いつものパターンですね♪」

 

「あっですね…」

 

 

そんなこんなで結束バンドと共に帰宅。今日は前々から作ろうと思っていたご当地B級グルメのアレを皆に振る舞えるかな。

 

 

「晋作さん、今日は何作るの?あたしも手伝うよ!」

 

「私も私もー!そして作ってる所をイソスタに!」キターン

 

「あっ私は戦力外なので…見学で」

 

「早く作って。もう空腹も限界」グゥゥ

 

「おいこら陰キャ共」

「あはは…まあまあ、皆で作ればきっと楽しいよ」

 

ウスターソース、ケチャップ、オイスターソース、とんかつソースを合わせておく。下処理した牛スジとこんにゃくを酒、みりん、砂糖で落し蓋をして5分煮たら醤油を加えて更に15分煮てぼっかけを作る。ホットプレートを温めてラードを溶かし、キャベツと麺を炒める。火が通ってきたら揚げ玉と削り粉を加え、先に作っておいた焼きそばソースも入れてよく炒める。全体に味が馴染んだらぼっかけを入れてよく絡める。仕上げに青のりと削り節を散らしたら「完成」

 

 

本日の晩御飯

叔父さん特製ぼっかけ焼きそば

ニラ玉

千切りキュウリとモヤシの胡麻ナムル

ササミとしめじのショウガスープ

 

 

「うわ~おいしそ~♪」

 

「おおお…なんという食欲をそそる香り!」グググゥゥゥ

 

「ステキ!まるで専門店みたいな見た目の焼きそばね!」パシャシャシャシャ

 

「あっいい匂い」

 

「では手を合わせてください」

 

「「「「「いただきます」」」」」

 

今日のメニューは兵庫県神戸市の郷土料理「ぼっかけ(牛スジとこんにゃくを甘辛く煮たもの)」をソース焼きそばと合わせたご当地グルメ。焼きそばに絡みやすいように牛スジとこんにゃくを小ぶりに切ってあるのも特徴だ。今回はホットプレートで作って出来立てを食べてもらう形式にしてみたけど皆の反応はどうかな。

 

「ハフ…ハフ…あつつ、ん~♪美味しい!このこんにゃくとお肉は焼きそばでなかなか見ない具材だけど焼きそばの風味とよく合うね~」

 

「んっんっ…あっただのソース味じゃなくて、あっ甘辛な煮物の味もして美味しいです」

 

「もぐもぐゴクン。うむ、イケる!無限におかわりできる味!」

 

「んー♡焼けたソースの香りがたまらないわね!ホットプレートを囲んでの晩御飯も仲良し女子高生感が出てて映えるわ~♡」キターン

 

よしよし、結束バンド全員からの美味しいリアクションいただきました!かわいい。これを見れただけでも作った甲斐があったというものだ。

 

「晋作さん、この焼きそば何て言う名前なの?」

 

「これはぼっかけ焼きそばといって、神戸市のB級グルメだよ。いい牛スジが手に入ったから作ってみたんだ」

 

「へ~意外だけどいい組み合わせだよね。ご当地焼きそばって全国にいっぱい種類あるし今度家でも作ってみようかな!」

 

「うん、それは星歌さんも喜ぶと思うよ」

 

「えへへ~♪でしょ?」

 

「その時は呼んで。いや呼ばれなくても焼きそばの匂いを嗅ぎ付けて行く」

 

「リョウ先輩の嗅覚ならできちゃいそうね!」

 

「あっですね」

 

皆どうやらぼっかけ焼きそばを気に入ってくれたようだ。結束バンドのワイワイ仲良く話しながらの晩御飯風景を間近で見られて私も満足です。

 

 

ごちそうさまでした

 

 

「晋作さんごちそうさま!もうすぐ自主企画ライブだから特別メニューの方もよろしくね!」

 

「うん、任せて。STARRYに来てくれる人全員が満足できるようなの作っちゃうからね」

 

「試食係は任せて」

 

「リョウは当日別の仕事たくさんあるでしょ!」

 

「叔父様!さっきのご飯風景イソスタに上げたんで見てくださいね!もちろん例によって叔父様が入ってるのは上げてないから安心してください♪」

 

「あっじゃあまた明日…」

 

虹夏ちゃん達が帰った後ひとりちゃんの方を見ると、ひとりちゃんは手に何かを持って眺めながらブツブツと呟いていた。あれは…

「ひとりちゃん、それって今日撮ったプリシーかい?」

 

「あっはい。へへへ…ほっ本当はこういうのに写るのは苦手だったんですけど…みっ皆と一緒だからその…ちょっとだけ楽しかったです」

 

「うん、私もさっき見せてもらったけど皆とても可愛く写ってたよ。結束バンドの結束力がまた上がったんじゃないかな」

自主企画ライブを前に結束バンドにとっていい息抜きになったようだね。私も長谷川さんのおかげで良いものが手に入った。このロンリーちゃんフィギュアはそうだな…自分の部屋の棚に飾っておこう。




結束バンドがゲーセンでどんなことをしてたかはアンソロジーコミックを読みましょう。

次回 自主企画ライブと姪と◯◯

やっと本編が進むかも…?


↓おまけ
異世界でも叔父さんは食べさせたい

※パラレルワールドオブザイヤーです


↓前回までのあらすじ
結束バンドの楽器を修理するのに必要な素材が全て集まりました!あとはこれを修理屋さんに持っていくだけ…?

キャラ紹介
後藤ひとり
転生先の世界でも叔父さんと同居。スキルの効果で自力でモンスターを倒せない。でも前衛がすごく強いので全然問題ない。新たなスキルでいつでもギターが弾けるようになりました。金属スライムに全身を揉みほぐされて猫背が少し治ったようです。

叔父さん
異世界でもひとりちゃん達に食べさせる生活を目指す。作った料理に体力と状態異常回復&経験値取得の効果が付くスキルを持っている。パーティ内に女性が多いと物凄く強くなるスキルも習得。素材集めから帰ってきてから喜多ちゃんがちょっと不機嫌な理由がわからない模様。

山田リョウ
特典ほぼなしで転生してきた不憫な子。スキルのせいで戦闘中は強いけどすぐお腹が空くのであまり戦いたくない。叔父さんのご飯が大好き。とても燃費は悪いけど現状真面目に戦うと結束ギルド内で一番強い。

喜多郁代
叔父さんの家に住みながらSTARRY異世界店へ通う。お日様が出てる間は火と光属性無効の無敵陽キャ。金属スライムに揉まれる後藤ひとりとPAさんを見る叔父さんになぜかちょっとだけイラっとしました。

伊地知虹夏
叔父さん以上に特典盛り盛りで転生してきた元下北沢の大天使。異世界でのライブハウス再開のために今日も奮闘する。必要素材が全て集まったのですごくテンションが高い。

伊地知星歌
伊地知虹夏と共に転生してきた伊地知虹夏の姉。叔父さんと一緒に保護者役として結束バンドの冒険に付いていく。STARRY異世界店の店長もやっている。怒らせると(物理的な意味で)とってもコワイ。

PAさん
しれっと転生していた黒髪ロングでピアスなお姉さん。朝が弱いのでお昼からなら働きます。ティズワラ編の時にお留守番だったのが寂しかった模様。事前の情報収集も欠かさない出来る大人。金属スライムに叔父さんの目の前で辱しめられたのがちょっとだけ快感だったのは秘密。

廣井きくり
転生特典で愛用のベースを持って転生してきたSICK HACKのベーシスト。伊地知姉妹のお城に住まわせてもらえるようになりました。ついでにお仕事も貰えたようです。素材集めが終わったのでもう叔父さんのおつまみで飲むことしか考えてない。


楽器を修理してもらおう!

虹夏チーム&叔父さんチームの帰宅後、STARRY異世界店では恒例の結束バンドメンバーミーティングの真っ最中。内容はもちろん楽器の修理に必要な素材が集まった喜びを皆で分かち合うことであった。

「皆お疲れ様~!皆の協力のおかげで全ての素材を集めることができたよ!お姉ちゃん達も本当にありがとう!」

「いやいや、私はちょっと手伝っただけだよ。皆の頑張りの成果さ」

「でも実際晋作さんいなかったら詰んでた場面もあったぞ」

「だよね~何気に晋作さんのお弁当に助けられたよ」

「えっそうなの?」

「それにこっちだと戦闘でも頼りになりましたよ!これでやっと私達の楽器も直りますね!」キターン

「異世界に来て色々インスピレーションも湧いてるし新曲も作っていきたいところ」

「あっですね。はっ早くライブもやりたいです」

「とりあえず素材集まっらお祝いに飲みましょーかんぱーい♪」

「お前はさっきからそればっかりだな!」

「廣井さんずっとおじさまの料理を肴に飲んでますねー」

「らっておっちゃんのご飯うますぎるんらもん!こんらの飲まなきゃ嘘だれぇ!」

「もう既に酒臭い…お姉ちゃん、廣井さん出禁にしよう」

「ま、まあまあ虹夏ちゃん。廣井さんも素材集めに協力してくれたんだし、多少は大目に見てあげて」

「むぅ…まあいいか。じゃあ皆、明日は集まった素材を持ってあたし達の楽器を修理してもらいに行くよ!」

「それなんだけど、私もその修理してくれる所に付いていっていいかな?」

「晋作さんも?もちろんいいよ!」

「まあ貴重な楽器と苦労して集めた素材を持っていくんだし保護者役は必要だろ。晋作さん頼んだよ」

「ですね!」

「うむ。特に異議はない。重たい素材もあるし全部晋作オジサンに持ってもらおう」

「あっさすがに全部は叔父さん大変なんじゃ…」

「大丈夫だよひとりちゃん。付いていくからにはそれくらいするよ。それに個人的にちょっと気になることがあってね」

「きっ気になることですか?」

「うん。ただの杞憂ならいいんだけど…」

そして翌日、結束バンドと叔父さんは集めた素材と修理する楽器を持って件の修理屋さんへと足を運んだ。人通りの少ない路地や地元の人も知らない裏道を通ってやってきたその修理屋は、外観もさることながら中の工房も素人目にわかるくらいに古く年季が入っていた。結束バンド一行は半分開いた工房の扉を一応ノックしてから中へ声をかけた。

「こんにちはー!この前修理をお願いした結束バンドですけどー!」

「誰もいませんね」

「もしかして休業日?」

「ふむ、それにしては作業場まで普通に入れちゃったし奥にも部屋はあるみたいだからそっちにいるのかな?」

「あっあっちの方に灯りが点いてますよ」


「ふぁぁ~…」
アンダーノースで知る人ぞ知る修理屋『ボッタクリーン』の奥ではこの店の主イジ・ワール・イヒトが気だるそうにあくびをしながら弟子と共に暇をもて余していた。

「暇すぎて死ぬ…」

「ならお仕事しましょうよお師匠様~」

「働いたらもっと死ぬ…」

「先日も楽器の修理依頼されたんでしょ?しかも3つも」

「あーあれなー。めんどくせーから無理難題押し付けて追っ払ってやった」

「何やってんですか!?せっかくのお客さんを!」

「いやだって、見たことない楽器だったし色々材料足らなかったし仕入れるの面倒だし~」

「それで必要素材をお客さんに集めさせてるんですか?バカですか!バカなんですね!このバカ!」

「そんなにバカバカ言うなよ~それでも弟子かよ~」


修理屋のそんなやり取りの一部始終を聴いていた結束バンド一行は我慢できずに抗議に入った。

「ちょっと修理屋さん!今のどういうことですか!」ヌ”ーン

「最初から修理する気がなかったということですか?そんなの酷いです!」

「直す直す詐欺は立派な犯罪」

「あっ」

「なっ!?なんだお前ら勝手に入ってきて!」

「いらっしゃいませ~。修理屋ボッタクリーンへようこそ」

「てめー弟子コラ普通に接客してんじゃねぇ!」

「あなたがこの修理屋の店主ですね?ちょっと今の話を詳しくお訊きしたい」ゴゴゴゴゴ

「なっなんだおっさん。やっやんのか?お?お?」

「お師匠様なんで喧嘩腰なんですか…」

「…ちょっとそこに座りなさい」

「お?お?随分偉そうだなおっさ「す・わ・り・な・さ・い」

修理屋店主イジ・ワール・イヒトは叔父さんからお説教をくらった。イジ・ワール・イヒトはおとなしくなった。

「…という訳であなたも一職人としてもっと自覚と誇りを持って仕事をしなければあなた自身のためにもなりませんよ?」

「はい。調子乗ってすいませんでした…」

「晋作さんのガチ説教初めて見た…」

「いつもの叔父様とは違った一面ですね♪」

「あっ前はたまに廣井お姉さんにやってました」

「あの説教は食らいたくないな…気を付けよう」

「お師匠様を黙らせるなんてあの人只者じゃないですね」




「しかしまさか本当に素材を集めてくるとは恐れ入った」

「お師匠様が皆さんに言った素材は、どれも上級冒険者やベテランギルドが数十人がかりでやっと集められるような難易度のものばかりだったんですよー」

「だが実際どうやって集めたんだ?このヌマリゲーターの牙なんかはやたら耐久力の高いヌマリゲーターのメスを7体倒してやっと現れる金色に光るオスを倒してやっと手に入るレア物なんだぞ?」

「あーそれはやる気出したリョウが全部蹴散らして何とかなったよ!」

「死ぬほど腹ペコになったけどね…もう2度とやりたくない」

「何!?じ、じゃあこっちのバリカタシの枝は?この木を守ってるドラゴンを何とかしないと入手不可能と言われてんだぞ!」

「あーそれ晋作オジサンのお弁当あげたらドラゴン自ら枝を取ってくれたよ…私のお昼ご飯だったのに」

「晋作さんのご飯はドラゴンにも通用するんだってビックリしたよねー。てかリョウは根に持ちすぎでしょ」

「ななな…じゃあアナホリサンドラゴンの髭は!?この時期は気性が荒くて凄腕の戦士でも手がつけられないって噂だ」

「え?私とPAさんで普通に髭だけ切り取りましたよ」キターン?

「へ!?な、なら金属スライムはどうやったんだ!?なかなか出会うことができない上にこいつの皮膚は倒すと性質が変わって使い物にならなくなるんだぞ!」

「あっそっそれは…えっと///」

「【何・故・か】ひとりちゃんとPAさんに纏わりついた金属スライムが脱皮して残していきましたよ?」キタキターン?

「ぼっちちゃんなんでそんなに顔赤くしてるの?」

「ぼっち、その照れ顔は売れるから今度写真撮らせて」

「バ、バカな…金属スライムのお眼鏡にかなう柔らかさを持ち合わせたヤツがいるなんて…信じられん」

「とにかく!あたし達は約束通り必要素材を集めてきましたよ!これであたし達の楽器直してくれますよね?」

「ぬぬぬ…仕方ない、約束は約束だ。わかった、あんたらの楽器しっかりバッチリ直してやるよ!…それにしてもお嬢ちゃん達、見かけによらず結構な手練れなんだな。もしかして有名なギルドに所属してたりするのか?」

「いいえ、私達は主にバンド活動を主体とするギルド!その名も結束ギルドです!」キターン

「バンド名は結束バンドだよ!」ヌ”ーン

「すげー適当な名前だな!たが逆に気に入った!」


こうして紆余曲折はあったが、修理屋ボッタクリーンで結束バンドの楽器は無事修理された。あと修理屋ボッタクリーン経由で結束ギルド(あと結束バンド)の知名度が少し上がった。次回やっとSTARRYで結束バンドのライブができる…?



つづく(長ーい目で見ててね)
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